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2025.06.27

現金主義vs売上主義②売上主義にはたくさんの危険が潜んでいる!

企業経営を安定化させるうえで、売上だけに目を向ける“売上主義”には様々な落とし穴があります。見た目の受注金額が大きくても、実際に手元へ入ってくる現金とはタイムラグがあり、資金不足へと陥るリスクもあるためです。

特に初期費用がかかるビジネスでは、入金サイクルのズレが大きいと単純な売上額の拡大だけでは対応しきれず、資金繰りが苦しくなる場合があります。こうした状況を甘く見積もってしまうと、気づかぬうちに経営が低迷してしまいかねません。

本記事では、売上主義が抱える危険性を掘り下げるとともに、そうしたリスクを回避するための資金調達の重要性にも触れていきます。経営を継続・拡大していくために、ぜひ最後までご覧ください。

前回記事『現金主義vs売上主義①』はこちらから

売上主義はなぜ危険なのか

売上が大きくても実際に利益が出ていないケースは少なくありません。なぜ売上主義が経営を危うくするのか、まずは基本的な理由を見ていきましょう。

売上主義とは、受注額や契約金額などの“売上”そのものを最優先に追い求める経営スタイルを指します。表面上は規模が拡大しているように見えますが、実際に現金として入ってくるまでのプロセスを軽視すると、資金繰りに狂いが生じやすくなるのが大きな問題です。

入金時期が遅れれば企業の手元資金は減少し、必要なタイミングで支払いができない状況になりかねません。勢いだけで契約数を増やすと、急に想定外の経費やリスクが発生しやすく、利益よりも先行してコストが膨らんでしまうことがあります。

こうしたリスクを回避するには、単なる売上額の拡大だけでなく、どのくらいの期間で現金が回収できるか、どの程度のコストがかかるかなどを総合的に把握しておくことが重要です。

売上=利益ではない

売上はあくまで受注金額または契約金額であり、実際に銀行口座へ入金される現金とはタイミングが異なることが多いです。例えば売上が上がっても入金サイトが長ければ、当面のキャッシュフローは改善されず、資金繰りが厳しくなる可能性があります。

さらに経費や仕入れの支払いが先行するケースも少なくありません。経営に必要な設備投資や人件費などが固定費として重くのしかかり、結果的に利益を圧迫してしまうことは珍しくありません。

こうしたズレを生じさせないためには、単純な売上額に一喜一憂するのではなく、実際の利益やキャッシュフローを常に把握する姿勢が求められます。

社員まで売上主義になった結果・・・

組織を挙げて売上を増やすことを強調しすぎると、プロセス管理やコスト意識が後回しになりがちです。社員が数字だけを追いかけるあまり、無理な取引を結んだり、不要な在庫を抱えたりするリスクが高まります。

売上主義が組織全体に染みわたると、現金の流れ・在庫の最適化・投資の優先度といった経営の重要要素が後手に回ってしまいます。結果的に現金不足だけでなく、サービス品質の低下や社員の疲弊を招く恐れがあります。

企業には売上だけでなく、健全な財務体質を維持するための計画性が欠かせません。バランスの取れた経営を徹底するためにも、社員の意識改革が重要となります。

売上主義に潜む4つの危険性

売上ばかり追い求める経営は、具体的にどのようなトラブルを引き起こすのでしょうか。主な4つの危険性を取り上げます。

売上至上主義に陥ると、細かい資金管理やリスク評価が後回しになりやすいという特徴があります。一見上手くいっているように見えても、ある日突然の資金ショートや余剰在庫、取引先の焦付きなどに直面する可能性が高まります。

また売上を急拡大させる過程で大規模な投資や借り入れを行うと、返済の目処が立たないうちに大型経費だけがかさんでしまうケースが出てきます。こうした綻びが徐々に経営全体へ悪影響を及ぼし、最終的には倒産リスクへつながりかねません。

以下の4つの危険性をしっかり理解することで、売上主義の過度な弊害を抑え、安定的な財務基盤を築くヒントをつかむことができます。

与信管理がずさんになる

売上を伸ばすために、取引先の信用度を十分に確認しないまま契約を結んでしまうケースがあります。特に新規顧客を優先しすぎると、相手企業の支払い能力を見極める時間が足りず、後々の貸倒リスクが増大します。

与信管理が甘いと、思わぬタイミングで大口顧客が支払い不能に陥ることがあり、企業にとっては大きな痛手です。一度でも焦げ付いた売上が発生すると、社内での不安感も広がり、士気低下を招く恐れがあります。

こうしたリスクを回避するためには、財務状況の確認や支払い実績のチェックなど、定期的なモニタリング体制を整えることが大切です。

どんぶり勘定になる

売上が増えているという安心感から、細かいコスト分析や経費管理が疎かになりがちです。結果として、利益が思ったほど残らないまま支出が先行し、赤字経営に陥ってしまうリスクが高まります。

特に小規模な事業ほど、社長や経理担当だけで資金の流れを把握しているケースが多く、客観的な数字の検証が不足しがちです。現金主体の経営を意識しないと、お金の流れを正しく把握できずにどんぶり勘定化する恐れがあります。

日々の入出金を可視化し、月単位や四半期単位で帳簿を詳査するなど、地道な管理体制をつくることが対策の要となります。

固定費が重い

売上拡大を期待して急速に人員を増やしたり、多額の設備投資を行うと、その後の固定費が大きな負担となります。売上が予算通りに伸びれば問題ありませんが、思うように受注が取れないと途端に一気に資金繰りが苦しくなるかもしれません。

一度増やした人件費や設備投資は、そう簡単に減らすことが難しいのも現実です。拡大戦略を続ける以上、安定的に回る収益構造を築いておかない限り、リスクは常に膨張し続けます。

固定費を適切にコントロールするためには、投資回収期間を明確にし、融資や資金調達のタイミングを計画的に行うことが求められます。

役員報酬

まず、役員報酬に注意すべきです。
売上主義によって業績が急速に伸びていくと、それに合わせて役員報酬をアップすることと思います。会社が儲かっているのですから、相応の報酬を受け取ることには何の問題もありません。
しかし、業績が落ちたときが問題です。業績アップに合わせて報酬をアップしたように、業績悪化に合わせて報酬をカットできる経営者はなかなかいないのです。
多くの場合、報酬を下げることで生活に響くことを嫌うのではありません。資金繰りを意識せず、売上だけをみて成果を挙げてきた体験があるために、役員報酬を下げなくてもどうにかなる、と思い込んでいるのです。

接待交際費

売上主義では、「新規顧客の獲得」「既存客との取引拡大」といった名目で、接待交際費が過剰になることがよくあります。
例えば、儲かっていることをアピールして売上につなげようと考え、高級レストランで食事をしたり、高額な年会費を支払ってビジネスクラブに入会したりします。儲かっているうちは問題ないのですが、売上の伸びが鈍化して資金繰りが悪化してからが問題です。早急にカットすべきですが、それによって経営悪化を悟られて売上に響くことを恐れ、交際費をなかなかカットできないのです。
このような交際が売上に繋がることもあるでしょうが、費用対効果は疑わしいものです。交際費をカットして手元資金を増やし、資金繰りを少しでもラクにしたほうがはるかに良いでしょう。
資金繰りが苦しくなって支払いに問題を犯せば、それまでにどれほど多くの交際費をつぎ込んでいても、一瞬で信用を失います。

宣伝広告費

このほか、宣伝広告費も見直すべき固定費のひとつです。
分かりやすいのがホームページ維持費です。ホームページは売上アップに効果的なツールですが、運用次第で効果に雲泥の差が生じます。
中小企業の中には、売上を伸ばすためにホームページを作ったものの活用できておらず、売上にほとんど貢献していないケースが少なくありません。
売上に貢献しないホームページを使い続けているくらいですから、自社でホームページを管理することは不可能です。運営管理を専門業者に任せて、高額の維持費を支払っていることも多いです。
この場合にも、「ホームページを閉鎖すれば信用を失う」といった恐怖感や、「ホームページから売上に繋がっていることもあるかもしれない(効果を検証していないため不明)」といった期待を抱き、なかなか削減に踏み出せません。

固定費は売上と関係ない費用です。固定費が大きくなったから売上も上がる、固定費が小さくなったから売上も下がる、といったことはありません。
売上主義によって売上最重視の姿勢であれば、売上に関係ない固定費の見直しも当然のように思えますが、なかなかそのように考えられないのが売上主義の危ないところです。

在庫管理がずさん

売上を追い求めるあまり、需要以上の在庫を抱えるとキャッシュが在庫として滞留し、資金の流動性が下がります。売れ残りが多ければ廃棄リスクも増大し、さらに損失を生み出します。

在庫がだぶつくと、余分な保管コストや管理コストも発生し、徐々に利益を圧迫します。特に消費期限のある商品や陳腐化が早い製品を扱う企業にとっては大きな経営リスクです。

適切な在庫管理を行うには、需要予測の精度向上やサプライチェーンの見直しが欠かせません。売上だけで評価するのではなく、在庫回転率や廃棄率といった指標もしっかりと把握しておく必要があります。

資金調達の重要性とは

売上主義から脱却するためには、資金調達を上手に活用してキャッシュフローを安定させる必要があります。その重要性を簡単に振り返ります。

資金調達は、企業が新たに事業を始めるときや既存事業を拡大する際に不可欠な要素です。金融機関からの融資(デットファイナンス)や株式発行(エクイティファイナンス)、社内外の出資者からの出資など、複数の手段を使い分けることで、適切な時期に必要な資金を確保できます。

また、高金利や長期返済負担が重いタイプのみを選択すると、逆にキャッシュフローを圧迫してしまうおそれもあります。そのため、返済義務のない手段や担保に頼らないファクタリング、助成金・補助金など、選択肢を幅広く検討することが重要となります。

十分な資金を確保できれば、入金サイクルのズレや突然の不測の事態にも対応しやすくなります。売上主義の危険性を回避するには、こうした資金調達方法をうまく組み合わせ、常に手元キャッシュを潤沢に保つことが大切です。

まとめ

売上主義に偏った経営はリスクが高く、現金主義を意識する姿勢こそが企業の生き残りに不可欠です。最後に、必要となるサポート体制を確認しましょう。

企業運営を円滑に行うためには、売上を伸ばすだけでなく、その資金が確実に手元に残るかどうかを常に検討する必要があります。入金と支出のバランスが崩れれば、どれほど売上が拡大しても一気に資金ショートへ突き進む危険性があります。

一度資金繰りが悪化してしまうと、必要な先行投資や開発に回す余裕がなくなり、結果的に事業展開が停滞してしまうかもしれません。そういった事態を回避するためには、定期的な財務分析や現金主義の志向を育てると同時に、外部資金を的確に調達する仕組みを整えることが肝要です。

売上主義から脱却したい場合には、会社の現状に適したファイナンス手法を取り入れ、必要に応じて専門家の力を借りるのもひとつの手段です。

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ヒューマントラストでは、資金調達に関する豊富なノウハウを活かし、幅広い業種・規模の企業に対して最適なサポートを行っています。具体的には融資や補助金の選定・申請支援から、実際の事業計画書作成まで、専門チームによるトータルアドバイスを提供します。

また、財務改善やキャッシュフローの安定化に向けたサポートも行っており、現金の流れをスムーズにするための仕組みづくりを手厚くバックアップします。企業の潜在的なリスクを早期に把握し、適切なファイナンス術を駆使することで、売上主義の行き詰まりから早期脱却を目指せます。

支援実績12,000社以上という豊富な経験を活かして、事業拡大と安定経営を両立したい企業に対し、継続的にサポートを展開します。自社に合った資金調達を進めたい方は、まずは専門家との相談を検討してみてはいかがでしょうか。

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監修者 三坂大作
筆者・監修者 ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役三坂 大作(ミサカ ダイサク)

略歴
・1985年:東京大学法学部卒業
・1985年:三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行 表参道支店:法人融資担当
・1989年:同行 ニューヨーク支店勤務 非日系企業向けコーポレートファイナンスを担当
・1992年:三菱銀行を退社、資金調達の専門家として独立
資格・登録情報
・経営革新等支援機関(認定支援機関ID:1078130011)
・貸金業務取扱主任者(資格者:三坂大作)
・貸金業登録:東京都知事(1)第31997号
・日本貸金業協会 会員番号:第006355号
専門分野と活動実績
企業の成長を資金面から支えるファイナンスの専門家として、30年以上にわたり中小企業の財務戦略・資金調達を支援。
国内外の法人融資・国際金融業務の経験を基に、経営者に寄り添った戦略的支援を展開。

現在の取り組み
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役として、以下の事業を統括:
・法人向けビジネスローン事業「HTファイナンス」
・個人事業主向けファクタリングサービス
・資金調達および財務戦略に関する経営コンサルティング

経営革新等支援機関として、企業の持続的成長を実現するための財務戦略策定や金融支援を行い、貸金業登録事業者として、適正かつ信頼性の高い金融サービスを提供しています。

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