2025.06.05
融資における無担保無保証とは?メリット・デメリットや審査におけるポイントまで紹介
事業を拡大したい、新たなプロジェクトに取り組みたいと考えたとき、多くの経営者が直面するのが資金調達の問題です。融資を検討する際、担保や保証人の提供が難しいケースも少なくありません。特に、創業間もない事業者や個人事業主にとって、担保となる資産や保証人を確保することは大きな壁となります。
そこで注目されているのが、無担保無保証の融資です。この融資方法は、その名の通り担保や第三者の保証人を必要とせず、事業の将来性や返済能力を中心に審査が行われます。資産がなくても、事業計画がしっかりしていれば融資を受けられる可能性があり、多くの事業者にとって心強い選択肢となっています。
この記事では、無担保無保証融資の基本的な仕組みから、具体的なメリット・デメリット、審査でのポイントまで詳しく解説します。日本政策金融公庫の制度や申請に必要な準備など、実践的な情報も盛り込みました。無担保無保証での融資を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
無担保無保証融資とは
融資を検討する際に、無担保無保証という言葉を耳にすることがあるかもしれません。
無担保無保証とは
無担保無保証融資とは、文字通り、担保や第三者の保証人を必要としない融資形態です。従来の融資では、不動産などの担保や保証人の存在が返済の担保として求められてきました。しかし、無担保無保証融資では、物的・人的な担保や保証なしで融資を受けられる点が最大の特徴です。
返済ができなくなった場合でも、担保の差し押さえや保証人への請求が発生しないため、経営者個人の資産や第三者への影響を最小限に抑えることができます。ただし、法人の場合は完全な無保証とならず、代表者が連帯保証人となるケースも多いことに注意が必要です。
金融機関にとっては貸し倒れリスクが高まるため、事業計画の実現可能性や返済能力についての審査が厳格に行われます。また、リスクに応じて金利が通常より高く設定される傾向があります。
一般的な融資との違い
無担保無保証融資と一般的な融資(担保・保証人付き融資)には、いくつかの重要な違いがあります。まず審査基準において、一般的な融資では、担保価値や保証人の信用力が大きく評価されますが、無担保無保証融資では事業の将来性や経営者の能力、返済計画の堅実さが重視されます。
融資限度額にも差があり、無担保無保証融資は、融資金額の上限が設けられていることが多いものです。例えば、日本政策金融公庫の創業融資では最大7,200万円、マル経融資では2,000万円などの上限があります。これに対し、担保付き融資では、担保価値に応じてより高額の融資を受けられる可能性があります。
金利面でも違いがあります。無担保無保証融資は金融機関にとってリスクが高いため、担保付き融資と比較して、金利が1~3%程度高く設定されるのが一般的です。また、審査期間も無担保無保証融資の方が厳密な事業評価が必要なため、やや長くなる傾向があります。
無担保無保証で融資を受けるメリット
無担保無保証の融資には、融資を受ける事業者にとって多くのメリットがあります。具体的に、どのような点が有利になるのか見ていきましょう。
担保不要で融資を受けられる
無担保無保証融資の最大のメリットは、不動産などの担保資産を持っていなくても融資を受けられる点です。特に、創業間もない企業や個人事業主にとって、担保となる資産を持たないまま事業に必要な資金調達ができるのは大きな魅力です。
通常の融資では、土地や建物、機械設備などを担保として提供する必要がありますが、これらの資産を持たない起業家にとっては、大きな障壁となっていました。無担保融資では、こうした物的担保の壁を越えて、資金調達の道が開かれます。
また、担保評価や登記などの手続きが不要となるため、融資実行までの時間短縮にもつながります。担保設定に伴う登記費用や評価費用も発生しないため、融資に関わる諸経費を抑えられるメリットもあります。
手続きが簡略化される
無担保無保証融資では、担保や保証人に関する複雑な手続きが不要になるため、融資申請の手続きが簡略化されます。申請から融資実行までの期間を短縮できることが大きなメリットです。
担保設定のための不動産鑑定や登記手続き、保証人確保のための交渉や説明など、通常の融資では多くの時間と労力を要する作業が省略されます。特に事業機会を逃したくない場合や、緊急に資金が必要な場合に、この迅速性は非常に重要です。
また、手続きが簡素になることで心理的な負担も軽くなります。複雑な書類準備や関係者との調整に時間を取られることなく、本業に集中できる環境を整えられます。オンライン申請に対応している金融機関も増えており、さらに利便性が高まっています。
リスクが限定的である
無担保無保証融資では、返済不能になった場合でも失うものが限定的です。個人資産や第三者への影響を最小限に抑えられる点が、大きな安心感をもたらします。
通常の融資では、返済が滞ると担保物件が差し押さえられたり、保証人に返済義務が移ったりします。これにより、経営者の自宅や保証人となった家族・知人に大きな影響が及ぶ可能性があります。無担保無保証融資では、こうしたリスクを避けられるため、事業に失敗しても再チャレンジがしやすくなります。
特に、新規事業や革新的なビジネスモデルなど、不確実性の高いプロジェクトに挑戦する際には、このリスク限定効果は非常に重要です。ただし、法人の場合は代表者が連帯保証人となるケースが多いため、完全にリスクフリーではないことに注意が必要です。
無担保無保証で融資を受けるデメリット
無担保無保証融資には多くのメリットがある一方で、いくつかの重要なデメリットも存在します。融資選択の際には、これらの制約についても十分理解しておく必要があります。
厳しい審査基準
無担保無保証融資最大のデメリットは、審査基準が一般的な融資と比べて厳しい点です。担保や保証人がない分、事業の安定性や収益性に対する審査が格段に厳格になります。
金融機関にとって、無担保無保証融資は貸し倒れリスクが高いため、事業計画の実現可能性や市場分析、過去の業績、経営者の経験や能力など、様々な角度から詳細に審査されます。特に、創業間もない企業や業績が不安定な企業は、審査通過のハードルが高くなります。
また、個人の信用情報も重要な判断材料となります。過去に返済遅延や債務整理などの金融事故があると、融資が困難になる可能性が高まります。無担保無保証融資を検討する際は、こうした厳しい審査基準を念頭に、万全の準備を整えることが重要です。
金利が高めに設定される
無担保無保証融資は、金融機関にとってリスクの高い融資形態であるため、金利が通常より高く設定される傾向があります。これは、融資を受ける側にとって大きなデメリットとなります。
一般的に、無担保無保証融資の金利は、担保付き融資と比較して1~3%程度高くなることが多いものです。例えば、担保付き融資で金利2%程度のところ、無担保無保証の場合は4~5%になることもあります。長期の融資や高額の融資では、この金利差が返済総額に大きく影響します。
公的融資制度では、比較的低金利で融資を受けられる場合もありますが、民間金融機関の場合は、特にこの傾向が顕著です。融資を検討する際は、金利負担を考慮した資金計画を立てることが重要です。返済シミュレーションを行い、事業収益から無理なく返済できるかどうかを事前に確認しておきましょう。
融資額が制限される
無担保無保証融資では、一般的に融資額に上限が設けられており、大規模な資金調達には不向きである点も大きなデメリットです。
例えば、日本政策金融公庫の新規開業資金では最大7,200万円、マル経融資では2,000万円などの上限があります。これに対し、担保付き融資では担保価値に応じて、より高額の融資を受けられる可能性があります。工場建設や大型設備投資など、多額の資金が必要なプロジェクトでは、無担保無保証融資だけでは資金が不足する場合があります。
また、創業間もない企業や業績が不安定な企業では、審査の結果として申請額より低い融資額しか認められないこともあります。事業計画を立てる際には、必要資金と調達可能資金のギャップを考慮し、複数の資金調達手段を組み合わせるなどの戦略が必要になるでしょう。
無担保無保証融資の審査で重視されるポイント
無担保無保証融資を受けるためには、審査に通過する必要があります。金融機関がどのような点を重視して審査を行うのか、主なポイントを理解しておきましょう。
信用情報
無担保無保証融資では、担保や保証人に頼れない分、審査では申込者自身の信用情報が非常に重要なポイントとなります。過去の返済履歴に問題がないことが、融資を受けるための前提です。
金融機関は、個人信用情報機関(CIC、JICC、全銀協など)のデータベースで、申込者の過去の借入状況や返済履歴を確認します。過去の延滞や債務整理、自己破産などの金融事故は、審査に大きくマイナスとなります。これらの履歴は5~10年程度保存されるため、長期間にわたって影響します。
また、現在の借入状況も重要な判断材料です。複数の借入がある場合や借入総額が収入に対して高すぎる場合は、追加の融資が難しくなる可能性があります。借入残高を適切に管理し、新規融資を申し込む前には、可能な限り既存の債務を減らしておくことが望ましいでしょう。
※信用情報機関について詳しくはこちらの記事をご覧ください。 『CICやJICCやKSCの違いは?信用情報機関の種類や開示方法まで徹底解説!』
事業計画や返済計画
無担保無保証融資では、具体的かつ実現可能な事業計画と返済計画の提出が必須です。客観的な数値に基づいた論理的な計画が、審査の成否を大きく左右します。
事業計画書では、市場分析や競合調査、想定される売上や費用の根拠、マーケティング戦略などを具体的に示す必要があります。特に売上予測については、楽観的すぎる数字ではなく、過去の実績や業界標準に基づいた現実的な数値を提示することが重要です。
返済計画においては、事業から生まれるキャッシュフローで、無理なく返済できることを示す必要があります。月々の返済額が収益の何パーセントになるかを明示し、経営に支障をきたさない返済計画を立てることが求められます。返済余力を示すために、最悪のシナリオを想定した場合でも返済可能であることを説明できると、審査に有利に働くでしょう。
自己資金の準備
無担保無保証融資を受ける際、特に創業時の融資では、総事業費の約3割程度の自己資金を用意していることが重視されます。
金融機関にとって、自己資金の準備は、事業に対する経営者の本気度を示す重要な指標です。自分自身の資金をリスクにさらす覚悟があることは、事業への強いコミットメントの表れと評価されます。また、自己資金比率が高いほど、融資の返済確実性も高まると判断されます。
自己資金は、単に預金通帳の残高だけでなく、事業のために既に支出した費用(事務所の敷金、設備購入費など)も含まれます。資金使途を明確に示せる領収書などの証拠書類を保管しておくことが重要です。自己資金が不足している場合は、親族からの出資や贈与なども検討できますが、その資金の出所と関係性を明確に説明できることが必要です。
経営者の能力
無担保無保証融資では、事業を推進する経営者自身の能力や経験が重要な審査ポイントとなります。特に、業界経験や関連するスキルの有無が審査の判断材料となります。
創業融資を申請する場合、これから始める事業と関連する業界での勤務経験があると、審査で高評価を得やすくなります。例えば飲食店を開業する場合、飲食業界での経験があれば業界知識や顧客ニーズを理解していると判断され、事業成功の可能性が高く評価されます。
また、経営者としての資質や専門的なスキル、資格なども重要です。事業計画の中で自身の強みをアピールし、なぜその事業を成功させられるのかを具体的に説明することが求められます。実績や経験が不足している場合は、共同経営者や顧問として経験豊富な人材を迎え入れる計画を示すことも有効です。
無担保無保証融資の注意点
無担保無保証融資を活用する際には、いくつかの重要な注意点があります。これらを理解し、適切に対応することで、融資を最大限に活用できるでしょう。
法人における代表者保証が求められることがある
法人向けの融資では、完全な無保証となるケースは限られています。多くの場合、代表者の連帯保証が求められることを理解しておく必要があります。
一般的に無保証といわれる融資でも、実際には法人代表者の連帯保証が条件となっていることが多いものです。これは、第三者の保証人は不要という意味であり、代表者自身は保証人となるケースがほとんどです。代表者保証があると、事業が失敗した場合に法人と代表者個人の両方に返済義務が発生するため、個人資産にも影響が及ぶ可能性があります。
ただし、近年は経営者保証に依存しない融資も徐々に増えてきています。例えば、2014年に公表された「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、一定の条件を満たす場合には、経営者保証が不要となる融資も存在します。法人と個人の資産・経理が明確に分離されている、財務基盤が強固である、十分な情報開示がなされているなどの条件を満たす必要があります。融資契約締結前に、代表者保証の有無を必ず確認し、その影響を理解しておきましょう。
事業計画の達成状況が確認されることがある
無担保無保証融資では、事業計画の実現可能性が重視されるため、融資後も計画の達成状況が重要になります。計画と実績の乖離が大きいと、追加融資や借り換えの際に影響が出る可能性があります。
融資実行後も、提出した事業計画と実績を定期的に比較し、大きな差異が生じている場合は原因分析を行いましょう。特に、売上や利益が計画を下回っている場合は、改善策を早急に検討し実行することが重要です。金融機関に対しても、計画と実績の差異について誠実に説明し、改善のための取り組みを伝えることで信頼関係を維持できます。
多くの金融機関では融資後もモニタリングを行っており、事業の進捗状況を確認します。定期的な面談や報告を通じて、事業の状況を共有することが大切です。計画通りに進んでいない場合でも、隠さずに早めに相談することで、返済条件の見直しなど柔軟な対応を引き出せる可能性があります。逆に報告を怠ったり、実態を隠したりすると信頼関係が損なわれ、将来の資金調達に悪影響を及ぼすことになります。
早期返済で手数料が発生することがある
事業が順調に進み、予定より早く返済したいと考える場合があります。しかし、早期返済には手数料が発生することがあるため、事前に確認が必要です。
固定金利の融資では、融資期間や残高に応じた繰上返済手数料が設定されていることが一般的です。金融機関にとっては、予定通りの期間で利息を得ることを想定しているため、早期返済によって得られる利息が減少すると、その補填として手数料を徴収します。手数料は、返済残高の1~3%程度に設定されていることが多く、返済額が大きいほど手数料の絶対額も大きくなります。
早期返済を検討する際は、手数料と利息節約のバランスを考慮する必要があります。例えば、残りの返済期間が短く手数料が高い場合は、予定通り返済を続けた方が、総支払額が少なくなることもあります。融資契約時に早期返済の条件について確認し、融資後に早期返済を検討する際は、具体的なシミュレーションを金融機関に依頼して判断するとよいでしょう。また、一部の公的融資制度では、早期返済手数料が不要または低く設定されていることもあるため、契約内容を確認することが重要です。
まとめ
無担保無保証融資は、担保や第三者の保証人を必要とせず、事業の将来性や返済能力を中心に審査される融資形態です。資産がなくても事業計画次第で融資を受けられる点や、手続きの簡略化、経済的リスクの限定といったメリットがあります。一方で審査基準が厳しく、金利が高めになり、融資額に制限があるといったデメリットも存在します。
自社の事業規模やリスク許容度、必要資金額を考慮して、無担保無保証融資と担保付き融資を適切に選択することが重要です。融資申請の際は、信用情報の管理や具体的な事業計画書の作成、必要書類の準備を入念に行い、金融機関との良好な関係構築を心がけましょう。日本政策金融公庫などの公的融資制度も積極的に活用し、事業の成長に必要な資金を効果的に調達していくことが、経営を成功させる鍵となります。
最短即日の無担保無保証融資!HTファイナンスのビジネスローン
事業資金の調達に悩んでいるものの、担保や保証人を用意するのが難しい経営者の方々にとって、無担保無保証融資は心強い味方となります。特に、迅速な資金調達が必要な場合は、審査のスピードと柔軟性が重要なポイントです。
HTファイナンスは、東大法学部出身で三菱銀行での実務経験を持つ三坂大作が統括責任者として、企業の資金調達と経営戦略の支援に取り組んでいます。
銀行実務とコンサルティングで培った経験を活かし、無担保無保証の融資やファクタリング、財務改善など、お客様の経営課題に合わせた最適な解決策をご提案しています。また、スピーディーで柔軟な審査体制により、成長に必要な資金を迅速にお届けできます。
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