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2025.05.22

経営計画書とは?基本から作成手順まで解説

経営計画書は、企業が将来どうあるべきかを明文化し、経営の方向性を明確にする「戦略の地図」です。資金調達や組織改革、社員との目標共有など、多くのシーンでその重要性が増しています。本記事では、経営計画書の役割から具体的な作成方法、テンプレートの活用法までを丁寧に解説します。

経営計画書の基本を理解する

経営計画書とは何か?事業計画書との違い

経営計画書とは、企業が将来どのような姿を目指すのかを明文化し、その達成に向けた戦略や行動計画を体系的にまとめた文書です。

組織全体の方向性や方針、数値目標、具体的なアクションプランまでを一貫性を持って記載することで、経営の軸を社内外に示す役割を果たします。

 

一方で、しばしば混同されるのが「事業計画書」です。

事業計画書は、特定のプロジェクトや新規事業に特化した実行計画であり、経営計画書よりも狭い範囲の内容を対象としています。

 

例えば、ある製品の市場投入に向けて必要なマーケティング戦略や資金調達の計画を記載するのが事業計画書です。

 

この2つの計画書には以下のような違いがあります。

項目

経営計画書

事業計画書

対象範囲

会社全体

特定の事業・プロジェクト

目的

経営の方向性・長期戦略の共有

新規事業・短中期の事業実行

期間

中期〜長期(3〜10年)

短中期(半年〜3年)

主な利用者

経営陣・社員・金融機関・投資家

経営陣・事業責任者・融資担当者

 

経営計画書が企業の「航海図」だとすれば、事業計画書は「航海中の個別作戦書」と言えるでしょう。

両者は補完関係にあり、それぞれの目的に応じて使い分けることが求められます。

 

特に資金調達や事業成長を考える企業にとっては、この違いを正確に理解したうえで計画書を作成・提出することが信頼獲得の第一歩となります。ただし、会社全体の方針を表現する場合は、経営計画書と事業計画書の内容は同じだと言えます。

 

特に資金調達や事業成長を考える企業にとっては、この違いを正確に理解したうえで計画書を作成・提出することが信頼獲得の第一歩となります。

経営計画書の目的と必要性

経営計画書を作成する最大の目的は、会社のビジョンや目標、達成のための方針や具体策を「可視化」し、関係者と共有することにあります。単なる経営者の頭の中にある構想ではなく、文書として残すことで、組織全体が一丸となって同じゴールを目指すことが可能になります。

 

例えば、社員一人ひとりが何を目指して働くのか、どのような成果を期待されているのかを把握できていなければ、業務の方向性がバラバラになり、組織としての生産性は著しく低下してしまいます。

しかし、経営計画書を通じて明確な指針を示せば、社員のモチベーションも高まり、行動のブレが少なくなります。

 

また、外部のステークホルダーに対しても、経営計画書は非常に有効な情報提供ツールです。

特に金融機関に融資を依頼する際には、収益見込みや資金繰り計画、投資戦略などが明記された経営計画書の提出が求められるケースが多くあります。

適切な計画書があることで、返済能力の根拠が明確となり、審査がスムーズになる可能性も高まります。

 

さらに、中小企業やスタートアップ企業においては、経営計画書があること自体が組織としての信頼性を高める材料になります。

曖昧な感覚で経営するのではなく、数字と戦略に基づいたロジカルな経営判断がなされていることを証明できるのです。

 

つまり、経営計画書は「経営の羅針盤」であると同時に、内部改革と外部信頼を同時に推進するための土台とも言えます。

企業規模にかかわらず、持続的な成長を目指す経営者にとって、必須のツールと言えるでしょう。

経営計画書に盛り込むべき項目

経営理念・ビジョン・数値目標などの構成要素

経営計画書を作成するにあたっては、会社の根幹をなす理念や将来像、具体的な目標などを盛り込むことが重要です。

これらの要素が明確に示されていることで、社員や関係者が会社の方向性を理解しやすくなり、日々の業務の中で迷いなく行動できるようになります。

 

まず最初に示すべきは「経営理念」です。経営理念とは、企業の存在意義や価値観を言語化したものであり、すべての経営判断の基準になる最上位概念です。

例えば、「地域社会への貢献を通じて持続可能な成長を実現する」といった理念は、事業選定や人材育成のあり方にまで影響を与えます。

 

次に必要なのが「ミッション」と「ビジョン」です。ミッションは、会社の存在意義を社会的に明示したもので、ビジョンは、会社が将来的にどうありたいのかという“目指す姿”を具体的に示すものです。

「事業活動を通じて、社会の***に貢献する」「5年後に業界トップの顧客満足度を達成する」など、社員がイメージしやすく、共有しやすい形にすることがポイントです。

 

そのうえで「数値目標」も欠かせません。売上や利益、顧客数、新規出店数など、明確なKPI(重要業績評価指標)を設定し、達成度を測定できるようにすることが求められます。

 

数値は目標の進捗を客観的に評価できる指標であり、外部への説明力も高まります。

 

以下は、経営計画書における主要な構成要素の一例です。

 

項目

内容

重要性の理由

経営理念

企業の存在意義・価値観

判断軸の統一に役立つ

ビジョン

5〜10年後の理想像

社員の方向性を揃える

ミッション

現在の社会的役割

顧客や社会への約束

数値目標

売上・利益・成長率など

成果の可視化と評価指標

行動指針

日々の行動基準

現場レベルでの一貫性を保つ

 

これらの要素をバランスよく盛り込み、論理的に構成された経営計画書は、組織の結束力を高めると同時に、対外的な信頼の証ともなります。

中期・短期・長期計画の違いと使い分け

経営計画書は、期間ごとに「長期」「中期」「短期」に分類して考えることが一般的です。

 

それぞれの期間で設定すべき内容や精度が異なるため、目的に応じて使い分けることが成果に直結します。

 

まず「長期計画」は、通常5〜10年程度を対象とした将来構想です。

この段階では、あくまで方向性や理念の実現に向けた“理想像”を描くことが重要です。

例えば、「国内シェアNo.1企業を目指す」「海外展開によるグローバルブランドの確立」など、数値よりもビジョン重視の内容が中心になります。

 

続いて「中期計画」は、3〜5年をスパンとした具体的な戦略と数値目標をまとめたものです。

売上・利益・市場シェアの目標値や、それを実現するための投資計画・人材戦略などを定めます。

中期計画は、最も実行性と現実性が求められるため、予算策定や資金調達計画とも密接に関係します。

 

最後に「短期計画」は、1年単位で設定される実行レベルの計画です。

年間の営業方針や部門別目標、個人の行動計画などが含まれ、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回すための土台となります。

ここでは、売上目標の月別設定やキャンペーンスケジュール、評価基準なども詳細に記載します。

 

このように、各期間の計画を適切に使い分けることで、企業は理想から現場レベルまでのすべてのレイヤーで一貫性を持った経営が可能になります。

 

計画の種類

対象期間

内容の特徴

使用目的

長期計画

5〜10年

理念・ビジョン中心

将来像の明確化

中期計画

3〜5年

数値目標・戦略

経営戦略の具体化

短期計画

1年以内

実行計画・KPI

日々の運営と評価

 

これらの計画はそれぞれ独立して存在するのではなく、長期→中期→短期へと具体化されていく「階層構造」である点がポイントです。

経営者や管理職は、それぞれの段階で何を優先すべきかを把握し、計画書に正確に反映させる必要があります。

経営計画書の作成方法と活用法

作成の流れとテンプレート活用法

経営計画書の作成には、一定のステップを踏むことで、誰でも実用的で説得力のある内容を作ることが可能です。

特に初めて作成する場合は、流れに沿って作業を進めることで、迷わずスムーズに作り上げることができます。

 

まず最初に取り組むべきは「現状分析」です。自社の強み・弱み、機会・脅威を把握するSWOT分析などを活用して、客観的な立場から現状を整理しましょう。

この分析が曖昧だと、その後に記載する戦略や数値計画にも一貫性が生まれません。

 

次に「ビジョン・経営理念・ミッション」を明文化します。経営者が目指す将来像や社会的使命を、誰にでも理解できる言葉で表現することが重要です。

ここで設定した指針が、すべての計画の出発点になります。

 

続いて「具体的な目標の設定」と「戦略立案」を行います。

例えば、「3年以内に売上を2倍にする」といった数値目標に対し、どのようなマーケティング施策や商品開発、人員体制で達成するのかを戦略として明示します。

この部分は金融機関や投資家の評価対象となるため、実現可能性の高い計画に仕上げましょう。

 

そして「アクションプラン」と「スケジュール」を設定します。

ここでは、各施策をいつまでに、誰が、どのように実施するかを具体的に記載することで、計画が“絵に描いた餅”になることを防げます。

 

作成に不安がある方には、テンプレートの活用がおすすめです。以下のようなテンプレート形式がよく利用されます。

 

テンプレート形式

特徴

活用ポイント

Excel形式

項目別に数値入力しやすい

売上計画や収支予測に便利

PowerPoint形式

プレゼン資料に適する

投資家や銀行向け説明に有効

Word形式

文書としての保存に向く

経営理念や戦略の記述に最適

 

テンプレートを使用すれば、内容の漏れや形式の乱れを防げるため、初学者でも安心して取り組めます。

特にマネーフォワードなどが提供する無料テンプレートを活用することで、効率よく、かつ実用性の高い経営計画書を作成できるでしょう。

経営計画書を社内外でどう共有するか

せっかく作成した経営計画書も、共有の方法や範囲を誤ると、その価値は半減してしまいます。

経営計画書は「作ること」だけでなく、「誰に、どのように伝えるか」まで考えてはじめて、組織全体に機能する戦略文書となります。

 

まず社内においては、経営陣・管理職・一般社員といった各レベルに応じた共有が必要です。

例えば、経営陣には中長期の戦略や財務計画を中心に、現場社員には日々の業務目標や行動指針を強調して伝えることが効果的です。

 

社内共有の手段としては、以下のような方法が考えられます。

 ・社内説明会・キックオフミーティングの実施
 ・部門別の落とし込み会議
 ・社内ポータルサイトやクラウドストレージでの配布
 ・定期的な進捗報告とリマインド

重要なのは、計画を「理解させる」だけでなく、「納得し、自らの行動に反映させる」ことです。

そのためには、対話やフィードバックの機会を設け、計画の背景や意図を共有する工夫が求められます。

 

一方で、社外に対しても経営計画書は有効なコミュニケーション手段です。

特に以下のような場面では、計画書の提示が大きな信頼材料となります。

 ・金融機関からの融資申請
 ・ベンチャーキャピタル等の投資家への説明
 ・取引先との提携交渉
 ・上場準備やIR活動

ただし、社外に共有する場合は、企業秘密や個人情報の取り扱いに十分注意しなければなりません。

必要に応じて情報を取捨選択し、要点をプレゼン用にまとめるなどの配慮も求められます。

 

共有先

共有の目的

留意点

社員全体

方向性と役割認識の統一

言葉選びを平易にする

金融機関

収益性と返済能力の提示

財務計画の正確性

投資家

成長性・事業の魅力訴求

プレゼン資料化が有効

 

経営計画書は“作成して終わり”ではありません。適切な共有を通じて初めて、経営資源を最大限に活用できるのです。

まとめ

本記事では、経営計画書の基本的な概念から、構成要素、作成手順、さらに社内外での活用法までを幅広く解説しました。

経営計画書は、企業の将来像を明確にし、実現に向けた具体的な行動を可視化するための重要なツールです。

 

しかし、実際に作成してみると、どの項目にどれだけの情報を盛り込むべきか、どこまで数値に落とし込むかなど、判断に迷う場面も多くあるでしょう。

 

そんなお悩みをお持ちの企業様にこそ、HTファイナンスのサポートをご活用いただきたいと考えています。

 

HTファイナンスでは、経営計画書の作成支援はもちろんのこと、その計画をもとにした融資や資金調達の戦略立案まで一貫してご提案しております。

30年にわたる実績と専門知識を活かし、貴社に最適な経営・資金戦略をオーダーメイドで構築いたします。

 

経営計画書のブラッシュアップや融資に強い計画の作成をお考えの方は、ぜひお気軽にHTファイナンスまでご相談ください。

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監修者 三坂大作
筆者紹介 ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役三坂 大作(ミサカ ダイサク)

経歴
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1989年 同行ニューヨーク支店勤務
1992年 三菱銀行退社、資金調達の専門家として独立
資格・認定
経営革新等支援機関:認定支援機関ID:1078130011
ヒューマントラスト株式会社:資格者 三坂大作
貸金業登録番号:東京都知事(1)第31997号
ヒューマントラスト株式会社:事業名 HTファイナンス
貸金業務取扱主任者:資格者 三坂大作
資金調達の専門家として企業の成長を支援
資金調達の専門家として長年にわたり企業の成長をサポートしてきました。東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行し、国内業務を経験した後、1989年にニューヨーク支店へ赴任し、国際金融業務に従事。これまで培ってきた金融知識とグローバルな視点を活かし、経営者の力になることを使命として1992年に独立。以来、資金調達や財務戦略のプロフェッショナルとして、多くの企業の財務基盤強化を支援しています。 現在は、ヒューマントラスト株式会社の統括責任者・取締役として、企業の資金調達、ファイナンス事業、個人事業主向けファクタリング、経営コンサルティングなど、多岐にわたる事業を展開。特に、経営革新等支援機関(認定支援機関ID:1078130011)として、企業の持続的成長を実現するための財務戦略策定や資金調達のアドバイスを提供しています。また、東京都知事からの貸金業登録(登録番号:東京都知事(1)第31997号)を受け、適正な金融サービスの提供にも力を注いでいます。
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