2025.06.27
資金繰り改善に「部門間の連携とバランス」が欠かせないワケ
企業が資金繰りを改善するうえで、各部門の活動がどのように影響を与えているのか、意外と見落とされているケースがあります。複数の部署がそれぞれ独立して動くと、コスト管理や売上計上のタイミングがバラバラになり、結果としてキャッシュフローを圧迫してしまう可能性が高くなります。
また、部門間の連携が不足すると、資金調達の必要性や投資の必要性が正しく共有されないまま、不要な支出や在庫の過剰が発生することも珍しくありません。こうした無駄を削減し、全体最適に導くには、まず各部門がどのように資金繰りに関係しているかを把握しておく必要があります。
本記事では、部門連携が資金繰りに与える影響と、改善に向けた重要な視点をわかりやすく解説します。各部門がどのようにキャッシュフローに貢献できるのかを見直し、経営全体のバランスを整えるヒントをぜひつかんでいただければと思います。
各部門の活動が資金繰りに与える影響
購買から製造、営業、そして経理まで、部門の取り組みが資金繰りにどのようにつながるかを整理します。
資金繰りと聞くと、まずは経理部門が主体となるイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、実際には購買や製造、営業が行う日々の取り組みが、最終的なキャッシュフローに大きく影響します。コストが適切にコントロールされていなければ、余計な仕入れや在庫に会社の資金が固定化され、支払いサイクルに圧迫を生む原因となります。
さらに、営業の受注状況や販売条件次第で、実際に現金を回収できるタイミングが大きく左右されます。売上が伸びているように見えても資金がなかなか回収できない場合、運転資金が不足し、急いで資金調達を検討せざるを得ないケースも出てきます。
こうした部門ごとの動きが複合的に絡むことで、経営の安定を損なうリスクが高まります。だからこそ、全体を俯瞰できる仕組みづくりや情報共有が欠かせません。
購買部門の購買活動
購買活動は、調達コストだけでなく在庫量にも直接影響を与えます。必要以上に大量発注をすると、その分だけ仕入在庫が増え、支払い債務も増加します。
さらに在庫の回転率が低下すると、資金が商品の形で長期間滞留し、短期的なキャッシュフローを圧迫する原因となります。結果として、手元資金のショートを回避するために借入や出資などの資金調達を急がなければならなくなる場合もあります。
購買部門はコスト削減だけでなく、必要量を見極めて計画的に発注し、適正な在庫を維持することで資金繰りへのリスクを抑制する役割を担っています。
製造部門の生産活動
製造部門では、効率のよい生産計画や在庫コントロールが資金繰りを左右します。作りすぎにも作り足りないにもリスクがあり、在庫の余剰や販売機会損失を引き起こす恐れがあります。
特に仕掛品や原材料の在庫が増えすぎると、運転資金の固定化期間が長期化し、現金の流動性が低下します。少しでも生産計画にズレがあると、納期や販売計画も変わり、結果として資金回収サイクルが伸びるのです。
そのため製造部門と購買部門、営業部門が常に情報を共有し、需要に応じた最適な生産量を設定する連携体制が重要となります。
営業部門の営業活動
営業活動は売上を伸ばす原動力ですが、同時に取引先との交渉や販売条件が会社のキャッシュフローに大きく影響します。掛売りが中心になる場合、実際の入金までに時間がかかるため、短期的には資金繰りに苦しむ状況が起こりやすくなります。
一方、早期入金の仕組みや前受金を導入できれば、対外的な資金調達に頼らなくても社内資金で十分に賄えるケースも増えます。これには、取引先の信用力や契約条件の適切な設定が欠かせません。
営業と他部門が緊密に連携し、適切な販売スケジュールと回収条件を設定することで、無理なく資金を回していくことが可能になります。
経理部門の資金繰り
経理部門は各部門から上がってくるデータを集約し、出入金管理やキャッシュフロー計算書、資金繰り表などを作成できます。これにより、どの時期にどれだけの資金が必要か、どれだけの収入が見込めるのかが明確になります。
しかし、経理が作成した書類だけでは、具体的な在庫状況や営業活動の進捗をリアルタイムで把握するのは難しい場合があります。そこで他部門と連携し情報を共有し合うことで、早めにリスク共有し、必要に応じて資金調達も含めた対策を練ることが可能です。
経理部門が各部門をつなぎ、経営者に正確でタイムリーなデータを提示することで、迅速な経営判断につなげる役割を果たします。
資金繰り改善に欠かせない視点
資金繰り改善には、短期的な支払い能力だけでなく、将来的な投資や設備資金の回収までを見据えた長期的な視点が求められます。日々のオペレーションに追われていると、つい長期的計画が後手に回りやすい点には注意が必要です。
合わせて、適正なリスク管理が欠かせません。例えば、取引先が急に支払いを延期したり、突然の市場変動で在庫が滞留したりするリスクを想定し、早めに資金調達の選択肢を模索することも重要です。
これらの視点を全社レベルで共有することで、生産から営業まで一貫した計画を立案し、経営資源をムダなく活用する体制を整えられます。
製造業を例に考える
実際に製造業ではどのように部門連携が資金繰りに影響するのか、主な例をご紹介します。
製造業では、原材料から製品に至るまでの一連の工程で資金が動きます。購買が資材を仕入れる段階で発生する費用、製造段階でかかる人件費や運営コスト、完成品を販売してから入金があるまでの期間など、資金の流れが長くなるのが特徴です。
そのため、適切な部門連携を行わなければ、どこかのタイミングでキャッシュフローが途切れ、追加の資金調達が必要になる場面も頻発します。特に中小企業の場合、財務基盤が脆弱なこともあり、余裕のない借入を重ねると返済負担に苦しむリスクが高まります。
ここで重要なのは、需要予測と生産計画の精度を高め、在庫リスクと資金負担を最小化することです。購買、製造、営業が緊密に情報共有することで、最適なキャッシュフローが構築できる可能性が高まります。
購買部門の影響
製造業では原材料や部品の大量発注が資金を固定化する大きな要因となります。仕入れ先との価格交渉も重要ですが、単価ばかりに目を向けすぎると、多量の在庫を抱えて身動きが取れなくなることがあります。
例えば、安く単価を抑えられる代わりに一括で大量仕入れをすれば、確かにコストは下がります。しかし、その分だけ仕入支払いが早期に必要となり、運転資金を圧迫する可能性があります。
購買部門は価格と発注ロット数のバランス、納期を含めたキャッシュフローへの影響を総合的に見極めることが大切です。
連携を考えるポイント
もし、購買部門と経理部門で連携が取れていなければ、
- 手元資金を考慮せず、過剰な仕入を行ってしまう
- 資金繰りの悪影響を考慮せず、支払サイトが短い契約を結んでしまう
- 経理部門との情報伝達がうまくいかず、資金調達に支障をきたす
といった障害が起こります。 連携がうまくいけば、このような問題が起こりにくくなります。ただし、支払サイトの長期化は取引先の負担となり調整が難しいため、購買部門は仕入のコントロールと在庫管理がより重要といえるでしょう。 「過剰な在庫を抱えている」ということは、「活用できたはずの現金を在庫に置き換え、販売によってお金に変えることもできず、ただ資産を滞留させている」ということにほかなりません。 購買部門が仕入・在庫管理の適正化に努めると、無駄な仕入が減り、出ていくお金が少なくなり、経理部門も資金繰りがラクになります。
製造部門の影響
製造現場が計画通りに動かない場合、急なラインストップや不良品の発生で追加コストが発生します。これが繰り返されると、予想外の運転資金を捻出しなければならず、経営上の負担が増大します。
また、生産量を適正に保ちながら品質を高く維持する仕組みを作ることも重要です。過剰生産は在庫として資金を寝かせ、長期保管で品質低下や廃棄リスクを招きます。
製造部門は定期的に需要見込と実際の販売状況を確認し、購買や営業との調整を図ることで、無駄な資金流出を抑える役割を担います。
連携を考えるポイント
製造部門では、生産活動に伴う製造経費の支払いによって資金繰りに影響を与えます。このとき、経理部門との連携以上に重要なのが、購買部門・営業部門との連携です。 製造部門・営業部門・購買部門の連携がうまくいかなければ、
営業部門の販売ペースと製造部門の生産ペースが合わず、需要に対応できず収益機会を損なう、または過剰に生産するといった問題が起こる
→製造部門が過剰に生産した場合、購買部門の仕入も過剰とならざるを得ない
⇒仕入れ費用の支払いが大きくなり、経理部門の資金繰りを圧迫する
といった問題を引き起こします。この問題を解消するためにも、部門間での連携が欠かせません。 もちろん、製造自体の改善を考えることも大切です。例えば、
- 業務改善によって原材料の使用量が減る→購買部門の仕入が減る→経理部門の資金繰りがラクになる
- 業務改善によって生産効率がアップする→製造に伴う労務コストが削減される→経理部門の資金繰りがラクになる
- 不良品の発生率が減る→購買部門の仕入が削減される→経理部門の資金繰りがラクになる
- 原価率の高い製品の製造を止めて原価率の低い製品の製造に注力する→利益率が高まり現金が増える→経理部門の資金繰りがラクになる
といった流れで資金繰り改善が可能です。
営業部門の影響
営業部門では、製品を販売します。購買部門と同様に発生主義に基づき、製品の納入と同時に売上を計上します。売掛先からの入金は後日となるため、この時点では資金繰りに影響はありません。 支払い期日が近づくと、請求書を作成して売掛先に送付します。期日通りに入金があれば、そこではじめて資金繰りにプラスの影響をもたらします。当然、何らかの理由によって売掛金の回収が遅れると、経理部門はその期間中のやりくりを迫られ、資金繰りに苦労することになります。 売掛先の入金が遅れる「何らかの理由」は複数考えられますが、営業部門と経理部門の連携が取れていなかったことによって起こることが多いです。例えば、
- 営業部門が売上目標達成のために独走し、回収サイトの長い取引条件での契約が増えた。平均的な回収サイトが延びて、売上の入金が遅くなった
- 営業部門が新規取引先の開拓を急ぎすぎたため、信用調査が不十分なままに契約することが増えた。与信限度額の設定も甘く、与信管理も不適切となり、貸し倒れリスクが高まった。その結果、売掛先の経営悪化による支払いの遅延、回収不能が増えた
といったケースが代表的です。 もし、営業部門が経理部門としっかり連携していれば、このような問題は大幅に減ります。経理部門の資金繰りを考慮して営業を進めるならば、営業マンは、
- 資金繰りがラクになるよう、回収サイトの短縮を念頭に販売していこう
- 支払い遅延や回収不能リスクが起こらないように、信用調査をしっかり行った上で販売先を開拓していこう
といった意識を持つことができ、売掛金の回収は自然と早くなっていきます。 もちろん、取引先との関係があるため、回収サイトの短縮には限界があります。それでも、信用調査・与信管理の徹底によって支払い遅延や回収不能を防止すれば、資金繰りには大いにプラスになります。 また、信用調査・与信管理を通して、信用力の高い売掛先を増やすことは、資金調達にも役立ちます。支払期日前の売掛金をファクタリングによって早期資金化する場合、売掛先の信用が高ければ、ファクタリング手数料を抑えて資金調達できるのです。
経理部門を中心に連携を図る
製造業を例に、部門間の連携と資金繰りへの影響を見てきました。購買・製造・販売の各部門が、それぞれ資金繰りと強い結びつきにあることが分かったと思います。 実際、資金繰りが良い会社の内側を見てみると、経営者が資金繰りにしっかりとした見識を持っています。さらに、各部門で働く従業員ひとりひとりが、部門の活動・自分自身の活動が資金繰りに影響を与えていることを自覚しながら働いています。 もちろん、資金繰り改善の出発点は経営者であり、経営者が号令をかけなければ資金繰りは改善できません。しかし、経営者ひとりの取り組みでは、資金繰り改善は不可能です。 とはいえ、まとめ役は必要です。会社が小規模であれば、経営者がまとめ役になることもできますが、会社が大きくなるにつれて各部門の活動が大きくなるため、経営者がまとめるには限界が出てきます。 まとめ役を担うべきは、ずばり経理部門です。経理部門は、各部門からデータを収集・管理することで、各部門の活動がバラバラにならないようにまとめていくことができます。具体的には、
- 購買部門は、仕入日報や買掛金支払報告など、支出に関するデータを経理部門に流す
- 製造部門は、製造日報や在庫報告、出荷記録など、売上に関するデータを経理部門に流す
- 営業部門は、売上日報や売掛金回収報告など、収入に関するデータを経理部門に流す
といった流れを作ります。これにより、経理部門は生のデータを即時に反映しながら、資金繰り表を作成し、資金繰りをコントロールしていきます。 経理部門がまとめ役になれば、問題の早期発見・解決も比較的容易です。資金繰りが悪化した場合、各部門のどこかで異常な活動が行われ、全体の不調和を招いている可能性が高いです。このとき、経理部門が中心となり、各部門に協力を要請できる流れができているため、問題解決もスムーズなのです。
ポイントは「可視化」
各部門の連携を強めていくポイントは「可視化」にあります。各部門の協力によって、資金繰りにどれくらいプラスの影響があったのか、つまり貢献度を可視化するのです。 可視化の取り組みは、各部門が個別にやっているだけ、ということが多いです。営業部門で、営業マンひとりひとりの営業成績をグラフ化し、可視化するといった取り組みです。 これを、経理部門が中心となり、全部門を対象として可視化するのです。 例えば、
- 購買部門に対しては、買掛金の支払サイト延長、原材料の回転期間短縮
- 製造部門に対しては、歩留率向上
- 営業部門に対しては、売掛金の回収サイト短縮、回収率向上
など、資金繰り改善につながる目標を設定し、達成率を可視化します。目標達成に応じてインセンティブを設定し、モチベーションアップを図るのもおすすめです。
まとめ
最後に、部門間の連携がもたらす資金繰り改善の重要性と、その具体的なサポート方法をご紹介します。
部門間の連携による資金繰り改善は、ただコストを抑えたり売上を伸ばしたりするだけでなく、会社全体の経営バランスを整える効果があります。購買、製造、営業、経理がそれぞれの役割を認識し、定期的に情報を共有することで、余分な在庫や無駄な投資を防ぎ、柔軟な資金調達計画を立てやすくなります。
特に日本の中小企業では、日々の運転資金や設備投資において金融機関や投資家のサポートが欠かせません。必要に応じて積極的に外部資源を活用しながら、部門レベルでの情報共有と分析を徹底することが、安定したキャッシュフローを実現する鍵となります。
一方で、どんなに売上が拡大しても、資金繰り管理が疎かになれば経営の継続は難しくなります。逆に言えば、財務基盤がしっかりしていれば、新規事業や設備投資も前向きに進められ、企業の成長を後押しする原動力となります。
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