2025.04.22
投資会社ってどんな会社?個人投資家は設立するべき?
投資活動を行っている中で、「法人化した方が税金面で有利になるのでは?」「投資会社を設立するメリットは何だろう?」といった疑問をもつ投資家の方は少なくありません。個人投資家として活動を続けるか、投資会社を設立して法人として投資を行うかは、投資家にとって非常に大切な選択です。
この記事では、投資会社の基本から、個人投資家が法人化するメリット・デメリット、実際の設立手順まで詳しく解説します。投資活動の法人化を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
投資会社とは
投資会社とは、簡単にいえば、投資活動を主な事業として行う法人のことです。一般的に投資会社は、投資家から集めた資金を株式や債券、不動産などの資産に投資して運用し、その利益を投資家に還元します。
しかし、個人投資家が設立する投資会社の場合は、少し異なります。この場合、主に自身の資金を、法人という形を通して運用するための受け皿として会社を活用することになります。
法的には、投資会社は、会社法に基づいて設立される株式会社や合同会社などの法人形態を取ります。投資を主たる事業とする会社であり、日本では金融商品取引法などの規制に従う必要があります。
個人投資家が投資会社の設立を検討するべき状況
法人化を検討すべき条件
投資会社の設立は、誰にでも必要というわけではありません。以下のような状況にある投資家は、法人化を真剣に検討する価値があります。
まず、年間の投資所得が700万円を超える場合です。この水準を超えると、個人所得税率と法人税率の差から、節税効果が現れ始めます。所得が増えるほど、その効果は大きくなります。
次に、長期的かつ継続的な投資活動を行っている場合です。単発的な投資ではなく、投資を主要な収入源として継続的に行っている場合、法人化によるメリットをより享受できます。
また、投資関連の経費が多い場合も、法人化の恩恵が大きくなります。オフィス賃料、研究費、交通費など、個人では経費計上が難しい項目も、法人であれば適切に計上できる可能性が高まります。
さらに、投資活動の社会的信用を高めたい場合も、法人化が有効です。特に、他の投資家と共同で投資を行う場合や、大きな案件に取り組む際には、法人としての信用基盤が取引を円滑にします。
個人課税と法人課税のちがい
投資活動からの所得と法人化の関係性は、重要なポイントです。個人の所得税は累進課税制度が適用され、所得が増えるほど税率も上がりますが、法人税は基本的に一定の税率で課税されます。
個人の場合、所得に応じて5%から45%の税率が適用され、これに住民税などが加わります。一方、法人の場合は、資本金や所在地により異なりますが、中小企業であれば約20%程度の実効税率となることが多くあります。
年間所得が700万円を超えると、個人の所得税率は23%を超え始め、住民税を合わせると30%以上になります。この水準から法人税率との差が顕著になり、節税効果が実感できるようになるのです。
例えば、年間1,000万円の投資所得がある場合、個人だと所得税・住民税合わせて約330万円の税負担になりますが、法人化して適切に役員報酬を設定すれば、200万円台まで税負担を抑えられる可能性があります。
投資会社を設立するメリット
投資会社を設立することで得られるメリットは、多岐にわたります。
節税効果が得られる
投資会社を設立するメリットの一つは、節税効果です。法人税は原則として一定税率であるため、所得が高額になるほど、個人所得税と比較して税負担が少なくなります。
特に、年間所得が700万円を超えるケースでは、法人成りによる節税効果が顕著になります。また、法人であれば役員報酬を設定することで、法人の所得と個人の所得を分散させ、全体の税率を最適化できます。
さらに、法人では、将来の投資に備えて内部留保を確保することも可能です。これにより、個人で全額課税されるよりも、投資資金の成長速度を高めることができます。
例えば、1,000万円の所得があった場合、個人では最高税率が適用され手取りが大きく減りますが、法人なら役員報酬を上手く設定することにより、税負担をある程度抑えられます。
経費計上範囲が拡大する
投資会社を設立すると、投資活動に関連するさまざまな費用を、経費として計上できる範囲が大幅に広がります。個人投資家の場合、経費計上できる項目は限られていますが、法人であれば事業に関連する費用を幅広く経費として認められます。
例えば、オフィスの賃料や光熱費、通信費、業務用のパソコンやソフトウェア、書籍や雑誌の購読料、セミナー参加費、投資情報サービスの利用料など、投資活動に関連する費用を適切に経費計上できます。
また、社会保険料も法人が負担する部分があるため、個人事業主と比較して、実質的な負担が軽減されます。さらに、社用車の購入や維持費、業務関連の旅費交通費なども、適切な経費処理が可能になります。
これにより、投資活動に必要な環境を整えつつ、課税対象となる所得を適正に抑えることができるのです。ただし、経費計上には「事業との関連性」が必要なため、私的な費用を経費にするような不適切な処理は避ける必要があります。
赤字繰越期間が延長される
投資活動では、利益が出る年もあれば損失が発生する年もあります。個人投資家の場合、青色申告を行うことで、損失を最長3年間繰り越せますが、法人化することでこの期間が最長10年間に延長されます。
この赤字繰越期間の延長は、長期的な投資戦略を立てるうえで非常に大きなメリットです。例えば、新規事業への投資や研究開発など、初期段階では赤字が続くものの、将来的に大きなリターンが期待できる投資案件に取り組む場合、長期的な税負担の平準化が可能になります。
また、景気変動などの外部要因で、一時的に大きな損失が発生した場合でも、その後の黒字と相殺できる期間が長いため、投資戦略の柔軟性が高まります。
さらに、この制度を活用することで、将来の税負担を効果的に軽減でき、投資資金の成長を最大化することができます。ただし、赤字繰越を適用するためには、適切な帳簿管理と確定申告が必要ですので、税理士などの専門家のサポートを受けることをおすすめします。
社会的信用度が向上する
投資会社を設立することで、個人投資家として活動する場合と比較して、社会的な信用度が向上します。法人格をもつことで、取引先や金融機関からの信頼性が高まり、より大規模な取引や投資機会へのアクセスが容易になります。
例えば、不動産投資を行う場合、個人名義よりも法人名義の方が、賃貸契約や融資を受けやすくなることがあります。また、株式投資においても、法人投資家として取引することで、証券会社からより質の高い情報提供やサービスを受けられることがあります。
さらに、法人として登記されることで、公式な事業実態が証明され、名刺や会社案内などを通じて対外的なプレゼンスも向上します。これにより、投資パートナーとの関係構築や共同投資案件への参加も容易になります。
また、将来的に事業を拡大する際や、投資チームを形成する場合にも、法人としての実績や信用が大いに役立ちます。ただし、この信用を維持するためには、適切な企業統治と透明性の高い経営が求められることも忘れてはなりません。
資産保全と相続対策が可能
投資会社の設立は、個人の資産と事業資産を分離することで、資産保全の効果も期待できます。個人で投資活動を行っている場合、投資に関するトラブルが発生すると個人資産まで影響を受ける可能性がありますが、法人化することでこのリスクを軽減できます。
また、相続対策の観点でも、投資会社の設立はメリットがあります。個人資産として保有している場合と比較して、会社の株式として資産を保有することで、相続時の評価方法や分配方法に柔軟性が生まれます。
特に、大規模な資産をもつ投資家にとって、計画的な財産承継は重要な課題です。投資会社を設立し、子会社化や持株会社化を進めることで、相続税の負担軽減や円滑な事業承継が可能になります。
さらに、法人化することで、個人の相続問題と投資活動の継続性を分離できるため、長期的な投資戦略を、世代を超えて実行することも容易になります。ただし、相続対策としての法人活用には専門的な知識が必要なため、税理士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
投資会社設立のデメリット
投資会社の設立にはメリットだけでなく、考慮すべきデメリットもあります。以下に、主な課題点を解説します。
設立・維持コストの負担が大きい
投資会社を設立・維持するには、一定のコストがかかります。まず設立時には、定款認証費用、登録免許税、司法書士報酬などがあり、株式会社の場合は最低でも20万円程度の初期費用が必要です。合同会社なら比較的安価ですが、それでも10万円前後の費用は見込んでおく必要があります。
さらに、会社の維持には、毎年固定費がかかります。法人住民税は自治体によって異なりますが、資本金や従業員数に関わらず、最低7万円程度の均等割りがかかることが多くみられます。また、法人税の確定申告には税理士費用が発生し、年間20万円から50万円程度の負担になります。
加えて、法人で経営者が役員になる場合は、社会保険への加入が必要で、国民健康保険と比較して負担が大きくなることがあります。これらのコストを考慮すると、投資規模が小さい場合は設立コストが見合わない可能性があります。
そのため、法人設立を検討する際は、これらの固定費を上回るメリットが得られるかどうかを、慎重に検討する必要があります。一般的には、年間利益が数百万円以下の場合、コスト面から法人化のメリットが少ないケースが多いでしょう。
事務処理の多さや管理負担の大きさ
投資会社を設立すると、個人投資家として活動していたときよりも、事務処理の量が格段に増加します。法人では、帳簿の記帳、決算書の作成、法人税の確定申告、消費税の申告、社会保険関係の手続きなど、多岐にわたる事務作業が発生します。
特に、法定書類の作成や提出には、正確性と期限厳守が求められます。法人税や消費税の申告期限を過ぎると、ペナルティとして加算税や延滞税が課される可能性があります。
また、役員報酬を受け取る場合は、源泉所得税の納付や年末調整といった給与関連の実務も発生します。さらに、法人の資金管理は個人の資産と明確に区別する必要があるため、複式簿記による適切な会計処理が不可欠です。
これらの事務処理をすべて自分で行うのは負担が大きいため、多くの場合、税理士や会計事務所に業務を委託することになります。その場合、前述の通り、年間数十万円の委託費用が発生します。投資活動に集中したい場合、この事務負担の増加は大きなデメリットとなりえます。
資金利用の制限がかかる
投資会社を設立すると、個人の資産と法人の資産を明確に区別する必要があります。法人の資金は事業目的に沿って使用することが原則であり、個人的な目的で自由に使うことはできません。
例えば、投資会社の資金から個人的な買い物や旅行などの支出を行うと、「役員借入金」として処理されることや、場合によっては「隠れた利益配当」として課税対象になることがあります。特に税務調査の際には、こうした私的流用が問題視される可能性があります。
また、法人の利益を個人が受け取るには、役員報酬や配当などの形式を取る必要があり、それぞれに税金面での考慮が必要です。役員報酬は毎月一定額を支給するのが原則で、臨時的な資金需要に柔軟に対応できないというデメリットがあります。
このように、個人で投資活動を行っている場合と比較して、資金の使い方に制約が生じることは、ライフスタイルや投資スタイルによっては、大きなデメリットになる可能性があります。特に、生活費と投資資金の区別があいまいな個人投資家にとっては、この制約は慎重に検討すべきポイントです。
含み益課税のリスクがある
投資会社設立に関連する重要なデメリットの一つに、含み益に対する課税リスクがあります。個人投資家の場合、株式や不動産などの資産は、売却して利益を確定しない限り課税されません。
しかし法人の場合、決算時に保有する有価証券のうち、売買目的有価証券については、その時点の時価で評価替えを行い、含み益に対しても法人税が課税されることがあります。これは、まだ実現していない利益に対して課税されるということです。
また、投資会社を解散する場合や、法人から個人に資産を移す際にも、その時点での時価評価が行われ、含み益に課税されるリスクがあります。含み益に対する課税は、資金化していない利益に対する支払いが必要になるため、キャッシュフロー管理の観点から問題になりえます。
このリスクを軽減するためには、保有目的に応じた適切な会計処理や、長期投資を前提とした戦略的な資産選択が重要になります。含み益課税に関するルールは複雑なため、投資会社設立を検討する際は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
投資会社設立の手順
投資会社を設立するための具体的な手順と、必要書類について解説します。法人設立のプロセスを理解し、効率的に準備を進めましょう。
会社設立の基本手続き
投資会社設立の基本的な手続きは、一般的な会社設立と同様のプロセスを踏みます。最初に行うのは、会社の基本事項の決定です。商号(会社名)、本店所在地、事業目的、資本金額、役員構成などを決めます。
特に事業目的は重要で、投資活動を適切にカバーする目的を設定する必要があります。「有価証券の取得、保有及び運用」「不動産の取得、管理及び運用」など、行う予定の投資活動を具体的に記載します。
次に、これらの内容を盛り込んだ定款を作成し、公証人による認証を受けます(株式会社の場合は必須、合同会社も一般的には認証を受けます)。定款認証の費用は約5万円で、電子定款にすることで、この費用を削減できる場合もあります。
定款認証後は、出資者が資本金を払い込み、払込証明書を作成します。すべての書類が揃ったら、会社設立登記申請を法務局に行います。登録免許税として、資本金の0.7%(最低15万円)が必要です。合同会社の場合は、資本金の0.7%(最低6万円)となります。
登記が完了すれば、法人として正式に設立されます。設立後は、税務署、都道府県税事務所、市区町村、年金事務所などへの各種届出を行う必要があります。一連の手続きは、1〜2ヶ月程度かかることが一般的です。
定款作成と事業目的の設定
投資会社の定款作成では、特に事業目的の設定が重要です。投資活動という特性上、幅広い投資対象や手法をカバーできるように記載する必要があります。
一般的な投資会社の事業目的としては、以下のような項目が考えられます。
最後の「付帯関連する一切の事業」という項目を入れることで、将来的な事業拡大にも柔軟に対応できます。ただし、あまりに多岐にわたる目的を記載すると、登記官から疑義を呈されることもあるため、実際に行う予定の事業に関連する内容に絞るのがよいでしょう。
また、投資対象や手法を具体的に定義しておくことも重要です。例えば、株式投資が中心であれば「有価証券」、不動産投資が中心であれば「不動産の取得、管理」などを明確に記載します。将来的に金融商品取引業の登録が必要になる可能性がある場合は、その点も考慮した目的設定が必要です。
定款作成は会社の根本規則を定める重要な手続きなので、司法書士や弁護士などの専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
資本金と会社口座の開設
投資会社を設立する際、資本金の額と会社口座の開設は、重要なステップです。資本金は、会社の信用基盤となる重要な要素であり、特に投資活動を行う会社では、十分な額を設定することが望ましいでしょう。
法律上、株式会社と合同会社には、最低資本金の規制はなくなりましたが、実務上は株式会社の場合は最低でも100万円程度、合同会社でも数十万円程度の資本金を用意することが一般的です。投資会社の場合、投資規模に応じて、さらに多額の資本金を設定することも検討すべきでしょう。
資本金が決まったら、発起人が資本金を払い込むための「資本金口座」を開設します。この口座は、設立登記完了後に会社名義の口座に切り替えることになります。銀行によって手続きや必要書類が異なるため、事前に確認しておくとスムーズです。
会社設立後は、正式な会社口座を開設します。投資会社の場合、投資活動専用の口座管理が重要です。特に証券口座や投資信託口座など、投資商品ごとに専用口座が必要になることもあります。
会社口座開設時には、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、印鑑証明書、定款の写し、代表者の本人確認書類などが必要です。また、銀行によっては、事業計画書や会社のパンフレットの提出を求められることもあります。
投資会社の場合、将来的な資金移動や投資商品の売買が頻繁に発生するため、オンラインバンキングの利便性や手数料体系なども考慮して銀行を選ぶことをおすすめします。
まとめ
投資会社を設立すると、法人化することで節税効果、経費計上範囲の拡大、社会的信用度の向上、資産保全など多くのメリットがあります。特に、年間所得が700万円を超える場合や、長期的な投資戦略をもつ投資家にとっては、法人化によるメリットの方がデメリットより大きいといえるでしょう。
一方で、設立・維持コストの負担、事務処理の増加、資金利用の制限、含み益課税のリスクなどのデメリットも存在します。投資会社の設立を検討する際は、専門家への相談や、他の投資家の経験談なども参考にしながら、投資会社を設立するか否か、最適な決断をしましょう。
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