2025.05.09
医療法人が資金調達する方法は何がある?各方法の特徴も紹介
医療法人を経営していると、高額な医療設備を購入したり、施設を広げたり、日々の運転資金を確保したりと、さまざまな場面で資金が必要になります。ただ、医療法人の場合、株式や一般社債を発行できないため、一般企業より資金調達の選択肢が限られてしまうことがあります。また、診療報酬が入金されるまで約2ヵ月かかることにより、資金繰りが苦しくなりやすいという問題もあります。
本記事では、特殊事情を抱える医療法人が活用できる資金調達方法を、長期・短期・負担軽減型に分けて詳しく解説します。銀行融資から医療機関債、診療報酬ファクタリング、さらには補助金・助成金まで、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較しながら紹介します。
資金調達を成功させるためのポイントも併せて解説しますので、医療法人の経営者や財務担当者の方はぜひ参考にしてください。
医療法人における資金調達の特徴
医療法人が資金調達を検討する際には、一般企業とは異なる特徴を理解しておく必要があります。
株式や一般社債の発行ができない
医療法人は、非営利法人として位置づけられているため、一般企業のように株式を発行して資金を調達することができません。また、一般社債の発行も認められていません。そのため、資金調達の選択肢が限定されています。
この制約により、医療法人は主に金融機関からの借入や内部留保、特定の債券発行などに資金調達手段を頼らざるを得ない状況があります。このような制約は、医療法人の経営者にとって、資金計画を立てる際の大きな課題となっています。
高額な医療設備投資が必要
医療法人は、最新の医療設備や施設の整備に多額の資金を必要とします。MRIやCTスキャナーなどの高度医療機器は、数千万円から億単位の投資が必要となり、建物の新築や改修にも莫大な費用がかかります。
こうした大型投資は、医療サービスの質を維持・向上させるために不可欠ですが、計画的な資金確保が必須となります。高額な設備投資は一度に行うことが多いため、長期的な視点での資金計画が特に重要です。
診療報酬の入金サイクルが長い
医療法人の主な収入源である診療報酬は、診療月から約2ヵ月後に入金されるというタイムラグがあります。例えば、1月に提供した医療サービスの報酬は、審査を経て3月にようやく入金されます。
この入金サイクルの長さは、日々の運転資金を圧迫する要因となっています。人件費や医薬品費などの支出は毎月発生するため、資金繰りの計画性と短期的な資金調達手段の確保が医療法人経営における重要な課題です。
医療法人の長期的資金調達方法
医療法人が施設拡張や大型医療機器の導入など、長期的な投資のために活用できる資金調達方法について解説します。これらは、比較的大きな金額を長期間にわたって調達するのに適した方法です。
銀行融資
銀行融資は、医療法人にとって最も一般的な長期資金調達方法の一つです。地方銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けることで、設備投資や施設の拡張に必要な資金を調達できます。
銀行融資の最大のメリットは、一度に多額の資金を調達できる点です。医療機器や建物など高額な投資が必要な場合に適しています。また、長期間の返済計画を立てることができるため、経営の安定性を保ちながら返済を進められます。
金利面でも、他の資金調達方法と比較して低金利で調達できる可能性があります。特に、長期的な取引関係のある金融機関からは、より好条件での融資を受けられることもあるでしょう。
医療機関債
医療機関債は、医療法人が直接投資家から資金を調達するための債券です。2004年に厚生労働省が導入したこの制度により、医療法人は一定の条件下で債券を発行して資金を集めることができるようになりました。
医療機関債の大きな特徴は、銀行融資と比較して担保設定が不要な点です。また、使途が医療機器の購入や施設整備などに限定されることで、投資家に対して資金の使い道が明確になるメリットがあります。
発行条件としては、一定の財務基準を満たすことが必要で、安定した経営基盤がある医療法人に適した調達方法といえます。投資家に対して定期的に経営情報を開示する必要もあるため、経営も透明性高く行うことが求められます。
社会医療法人債
社会医療法人債は、社会医療法人に認められた債券発行制度です。社会医療法人とは、救急医療などの公益性の高い医療を提供していると認定された医療法人を指します。一般の医療機関債よりも発行条件が緩和されており、より柔軟に資金調達が可能です。
社会医療法人債のメリットは、使途に制限がなく運転資金などにも活用できる点です。また、社会医療法人という公益性の高い組織が発行するため、投資家からの信頼も得やすい傾向があります。
ただし、社会医療法人の認定を受けるためには、厳しい基準をクリアする必要があります。地域の救急医療への貢献度や収益性など、さまざまな条件を満たさなければなりません。そのため、認定取得のための長期的な経営戦略が重要になります。
医療法人の短期的資金調達方法
医療法人が、日々の運転資金や緊急の設備投資などに対応するための、短期的な資金調達方法について見ていきましょう。診療報酬の入金サイクルが長いという医療法人特有の課題に対応する手段として重要です。
診療報酬ファクタリング
診療報酬ファクタリングは、医療機関が保有する診療報酬請求権(将来入金される診療報酬)を担保として、ファクタリング会社から即時に資金を調達する方法です。通常2ヵ月後に入金される診療報酬を前倒しで現金化できるのが最大の特徴です。
具体的な流れとしては、まず医療法人がファクタリング会社と契約を結びます。次に、診療報酬請求書の控えなどをファクタリング会社に提出し、審査を受けます。審査通過後、請求額から手数料を差し引いた金額が、医療法人に即日または数日以内に支払われます。
最終的に、診療報酬が支払機関(社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会)からファクタリング会社に直接支払われる仕組みです。急な資金需要に対応できるという点が最大のメリットといえます。
医療法人向けビジネスローンの特徴
医療法人向けビジネスローンは、銀行や金融機関が医療法人のニーズに特化して提供する融資商品です。一般的な銀行融資よりも審査が簡易で、申込から融資実行までのスピードが速いことが特徴です。
融資額は、数百万円から数千万円程度で、短期の運転資金や小規模な設備投資に適しています。多くの場合、無担保・無保証での融資も可能で、医療法人の信用力を重視した審査が行われます。
銀行の通常融資と比較すると、柔軟な対応と迅速な審査が魅力です。特に、急な設備の故障や入替え、季節変動による資金需要など、タイミングが重要な場面で活用できます。
医療法人の資金調達で返済負担が軽度な方法
医療法人が、返済負担を軽くしながら資金を確保できる方法について解説します。これらの方法は、返済不要または負担が比較的軽いという特徴があり、経営の安定性を確保しながら必要な資金を調達できます。
補助金・助成金
補助金・助成金は、返済不要の資金として医療法人にとって非常に魅力的な調達方法です。国や地方自治体、財団法人などが、医療の質向上や地域医療の充実を目的としてさまざまな制度を設けています。
主な補助金としては、医療施設等設備整備費補助金、地域医療介護総合確保基金による補助金、感染症対策に関する助成金などがあります。これらは、医療機器の導入や施設整備、人材確保などに活用できます。
申請方法は制度によって異なりますが、一般的には募集期間中に申請書類と事業計画書を提出し、審査を受ける流れです。早めの情報収集と計画的な準備が採択率を高めるポイントです。
クラウドファンディング
近年、医療法人でもクラウドファンディングを活用した資金調達の事例が増えています。インターネットを通じて広く一般から資金を募る方法で、特に地域に根ざした医療機関や先進的な医療プロジェクトに適しています。
クラウドファンディングには、寄付型、購入型、投資型など複数の形態があります。医療法人の場合は、主に寄付型や購入型が活用されており、地域住民や患者からの支援を受けられる点が特徴です。
成功事例としては、地域の小児科クリニックの開設資金や、最新医療機器の導入資金を調達したケースなどがあります。共感を呼ぶストーリー性のある計画が成功のカギとなります。
リース契約・リースバック
リース契約は、医療機器などの設備を購入せずに利用する方法です。初期投資を抑えながら、最新設備を導入できるというメリットがあります。特に、高額な医療機器の導入時に活用される資金調達手段です。
リース契約では、リース会社が医療機器を購入し、医療法人はそれを借りる形になります。毎月のリース料を支払うことで、まとまった資金がなくても必要な設備を導入できます。また、リース料は経費として計上できるため、税務上のメリットもあります。
一方、リースバックは、既に所有している医療機器や不動産をリース会社に売却し、そこから借りる形にすることで資金を調達する方法です。設備や不動産を手放すことなく、短期間で大きな資金を確保できるのが特徴です。
医療法人向けの公的機関からの資金調達
医療法人は、さまざまな公的機関が提供する融資制度を活用することで、民間金融機関よりも有利な条件で資金を調達できる可能性があります。各機関の特徴や支援内容について解説します。
福祉医療機構の融資制度
独立行政法人福祉医療機構(WAM)は、医療法人向けの融資を専門に行う公的機関です。民間金融機関と比較して、低金利で長期の融資が受けられることが大きな特徴です。
主な融資対象は、病院や診療所の新築・増改築、高額医療機器の購入、長期運転資金などです。融資限度額は事業規模によって異なりますが、病院建設の場合は数十億円規模の融資も可能です。
融資条件としては、固定金利が基本で、民間金融機関と比較して、0.5%〜1%程度低い金利設定となっています。また、最長30年という長期間の返済計画が立てられるため、大規模投資の負担を軽減できます。
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫は、国が100%出資する政策金融機関で、医療法人向けにもさまざまな融資制度を提供しています。全国に支店をもつため、地方の医療法人でも利用しやすい点が特徴です。
中小企業向けの融資制度を通じて、設備資金や運転資金の調達が可能です。特に、「新事業育成資金」や「企業活力強化資金」などは、新たな医療サービスの展開や経営改善に活用できます。
融資の審査では、事業の将来性や社会的意義も評価される傾向があり、財務面だけでなく事業計画の内容も重視されます。地域医療への貢献度をアピールすることで、採択率を高められる可能性があります。
商工中金と信用保証協会
商工組合中央金庫(商工中金)は、中小企業向けの政府系金融機関で、医療法人も融資対象となっています。業種や規模に合わせた融資制度があり、設備投資や運転資金の調達に活用できます。
商工中金の特徴は、個別の事業者の状況に応じたオーダーメイド型の融資を提供していることです。医療法人の特性や、地域医療における役割を考慮した融資条件の設定が可能です。
また、信用保証協会の保証付き融資を活用することで、担保や保証人の負担を軽減しながら、民間金融機関からの融資を受けることができます。複数の金融機関からの調達を組み合わせることで、最適な資金調達が可能になります。
医療法人の資金調達を成功させるためのポイント
医療法人が資金調達を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。計画性や信頼関係の構築、専門家の活用などについて解説します。
明確な資金使途の作成
資金調達の成功には、明確な資金使途と詳細な経営計画の作成が不可欠です。資金の使途を具体的に説明できることは、金融機関や投資家の信頼を得るうえで非常に重要です。
経営計画には、資金調達の目的、調達金額の算出根拠、投資による収益予測、返済計画などを明記します。単なる希望的観測ではなく、市場分析や患者数予測など、データに基づいた説得力のある計画を作成することが重要です。
特に、医療機器の導入や施設拡張などの大型投資の場合は、投資回収の見通しを明確に示すことが求められます。地域の医療ニーズや競合状況も踏まえた、実現可能性の高い計画を立てましょう。
業績改善と信用力強化の取り組み
資金調達のしやすさは、医療法人の業績や信用力と直結しています。日頃から財務体質の改善に取り組み、安定した経営基盤を築くことが重要です。
具体的には、収益性の向上、コスト管理の徹底、内部留保の確保などが挙げられます。また、決算書の透明性を高め、金融機関が理解しやすい形で財務情報を提示することも、信用力向上につながります。
さらに、地域での評判や患者満足度の向上も、間接的に信用力を高める要素です。地域医療への貢献実績をアピールすることで、公的機関や金融機関からの評価も高まります。
無理のない返済計画の立案
資金調達後の返済負担は、医療法人の経営を大きく左右します。無理のない返済計画を立てることで、将来の資金繰りを安定させることができます。
返済計画を立てる際には、診療報酬改定や患者数の季節変動、医療制度改革など、外部環境の変化も考慮しておくことが重要です。最悪のシナリオを想定したシミュレーションも行い、余裕をもった計画にすることが望ましいでしょう。
専門家の活用や金融機関との関係構築
医療法人の資金調達においては、専門家のサポートを受けることが成功への近道です。税理士や医業経営コンサルタント、金融機関OBなど、医療分野の資金調達に精通した専門家のアドバイスを取り入れましょう。
専門家は、単に書類作成をサポートするだけでなく、最適な資金調達方法の選定や交渉戦略の立案、事業計画の精査など、さまざまな面でサポートしてくれます。特に、補助金申請や医療機関債の発行など、専門性の高い手続きでは専門家の力が不可欠です。
また、日頃から金融機関との良好な関係を構築しておくことも重要です。定期的な情報提供や経営状況の説明を行い、信頼関係を深めておくことで、いざという時の交渉がスムーズになります。
医療法人の資金不足への対応
医療法人が資金ショートの危機に直面した場合、その深刻度と猶予期間に応じた適切な対応が求められます。ここでは、資金不足が予想される時期別の対応策について解説します。
6ヶ月以内の資金不足が予想される場合
6ヶ月以内に資金ショートが予想される場合は、緊急性の高い状況です。迅速かつ確実な資金調達が必要になります。
まず、複数の金融機関に同時に相談することが重要です。現在取引のある銀行だけでなく、新規の金融機関や公的金融機関にもアプローチし、可能性を広げましょう。また、診療報酬ファクタリングなど、即時性の高い資金調達手段も積極的に検討すべきです。
同時に、支出の見直しも急務です。不急の投資計画の延期、経費削減、場合によっては人件費の見直しなども検討が必要です。複数の対策を同時に実行することで、危機を乗り越える可能性が高まります。
6~12ヶ月後の資金不足が予想される場合
6~12ヶ月後に資金不足が予想される場合は、やや余裕があるものの、早めの対策が必要な状況です。計画的な資金調達と収益改善の両面からアプローチしましょう。
資金調達面では、2~3の金融機関に相談し、融資の可能性を探ります。この段階では、比較的条件のよい融資を受けられる可能性があるため、金利や返済条件などを慎重に比較検討することが重要です。
同時に、収益構造の改善にも着手します。診療報酬の請求漏れチェック、診療単価の見直し、患者数増加のための施策など、収入増加につながる取り組みを始めましょう。また、医療材料の見直しやエネルギーコストの削減など、支出面の改善も有効です。収支改善計画を立案し実行することで、資金不足を未然に防げる可能性があります。
12~24ヶ月後の資金不足が予想される場合
1~2年先の資金不足が予想される場合は、比較的余裕をもった対応が可能です。この期間を活用して、根本的な経営改善と計画的な資金調達を進めましょう。
資金調達においては、1~2の信頼できる金融機関との関係強化に努め、経営状況や将来計画を丁寧に説明します。この段階では、単なる資金繰り対策だけでなく、設備投資や事業拡大など、前向きな資金需要も含めた総合的な資金計画を立てることができます。
また、補助金や助成金の活用も視野に入れた、計画的な資金戦略を立てられるタイミングです。申請から交付までに時間がかかる制度でも、この期間内なら十分に活用できる可能性があります。長期的視点での経営改革を進めることで、財務体質の根本的な強化を図りましょう。
24ヶ月以上後の資金繰りに向けた取り組み
2年以上先の資金計画については、日常的な経営管理の一環として取り組むべき課題です。この段階では、経営基盤の強化と成長戦略の実現に向けた資金計画を立てることができます。
具体的には、設備の更新計画、施設の拡張計画、新たな医療サービスの導入など、中長期的な投資計画とそれに伴う資金需要を整理します。それに基づいて、計画的な内部留保の蓄積や、有利な条件での融資獲得などを進めていきます。
また、この段階では金融機関との関係構築も重要です。定期的な情報提供や経営状況の説明を通じて信頼関係を深め、いざというときに、スムーズな融資が受けられる体制を整えておきましょう。先を見据えた資金計画が、医療法人の経営を継続していく基盤となります。
まとめ
医療法人の資金調達は、株式発行ができないことや診療報酬の入金サイクルが長いなど、一般企業とは異なる特有の課題があります。しかし、それぞれの状況に適した資金調達方法を選択することで、必要な資金を確保し、安定した経営を実現することができます。
長期的な設備投資には銀行融資や医療機関債を、短期の資金需要には診療報酬ファクタリングやビジネスローンを、そして負担軽減型の資金確保として補助金・助成金やリース契約など、適切かつさまざまな方法を組み合わせることが重要です。さらに、明確な資金計画の作成や信用力の強化、専門家の活用など、資金調達を成功させるためのポイントを押さえながら取り組むことも大切にしましょう。
最短即日の無担保無保証融資!HTファイナンスのビジネスローン
法人を経営していくうえでは、資金繰りを良好に保つことが非常に大切です。診療報酬の入金までの期間が長いという医療業界特有の事情から、資金繰りに苦労されている方は決して少なくありません。そのような場合は、無担保無保証で迅速な資金調達が可能な、HTファイナンスのビジネスローンが役に立つかもしれません。
HTファイナンスは、東大法学部出身で三菱銀行での実務経験を持つ三坂大作が統括責任者として、企業の資金調達と経営戦略の支援に取り組んでいます。
銀行実務とコンサルティングで培った経験を活かし、無担保無保証の融資やファクタリング、財務改善など、お客様の経営課題に合わせた最適な解決策をご提案しています。また、スピーディーで柔軟な審査体制により、成長に必要な資金を迅速にお届けできます。
お申し込みに必要な書類は最小限に抑え、オンラインやお電話でのやり取りを中心に進めていますので、経営者の皆様の負担を大きく減らすことができます。
事業拡大のチャンスを逃さないためにも、まずはお気軽にHTファイナンスにご相談ください。