2025.04.30
今まで融資してくれていたのに・・・理由は債務者区分にあった!
かつてはスムーズに融資を受けていたにもかかわらず、銀行からの対応が急に冷たくなってしまうことは意外と多くの企業が経験しています。なぜ同じ銀行であるにもかかわらず、融資担当者の態度が変わるのか、その背景には必ず理由があります。
実は、この融資可否を左右する要因のひとつに「債務者区分」が挙げられます。企業の返済能力をさまざまな基準で分類する仕組みですが、この区分が厳しく見られると急に融資条件が悪くなったり、追加融資を断られたりすることがあるのです。
本記事では、債務者区分によってどのように融資審査が変化するのか、その仕組みや銀行が融資を渋る本当の理由を深堀りしていきます。さらに、区分の改善策や金融機関選びのコツなど、資金調達をスムーズに進めるための具体的な対策もあわせてご紹介します。
銀行融資を受けられない本当の理由とは?
銀行は融資の際に厳格な審査を行いますが、その根底には企業の返済能力だけでなく債務者区分が大きく影響しています。ここでは銀行が貸し渋りを起こす理由を明らかにします。
第一に、銀行は自社のリスクを最小化することを重要視します。融資によって得られる利益よりも、焦げ付いたときの不良債権リスクの方が大きいと判断すれば、当然ながら貸出には慎重にならざるを得ません。企業の財務状態や返済能力が少しでも不安定に見えると、貸し渋りが起こるのはこのリスク回避の思考によるものです。
次に、銀行の審査には金融庁が定めたガイドラインや内部規定が存在します。特に、企業の信用力を評価する際に参照するのが債務者区分で、正常先として評価できない企業に対しては追加融資を抑制するのが一般的です。区分が悪化している企業を積極的に支援すると、銀行自身の健全性が問われる可能性があるという側面も見逃せません。
最後に、融資の可否が変化する背景には経営環境の変化も影響します。景気の変動や業界固有のリスク、さらに企業自身の業績不振などが重なれば、わずか数か月前には受けられた融資が突然困難になることもあります。これらの理由が積み重なり、銀行による貸し渋りが生じるのです。
債務者区分とは?
債務者区分とは、金融庁が作成した「金融検査マニュアル」をもとに、
金融機関が融資先の返済能力に応じてランク付けを行うための指標です。企業の財務状況や返済履歴をもとに、金融機関の判断で格付けが行われます。
一般的には、正常先・要注意先・破綻懸念先・実質破綻先・破綻先というように段階的に区分されます。正常先は返済能力に問題がなく、銀行からみると積極的に融資を行っても良いと判断できる企業にあたります。一方、要注意先以下の区分に該当すると、返済リスクが高いとみなされ、融資条件が厳しくなる傾向が強いのです。
企業が業績不振に陥ったり、返済延滞を繰り返したりすると、債務者区分は一気に下がる危険があります。一度評価が下がると、同じ金融機関での追加融資だけでなく、他の金融機関への融資申し込みにも悪影響を与えます。なぜなら、銀行間での情報共有や信用調査により、企業の信用低下が広く認識されるからです。
また、各銀行ごとに独自の審査基準や運用ルールを持っていることも理解しておく必要があります。A行では要注意先とみなされたとしても、B行では比較的良好な評価を得る可能性もあります。とはいえ、基本的には債務者区分が悪い企業に追加融資をすることはリスク管理上難しいため、声をかけても断られるケースが多くなるのが現実です。
金融検査マニュアルでは、以下のように6段階の債務者区分が設定されています。
債務者区分 | 内容 |
正常先 | 業績・財務ともに安定しており、特に問題がない融資先。 |
要注意先 |
今後貸し倒れリスクの高まりが懸念され、注意を要する融資先。
Ex. ・わずかな債務超過状態にある融資先 |
要管理先 |
要注意先のうち、以下の融資先。 Ex. |
破綻懸念先 |
現時点では経営破綻に陥っていないものの、深刻な経営難の状態にあり、今後破綻が懸念される融資先。 Ex. ・長期にわたって延滞している融資先 |
実質破綻先 | 破産や民事再生などによる法的な経営破綻には至らないものの、実質的に経営が破綻している融資先。 (破産、清算、取引停止処分などには至っていないが、資金繰りが極端に悪化しており、実質的に債務の履行が不可能であり、経営の継続も不可能な状況) Ex. ・ファクタリングや手形割引などによる短期の資金繰りも困難な融資先 |
破綻先 | 法的に経営破綻している融資先。 (破産、清算、取引停止処分などの事実が発生している状況) |
この債務者区分が、資金調達にも大きな影響をもたらします。銀行融資が可能かどうかだけではなく、融資条件にも響いてくるのです。
債務者区分による融資の可否
債務者区分が融資の可否に与える影響は非常に大きく、企業が「正常先」であれば低金利での融資や大口の借入がしやすい環境が整います。しかし、要管理先や破綻懸念先とみなされると、銀行からの追加融資がほぼ不可能になることも珍しくありません。
金利や融資金額は企業の返済能力を総合的に判断したうえで決定されますが、債務者区分が低いほど借入条件は厳しくなる傾向があります。要注意先以下に格付けされる企業に対しては、利率の上乗せや保証協会を通した借入などを条件にしたり、融資額が極端に減額されたりするケースがあります。
このように、債務者区分が下がれば追加融資どころか既存融資の借り換えも厳しくなることが多いです。企業としては、日頃から財務データや業績の管理をしっかり行い、区分が下がらないよう経営上の施策を打つことが求められます。
正常先以外貸せない理由
正常先と判断される企業以外には融資を出したがらない銀行の事情を、貸倒リスクや管理コストの観点から探ります。
銀行は預かった預金を元手に融資を行うため、大幅な損失を出すわけにはいきません。万が一融資先が倒産してしまうと、回収不能になり、その分を不良債権として処理しなければならなくなります。結果的に銀行の利益は大きく圧迫されるため、怪しいと感じた企業には融資をしたがらないのです。
特に、要注意先以下の企業は返済の遅延やリスケジュール(返済条件の変更)が発生するリスクが高まります。そうした企業を多く抱えると、銀行のリスク管理部門や審査部門の負担が増大し、コスト面でも大きな問題となります。損失回避と管理コストの両面から、“正常先”ではない企業には融資を出し渋る動機があるといえるでしょう。
さらに、銀行内部での格付けは監査法人や金融庁のチェック対象にもなります。怪しい貸出案件が多い銀行は、市場からの信用も失いかねません。もし貸し倒れが相次いだ場合、次の決算期で大幅な貸倒引当金積み増しが求められるため、融資先が正常先であることが、銀行目線では自己防衛につながるのです。
銀行が嫌う「貸倒引当金」
貸倒引当金とは、不良債権が発生するリスクに備えて銀行があらかじめ積み立てておく準備金です。企業が要注意先以下に分類されると、その企業に対しては高い引当率が適用される場合があります。
つまり、貸倒リスクが高い企業が増えるほど、銀行はより多くの貸倒引当金を積み立てなければならず、結果として利益を圧迫してしまうのです。そのため、銀行は早い段階でリスクを見極め、格付けの低い企業への融資を避ける傾向があります。
貸倒引当金そのものは銀行のリスクヘッジ手段ですが、高い積立率を継続的に課されれば、銀行としては収益が伸びにくい状況に陥ります。そのため、少しでもリスクのある企業には慎重姿勢を取らざるを得ないのが実情です。
金融検査マニュアルでは、債務者区分に応じて貸倒引当金を積み立てることを銀行に義務付けています。債務者区分ごとの引当率は、
債務者区分 | 引当率 |
正常先 | 0.2~0.3% |
要注意先 | 1~15% |
要管理先 | |
破綻懸念先 | 50~70% |
実質破綻先 | 100% |
破綻先 | 100% |
です。要注意先と要管理先の引当率が曖昧ですが、制度的には要管理先は要注意先に含まれる区分であるため、引当率の幅も広くなっています。
貸倒引当金の影響
貸倒引当金の積み増しによって銀行の利益が圧縮されると、株主や市場からの評判が落ちることを恐れます。貸し倒れの可能性が高い企業を多く抱えている銀行は、経営健全性が低いと思われがちです。
そのため、融資先の区分が悪い場合は、新たな融資を行うことで引当金がさらに増えるリスクを避けようとします。結果として、企業からの追加融資の要望に慎重になるばかりでなく、既存の融資を回収する方向にシフトすることも珍しくありません。
一方で、企業の債務者区分が改善すれば、銀行としては過去に積み立てた貸倒引当金を取り崩せる可能性があり、逆に利益が増えることもあります。つまり、企業にとっても銀行にとっても、債務者区分の良化は双方のメリットにつながる重要なポイントなのです。
具体的に見てみましょう。
融資額1,000万円、返済期間1年間、金利2%の場合を例とすると、債務者区分ごとに以下のような差が生じます。
債務者区分 | 引当率 | 融資額 | 貸倒引当金 | 融資に要する総額 | 金利収入 | 利益率 |
正常先 | 0.25% | 10,000,000 | 25000 | 10,025,000 | 200000 | 2.00% |
要注意先 | 8% | 10,000,000 | 800,000 | 10,800,000 | 200,000 | 1.85% |
要管理先 | ||||||
破綻懸念先 | 60% | 10,000,000 | 6000000 | 16,000,000 | 200000 | 1.25% |
実質破綻先 | 100% | 10,000,000 | 10000000 | 20,000,000 | 200000 | 1.00% |
破綻先 | 100% | 10,000,000 | 10000000 | 20,000,000 | 200000 | 1.00% |
ざっくりとした計算ですが、債務者区分が下がるにつれて利益率が下がることが分かるでしょう。破綻懸念先以下になると、利益率は1.00~1.25%まで低下します。
さらに、破綻懸念先に融資した場合には貸し倒れに陥る可能性が極めて高く、1.00~1.25%の金利収入さえ得られない可能性が高いです。
銀行の主な収益が金利収入である以上、貸出に回せる資金はできるだけ多いほうがよく、引当金として拘束されることを嫌います。
もし、実質破綻先に融資せず、引当金相当の1,000万円を正常先に融資すれば、低リスクでしっかりと金利を稼ぐことができます。
銀行が正常先のみ(場合によっては要注意先以上)に融資し、要管理先以下に融資しないのも当然といえます。
債務者区分を軸に考える
債務者区分を把握し、改善を目指すことが融資獲得の要です。ここでは具体的な改善施策と金融機関の選び方を提案します。
まず、企業が自らの現状を正確に把握することが重要です。自社のバランスシートや損益計算書、そしてキャッシュフロー計算書などのデータを整理し、債務者区分がどの評価に該当するのかを把握しましょう。区分の悪化が明らかになってきたら、早めの対策を打つことで大幅な評価ダウンを回避できる可能性があります。
銀行とのコミュニケーションも欠かせません。定期的に担当者と面談し、財務の改善策や事業戦略を共有することで、銀行との信頼関係を深められます。そうすることで、少しでも状況を理解してもらい、柔軟な融資提案を受けられる道が開けるかもしれません。
さらに、どの金融機関が企業の状況に適しているのかを見極めることも重要です。大手銀行が厳しいスタンスを取るなら地方銀行や信用金庫、中小企業に積極姿勢なノンバンクなどを検討するのも手段の一つです。自社のフェーズや業種に強みを持つ金融機関を選ぶと、融資の可能性が高まります。
債務者区分改善の方法
債務者区分を改善するためには、まず企業の業績を回復させる施策が不可欠です。具体的には、売上拡大策やコスト削減、在庫管理の徹底など、収益性やキャッシュフローを改善する取り組みを進めましょう。
また、バランスシートを健全化するためには、負債の圧縮や自己資本の増強も有効です。増資や新たな出資を検討してみるのも一つの方法で、財務体質が強化されれば、銀行からの評価も着実に向上するでしょう。
さらに、企業の組織力を高めるための人材育成や経営管理体制の見直しも重要です。銀行は経営者の能力や組織体制を重視する場合が多く、これらの点が改善されれば信頼性が増し、債務者区分の改善につながりやすくなります。
金融機関選びのコツ
金融機関ごとに得意分野や審査スタンスが異なるため、自社に合った銀行を探すことは大切です。特に、業種に理解のある担当者が在籍している金融機関を選べば、ビジネスモデルを詳しく説明しやすくなり、融資交渉がスムーズになるでしょう。
また、メインバンクだけにこだわらず複数の金融機関と取引を持つことで、リスク分散にもつながります。傾向として、大手行はより厳格な審査を行う一方、地方銀行や信用金庫は地域密着型で企業とのリレーションを重視するなど、特色が異なります。
企業の成長フェーズに応じて、最適な融資形態も変化します。創業期は公的支援やベンチャーキャピタル、中堅規模になれば銀行融資、ややリスクの高い事業投資にはノンバンクなど、状況に応じた選択をするとよいでしょう。
融資をより有利にするための準備
まず、事業計画書や決算書類をしっかり整備することが欠かせません。金融機関がチェックするポイントは企業の収益性や安定性だけでなく、将来のビジョンや事業拡大の見込みなどにも及びます。数値だけでなく、経営者の意気込みや経営戦略もしっかりと示しましょう。
次に、経営の方針やリスク管理体制を明確にすることが重要です。銀行は融資先に対して、経営者がどれだけ先を見据えた対策を講じているかを注視します。柔軟にリスクを回避できる経営想定を説明できれば、銀行の安心感も高まります。
最後に、こまめに情報開示を行うことで、金融機関との信頼関係を築くことができます。定期的に業績や経営計画を共有し、良い情報も悪い情報もタイムリーに提供する姿勢がある企業は、担当者に安心を与え、協力的な対応を得やすくなります。
まとめ
債務者区分と融資の関係や、改善策の全体像を振り返り、資金調達に向けた取り組みの要点を再確認します。
債務者区分は金融機関の融資判断において非常に重要な役割を果たします。企業が「正常先」として評価されるかどうかは、金利や融資金額にも直結し、ひいては事業拡大の可能性を左右しかねません。自社の債務者区分を定期的に把握し、問題があれば早めに改善に取り組むことが大切です。
また、銀行は貸倒リスクを最小化するために、貸倒引当金を用いた管理体制を整えています。この仕組みがあるために、区分が下がった企業に対する追加融資は一段と厳しくなるのが実情です。逆に、区分が改善すれば、銀行にもメリットがあるという点を押さえておけば、融資交渉を前向きに進めやすくなるでしょう。
資金調達に苦労する状況になったとしても、金融機関の変更や複数行との取引、人材育成やバランスシートの改善策など、打つ手はいくらでも存在します。適切な対策を講じ、銀行との協力関係を築きながら、自社の債務者区分を管理・改善していきましょう。
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