2025.05.12
根抵当権は普通の抵当権と何が違うの?抹消を行うときの流れ、かかる費用についても紹介
不動産を担保にした融資は、事業資金を調達する方法の一つです。このとき、一般的な抵当権のほかに「根抵当権」が利用されることもあります。抵当権には、「通常の抵当権」と「根抵当権」の二種類があり、それぞれ用途や仕組みが異なります。資金調達の際には、自社の状況に応じて、どちらが適しているかを正しく理解しておくことが重要です。
この記事では、通常の抵当権と根抵当権の違いを比較しながら、根抵当権の具体的な設定方法や抹消手続きの流れ、必要な費用について詳しく解説します。適切な判断につながるよう、それぞれの特徴を確認しておきましょう。
根抵当権とは
根抵当権は、債務者が金融機関から継続的に融資を受ける際に設定される担保権です。不動産を担保として提供することで、債務者は融資を受けやすくなります。
根抵当権の仕組み
根抵当権は、一定の範囲内で継続的に発生する債務を担保するための権利です。たとえば、事業資金の融資を繰り返し受ける場合に活用されます。
根抵当権を設定すると、あらかじめ決めた極度額(担保の上限額)までであれば、原則的に何度でも融資を受けることができます。これにより、事業拡大や運転資金の調達がスムーズになります。
継続的な取引関係がある場合、根抵当権は非常に便利なツールとなります。一度設定すれば、その後の追加融資の際に、新たな担保設定手続きが不要になるからです。
根抵当権の特徴
根抵当権には、以下のような特徴があります。
まず、極度額の設定があります。これは、担保として機能する上限金額を意味し、債権者を保護するために設けられています。極度額は、実際の融資額より高めに設定されることが一般的です。
次に、元本確定という概念があります。根抵当権は将来発生する債務も担保するため、どの時点で債務の範囲を確定させるかを定める仕組みです。これにより、担保する債務の範囲が明確になります。
また、被担保債権の範囲が決められています。一般的には、銀行取引から生じる債務全般を対象としますが、特定の取引に限定することも可能です。
根抵当権と普通抵当権の違い
根抵当権と普通抵当権は、似ているようで大きく異なる担保権です。経営判断をするうえで、この違いを理解することは非常に重要です。
担保する債務の違い
根抵当権と普通抵当権の最も大きな違いは、担保する債務の範囲にあります。
普通抵当権は、特定の一つの債務のみを担保します。たとえば、5,000万円の設備投資ローンを組む際、その特定のローンだけを担保するために設定されます。
一方、根抵当権は、継続的な取引関係から生じる複数の債務を包括的に担保します。事業用の当座貸越や手形割引など、繰り返し発生する可能性のある債務全般をカバーできます。
この違いにより、複数回の融資を予定している経営者にとっては、根抵当権の方が効率的な選択肢となります。
債務完済後の状態の違い
債務を完済した後の状態にも大きな違いがあります。
普通抵当権は、担保している特定の債務が完済されると自動的に消滅します。法的には抹消登記をする必要がありますが、担保権としての効力はなくなります。
これに対し、根抵当権は、債務を一時的に完済しても権利自体は消滅しません。将来また発生する可能性のある債務を担保するために存続します。
このため、追加融資を受ける際に、新たな担保設定手続きが不要となり、手間やコストを削減できるメリットがあります。
手続きや費用の違い
設定手続きや費用面でも違いがあります。
普通抵当権は、一度の設定で一つの債務を担保するため、手続きはシンプルです。しかし、追加の融資を受ける際には、再度設定手続きを行う必要があります。
根抵当権は、初回設定時に極度額や担保範囲を定めます。手続きはやや複雑ですが、一度設定すれば継続的な融資に対応できるため、長期的には効率的です。
費用面では、普通抵当権は融資のたびに設定する必要があるため、複数回の融資を考えている場合は総コストが高くなります。根抵当権は、初期費用はやや高めですが、長期的なコスト削減が可能です。
項目 | 根抵当権 | 普通抵当権 |
---|---|---|
担保する債務 | 継続的取引から生じる複数の債務 | 特定の一つの債務のみ |
債務完済後 | 権利は存続する | 権利は消滅する |
追加融資 | 極度額内なら追加設定不要 | 新たに設定が必要 |
長期的コスト | 複数融資なら効率的 | 融資回数に比例して増加 |
根抵当権を設定する手続き
根抵当権を設定するには、特定の手続きを踏む必要があります。効率的な資金調達のために、その流れを把握しておきましょう。
必要な準備
根抵当権を設定する際には、以下のような書類や情報を準備する必要があります。
不動産の権利証(登記識別情報)は必須です。これは、対象となる不動産の所有権を証明する書類です。紛失している場合は、別途手続きが必要になります。
印鑑証明書も必要になります。根抵当権設定者(通常は不動産所有者)の印鑑証明書を用意します。発行から3か月以内のものが求められることが多くあります。
本人確認書類として、運転免許証やパスポートなどの身分証明書も必要です。
法人の場合は、会社の登記事項証明書(商業登記簿謄本)や代表者事項証明書なども求められます。
これらに加えて、金融機関指定の書類が必要になることもあります。事前に必要書類を確認し、不備のないよう準備することが重要です。
根抵当権設定の流れ
根抵当権の設定は、主に以下のステップで進められます。
まず、金融機関との融資交渉を行います。この段階で、融資条件や根抵当権の極度額などについて協議します。金融機関は物件の評価を行い、担保価値を算定します。
次に、根抵当権設定契約を締結します。契約書には極度額、被担保債権の範囲、債務者や抵当権者の情報などを記載します。
契約締結後、不動産登記所に根抵当権設定登記を申請します。この手続きは通常、司法書士に依頼することが一般的です。登記が完了すると、根抵当権が正式に効力を持ちます。
最後に、融資実行となります。根抵当権設定登記が完了すると、金融機関は融資を実行します。
極度額の設定
根抵当権設定時には、極度額の決定が重要なポイントとなります。
極度額は、根抵当権で担保される債務の上限金額です。将来の追加融資も考慮し、実際の融資予定額よりも余裕をもって設定されることが一般的です。
極度額の設定には、いくつかの注意点があります。極度額が低すぎると、将来的な融資枠が制限されるため、事業拡大の機会を逃す可能性があります。
一方、極度額が高すぎると、登録免許税や手数料が増加する場合があります。費用面も考慮する必要があります。
また、不動産の評価額と極度額のバランスも重要です。適切な極度額の設定は、金融機関との交渉により決まりますが、将来の事業計画も踏まえて検討すべきでしょう。
根抵当権の抹消手続き
事業の終了や借入金の完済により、根抵当権が不要になった場合は抹消手続きを行います。手続きの流れを理解しておくことで、スムーズに処理を進めることができます。
抹消が必要になるケース
根抵当権の抹消が必要になるケースには、いくつかのパターンがあります。
最も一般的なのは、金融機関との取引終了時です。長期にわたる取引が完了し、今後の融資予定がない場合、根抵当権を抹消することになります。
また、不動産の売却を予定している場合も抹消が必要です。根抵当権が付いたままでは、買主が新たな融資を受けにくくなるため、売却前に抹消手続きを行います。
さらに、金融機関の変更時にも抹消が検討されます。新しい金融機関との取引開始にあたり、既存の根抵当権を抹消して、新たに設定し直すケースもあります。
担保の入れ替えを行う場合も、既存の根抵当権を抹消する必要があります。事業成長に伴い、より適切な担保に変更するケースです。
抹消前の準備から金融機関との交渉まで
根抵当権の抹消を進める前に、いくつかの準備が必要です。
まず、債務の完済状況を確認します。根抵当権は複数の債務を担保しているため、すべての債務が完済されているか確認することが重要です。
次に、金融機関との交渉を行います。債務がすべて完済されていても、金融機関が抹消に同意しない場合があります。将来の取引可能性を考慮して、根抵当権の存続を希望するケースもあるためです。
交渉の際には、抹消の理由を明確に伝え、必要であれば代替案(極度額の減額など)を提案することも効果的です。
金融機関の同意が得られたら、抵当権抹消登記の承諾書を取得します。この書類は登記申請に必須となるため、必ず入手しておきましょう。
抹消登記の申請
抹消登記の申請は、以下の手順で行います。
必要書類を準備します。主に、抵当権抹消登記の承諾書、権利証(登記識別情報)、印鑑証明書などが必要です。金融機関によっては、独自の書類が求められる場合もあります。
次に、登記申請書を作成します。この書類には、抹消する根抵当権の情報や申請者の情報などを記載します。専門的な知識が必要なため、司法書士に依頼することが一般的です。
準備した書類一式を、不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。直接窓口に持参するか、郵送で申請することも可能です。
申請後、審査を経て登記が完了します。通常は1週間程度で処理されますが、混雑状況によって前後することがあります。
登記完了後、登記完了証が交付されるので、大切に保管しておきましょう。根抵当権が正式に抹消されたことを証明する重要な書類です。
根抵当権の抹消にかかる費用
根抵当権の抹消にはいくつかの費用がかかります。事前に把握しておくことで、予算計画を立てやすくなります。
登録免許税と手数料
根抵当権抹消の主な費用として、登録免許税があります。これは国に納める税金で、抹消登記を行う際に必ず発生します。
登録免許税は、不動産1筆あたり1,000円です。複数の不動産に根抵当権が設定されている場合は、不動産の数に応じて費用が増加します。
例えば、3筆の土地に根抵当権が設定されている場合、3,000円の登録免許税が必要になります。登録免許税は、印紙で納付するのが一般的です。
また、法務局に直接申請する場合は、収入印紙代として数百円程度が必要になります。これは、申請書に貼付する印紙の費用です。
司法書士に依頼する場合にかかる費用
根抵当権抹消の手続きは専門知識が必要なため、多くの場合、司法書士に依頼することになります。司法書士に依頼する場合の費用は、以下のとおりです。
基本報酬として、1.5万円から3万円程度が一般的です。ただし、地域や司法書士事務所によって料金は異なります。複数の不動産がある場合は、追加料金が発生することもあります。
基本報酬の他に、実費(交通費、郵送費など)が別途請求されることがあります。これらは案件ごとに異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
また、特急料金として、急ぎの場合は追加費用が発生することがあります。通常より短期間で手続きを完了させる場合には、この点も考慮に入れる必要があります。
根抵当権に関するよくある疑問
根抵当権に関して、経営者からよく寄せられる疑問について解説します。
抵当権と根抵当権の使い分け
資金調達の際、抵当権と根抵当権のどちらを選ぶべきか迷うことがあります。この選択は、融資の性質によって異なります。
一度きりの融資の場合は、普通抵当権が適しています。たとえば、特定の設備投資のための借入や、不動産購入のための住宅ローンなどが該当します。一度限りの目的が明確な融資では、普通抵当権の方がシンプルで余計な費用がかかりません。
一方、継続的な融資を予定している場合は、根抵当権が効率的です。運転資金の調達や、当座貸越契約など、継続的な取引関係を前提とする場合は、根抵当権の設定が合理的です。
また、将来の事業拡大に備えて追加融資の可能性がある場合も、根抵当権が有利となります。一度設定しておけば、極度額の範囲内で何度でも融資を受けられるからです。
根抵当権と事業承継の関係
事業承継を検討している経営者にとって、根抵当権の扱いは重要な問題です。
事業承継の際、根抵当権付きの不動産が含まれている場合、原則としてその根抵当権も承継されます。ただし、金融機関との契約関係は自動的に承継されるわけではないため、注意が必要です。
後継者が同じ金融機関との取引を継続する場合、根抵当権の債務者を変更する手続きが必要になります。これには、金融機関の同意が必要となります。
一方、別の金融機関との取引に切り替える場合は、既存の根抵当権を抹消し、新たに設定し直す必要があります。この場合、承継計画の早期立案が重要で、金融機関との交渉を含めた準備が必要です。
共有不動産の根抵当権設定
複数の所有者がいる共有不動産に根抵当権を設定する場合は、特有の注意点があります。
共有不動産に根抵当権を設定するには、原則としてすべての共有者の同意が必要です。一部の共有者だけの同意では、不動産全体に根抵当権を設定することはできません。
ただし、共有持分だけに根抵当権を設定することは可能です。この場合、設定者の持分のみが担保となります。将来的に不動産を分割したり売却したりする際に複雑な問題が生じる可能性があるため、事前に十分な検討が必要です。
共有者間で、将来の不動産利用や担保設定について、事前に合意しておくことが望ましいものです。特に、家族間の共有不動産では、将来のトラブル防止のために明確な取り決めをしておくことが重要です。
根抵当権を活用した資金調達
根抵当権の特性を理解したうえで、効果的な資金調達戦略に活かす方法を考えましょう。計画的な活用が、経営の安定と成長をサポートします。
運転資金確保のための資金調達
根抵当権は、安定した運転資金の確保に効果的です。
当座貸越契約との組み合わせが、典型的な活用例です。根抵当権を設定し、極度額の範囲内で必要に応じて資金を引き出せる当座貸越契約を結ぶことで、資金繰りの柔軟性が高まります。
季節変動のある事業では、特に有効です。繁忙期に向けた仕入れや、閑散期の固定費をカバーするための資金を、必要に応じて調達できます。
また、予測不能な支出に対する備えとしても機能します。突発的な設備故障や緊急の支払いが発生した場合でも、すぐに資金を調達できる体制を整えられます。
設備投資の際の資金調達
中長期的な設備投資計画がある場合、根抵当権を活用した資金調達は、大きなメリットがあります。
段階的な設備投資に対応できることが、最大の利点です。一度に多額の融資を受けるのではなく、投資のタイミングに合わせて必要な金額だけを融資してもらうことができます。
これにより、借入金に対する金利負担を最適化できます。実際に使用する資金のみに金利が発生するため、資金効率が高まります。
また、設備投資計画の変更にも柔軟に対応できます。市場環境の変化や技術革新に応じて投資計画を修正しても、追加担保設定の手間なく資金調達が可能です。
まとめ
根抵当権は、継続的な融資を効率的に受けるための重要なツールです。普通抵当権と異なり、一度設定すれば、極度額の範囲内で何度でも融資を受けられる点が大きな特徴となります。
設定から抹消までの手続きを理解し、適切に活用することで、事業の成長に必要な資金調達をスムーズに進めることができます。特に、運転資金の確保や段階的な設備投資計画がある経営者にとって、根抵当権の活用は検討する価値があるでしょう。金融機関との相談を通じて、自社の事業計画に最適な資金調達方法を選択してください。
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