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2025.04.09

有償増資とは?種類やメリット・デメリットまで徹底解説

企業が事業を営むうえで、資金を効率よく確保する手段は、経営者にとって大きな課題です。中でも、株式を活用する選択肢として注目されるのが有償増資です。これによって、事業拡大のための資金を外部から調達し、企業の成長力や信用力を高めることができます。

本記事では、有償増資の意味や手続きの要点を詳しく解説します。さらに種類やメリット、デメリットなどを整理しながら、実際の仕訳管理といった具体例にも触れていきます。

有償増資の基本

有償増資は、会社の資本金を増加させるための資金調達方法の一つです。

有償増資とは

有償増資とは、株式会社が新たに株式を発行して、外部または既存の株主から資金を受け取り、資本金を増やす方法を指します。自己資本を高めるために利用される手段であり、銀行借入とは異なり、返済義務が生じない点が大きな特徴です。

この方法では、会社の株式数が増えるため、新参株主の獲得や既存株主の出資拡大によって、企業規模の拡大や財務的安定性を期待できます。資金繰りや財務基盤の強化を図りたい企業にとっては、重要な選択肢といえます。

ただし、手続きや株主総会の決議が必要になるなど、法的にも制度的にも要件が厳格に定められています。特に、有償増資の実施タイミングと配分は、経営戦略に大きく影響するため慎重な検討が求められます。

有償増資の役割

有償増資の目的は、資金調達だけにとどまりません。信用力の向上や対外的なイメージアップ、将来的なM&Aの準備など、企業の成長を幅広く支える役割を担っています。

具体的には、設備投資や新規事業開発、研究開発の費用を確保するうえで使われることが多くあります。また、財務面では自己資本比率の向上につながるため、金融機関からの追加融資もしやすくなるメリットがあります。

さらに、資金を拡充することになるため、企業規模の拡大によって従業員の雇用創出や生産力の向上が見込めます。その結果として、外部ステークホルダーからの評価も高まりやすくなります。

手続きの基本的な流れ

有償増資の手続きは、大まかに事前協議、株主総会での決議、契約締結、払込確認、登記申請というステップに分けられます。まず経営陣と既存株主の間で、増資の必要性や割当先などを協議し、内容が固まれば株主総会の決議を得ます。

その後、第三者割当や公募などの具体的な形式に応じて契約を取り交わし、実際に資金が会社へ払い込まれるのを確認します。最終的には、法務局への登記手続きが必要となり、これを完了して初めて増資が正式に成立します。

こうした一連の流れには、法的書類の準備や届出が多く含まれるため、専門家のサポートを受けることも検討すると、スムーズに進めることができるでしょう。

有償増資の種類

有償増資にはいくつか種類があり、それぞれに特徴があります。会社の状況や目的に合わせて、適切な方法を選択しなければなりません。

第三者割当増資

第三者割当増資は、既存株主以外の特定第三者に対して新株式を割り当てる方法です。ベンチャー企業やスタートアップが、ベンチャーキャピタルや事業会社から出資を受けるときにも多用されます。一般的には、特定の投資家が企業の将来性を評価し、資金を提供する形をとります。

この形態を活用すると、単純に資金が得られるだけでなく、提携先との関係強化や経営資源の相互活用など、資金以外のメリットも期待できます。逆にいえば、特定の第三者に出資してもらうため、経営権の一部を委ねることにもつながる点に注意しなければなりません。

とりわけ追加で参画する投資家の企業文化や方向性が、自社の方針と合致しているかを慎重に見極める必要があります。

株主割当増資

株主割当増資は、現在の株主に対して新株式を割り当てる方法です。既存株主が優先的に引き受ける形となるため、経営支配権の変動を最小限に抑えたい場合や、既存株主との関係をより強固にする目的がある場合に適しています。

既存株主がそのままシェアを維持しつつ資金を拠出するため、外部からの参加がない分、経営方針に大きな変化をもたらす可能性は低くなり、協議も比較的スムーズに進む傾向があります。

一方で、既存株主の出資意欲が低い場合は、思うように必要資金を調達できません。そのため、株価評価や将来の株主価値をしっかり説明し、納得してもらう努力が求められます。

公募増資

公募増資は、不特定多数の投資家を対象に新株式を発行する方法です。証券会社を通じて、一般投資家に株式を募集するケースが多く、広く資金調達できる点がメリットです。証券市場の状況によっては、大きな資金を集めることが可能になります。

ただし、一般の投資家が対象であるため、企業の情報開示責任がより厳しく問われます。開示資料や説明など、いっそう透明性の高い情報提供を行う必要があり、企業にとっては負担がかかる形の増資といえます。

また、市場の動向や投資家の心理に影響されやすいので、適切なタイミングで行う戦略が重要になります。

有償増資のメリット

有償増資には、企業の成長を後押しするさまざまなメリットがあります。

信用力を高める

有償増資によって資本金が増えると、財務諸表上で自己資本比率が向上し、企業の信用力が高まります。これは、取引先や金融機関からの信用を得やすくなる大きな要素です。特に、金融機関からの追加借入や、融資枠拡大を狙う場合に有効です。

また、増資を引き受けた投資家や株主が著名な企業や銀行である場合、その名前だけで企業の社会的信用が底上げされることもあります。これらの信用力向上は、営業活動にも好影響をもたらし、新規取引や事業拡大のチャンスも広がります。

結果的に、経営の安定や事業の信頼性向上というプラス効果が生まれやすくなります。

財務体質を強化する

有償増資で得た資金は、借入金とは異なり負債には計上されません。そのため、財務体質の改善が期待できます。自己資本が拡充されることで、万一の経営リスクが顕在化した際も、倒産リスクが低減します。

また、自己資本が増えると、資金調達コストの抑制にもつながる可能性があります。利息の支払いに追われることが少なくなるため、事業に投資できる余力が増え、会社の成長を加速させるサイクルを生みやすくなります。

このような観点から、長期的に企業価値を高めるためにも、有償増資は有効な選択肢の1つです。

返済不要である

増資で得た資金は、返済義務がありません。債務ではなく資本として組み込まれるため、金融機関との金利交渉や、返済スケジュールに追われるストレスが軽減されます。特に、キャッシュフローに余裕をもたせたい小規模事業者には魅力的です。

借入金は、財務的に経営の自由度を下げる要因にもなりかねませんが、株式による資金調達は、そのプレッシャーが少ないというメリットがあります。もちろん既存株主の希薄化は避けられませんが、経営者が慎重に出資の比率を管理すれば、大きな問題になることは少ないものです。

とはいえ、取引先への説明責任などが伴う場面もあるため、先々の経営計画に合わせて段取りを組む必要があります。

有償増資のデメリット

一方で、有償増資を行うことで生じるリスクもあります。

持株比率が低下する可能性

有償増資を行うと新しい株式が発行されるため、既存株主の持株比率が下がり、経営支配権が希薄化しやすいものです。特に、第三者割当増資の場合、新規投資家に大きな株数が渡ると、今まで経営を主導してきたオーナー経営者の決定権が弱まる可能性があります。

これは、企業を大きくするためのコストともいえますが、もともとの株主の意向や経営方針が、十分に尊重されない形になってしまうおそれがあります。そのため、割当先の選定や出資比率について、細心の注意を払う必要があります。

もし、主要な意思決定に影響が及ぶほど株式が分散する見込みがある場合は、あらかじめ経営支配権をどのように維持するか考えておかなければなりません。

手続きの負担

有償増資には、株主総会の開催や法定公告、契約書の締結、登記など、多くの手続きや事務作業が必要になります。専門家に依頼する場合は費用がかかるほか、社内リソースの一部を割く必要が出てきます。

特に公募増資を行う際は、証券会社や行政当局への届け出、投資家への情報開示なども含まれるため、負担はさらに増大する可能性があります。時間管理を誤ると調達のタイミングを逃す原因になりかねません。

こうした背景から、適切なスケジュール設定が非常に重要になり、事前の準備期間をしっかりと確保しておくことをおすすめします。

一部の税制優遇を受けられなくなる可能性

有償増資を行うタイミングや金額によっては、特定の税制優遇が受けられなくなる場合があります。資本金が一定額を超えることで、中小企業向けの軽減税率が適用されなくなるケースなども考えられます。

これにより、法人税や地方税などの税負担が増え、計画したほどの利益を確保できない可能性も出てきます。結果的に、増資後のキャッシュフローに予想以上の負担がかかることもあるため、注意が必要です。

特に、税制面でのシミュレーションは、専門家と相談して早めに実施し、リスク回避の戦略を立てることが肝心です。

有償増資の手続き

有償増資を実施する流れを、主なステップに沿って確認しましょう。

事前協議からシミュレーション

有償増資に限らず、会社の資金調達手段を検討する際は、まず経営陣や主要株主との間で事前協議を行います。どの程度の資金が必要か、誰を割当先にするかといった基本方針を決める重要なステップです。

並行して、資金を受け入れることで、株主構成や配当方針がどう変わるかをシミュレーションします。税制や補助金などの公的支援策も含めたあらゆる角度を検討し、メリットとデメリットを洗い出すと良いでしょう。

この段階で経営計画と増資計画の整合性を確かめ、全関係者が納得できる調整を行うことが成功の鍵です。

株主総会決議から契約の締結

事前協議で基本方針が固まったら、株主総会で有償増資の実行を決議します。ここで増資の目的や新株式の発行数、発行価格、払込期日などを正式に承認することが必要です。株主総会の内容は議事録に残し、法的に有効な形で保管します。

その後、第三者割当の場合は、投資家との間で増資引受契約を締結します。株主割当や公募増資の場合は、必要な手続きを踏まえ、証券会社などを通じて募集を行うなど、形態に応じた契約プロセスが発生します。

いずれにせよ、契約書の細部をよく確認し、将来のトラブルを防ぐための条項を入れておくことが望まれます。

払込の確認から登記申請

株主総会や契約が完了したら、実際に資金が払い込まれるかどうかを確認します。払込期日を過ぎても、出資金が確認できなければ増資は成立しないため、事務管理は非常に重要です。振込先の別段預金を用意して、正確にチェックすることが求められます。

払込確認後は、資本金として計上すべき額や、資本準備金に振り分ける額などを総勘定元帳に反映します。さらに、法務局への登記申請を行い、新たな資本金や発行済株式総数を公的に確定させる必要があります。

ここまで完了して正式に有償増資が効力をもつため、漏れのないよう慎重に進めましょう。

有償増資で注意したい点

有償増資は企業の発展に活用できる一方、事前に検討しておくべき懸念点もあります。

経営支配権を維持するためのアプローチ

新たに株主を募る場合、出資比率の変動によって、経営支配権が分散するリスクがあります。とくに創業者やオーナー経営者は、自身の意思決定が通りづらくなる可能性を認識しておく必要があります。

対策としては、議決権制限株式や種類株式などを活用して、重要事項の決定権を確保する方法もあります。一方で、既存株主との溝ができないよう、適正な評価や納得のいく条件を示すことが大切です。

この観点から、株式発行条件を明確に設定することが、将来的な争いを回避するうえで不可欠です。

株価希薄化の懸念

有償増資によって発行済株式数が増えると、既存株主の1株あたりの価値が薄まる、株価希薄化が発生しやすくなります。これは、株式市場において、株価下落要因の1つとみなされることがあります。

特に、公募増資を実施する際は、市場への影響が大きくなるため、タイミングや増資規模を慎重に判断しなくてはなりません。既存株主との関係構築にも配慮し、説明責任を果たすことが欠かせないものです。

結果的に株主価値を最大化する戦略がなければ、短期的な株価下落リスクや不安定要素を招く可能性があります。

将来を見据えた計画

企業のステージや経営ビジョンによって、有償増資の実施時期や方法を戦略的に考えることが重要です。必要なときに最適な方法で資金を調達できなければ、成長機会を逃してしまうかもしれません。

具体的には、事業計画や成長シナリオに合わせて複数回に分けて増資する、あるいは第三者割当と公募増資を組み合わせるなど、柔軟な工夫が可能です。いずれにしても、社内体制の構築と投資家とのコミュニケーションが求められます。

将来的な株式公開やM&Aを視野に入れている場合などは、長期的に資本構成を最適化するプランを、早い段階で策定しておくとよいでしょう。

有償増資の会計処理

有償増資の会計処理には、いくつか実務上注意する点があります。特に、仕訳や出資金の管理は、ミスが起きやすいため注意が必要です。

仕訳例

有償増資が行われると、まず払込期日までに、出資の申込金が別段預金として管理されます。払込期日に資金が確認でき次第、新株式申込証拠金を振り替えし、資本金や資本準備金に計上する流れをとるのが一般的です。

仕訳は下記の例のようになります。

借方 貸方
現金預金(別段預金) 1,000 新株式申込証拠金 1,000
新株式申込証拠金 1,000 資本金 500
資本準備金 500

このように、資本金と資本準備金をうまく分けることで、将来的な資金需要や税制面にも柔軟に対応できるようになります。

出資金の取り扱い

出資金は、全額を資本金にするだけでなく、その一部を資本準備金に計上することも可能です。資本準備金に割り振ることで、資本金の急激な増加を抑える狙いがあります。

ただし会社法上、資本金と資本準備金を区別するには、一定の手続きが必要です。増資の際に、定款でどのように扱うかを明確にしておかないと、後々の変更手続きが煩雑になる恐れもあります。

そのため、必要に応じて専門家と相談しながら、最適な比率を決定しましょう。

払込時期の注意点

有償増資を実施する際、払込期日の設定は極めて重要です。想定していたスケジュールに遅れが出ると、事業計画に支障をきたすだけでなく、増資そのものが法的に成立しないケースもあります。

特に、第三者割当の場合、投資家側の資金繰りや内部承認の手続きが長引くおそれがあります。あらかじめ日程に余裕をもたせることと、進捗をこまめに共有しておくことが大切です。公募増資では、証券会社との連携も必要になり、さらに日程調整が複雑化します。

こうした点を考慮しながら、最適な払込期日を設定することで、スムーズに手続きを進めましょう。

まとめ

ここまで、有償増資の仕組みや種類、具体的な手続きなどを網羅的に解説しました。メリットとデメリットの両面を理解することで、自社にとっての最適な手段かどうかを判断しやすくなるでしょう。

企業が成長に向けた資金を調達するうえで、有償増資は有力な選択肢です。手続きの流れや仕訳のポイントを理解して、正しく実施するようにしましょう。

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監修者 三坂大作
監修者紹介
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役
三坂 大作(ミサカ ダイサク)

経歴
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1989年 同行ニューヨーク支店勤務
1992年 三菱銀行退社、資金調達の専門家として独立
資格・認定
経営革新等支援機関:認定支援機関ID:1078130011
ヒューマントラスト株式会社:資格者 三坂大作
貸金業登録番号:東京都知事(1)第31997号
ヒューマントラスト株式会社:事業名 HTファイナンス
貸金業務取扱主任者:資格者 三坂大作
資金調達の専門家として企業の成長を支援
資金調達の専門家として長年にわたり企業の成長をサポートしてきました。東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行し、国内業務を経験した後、1989年にニューヨーク支店へ赴任し、国際金融業務に従事。これまで培ってきた金融知識とグローバルな視点を活かし、経営者の力になることを使命として1992年に独立。以来、資金調達や財務戦略のプロフェッショナルとして、多くの企業の財務基盤強化を支援しています。 現在は、ヒューマントラスト株式会社の統括責任者・取締役として、企業の資金調達、ファイナンス事業、個人事業主向けファクタリング、経営コンサルティングなど、多岐にわたる事業を展開。特に、経営革新等支援機関(認定支援機関ID:1078130011)として、企業の持続的成長を実現するための財務戦略策定や資金調達のアドバイスを提供しています。また、東京都知事からの貸金業登録(登録番号:東京都知事(1)第31997号)を受け、適正な金融サービスの提供にも力を注いでいます。
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