• TOP
  • 新着情報
  • 資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違いは?理解すべきポイントを解説

2025.05.19

資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違いは?理解すべきポイントを解説

事業を継続していく上で、日々の資金管理は非常に大切です。特に中小企業では、資金に余裕があっても管理が不十分だと、思わぬところで資金不足に陥り経営が行き詰まってしまう場合があります。

資金管理において重要なツールが、「資金繰り表」と「キャッシュフロー計算書」の2つです。両者は名前が似ているため混同されやすいものですが、実はそれぞれ役割や活用方法が異なります。

この記事では、資金繰り表とキャッシュフロー計算書の基本的な構成や作成方法、両者の違い、そして最適な活用方法を分かりやすく解説します。

資金繰り表とは

資金繰り表は、企業の将来的な現金の流れを予測し、資金不足を未然に防ぐための管理ツールです。日々の経営判断や短期的な資金計画を立てる際に、非常に重要な役割を果たします。

資金繰り表の構成

資金繰り表は、特定の期間(日次、週次、月次など)における現金の入出金を予測し、期末の資金残高を計算するものです。これにより、資金の流れを把握し、計画的に資金調達や支払いを管理することが可能になります。一般的な資金繰り表は、以下の項目で構成されています。

まず「前月繰越」から始まり、これは前月から引き継いだ現預金残高を示します。これが当月の資金繰りのスタート地点となり、翌月への繰越しを見越して現金の流れを予測するための基盤となります。

次に「営業収支」では、本業による現金の動きを記録します。入金項目には売掛金回収や現金売上が含まれ、出金項目には仕入代金、人件費、家賃、水道光熱費などの経費支払いが含まれます。この部分で本業の収益性と資金繰りのバランスをチェックすることができます。

「財務収支」では、借入金や返済など、資金調達に関する現金の流れを記録します。入金には新規借入や増資による資金調達が、出金には借入金の返済や配当金の支払いなどが含まれます。これにより、企業がどのように資金を調達し、返済しているかを確認することができます。

最後に「翌月繰越」で、すべての入出金を計算した後の資金残高を示し、これが次月の「前月繰越」となります。この繰越しをもとに次月の資金計画を立て、適切な資金調達のタイミングや支出の管理が可能になります。

資金繰り表を作成する目的

資金繰り表を作成する主な目的は、将来的な資金不足を予測し、対策を講じることです。事業活動においては、売上が好調でも入金タイミングと支払いのタイミングにズレが生じることがあります。

資金ショートを防止するために事前準備することが、経営者にとって非常に重要です。例えば、大口の支払いが集中する月を事前に把握していれば、一時的な借入や支払いスケジュールの調整などの対策を講じることができます。

また、資金繰り表は、金融機関への融資申請時の添付資料としても活用されます。計画的な資金管理を行っていることを示すことで、金融機関からの信頼を得ることにつながります。

資金繰り表の作成方法

資金繰り表を効果的に活用するためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。まず、予測期間については、最低でも3ヶ月先まで作成することが推奨されています。これにより、ある程度先の資金状況を把握し、必要な対策を講じる時間的余裕を確保できます。

入出金の記入については、確実な支出(固定費など)を優先的に記入し、その後に変動費や不確定要素の強い収入を記入するのが基本です。特に、人件費や家賃、税金など必ず支払わなければならない項目は確実に計上します。

保守的な予測を心がけることも重要です。売上は少なめに、費用は多めに見積もることで、予想外の事態にも対応できる余裕をもたせることができます。

月ごとの資金残高がマイナスにならないかを常にチェックし、マイナスになる月があれば、その前に借入や支払い条件の交渉などの対策を講じる必要があります。

キャッシュフロー計算書とは

キャッシュフロー計算書は、一定期間における企業の現金の流れを明らかにする財務諸表です。貸借対照表や損益計算書と並ぶ重要な財務諸表の一つとして位置づけられています。

キャッシュフロー計算書の構成

キャッシュフロー計算書は、大きく分けて3つの活動区分から構成されています。それぞれの区分が企業の異なる側面における現金の流れを示しています。この計算書は、企業の現金の出入りを把握するために非常に重要な役割を果たします。

「営業活動によるキャッシュフロー」は、企業の本業による現金の収支を表します。商品やサービスの販売による収入、原材料や商品の仕入、従業員への給与支払いなどの経費支出が含まれます。この数値が継続的にプラスであることが、健全な企業経営の基本とされています。営業活動のキャッシュフローがプラスであれば、本業が安定している証拠となります。

「投資活動によるキャッシュフロー」は、設備投資や資産の取得・売却、投資有価証券の取得・売却など、将来の収益獲得のための投資に関する現金の流れを示します。成長期の企業ではこの数値がマイナスになることが多く、設備投資などに積極的に資金を投じていることを意味します。しかし、過度な投資によるキャッシュフローのマイナスが続くと、資金繰りに悪影響を及ぼす可能性もあるため注意が必要です。

「財務活動によるキャッシュフロー」は、借入金や株式発行などの資金調達と、その返済や配当金の支払いなど、資金の調達と返済に関する現金の流れを表します。財務活動によるキャッシュフローがマイナスであれば、返済が順調に進んでいることを意味し、プラスであれば新たに資金を調達していることになります。

フリーキャッシュフローの状況を把握することも重要です。フリーキャッシュフローは、「営業活動によるキャッシュフロー」と「投資活動によるキャッシュフロー」を合計した値で、企業が自由に使える現金の量を示します。この数値が継続的にプラスであれば、企業の財務体質は健全といえます。フリーキャッシュフローがプラスの状態を維持することが、事業の成長や安定にとって重要な指標となります。

キャッシュフロー計算書を作成する目的

キャッシュフロー計算書は、企業の資金状況を分析する上で非常に重要な情報を提供します。各活動区分の数値から、企業の現在の状況や将来性を読み取ることができます。

例えば、営業活動によるキャッシュフローが継続的にプラスであれば、本業による現金創出力が高く、事業基盤が安定していると判断できます。一方、マイナスが続くと、事業モデルに問題があるか、一時的な業績悪化の可能性があります。

投資活動によるキャッシュフローがマイナスの場合、設備投資や事業拡大に積極的に資金を投じていることを示しています。ただし、営業活動からのキャッシュフローでこれをカバーできないほど大きな投資が続くと、財務リスクが高まる可能性があります。

資金調達の依存度を評価することも重要です。財務活動によるキャッシュフローが継続的にプラスの場合、借入や増資などの外部資金に依存している状態を示しています。これが長期間続くと、財務体質の悪化や借入依存度の上昇につながる可能性があります。

キャッシュフロー計算書の作成方法

キャッシュフロー計算書の作成方法には、「直接法」と「間接法」の2種類があります。日本では一般的に間接法が採用されています。

直接法は、すべての取引を現金の収入と支出に分解して集計する方法です。実際の現金の流れを直接的に示すため、分かりやすいというメリットがありますが、作成に手間がかかるというデメリットがあります。

一方、間接法は損益計算書の当期純利益を出発点として、そこから現金の増減を伴わない収益・費用(減価償却費や引当金繰入額など)を調整し、さらに運転資本(売上債権、棚卸資産、仕入債務など)の増減を調整して、営業活動によるキャッシュフローを算出する方法です。

間接法は、既存の財務諸表データを利用できるため、効率的に作成できるメリットがあります。多くの会計ソフトでも、間接法によるキャッシュフロー計算書作成機能が搭載されています。

資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違い

資金繰り表とキャッシュフロー計算書は、どちらも企業の現金の流れを把握するためのツールですが、目的や内容、活用方法において明確な違いがあります。両者の違いを理解することで、それぞれを適切に活用できるようになります。

目的や時間軸の違い

資金繰り表とキャッシュフロー計算書の最も大きな違いは、その目的と時間軸にあります。資金繰り表は将来の資金不足を予測し、対策を講じるための予測ツールです。これに対して、キャッシュフロー計算書は、過去の一定期間における現金の流れを分析するための実績報告書です。

時間軸でいえば、資金繰り表は未来に向けて作成され、通常は日次、週次、または月次といった短期のスパンで管理されます。一方、キャッシュフロー計算書は、過去の実績を基に作成され、通常は年次または四半期ごとにまとめられます。

目的を明確に区別して活用することが重要です。資金繰り表は、日常的な資金管理や短期的な経営判断に役立ち、キャッシュフロー計算書は、中長期的な財務状況の分析や投資判断に活用されます。

作成義務の違い

資金繰り表は法的な作成義務はなく、企業が自主的に作成するものです。フォーマットも自由で、企業の実情に合わせたカスタマイズが可能です。

一方、キャッシュフロー計算書は、会社法や金融商品取引法に基づく財務諸表の一つとして位置づけられており、上場企業は作成・開示が義務付けられています。非上場企業でも、金融機関からの融資を受ける際などに提出を求められることがあります。

キャッシュフロー計算書には一定の様式があり、企業会計基準に準拠して作成する必要があります。このような法的な位置づけの違いも、両者の重要な相違点の一つです。

構成の違い

資金繰り表は、現金の入出金を時系列で記録するシンプルな構造になっています。入金と出金に大別され、必要に応じて営業収支と財務収支などに分けられることもありますが、基本的には現金の増減を直接的に示す形式です。

対照的に、キャッシュフロー計算書は、現金の流れを「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つに分類して記録します。この分類により、企業のどの活動が現金を生み出し、または消費しているのかを明確に把握できます。

活動別の分析視点を持つことで、経営判断の質を高めることができます。例えば、営業活動は順調に現金を生み出しているのに全体のキャッシュフローがマイナスになっている場合、投資や財務活動に問題がないか検討する必要があります。

精度の違い

資金繰り表は将来予測のツールであるため、ある程度の概算や見込みに基づいて作成されます。入金や支出の見込み金額や時期を予測して記入するため、実際の結果とは差異が生じることが前提となっています。

一方、キャッシュフロー計算書は、過去の確定した取引データに基づいて作成されるため、より正確で詳細な情報が含まれています。会計基準に従って作成されるため、企業間の比較も容易です。

この精度の違いから、資金繰り表は日常的な資金管理や短期的な経営判断に、キャッシュフロー計算書は、中長期的な財務分析や投資判断に活用されることが多いのです。

資金繰り表とキャッシュフロー計算書を組み合わせての活用

資金繰り表とキャッシュフロー計算書は、それぞれ異なる目的と特性を持っていますが、両者を連携させることで、より効果的な資金管理が可能になります。短期的な視点と中長期的な視点を組み合わせることで、総合的な財務戦略を構築できます。

資金管理

資金繰り表は、日次や週次、月次といった短期的な視点での資金管理に適しており、キャッシュフロー計算書は、四半期や年次といった中長期的な視点での資金分析に適しています。両者を連携させることで、短期と中長期の資金管理を統合することができます。

具体的には、キャッシュフロー計算書の分析結果から中長期的な資金の傾向や課題を把握し、それを資金繰り表の作成に反映させるという方法が効果的です。例えば、キャッシュフロー計算書から営業活動による現金創出力が低下傾向にあることが分かれば、資金繰り表では、より保守的な売上予測を立てるといった対応が可能です。

両者の整合性を定期的に確認することも重要です。資金繰り表の実績と、同じ期間のキャッシュフロー計算書の数値を比較することで、予測と実績のズレを分析し、予測精度の向上につなげることができます。

経営判断

資金繰り表とキャッシュフロー計算書の連携は、さまざまな経営判断の場面で活用できます。例えば、設備投資の意思決定においては、キャッシュフロー計算書から中長期的な投資余力を分析し、資金繰り表で短期的な資金への影響をシミュレーションすることで、より適切な投資規模やタイミングを判断できます。

新規事業の展開においても、キャッシュフロー計算書からは全社的な資金状況や本業の現金創出力を把握し、資金繰り表では、新規事業の立ち上げ期における詳細な資金計画を立てることで、事業のスムーズな立ち上げをサポートすることができます。

財務リスクを多角的に評価することも可能になります。キャッシュフロー計算書からは中長期的な財務リスク(借入依存度の上昇など)を把握し、資金繰り表からは短期的な資金ショートのリスクを把握することで、総合的なリスク管理を行うことができます。

金融機関との交渉

資金繰り表とキャッシュフロー計算書の両方を活用することで、金融機関との交渉においてもより効果的なアプローチが可能になります。融資申請の際には、キャッシュフロー計算書で中長期的な返済能力を示しつつ、資金繰り表で短期的な資金需要の具体的な内容と返済計画を示すことで、説得力のある資料となります。

財務状況が悪化した際の条件変更交渉においても、両者を活用することが有効です。キャッシュフロー計算書で、本業の収益力が健全であることを示しつつ、資金繰り表で一時的な資金不足の原因と今後の改善見通しを具体的に説明することで、金融機関の理解を得やすくなります。

計画と実績の差異を説明する能力も重要です。定期的に資金繰り表の計画と実績を比較分析し、差異が生じた理由を明確に説明できることは、金融機関からの信頼獲得につながります。同様に、キャッシュフロー計算書の予測と実績の比較分析も、中長期的な経営計画の信頼性を高める上で重要です。

まとめ

資金繰り表とキャッシュフロー計算書は、企業の資金管理において異なる役割を持つ重要なツールです。資金繰り表は、将来の資金不足を予測し対策を講じるための短期的な管理ツールであり、一方のキャッシュフロー計算書は、過去の資金の流れを分析するための中長期的な財務諸表です。

両者の違いを正しく理解し、それぞれの特性を活かした活用方法を身につけることが、効果的な資金管理の鍵となります。特に、短期的な視点と中長期的な視点を組み合わせて活用することで、資金ショートのリスクを低減しながら、持続可能な成長のための財務戦略を構築することができます。まず現在の資金管理方法を見直し、資金繰り表とキャッシュフロー計算書を効果的に活用できる体制を整えてみてはいかがでしょうか。

最短即日の無担保無保証融資!HTファイナンスのビジネスローン

企業経営において、資金繰り表やキャッシュフロー表を用いた資金管理は非常に重要です。しかし、どんなに計画的に管理していたとしても、予期せぬ資金ニーズが発生することがあります。そのような場合に備えて、大切な機会を逃さないためにも、柔軟でスピーディーな資金調達手段を確保しておくことが大切です。

HTファイナンスは、東大法学部出身で三菱銀行での実務経験を持つ三坂大作が統括責任者として、企業の資金調達と経営戦略の支援に取り組んでいます。

銀行実務とコンサルティングで培った経験を活かし、無担保無保証の融資やファクタリング、財務改善など、お客様の経営課題に合わせた最適な解決策をご提案しています。また、スピーディーで柔軟な審査体制により、成長に必要な資金を迅速にお届けできます。

お申し込みに必要な書類は最小限に抑え、オンラインやお電話でのやり取りを中心に進めていますので、経営者の皆様の負担を大きく減らすことができます。

事業拡大のチャンスを逃さないためにも、まずはお気軽にHTファイナンスにご相談ください。

まずは借入枠診断からお申込み

 



前へ

建設業特有の資金繰り問題を解決するには?改善方法や資金調達手段について解説

一覧へ戻る

資金繰りをコンサルタントに相談するメリットは?選び方や注意すべきポイントも紹介

次へ