2025.05.09
不動産担保ローンの審査基準は?審査の流れや通過するためのコツを紹介
企業経営をするうえで、事業の拡大や新しい取り組みを進める際には、多額の資金が必要となります。その資金調達方法の一つとして、自社が保有する不動産を活用した「不動産担保ローン」がよく利用されています。
ただ、不動産担保ローンを使いたいと思っても、審査の基準や流れがよく分からず、利用をためらってしまう経営者の方は少なくありません。どのようなポイントが審査で重視されるのか、審査をスムーズに通過するためには何に気をつければよいのかを、事前に知っておくことが重要になります。
本記事では、不動産担保ローンの審査基準や具体的な審査の流れ、また審査に通過するためのポイントについて詳しく解説します。不動産を活用した資金調達を検討している方に役立つ情報をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
不動産担保ローンとは
不動産担保ローンは、その名の通り不動産を担保として提供することで融資を受けられる金融商品です。一般的な無担保ローンと比較して、大きな金額の融資を受けられることが特徴です。
不動産担保ローンの仕組み
不動産担保ローンでは、借り手が所有する不動産に抵当権を設定することで融資が行われます。抵当権とは、債務者が返済できなくなった場合に、担保となっている不動産を処分して債権を回収できる権利のことです。
金融機関は、この抵当権によってリスクを下げることができるため、無担保ローンよりも低金利で大きな金額を融資することが可能になります。ただし、返済ができなくなると不動産を失うリスクがあるため、返済計画は慎重に立てる必要があります。
融資金額は、一般的に不動産評価額の50〜80%程度となり、金融機関によって掛け目(担保評価に対する融資可能額の比率)が異なります。返済期間も長期間設定できることが多く、事業資金としての柔軟性が高いといえます。
不動産担保ローンのメリット
不動産担保ローンには、事業資金調達において多くのメリットがあります。まず、担保を提供することで信用力が補完されるため、審査のハードルが比較的低くなります。
また、融資額が大きいこともメリットの一つです。無担保ローンでは、数百万円〜数千万円程度が上限となることが多いのに対し、不動産担保ローンでは担保価値に応じて数千万円〜数億円の融資も可能です。
さらに、金利が低いことも大きな魅力です。担保があることでリスクが低減されるため、低金利での借入が可能になります。長期間の返済設定ができるため、月々の返済負担も抑えられます。
不動産担保ローンの注意点
一方で、不動産担保ローンには注意点もあります。最大の注意点は、返済できなくなった場合に担保不動産を失う可能性があることです。事業用の不動産を担保にしている場合、事業の継続にも影響が出る可能性があります。
また、審査や融資実行までの期間が長いことにも注意しましょう。担保評価や法的手続きなどが必要なため、申込みから融資実行まで1週間〜1か月程度かかることが一般的です。緊急の資金需要には、対応しにくい面があります。
さらに、担保設定にかかる諸費用(登記費用など)が発生することも考慮する必要があります。諸費用も含めた総費用で判断することが重要です。
不動産担保ローンの審査基準
不動産担保ローンの審査では、主に不動産の価値と申込者の信用力が評価されます。
不動産の価値
不動産担保ローンの審査において最も重視されるのが、担保となる不動産の価値です。金融機関は不動産の価値を独自に評価し、その評価額に基づいて融資可能額を決定します。
土地の評価では、路線価や公示価格などの公的な評価額を基準としつつ、立地条件や利便性も考慮されます。特に、駅からの距離や主要道路へのアクセス、周辺環境などが重要な要素となります。
建物の評価では、築年数や構造が大きく影響します。鉄筋コンクリート造や鉄骨造は木造よりも高く評価される傾向があり、建物が法律に抵触しないかという点も大切になります。違法建築物や建築基準法に適合していない建物は、評価が大幅に下がることがあります。
また、不動産の市場性や流動性も考慮されます。売却しやすい物件は高く評価される傾向があり、逆に特殊な用途の不動産や立地条件が悪い不動産は、評価が低くなりがちです。
申込者の信用力
担保不動産の価値だけでなく、申込者自身の信用力も重要な審査基準となります。個人事業主や法人の場合、事業の収益性や安定性が評価されます。
直近の決算書や確定申告書が審査の重要な資料となり、特に直近2〜3年間の業績推移が注目されます。安定した利益を出している企業や、成長傾向にある企業は有利に評価されます。
返済能力も重視される点で、毎月の返済額に対して十分な収入があるかが審査されます。一般的に、返済負担率は年間収入の30%以下が望ましいとされています。
さらに、信用情報機関に登録されている情報も確認されます。過去の延滞や債務整理の記録、多額の借入残高がある場合は、審査に悪影響を及ぼす可能性があります。
業種別の審査基準の違い
不動産担保ローンの審査では、業種によっても審査のポイントが異なる場合があります。安定性の高い業種は有利に、景気変動の影響を受けやすい業種は慎重に審査される傾向があります。
製造業では、設備投資の内容や技術力、取引先の安定性などが評価されます。設備の老朽化やコスト競争力も判断要素となります。
小売業やサービス業では、店舗の立地や集客力、リピート率などが重視されます。また、オンライン戦略や差別化要因も評価のポイントとなります。
不動産業では、保有物件の収益性や空室率、資産価値の変動リスクなどが詳細に審査されます。過剰な借入がある場合は、特に慎重な審査が行われることがあります。
不動産担保ローンの審査の流れ
不動産担保ローンを申し込んでから融資実行までの一般的な流れを解説します。各ステップを理解してから、資金調達に踏み切りましょう。
事前相談から申込みまで
不動産担保ローンの利用を検討する際は、まず金融機関との事前相談から始めるのが一般的です。この段階で、おおよその融資可能額や金利、必要書類などの情報を得ることができます。
事前相談では、担保として提供する不動産の概要や事業の状況について説明します。この時点で、不動産の登記簿謄本や収支状況がわかる資料があると、より具体的な相談が可能です。
正式な申込みは、金融機関指定の申込書に必要事項を記入し、必要書類を添えて提出します。申込書には、希望融資額や返済期間、資金使途などを明記します。
必要書類の提出
不動産担保ローンの申込みには、一般的に以下のような書類が必要となります。これらの書類を早めに準備しておくことで、審査がスムーズに進みます。
不動産関連の書類としては、登記簿謄本(全部事項証明書)、公図、建物の図面、固定資産税評価証明書などが必要です。これらは、不動産の基本情報を確認するために使用されます。
事業や収入に関する書類としては、確定申告書や決算書(直近2〜3年分)、納税証明書、事業計画書などが求められます。法人の場合は、会社の登記簿謄本や代表者の身分証明書なども必要です。
また、資金使途を明確にするための見積書や契約書なども、用途に応じて提出を求められることがあります。事前に必要書類をリストアップし、漏れなく準備することが重要です。
担保不動産の評価
申込み後、金融機関は担保となる不動産の評価を行います。多くの場合、金融機関の担当者や提携の不動産鑑定士が、実際に物件を訪問して調査します。
不動産評価では、立地条件や建物の状態、周辺環境、将来性などが総合的に判断されます。この評価結果によって融資可能額が決まるため、物件の良い点をアピールすることも大切です。
評価額は、市場価格よりも低めに設定されることが一般的で、土地は公示価格や路線価の70〜80%程度、建物は建築費から減価償却を考慮した金額で評価されることが多いものです。
審査から融資決定まで
不動産評価と並行して、申込者の信用力や返済能力の審査が行われます。金融機関は、提出された財務資料や事業計画、信用情報などを精査します。
審査の結果、融資可能と判断されると融資条件(融資額、金利、返済期間など)が提示されます。ここで条件に納得できれば、ローン契約の締結へと進むことになります。
審査期間は金融機関によって異なりますが、一般的には申込みから融資決定まで2週間〜1か月程度かかります。担保評価や法的手続きに時間を要するため、無担保ローンよりも時間がかかる点に注意が必要です。
契約から融資実行まで
融資条件に合意した後は、金銭消費貸借契約の締結と抵当権設定の手続きに入ります。これらの法的手続きは、多くの場合、司法書士が代行します。
抵当権設定登記が完了すると、いよいよ融資が実行されます。融資金は指定した口座に入金され、これで一連の手続きは完了です。
なお、抵当権設定には、登録免許税や司法書士報酬などの費用がかかります。融資額の0.4%程度の登録免許税と、数万円の司法書士報酬が実費として別途必要になることを覚えておきましょう。
不動産担保ローンの審査に通過するコツ
不動産担保ローンの審査に通過するためには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。
担保不動産の価値を高める
担保不動産の評価額を高めることは、より多くの融資を受けるために重要です。まず、不動産の現状を正確に把握し、必要に応じて価値を高める対策を講じることが有効です。
建物については、申込み前に、必要な修繕やメンテナンスを行っておくことで評価が上がることがあります。特に、外観や構造に関わる部分は、見栄えや安全性を向上させることが重要です。
土地については、境界確定や接道状況の改善、権利関係の整理などが評価に影響します。法的な問題がある場合は、事前に解決しておくことが望ましいでしょう。
また、不動産の評価に関する資料(リフォーム履歴や設備の保証書など)を整理しておくことも有効です。金融機関の担当者に不動産の価値を適切に伝えることができれば、評価額の向上につながる可能性があります。
信用力を高める
不動産の価値だけでなく、申込者自身の信用力も重要な審査ポイントです。特に、事業の収益性や安定性、将来性をアピールすることが大切です。
決算書や確定申告書は、できるだけ健全な財務状況を示すものにしておくことが望ましいものです。特に、直近の業績が良好であることは、返済能力の証明になります。
既存の借入金がある場合は、返済計画を見直し、可能であれば一部を返済して借入残高を減らすことも検討しましょう。多重債務や返済遅延がないことも、審査では重要なポイントとなります。
また、経営計画書や資金使途計画書を具体的に作成することも有効です。融資金をどのように活用し、どのように返済していくかという具体的なビジョンを示すことで、金融機関の信頼を得やすくなります。
内容が明確な事業計画書を作成する
不動産担保ローンの申込みでは、資金の使い道とそれによる事業効果を明確に示す事業計画書が重要になります。説得力のある事業計画書を作成するためのポイントを解説します。
まず、計画の概要、市場分析、実施内容、資金計画、収支予測という基本構成を押さえましょう。特に融資金の使途と、それによって得られる具体的な事業効果を明確に記載することが重要です。
数値目標は具体的かつ現実的なものにし、その根拠も示すとより説得力が増します。過去のデータや業界標準などを参照しながら、達成可能な計画を立てることがポイントです。
また、リスク分析とその対応策も盛り込むことで、計画の実現性が高まります。想定されるリスクを洗い出し、それぞれに対する対応策を明記することで、金融機関に安心感を与えることができます。
申込み前の事前準備
不動産担保ローンの審査をスムーズに進めるためには、申込み前の準備が非常に重要です。計画的に進めることで、審査の通過確率を高めることができます。
まず、複数の金融機関に事前相談を行い、条件を比較検討することをおすすめします。金融機関によって融資姿勢や得意分野が異なるため、自社の状況に合った金融機関を選ぶことが重要です。
必要書類は早めに準備し、不備がないかをチェックしておきましょう。特に、登記関係の書類や決算書などは、取得に時間がかかる場合があるため、余裕をもって準備することが大切です。
また、担当者とのコミュニケーションを大切にしましょう。質問には誠実に答え、必要な情報は積極的に提供することで、信頼関係を構築することができます。担当者が社内で融資を推薦する立場になることも多いため、良好な関係を築くことが審査通過につながります。
不動産担保ローンに関してよくある質問
不動産担保ローンについて、経営者からよく寄せられる疑問について回答します。
二番抵当での融資は可能か
不動産にすでに抵当権が設定されている場合でも、二番抵当として追加で融資を受けることは可能です。ただし、一番抵当の融資残高や不動産の評価額によって、融資可能かどうかが判断されます。
二番抵当の場合、一番抵当権者よりも返済順位が劣後するため、金利が高めに設定されることが一般的です。また、融資額も一番抵当と合わせて不動産評価額の一定割合(通常は70〜80%)以内に抑えられます。
審査では、一番抵当の返済状況が特に重視されます。返済が滞りなく行われていることを証明する資料を用意することが重要です。また、一番抵当と二番抵当を合わせた総返済額が、収入に対して適切な割合かどうかも判断基準となります。
法人と個人、どちらで申し込むべきか
不動産担保ローンを法人で申し込むか、個人で申し込むかは、不動産の所有者や資金使途、税務上の観点などを考慮して決める必要があります。
不動産の所有者が法人であれば法人での申込み、個人所有であれば個人での申込みが基本となります。ただし、個人所有の不動産を法人の事業資金の担保とする場合は、経営者個人の連帯保証が必要になることが一般的です。
税務上の観点では、法人で借り入れた場合は利息が経費として計上でき、個人で借り入れた場合は事業用の借入であれば必要経費になります。また、資金使途によっても有利な借入方法が変わってくるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
なお、法人の信用力が低い場合は、経営者個人の信用力や担保力が高ければ個人での申込みが有利になることもあります。逆に、個人の信用情報に問題がある場合は、法人での申込みを検討する価値があります。
融資実行までの期間
不動産担保ローンは、申込みから融資実行までに一定の期間がかかります。一般的な流れと期間について確認しておきましょう。
申込みから審査結果が出るまでは、通常1週間〜2週間程度かかります。ただし、申込み内容や金融機関の混雑状況によっては、さらに時間がかかる場合もあります。
審査通過後、契約手続きや抵当権設定登記などの法的手続きに、1週間〜2週間程度かかります。特に、抵当権設定登記は法務局の処理状況によって変動するため、余裕をもったスケジュールを組むことが重要です。
つまり、申込みから融資実行まで、合計で2週間〜1か月程度の期間を見込んでおく必要があります。緊急の資金需要がある場合は、この期間を考慮して早めに申込みを行うか、つなぎ融資など他の手段も併せて検討することをおすすめします。
審査に落ちた場合の対応
不動産担保ローンの審査に落ちてしまった場合でも、諦める必要はありません。原因を把握し、適切な対策を講じることで再チャレンジの可能性が高まります。
まず、審査に落ちた理由を金融機関に確認することが重要です。担保不動産の評価額が低かったのか、信用力に問題があったのか、原因を明確にすることが対策の第一歩となります。
担保不動産の評価が原因の場合は、別の不動産を担保に提供する、または追加担保を検討することが有効です。信用力が原因の場合は、財務内容の改善や事業計画の見直しを行いましょう。
また、別の金融機関への申込みも検討価値があります。金融機関によって審査基準や融資姿勢が異なるため、他の金融機関では審査通過の可能性があります。特に、地域金融機関や信用金庫など、地元企業に理解のある金融機関を検討するとよいでしょう。
まとめ
不動産担保ローンは、不動産を担保に提供することで、比較的大きな金額を低金利で借りられる資金調達方法です。審査では、担保不動産の価値と申込者の信用力が主に評価されます。
審査に通過するためには、担保不動産の価値を高める工夫や信用力の向上に努めることが重要です。また、具体的な事業計画や返済計画を提示することで、金融機関の信頼を得ることができます。申込みから融資実行までには一定の期間がかかるため、余裕をもったスケジュールで進めることが大切です。
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不動産担保ローンは、大きな金額を調達できるメリットがありますが、担保設定の手間や審査に時間がかかるのがデメリットです。すぐに資金が必要な場合や、担保となる不動産を持っていない場合でも、HTファイナンスのビジネスローンであれば無担保無保証でスピーディーに資金調達が可能です。
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