2025.05.31
銀行返済と納税、どちらを優先すべき?資金不足でも納税を優先すべき理由
資金不足の状況に陥ると、銀行への返済を優先したい気持ちが強くなる経営者も多いものです。やはり返済が滞ると、金融機関からの信用を損ねるのではないかと不安を感じるからです。
しかし、税金や社会保険料を後回しにすることには、実は見落としがちなリスクが潜んでいます。延滞金や信用情報への悪影響など、後々大きな負担となる可能性もあるため軽視できません。
本記事では、資金不足のときでも納税を優先して支払うべき理由や、支払いを怠った際のリスクについて詳しく解説します。あわせて、資金調達の選択肢や専門家のサポートの活用方法にも触れていきます。
税金は後回しになりやすい
銀行への返済を優先し、税金を後回しにしてしまう企業は多く存在します。その背景にはどのような理由があるのでしょうか。
返済が遅れる場合、銀行からの督促や信用格付けへの影響が心配になるため、どうしても納税より返済を先に考えてしまうことがあります。銀行融資は企業の資金調達手段として重要な位置を占めるため、直接金融機関との関係維持に神経を使う経営者は少なくありません。
一方、税務当局は比較的督促が遅れるケースもあり、「後でなんとかなる」と思いがちです。しかし、税務当局が本格的に動き出すと、延滞金や財産の差し押さえなど極めて深刻な処分が下る可能性があります。
このように、最初は小さな意識のズレが、後々大きなトラブルに発展しかねないため、納税の後回しは慎重になるべきです。
税金や社会保険料を後回しにする理由
なぜ税金や社会保険料が後回しになるのか、理由は簡単です。
資金繰りが厳しいと「今すぐ督促がこない税金なら少し待ってもらえるだろう」と考えがちです。銀行や取引先の支払い優先は、目先での信用維持につながるという心理的な要因も大きいでしょう。
また、社会保険料に関しても毎月の支出として見逃せない金額であるため、経営が苦しいときには取りあえず優先度を下げてしまうことがあります。しかし、これらは法律で義務付けられた支払いであり、滞納すると延滞金だけでなく事業全体の信頼を失うリスクが生じます。
この「一時しのぎ」が癖になると、税金や保険料の支払いが積み重なっていき、後々取り返しのつかない事態に陥ることもあるため、安易な発想には注意が必要です。
後回しの問題点
税金や社会保険料の支払いを後回しにすることで、どのようなリスクや問題が生じるのでしょうか。
税金の支払いは法律で厳格に管理されており、納付期限を過ぎれば延滞金が自動的に発生します。これに加え、銀行から追加融資を受ける場合の審査でも税金の滞納が問題視されることは避けられません。
さらに、税務当局から財産や売掛金を差し押さえられれば、事業活動そのものが制限され、資金調達どころか日常的な運営にも支障をきたします。最終的には企業の破産に至るリスクを高めるなど問題が連鎖的に発生するため、税金を後回しにするのは非常に危険です。
問題の連鎖は、典型的なパターンで考えるとよく分かります。すなわち、
- 後回しにより延滞金が発生する(後回しが長引くにつれて延滞金が大きくなる)
- 銀行融資が受けられなくなる
- 資産が差し押さえられる
- 破産する
という流れです。
1、延滞金が発生する
税金を延滞すると延滞金がかかります。延滞金率は、
- 納付期限の翌日から2ヶ月を経過するまでの期間:年7.3%
- 納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日の翌日以降:年14.6%
となっています。ただし、時期によっては延滞税特例基準が設けられているため、2021年時点での延滞金率は、
- 納付期限の翌日から2ヶ月を経過するまでの期間:年2.5%
- 納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日の翌日以降:年8.8%
となっています。
年間の所得が2,000万円の会社では、年間所得が800万円以下の部分に対して15%、800万円超の部分に対して23.4%が課税され、法人税額は401万円となります。この納付を後回しにした場合に課せられる延滞金は、以下の通りです(延滞税特例基準を考慮しない場合)。
納税額 | 延滞税率 | 延滞金 | 納付額 | |
1ヶ月目 | 4,010,000 | 7.3% | 24,060 | 4,034,060 |
2ヶ月目 | 4,010,000 | 7.3% | 48,120 | 4,058,120 |
3ヶ月目 | 4,010,000 | 14.6% | 96,240 | 4,106,240 |
4ヶ月目 | 4,010,000 | 14.6% | 144,360 | 4,154,360 |
5ヶ月目 | 4,010,000 | 14.6% | 192,480 | 4,202,480 |
6ヶ月目 | 4,010,000 | 14.6% | 240,600 | 4,250,600 |
7ヶ月目 | 4,010,000 | 14.6% | 288,720 | 4,298,720 |
8ヶ月目 | 4,010,000 | 14.6% | 336,840 | 4,346,840 |
9ヶ月目 | 4,010,000 | 14.6% | 384,960 | 4,394,960 |
10ヶ月目 | 4,010,000 | 14.6% | 433,080 | 4,443,080 |
11ヶ月目 | 4,010,000 | 14.6% | 481,200 | 4,491,200 |
12ヶ月目 | 4,010,000 | 14.6% | 529,320 | 4,539,320 |
12ヶ月間延滞すると、累積での延滞金は50万円を超えます。延滞金が大きくなるほど納付が難しくなり、支払いがどんどん先延ばしになっていきます。
また、12ヶ月も延滞していると、そのころには更に直近年度の法人税が発生しています。1年分を納付できない会社が、2年分をまとめて納付できるはずはなく、後回しが後回しを呼ぶ悪循環に陥ります。
2、銀行融資が受けられなくなる
銀行融資の審査において、企業の納税状況は重要な信用指標の一つです。税金の滞納があると、返済能力に不安があるとみなされ、新たな借入や追加融資が難しくなります。
特に運転資金の確保や設備投資など、事業を拡大する際には資金調達が欠かせません。融資が受けられないとなると、ビジネスの成長が停滞するだけでなく、日常的なキャッシュフローにも大きな影響を及ぼします。
銀行からの信用が下がると、取引先や他の金融機関にも間接的に悪影響を与える恐れがあるので、納税の滞りは慎重に避ける必要があります。
3、資産が差し押さえられる
税務当局は、滞納が一定期間を超えると資産の差し押さえという強制的な手段に踏み切ります。これは銀行の担保権行使よりも強力であり、事前に通告はあっても企業にとっては深刻な打撃です。
資産を差し押さえられると、設備や不動産を担保にした資金調達だけでなく、売掛金などの流動資産からも調達が困難になる場合があります。結果として、事業の継続に必要なキャッシュさえ自由に使えなくなる恐れがあるのです。
差し押さえを回避するには、早めに税務当局へ納税相談を行い、分割納付や猶予制度の活用を検討することが不可欠です。
4、破産する
延滞金の積み重ね、融資の打ち切り、資産の差し押さえなど、複合的な追い込みによって最終的に破産に至るケースも存在します。倒産が視野に入ると従業員や取引先との関係も悪化し、経営の立て直しが難しくなります。
破産は企業だけでなく、代表者個人の経済活動にも大きな影響を与えます。再起を図る上でも信用面のダメージは避けられず、こうした事態を回避するための状況把握と早期対応が大切です。
納税を軽視していると想像以上にリスクが大きくなるため、資金不足であってもまずは税務面の健全性を確保することを忘れてはいけません。
納付を優先しよう
こうしたリスクを避けるためにも、税金や社会保険料の納付を優先することが重要です。
税金の滞納を防ぐためには、会社のキャッシュフローを見直し、早い段階から資金繰り計画を立てることが有効です。銀行融資だけでなく、助成金や補助金の活用、デットファイナンスやエクイティファイナンスなど多様な資金調達手段を検討し、納税資金を確保するのも一つの方法です。
分割納付や納税猶予といった制度をうまく利用することで、短期的な資金不足を乗り切るケースもあります。しかし、その際も長期的な経営戦略の中で、納税を優先的に位置づけることが大切です。
納税を優先することは、結果的に企業の信用力を高め、新規融資や取引先の信頼獲得にもつながります。リスクを最小限に抑えるためにも、安易に後回しにせず、専門家に相談しながらまずは納税義務を果たすようにしましょう。
よくある質問
資金が足りない場合、まず何を検討すべきかという質問が多く寄せられます。最初に確認するのは、税務当局との相談による分割納付や他の猶予条件の有無です。可能な範囲で支払い計画を立て、早期に合意を得ることでリスクを抑えます。
また、運転資金を確保しながら納税を行うために、ファクタリングやリースバックなどのアセットファイナンスを利用する選択もあるでしょう。売掛金や保有資産を活用して、一時的なキャッシュを獲得する手段として注目を集めています。
専門家に相談することで、適切な助成金や補助金の情報を得られる場合もあります。これらを活用することで納税分をまかなえるケースもあるため、一人で悩まずに早めにプロのアドバイスを仰ぐことをおすすめします。
まとめ
銀行返済と納税の優先順位については、資金不足のときでも納税を重視することがリスク回避の要となります。
税金を後回しにすると、延滞金や差し押さえなどの大きなリスクを抱え込むことになります。これは事業継続を脅かすだけでなく、今後の資金調達にも悪影響を及ぼしかねません。
返済や資金繰りに追われる状況だからこそ、まずは納税を優先して信用維持に努めるべきです。適切な支援策やファイナンス手法を活用しながら、早めに専門家の協力を得ることで、経営を安定軌道に乗せられる可能性が高まります。
資金が必要な場合でも、納税を軽視せず計画的に経営を行うことで、長期的に見て企業の価値と信頼性を守ることができます。
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