2025.04.28
【初心者向け】法人税とは?仕組み・税率・申告までわかりやすく解説
法人税は、法人が事業で得た利益に対して課せられる国税です。
個人事業主の「所得税」に対して、法人の「法人税」。
仕組みや申告手続きが複雑なため、初めて法人を設立する方にとってはわかりづらい部分も多いでしょう。
この記事では、法人税の基本から税率、課税対象、計算方法、納付・申告の流れまで、初心者にもわかりやすく解説します。
法人税の基本を理解しよう
法人税とは?個人事業主との違い
法人税とは、法人が事業によって得た所得(利益)に対して課せられる国税のことです。
対して、個人事業主に課されるのは「所得税」であり、納税の仕組みや計算方法が大きく異なります。
まず、法人税は法人という「法律上の人格を持った存在」が対象となります。
これは、株式会社や合同会社などのように、登記によって設立される事業体を意味します。
一方で、個人事業主は「人そのもの」が事業主体であり、事業で得た利益に対して直接所得税がかかるのです。
また、法人税と所得税では、課税の対象となる所得の分類方法や税率の構造にも明確な違いがあります。
個人の所得税は、給与所得・事業所得・不動産所得など10種類に分類され、それぞれに応じた計算方法を取ります。
しかし、法人税ではそうした分類はなく、法人全体の所得をまとめて課税対象とします。
税率についても違いが見られます。
所得税は「累進課税制度」を採用しており、所得が増えるほど税率も高くなり、最大で45%に達することもあります。
一方、法人税は規模や所得額によって税率が段階的に定められてはいるものの、原則的には一定の税率が適用されるため、シンプルな計算が可能です。
以下に、主な違いをまとめた表を掲載します。
項目 |
法人税 |
所得税 |
課税対象 |
法人の所得 |
個人の所得(事業・給与など) |
課税方法 |
所得全体に一律課税 |
所得の種類ごとに計算 |
税率構造 |
所得金額や法人規模に応じた定率 |
累進課税(最大45%) |
申告期間 |
事業年度終了から2ヶ月以内 |
毎年2月16日~3月15日 |
対象主体 |
法人(会社など) |
個人(個人事業主など) |
このように、法人税と所得税は似て非なる仕組みであり、法人化の際には制度の理解が不可欠です。
節税や資金計画にも大きく関わる部分のため、早い段階での正確な把握が求められます。
法人税の対象となる法人の種類
法人税は、すべての法人に一律に課されるわけではありません。
実際には、「課税対象となる法人」と「課税対象外の法人」に分かれており、それぞれに適用条件があります。
まず、法人税が課される主な法人には、以下のようなものがあります。
【法人税が課される法人】
- 株式会社、合同会社、合資会社、合名会社、有限会社(いわゆる普通法人)
- 医療法人、学校法人、宗教法人(営利目的の収益事業を行う場合)
- 一般社団法人・NPO法人などの非営利法人(収益事業がある場合)
- 協同組合、相互会社、信用金庫など
これらの法人は、事業を通じて得た所得に対して原則として法人税が課されることになります。
一方で、次のような法人は法人税の課税対象から外れます。
【法人税が課されない法人】
- 地方公共団体
- 日本政策金融公庫、国立大学法人
- NHK、日本年金機構、日本中央競馬会など
これらは、公共法人とされ、営利目的ではないため課税の対象外です。
ただし注意が必要なのは、非営利法人や人格のない社団であっても、収益事業を行っていればその所得部分には法人税が課される点です。
例えば、NPO法人がイベントの開催で入場料を得たり、グッズ販売を行ったりするようなケースでは、その収益部分に対して法人税がかかる可能性があります。
また、法人格を持たない団体、例えばPTAや町内会、マンションの管理組合なども「人格のない社団等」として法人税法上の扱いを受けます。
これらも収益事業を行っている場合には、その事業から生じた所得に限って法人税が課されるのです。
法人の種類ごとの課税可否を簡単にまとめると、以下のようになります。
法人の種類 |
法人税の課税対象 |
備考 |
株式会社、合同会社などの普通法人 |
○ |
すべての所得が課税対象 |
一般社団法人、NPO法人など |
△ |
収益事業からの所得のみ課税対象 |
公共法人(国、地方公共団体など) |
× |
原則課税なし |
人格のない社団等(PTA、管理組合など) |
△ |
収益事業がある場合に限り課税 |
どの法人が課税対象になるかを正しく理解することは、設立前の法人形態の選択や、運営方針を決める上でも非常に重要です。
適切な申告と納税を行うためにも、自社の法人区分がどこに該当するかを事前に確認しておくことをおすすめします。
法人税の計算方法と税率
法人税の計算ステップと課税所得の出し方
法人税を正しく納めるためには、課税所得の算出と税額計算の流れをしっかりと理解することが大切です。
ここでは、法人税額を求めるまでの基本的なステップを、初心者にもわかりやすく説明します。
法人税の計算は、以下の4つのステップで行われます。
【法人税計算の基本ステップ】
- 収益(益金)を集計する
商品やサービスの売上収入、不動産の売却収入などを合計します。 - 費用(損金)を集計する
仕入れや人件費、減価償却費、支払利息など、事業に必要な支出を合計します。 - 税務調整を行う
会計上の利益から、税法上のルールに沿って加算・減算を行い、課税所得を算出します。 - 課税所得に法人税率を掛けて税額を算出する
この中で特に重要なのが「税務調整」です。
会計上の利益と税法上の利益(=課税所得)は一致しないことが多く、税務調整が必須となります。
例えば、会計上は経費として計上できる交際費でも、税法上は上限が設けられており、それを超えた部分は「損金不算入」として加算対象になります。
また、企業会計では費用にできないが、税法上は損金として認められる例もあり、そうした差異を調整することで、課税対象となる正確な所得を導き出します。
課税所得の計算式は、以下のとおりです。
課税所得=益金 - 損金 + 加算項目 - 減算項目
この計算を経て得られた課税所得に対して、所定の法人税率をかけ、さらに税額控除があればそれを差し引くことで最終的な法人税額が確定します。
なお、法人税の対象となる所得には、退職年金に関連する「特別法人税」など、例外的な扱いの税目も存在しますが、基本的な仕組みは上記のとおりです。
計算にミスがあると延滞税や加算税の対象になるため、税務調整や所得計算には慎重な確認が必要です。
必要に応じて、税理士のサポートを受けることも検討すると安心でしょう。
法人税率の早見表とポイント解説
法人税の税率は、法人の資本金や課税所得の金額によって異なり、中小企業と大企業で適用される税率が変わります。
特に、資本金が1億円以下の中小法人には、一定条件下で軽減税率が適用されるメリットがあります。
以下に、法人税率の早見表を示します。
【法人税率の早見表(普通法人の場合)】
法人の区分 |
課税所得の範囲 |
法人税率 |
資本金1億円以下(中小法人) |
年間800万円以下の部分 |
15.0% |
同上(適用除外事業者) |
年間800万円以下の部分 |
19.0% |
全法人共通(中小含む) |
年間800万円超の部分 |
23.2% |
資本金1億円超の法人 |
所得全体 |
23.2% |
※「適用除外事業者」とは、過去3年の所得合計が15億円を超えるなど、一定の基準を超えた中小法人のことです。
この表からもわかるとおり、資本金1億円以下かつ中小企業に該当する法人は、最大800万円までの所得に対して軽減税率(15%)が適用されます。
この軽減措置は、創業期や小規模事業者にとっては非常に大きな恩恵と言えるでしょう。
一方で、資本金1億円を超える大企業や適用除外事業者に対しては、すべての所得に対して一律で23.2%の税率が適用されます。
つまり、法人税の負担は会社の規模や利益状況によって変わることになります。
さらに、法人税額から控除できる「税額控除制度」も活用可能です。
代表的なものは以下の3つです。
- 所得税額控除:配当金や預金利息にかかる所得税の二重課税を回避
- 外国税額控除:国外で課税された税額を国内の法人税から差し引き
- 租税特別措置法による控除:研究開発費、賃上げ促進など政策目的の控除
税率だけでなく、これらの控除制度をうまく活用することで、実質的な税負担を軽くすることが可能です。
ただし、制度の適用には一定の要件や手続きが求められるため、事前に国税庁のガイドラインを確認するか、税理士への相談をおすすめします。
法人税の申告・納付手続き
法人税の申告期限と中間申告のルール
法人税は「申告納税方式」によって納める税金です。
つまり、法人自らが所得を計算し、申告書を作成して納税する必要があるという仕組みです。
このため、申告と納付の期限を正しく理解しておくことがとても重要です。
まず、法人税の確定申告は、法人の事業年度終了日の翌日から2か月以内に行うことが原則です。
例えば、3月決算の法人であれば、5月末日が申告期限となります。
なお、定款に「定時株主総会を事業年度終了後3か月以内に開催する」と記載されていれば、税務署に「申告期限の延長の特例に関する申請書」を提出することで、申告期限を1か月延長することも可能です。
ただし、納付期限は延長されないため、見込み額で納付しておく必要がある点には注意しましょう。
加えて、法人には「中間申告」という制度もあります。
中間申告とは、事業年度の中間時点で、前年度の法人税額を基準として一部をあらかじめ納める制度です。
これは、年間の税負担を分散し、国の財政安定を図る目的があります。
中間申告の対象となるのは、前事業年度の法人税額が20万円を超える法人です。
この場合、事業年度開始日から6か月を経過した日から2か月以内に、中間申告と納付を行わなければなりません。
例えば、事業年度が4月1日から翌年3月末までの法人は、10月末までに中間申告と納付が必要です。
また、2通りの中間申告方法があります。
【中間申告の方法】
- 予定申告方式:前年度の法人税額を12で割り、6か月分を納付
- 仮決算方式:中間期末の損益計算に基づいて申告・納付
納税額に違いが出るため、業績の変動が大きい法人は仮決算方式を選ぶことで、納付額を抑えられる可能性があります。
中間申告を忘れると、前年度を基にした予定納税額が自動的に確定し、納付義務が発生します。
申告・納付のスケジュール管理は、経理部門や顧問税理士と連携して確実に行うことが大切です。
法人税の納付方法と支払手段
法人税の納付は、複数の方法から選ぶことができ、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。
業務の効率化やポイント還元の観点から、近年では電子納付が主流となりつつあります。
【法人税の主な納付方法】
納付方法 |
特徴 |
メリット |
注意点 |
クレジットカード納付 |
専用サイトから納付 |
ポイントが貯まる・24時間対応 |
決済手数料がかかる・領収書は発行されない |
ダイレクト納付 |
e-Taxで事前登録が必要 |
即日引き落とし可・手数料なし |
初期設定が必要・記録保存は自己管理 |
インターネットバンキング納付 |
ネット銀行利用で納付 |
オンライン完結・便利 |
事前準備が必要・対応金融機関に制限あり |
現金納付(窓口) |
金融機関または税務署で納付 |
窓口で領収書発行・確実な記録 |
窓口対応時間に制限・時間的負担あり |
コンビニ納付 |
30万円以下のみ対応 |
手軽で便利・最寄りで納付可能 |
納付書またはQRコードが必要 |
スマホ納付 |
30万円以下に対応 |
PayPayやLINE Payなどで納付可能 |
領収書が発行されない |
中でも、ダイレクト納付やインターネットバンキングを利用した「電子納付」は、業務効率やキャッシュレス化の面でも非常に優れた手段です。
また、クレジットカード納付はポイント還元などがあるため、資金に余裕があり決済手数料を受容できる法人にはおすすめです。
注意すべきは、納付額に応じた決済手数料の発生や、支払証明書(領収書)が手元に残らないケースがあることです。
電子納付やスマホ納付を選ぶ場合は、支払い記録のスクリーンショットや取引明細の保存が重要になります。
また、振替納税制度もあります。
これは、あらかじめ登録した法人の銀行口座から、申告内容に基づき自動的に引き落とす仕組みで、納め忘れの防止に役立ちます。
納付方法は事業規模や内部の業務フローに合わせて選択することが重要です。
経理の負担を減らすと同時に、正確でスムーズな納付体制を整えることで、税務リスクの軽減にもつながります。
法人税対策と相談先
法人税を節税するテクニック
法人税の負担を軽減するためには、合法的な節税対策を日頃から意識的に実践することが不可欠です。
節税とは、法律の範囲内で適切に経費を計上したり、制度を活用したりして、課税対象となる所得を可能な限り抑えることを目的とした行為です。
特に中小企業にとっては、ちょっとした工夫で税額に大きな差が出ることもあるため、知っているかどうかが経営を左右するポイントとなります。
以下に、代表的かつ実践しやすい節税方法をまとめました。
【法人税の主な節税テクニック】
節税方法 |
内容 |
ポイント |
役員報酬の適正化 |
役員報酬を損金にできる |
毎月定額であれば損金算入可能(定期同額給与) |
福利厚生費の活用 |
社員旅行・社宅・健康診断など |
社員の福利向上と節税が両立できる |
不要在庫・固定資産の処分 |
不要資産の評価損や除却損を損金計上 |
管理コスト削減にも有効 |
欠損金の繰越控除 |
赤字を翌年度以降に繰り越せる制度 |
最大10年間の繰越が可能(青色申告法人のみ) |
交際費の有効活用 |
飲食費や接待費を損金計上 |
中小法人なら年間800万円まで損金にできる |
中小企業倒産防止共済の活用 |
掛金が全額損金になる制度 |
万一の資金繰りリスクにも備えられる |
例えば、役員報酬は一定の条件を満たすことで経費として認められ、所得を大きく圧縮できる効果があります。
ただし、期中で報酬を変更してしまうと損金として認められなくなるため注意が必要です。
また、中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)は、万が一の取引先倒産時の備えになるだけでなく、掛金月額20万円・年間最大240万円までを損金処理できる優れた制度です。
節税は「支出を増やす」のではなく「お金の使い方を工夫する」ことが基本です。
また、節税対策には最新の税制改正への対応が求められるため、定期的な情報収集と専門家の意見を取り入れることも重要なポイントです。
税理士への相談で得られるメリット
法人税に関する業務は、単に税額を計算して納付するだけでなく、法律や会計に関する専門的な判断が求められる場面が非常に多いです。
そこで心強い存在となるのが「税理士」です。
税理士に相談することで、法人税に関する複雑な処理や節税対策を適切に進めることができ、経営者自身が本業に集中しやすくなるという大きなメリットがあります。
具体的に、税理士に依頼することで得られる代表的なメリットは以下のとおりです。
【税理士に相談する主なメリット】
- 税務申告の正確性が向上する
帳簿の記載や税務調整など、誤りや漏れがなくなるため、延滞税や加算税といったペナルティを防げます。 - 節税のアドバイスが受けられる
税法に精通した税理士だからこそ、企業ごとの状況に応じた節税戦略を提案してもらえます。 - 税務調査への対応が安心
税務署からの問い合わせや調査があった場合も、税理士が窓口として対応するため、精神的・時間的な負担が大きく軽減されます。 - 補助金・助成金などの最新情報が得られる
税理士は経済産業省や自治体が提供する制度にも精通しているため、資金調達のアドバイスも受けられることがあります。 - 会計ソフトや電子申告(e-Tax)への対応もスムーズ
クラウド会計ソフトとの連携や、電子帳簿保存法・インボイス制度への対応も任せられるので、制度変更時も安心です。
さらに、弥生などが提供する「税理士紹介サービス」を利用すれば、自社の業種や規模に合った信頼できる税理士を無料で紹介してもらえるので、初めて依頼する場合にも安心です。
「税理士に依頼するのはコストがかかる」と感じるかもしれませんが、結果的には税金やミスによるリスクの回避、手間の削減で十分に元が取れることが多いです。
とくに法人税は毎年発生する重要な業務ですので、自社の経営と税務のパートナーとして税理士を活用することは、企業の健全な成長にもつながります。
まとめ
本記事では、法人税の基本的な仕組みから税率の考え方、申告・納付の手続き、さらには節税対策や税理士活用のポイントまでを詳しく解説しました。
法人税は、企業が成長する中で避けては通れない重要な義務であり、制度を正しく理解し、戦略的に対応することが経営上のリスク回避と利益最大化につながります。
しかしながら、税務に関する知識は複雑で、どのような方法が自社にとって最も有効なのかを見極めるのは容易ではありません。
節税や資金繰りを考える上でも、正確な判断と専門的な視点が求められます。
そんなときこそ、HTファイナンスが頼れるパートナーになります。
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