2025.04.23
ファクタリングと手形割引の違いとは? それぞれの特徴やメリットを詳しく解説
企業が資金繰りやキャッシュフローに困ったときに、早期に資金を調達する方法としてファクタリングと手形割引がよく利用されます。両者は似たようなスキームに思われがちですが、本質的にはそれぞれ異なる金融サービスであり、必要な状況も変わってきます。はじめに、両者の概要を簡単に押さえてから詳しく見ていきましょう。
本記事では、それぞれの特徴やメリット・デメリットを整理しながら、実際の利用方法や活用シーンについて解説します。どのような企業がどちらを使うべきか、どのようなリスクやコストが関係してくるのかを明確にすることで、最適な資金調達手段を選ぶための一助となるでしょう。
近年では約束手形の発行手続きの見直しや、ファクタリングサービスの多様化など、資金調達手段はますます変化しています。この記事を通じて、両者の違いと使い分けのポイントをしっかり理解し、安定した資金繰り運営につなげてください。
手形割引とは?
まずは、古くから利用されてきた資金化手法である手形割引の基本的な仕組みを整理してみましょう。
手形割引とは、企業が受け取った約束手形を銀行などの金融機関や割引業者に売却し、満期日前に現金化する方法です。通常、手形発行企業が満期日に支払いを行うまで待たずに資金を得られるため、急な資金需要やキャッシュフロー改善に役立ちます。割引率という形で、受け取れる金額は額面よりも少なくなる点が特徴です。
歴史的に日本では約束手形が商取引で多く利用されてきた背景があり、手形割引の制度は広く浸透しています。金融機関が扱う場合、企業の与信状況や発行企業の支払い能力を重視して審査が行われるため、必ずしも誰でも自由に利用できるわけではありません。それでも融資よりも比較的スムーズな審査で、緊急時の資金確保が可能となる場合があります。
ただし、手形が不渡りとなれば、手形割引を利用した企業が最終的な支払い責任を負うことになります。そのため、リスク管理として手形の発行企業がどれだけ信用できるかという点が非常に重要です。割引料が一見安価に見えても、不渡りリスクをよく踏まえた上で選択する必要があります。
受取手形を担保とした融資
手形割引は、受け取った手形を担保とする一種の融資とも見なすことができます。実際には手形そのものを金融機関に売却する仕組みですが、実態としては手形満期時に支払いが行われる前提で資金を先取りできる点が融資と同様です。
通常の融資と比べると、企業自体の信用力に加えて、発行元(手形を振り出した相手先)の信用力も大きく影響します。発行元の信用度が高ければ、割引率が低く抑えられる可能性がありますし、逆に信用が低ければ利用は難しくなったり、高い割引率が設定されたりします。
このように手形の信用力をベースとするので、不渡りリスクを金融機関は企業に転嫁しやすいという特徴があります。とはいえ、古くから定番の手段であり、比較的費用を抑えられるケースも多いため、高額の売掛金や長期の支払いサイトが発生する取引で頻繁に使われてきました。
期日前に現金化ができる
手形割引を利用して得られる最大のメリットは、支払期日を待たずに手形を現金化できるということで間違いありません。取引先に対して支払いの強制力を持っているのが手形の利点ですが、60日以内の支払サイトが設定されることが多い売掛債権よりも遥かに長い、90日から120日の支払サイトが設定されることが多いという問題を抱えています。しかし手形割引を利用すれば早期の現金化が可能となりますので、この問題をクリアすることができる様になります。
支払日までの期間に応じて「割引」される
割引料として引かれる額は、支払日までの期間が長くなるほどに大きくなるとお考えください。ですから早くに現金化するほどに手に入る資金は少なくなってしまいます。ですから手形割引の利用の際には、複数の約束手形が手元にあるのであれば期日の近い物を選ぶなど、上手く活用する方法を考えることも大切になります。
手形が不渡りになった際には買取の義務がある
支払いの強制力があるのが約束手形を利用した取引のメリットではありますが、万が一のトラブルが起きるなどして取引先が倒産し不渡りが出てしまった場合には現金化は不可能となってしまいます。そして手形を担保にして融資を受ける手形割引で資金調達を行った場合、手形が不渡りとなってしまった時には買い戻しを求められてしまうのです。審査時には倒産リスクも考慮されており滅多に起きることではありませんが、現金化したらそれで手形に関する責任が無くなるわけでは無いのです。
手形割引の具体的な場面での利用事例
支払サイトが長い取引先から手形を受け取った場合、満期までの期間中に運転資金が不足してしまう恐れがあります。そのような際に手形を割り引くことで、資金を早期確保し、キャッシュフローの安定性を高めることができます。
また、急な追加発注や予想外の設備投資など、突発的に大きな支出が発生したときに資金化手段として手形割引を活用する企業も少なくありません。手形の存在そのものが信用の裏付けになるため、他の融資スキームよりも審査が通りやすい場合もあります。
一方で、満期日前に現金化するためには割引料が発生し、手形の額面よりも実際に受け取れる金額が少なくなることを理解しておきましょう。緊急時に素早く資金を手にするメリットと、多少のディスカウントコストをどう天秤にかけるかが選択のポイントです。
ファクタリングと手形割引の違い
次に、同じく早期資金調達に用いられるファクタリングについて、手形割引との違いを比較しながら確認しましょう。
ファクタリングは、企業が保有する売掛債権をファクターと呼ばれる専門会社に譲渡し、売掛金を期日よりも早く現金化する手法を指します。手形割引と同様に、キャッシュフローを改善するための手段として位置付けられています。
ただし、手形割引が「手形を担保にして資金を借りる」性質を持つのに対し、ファクタリングは「売掛債権そのものを売却する」という違いがあります。もし売掛先が支払を滞った場合でも、ノンリコース型のファクタリングであれば、売却後のリスクを大幅に軽減できるというメリットがあるのです。
貸し倒れリスクを避けたい企業にとっては、ファクタリングがより魅力的な手段となる場合が多いでしょう。しかし、その分手数料率が手形割引より高めに設定されやすいというデメリットがともないます。全体的なコストとリスク分担のバランスを考慮しながら選択することが重要です。
手形割引は融資、ファクタリングは売却
手形割引の場合、実質的に企業が金融機関からお金を一時的に借りている状況に近いと言えます。手形が不渡りにならない限りは割引料のみを負えばよいのですが、万一不渡りが発生した際には金融機関から償還請求を受けるリスクがあります。
一方、ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に売却する行為のため、売却後のリスク(ノンリコースの場合)はファクタリング会社が負う形となります。そのかわり手数料が高く設定される傾向にあるため、資金化のコストは手形割引よりも高くなるケースが多いのです。
よって、自社の信用力が高く発行先の信用リスクも低い場合は手形割引のほうがコストを抑えられる可能性がありますが、リスク回避を優先したい場合はファクタリングを選択するといった使い分けが望ましいと言えます。
貸借対照表への影響
手形割引で手に入れた現金は流動負債として扱われますが、ファクタリングは融資ではありませんので現金化して得た資金は負債としては扱われることはありません。ですから貸借対照表(バランスシート)上の負債額を増やすこともなく、資金調達が行なえるということです。そしてファクタリングの利用は貸借対照表のスリム化という好影響を与えてくれるのです。
資金調達後のリスク
万が一にでも取引先が倒産してしまった場合、手形割引では買い戻しを求められ大きく資金を失うことになりかねません。この結果、資金調達前よりも経営が苦しくなるという危険はゼロではありません。対してファクタリングの場合はノンリコース(償還請求権なし)での契約が原則となっていますので、取引先が倒産してしまっても代金を返済する必要はありません。資金調達後のリスクを比較した場合には、ファクタリングの方が安心感は高くなります。
診査で重要視されるポイント
手形割引の審査では、手形を発行した企業の信用力が最も重要視されます。手形が支払われないリスクを抱えることになるため、割引を行う金融機関としては発行元の業績や過去の決済履歴などを細かく確認する必要があるからです。
ファクタリングの場合、売掛先(取引先)の信用度が重視されます。ファクタリング会社が実際に債権を買い取る形となるため、売掛先がきちんと支払う会社かどうかを厳しくチェックします。とりわけ中小企業などでも、売掛先が大企業である場合は審査が通りやすいといった特徴があります。
それぞれの審査基準と求められる書類、契約条件が異なるので、自社と相手先の信用力や契約形態を理解しておくことが大切です。受け入れ先の信用情報や支払い実績をあらかじめ調査しておくことで、よりスムーズに資金調達できるでしょう。
手形割引とファクタリングのどちらを選ぶべき?
両者には明確な違いがあるため、自社の目的や経営状況、重視するポイントに応じて使い分けましょう。
手形割引は比較的手数料が低めに抑えられやすく、取引相手や自社の信用力が一定以上あればスピーディーに資金化できます。一方で、最終的にリスクを負うのは利用する企業側であるという点は見逃せません。
ファクタリングは貸し倒れリスクを軽減できるメリットがあるため、今後の不確実な景気動向に備えたい企業や、売掛先の与信リスクを避けたいと考える企業にとって魅力的な方法です。ただし、ファクタリング会社が負うリスクが大きい分、手数料が高めになることが一般的です。
最終的にはどちらが自社にとって落としどころの良い方法かを見極めることが肝心です。手形割引とファクタリング、それぞれのメリットとコストを正確に把握し、将来のキャッシュフローを見通すことで最適な選択を下すことができるでしょう。
なるべく額面を減らしたくないのなら手形割引
手形割引は全体的にファクタリングより割引率(手数料)が低く設定されやすい傾向にあります。そのため、売上額に近い金額を確保したい場合には手形割引のほうが向いているでしょう。
また、長く付き合いのある金融機関がある場合、より有利な割引料や相談が可能となることもあります。発行先や自社自身の信用力次第では、非常に低い割引率で利用できるケースも見られます。
ただし、不渡りリスクが生じる点はしっかり考慮しなければなりません。万が一、振り出し企業が支払い不能に陥った場合は、割り引きを行った金融機関から資金を返還するよう求められることがあります。
3社間ファクタリングを選べば手数料は安くできる
ファクタリングを利用し手数料を抑えたいとお考えであれば、3社間ファクタリングをお選びください。これも選んだファクタリング会社次第ではありますが、1%から10%の手数料で済むことが多くなります。3社間での契約では取引先からの債権売買に関する承諾を得る必要が発生しますが、手数料を抑える効果は大きく期待できます。
資金調達後のリスクを避けるならファクタリング
ファクタリングは売掛債権を売却するため、売掛先の倒産や支払遅延といったリスクをファクタリング会社に移転できる方式です。特にノンリコース型のファクタリングでは、万が一売掛先が支払えなくなっても、ファクタリング利用企業は責任を問われません。
これは将来の景気動向や取引先の経営状況が読めない場合に大きな魅力となります。特に新規取引が増えたときや、信用情報が不透明な海外取引などで活用されることも多いです。
ただし、このリスク軽減の代償として、手数料率が高くなるケースが多い点は覚悟しておく必要があります。安全を優先するかコストを優先するか、経営判断が求められる部分です。
経営状況に不安があるならファクタリング
銀行などからの融資が通りにくい、あるいは自社の財務内容が厳しく手形割引の審査で不利になりそうな場合でも、ファクタリングであれば売掛先の信用力を重視するため、利用可能なケースが多いです。
自社を含め、取引先全体の財務状況を細かく把握することは難しいものですが、ファクタリング会社が代わりに売掛先を評価してくれるため、与信管理の負担を軽減できる利点があります。
したがって、リスク管理や信用度の不安要素を抱えている企業にとっては、ファクタリングが有効な資金調達手段となるでしょう。自社リスクを最小限に抑えながら素早く資金を得られる点は大きな魅力です。
手形や売掛債権を上手に活用して資金繰りを改善
手形割引やファクタリング以外にも、短期的な資金調達手段を併用しながら多角的にキャッシュフローを改善する方法が存在します。
企業経営では、急な費用が発生したときや売上と支出のタイミングが合わないときこそ資金繰りが大きな課題となります。手形割引やファクタリングを軸にして運転資金を確保しながらも、他の金融商品やローンサービスを活用することで資金調達をさらに柔軟化することが可能です。
近年は銀行借入だけでなく、ネット完結型の融資サービスやクラウドファンディングなど、新しい資金調達手段も登場しています。企業の信用度や顧客の信用度を掛け合わせて、最適な組み合わせを検討することが重要です。
また、2026年以降には約束手形の発行や利用が大きく変わる可能性があるため、今のうちから電子記録債権やファクタリングの知識を深めておくことが望ましいでしょう。社会情勢の変化に対応して、複数の選択肢を確保しておくことが安定した経営に繋がります。
最短即日融資!HTファイナンスのビジネスローン
手形割引やファクタリングと組み合わせて検討される選択肢として、ビジネスローンや事業者ローンと呼ばれる融資サービスがあります。HTファイナンスのビジネスローンは、最短即日融資に対応しているのが特徴で、急場の支払いに迅速に対応できる可能性があります。
こうした短期融資を併用することで、計画外の支出に対しても柔軟に資金を確保できるメリットがあります。ファクタリングや手形割引だけに頼るのではなく、複数の選択肢をバランスよく利用することで、金利負担や手数料率を最小限に抑えながら安定的な資金繰りを実現できます。
ただし、どのローンや割引サービスにも諸条件や審査があり、利率や手数料の違いが存在します。あらかじめ複数の選択肢を比較検討し、自社の財務環境や資金需要に合ったサービスを選定することが大切です。
事業拡大のチャンスを逃さないために、まずは一度HTファイナンスまでお問い合わせください。