2025.06.26
起業資金はいくら必要?計算すべき4つの資金と考え方
起業をする際には、事業開始から安定した収益が出るまでの資金計画が不可欠です。
本記事では、起業に必要な4種類の資金の考え方と計算ポイントを解説し、起業後の資金不足リスクを減らすためのヒントをお伝えします。
起業資金を計算するには?
事業を立ち上げるにあたって、まずはどれだけ資金がかかるかを試算する必要があります。
起業時に必要な資金を正しく算出するには、事業アイデアを具体的な売上と支出の数値に落とし込むことが重要です。なぜなら、どれほど優れた事業プランでも資金計画が曖昧だと、急な出費や運転資金不足に陥る可能性が高まるからです。資金調達の方法には自己資金、借入、出資など複数の選択肢があるため、それぞれのメリットとリスクを見極める視点が欠かせません。
事業計画を可視化し、それに紐づくコストを一つひとつ明らかにすることで、貯蓄や融資をどの程度必要とするかが明確になります。特に創業期は売上が不安定であることが多く、現金の流れが読みづらいものです。こうしたリスクを最小限に抑えるためにも、しっかりとした計画を立てることが大切です。
まずは1年目のシミュレーションを
起業後の1年目は売上が安定しないケースが多く、想定外の支出が発生することも珍しくありません。そこで、まず1年目の月々の売上・支出のシミュレーションを行い、最終的にどれだけの資金が不足するかを把握しましょう。これにより、資金調達の時期や具体的な金額を明示的に決めることができます。
この試算により不足額が分かったら、公的融資や銀行融資、エクイティファイナンスなどの資金調達手段を検討するステップに進みます。赤字分をあらかじめ補えるかどうかは、事業の安定性にも直結する重大なポイントです。
開業準備資金を細分化する
事業を始めるために必要となる設備や備品などに関わる資金を具体的に把握しておきましょう。
開業前に多くの経費が集中するのが開業準備資金です。店舗を構える場合は内装工事や什器・机などの購入費用、オンラインでビジネスを行う場合でもパソコンやネット環境整備などの初期費用が発生します。予算をしっかり立てておくことで、事業開始後のキャッシュフローを圧迫しないようにすることができます。
準備段階での資金調達方法としては、自己資金の他に創業融資や補助金、助成金の活用も検討できるでしょう。ただし、申請から入金までに時間がかかるケースも多いので、必要なタイミングを見越して計画を立てるように心掛けます。
設備資金
設備資金には、オフィスや店舗の内装工事費、什器や机・椅子などの物品費、機器類の購入費などが含まれます。これらは事業のイメージを大きく左右するため、デザインや使い勝手が重要ですが、同時に初期投資の大きさにも注意が必要です。
特に調理設備や製造設備などが必要な業種では、大きな資金が必要になる場合があります。高額な設備を導入する前に本当に投資が見合うかを確認し、導入後の収益モデルも合わせて検討しましょう。
価値が減少しない資金
店舗やオフィス契約時に発生する敷金や保証金は、退去時に返還される場合があります。つまり、固定費として計上しなくても済む部分があるため、出資や融資に頼る前にこの仕組みを理解しておくことは重要です。
しかし、敷金や保証金は長期間資金がロックされるリスクもあり、すぐに活用はできません。予算全体を組むときには、いつ返還されるのか、あるいはどのような条件で全額返ってこない可能性があるかなど、細かい契約内容をよく確認しましょう。
在庫や消耗品
小売業であれば商品の在庫確保、サービス業でも必要な備品や消耗品のコストを考慮する必要があります。特に在庫は売れ残るリスクもあるため、仕入れタイミングや数量管理を慎重に行わなければなりません。
在庫管理を適切に行うことで無駄な資金の流出を防ぎ、キャッシュフローを安定させることが可能です。その一方で不足が起こると機会損失に繋がるため、事業規模と売上見込みに応じてバランスの良い在庫管理を心掛けましょう。
運転資金も考慮しておく
事業開始後の仕入れや人件費、賃料などの継続的な支出を支えるための資金が運転資金です。
運転資金は、ビジネスを継続するうえで必要な経費をカバーするための費用です。これが不足すると、黒字経営でも一時的な資金不足から倒産に至るケースもあるため、特に注意が必要です。
起業当初は売り上げが安定せず、経費が収益を上回りやすい時期が続くこともあります。順調なスタートアップを実現するためにも、運転資金の確保や調達方法を常に視野に入れて経営を行いましょう。
運転資金とは?
製造業や小売業では仕入れの支払いが先行し、売上回収は後になるパターンが多いものです。このタイムラグを埋めるのが運転資金の大きな役割です。運転資金が不足すると仕入れが止まったり従業員への給与支払いが遅れたりと、事業運営に支障をきたすリスクが高まります。
手元資金を確保するためには、融資だけでなくクレジットカードやファクタリングなど多様な資金調達手段を並行して検討するのも有効です。時期や規模に応じて最適な手法を選ぶことが長期的な安定につながります。
※運転資金の具体的な計算方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
(→運転資金の計算方法はこちらでチェック)
創業期の運転資金は余裕をもって
創業時は経営の基盤がまだ固まっていないため、想定外の出費や売上不振に直面する可能性が高いです。資金繰りが厳しくなる局面を乗り越えるためには、一定の余裕をもって運転資金を確保しておくことが大切です。
売上の増加が予想通りにならなかったり融資審査で想定よりも時間を要したりと、計画通りにいかないことは珍しくありません。そのため、保守的な見積もりを行い資金がショートしないよう準備しておきましょう。
赤字補填資金も確保する
事業が軌道に乗るまでは赤字が続くことを想定し、損失を補うための予備資金が必要です。
創業初期の赤字をどこで補うかは、事業を無理なく継続できるかどうかを左右する大きな要素です。計画通りに売上が伸びない場合や、突発的なトラブルでコストがかさんだ場合、赤字を補う資金が乏しいとその時点で事業継続が困難になる恐れもあります。
赤字補填用の資金は、融資を受けるにしても審査が厳しい傾向にあるため、あらかじめ自己資金や他の調達手段を確保しておく工夫が必要です。
赤字補填資金の調達は難しい
金融機関に借り入れを申請する場合、黒字見込みや返済計画を示す必要がありますが、実際に赤字を補填する目的の資金調達は審査で精査されやすい分野です。将来的な収益モデルが説得力を持つほど、融資を受けやすくなる傾向があります。
一方、エクイティファイナンスを検討する場面もありますが、株式の希薄化や経営関与のリスクもあるため、ビジョンに合った方法を選ぶことが大切です。
悲観的予測を
起業家は自社のビジョンに情熱を持ちやすいため、売上や利益を楽観的に見積もりがちになることがあります。どれだけ入念にプランを立てても、市場状況や顧客動向が読みにくい部分は存在します。
しかし、安定的に利益が出るまでの期間が長引くリスクを踏まえて、ある程度悲観的なシナリオも含め赤字の幅を想定しておくことが重要です。これにより、資金ショートの可能性を低減でき、事業継続性を高められます。
生活資金は1年分
起業当初は自分の収入が不安定になる可能性が高いため、ある程度まとまった生活資金を用意しておくことも重要です。
ビジネスが盤石になるまでには時間を要するため、生活費を事業資金とは別に計画しておくと安心です。最初の数ヶ月で思うように利益が出なかった場合でも、生活資金が確保されていれば精神的な余裕をもって事業運営に取り組むことができます。
万が一、事業面で資金繰りが厳しくなったとしても、家計が逼迫してしまうと経営判断を誤るリスクが高まります。だからこそ、事業と生活を切り分けて考え、最低でも1年分程度の生活費を確保しておくことを目標にしましょう。
収入ゼロを想定する
起業したばかりの頃は、売上が計画通りに伸びないことも珍しくありません。実際、軌道に乗るまでに思ったより時間を要したり、商品の改良やサービスのブラッシュアップに取り組む期間も必要だったりします。
こうした期間に備えて、最悪のケースとして収入ゼロのシミュレーションを行っておけば、生活資金に困るリスクを大幅に減らすことが可能です。
冷静に取り組むために
生活資金がギリギリの状態だと、事業の方向性がぶれたり、焦りから不利な条件での資金調達に飛びついたりするリスクがあります。落ち着いて経営判断を行うためにも、生活費を十分に確保しておくことが大切です。
また、日常生活での出費を見直し、固定費を抑える工夫も起業する上でのリスク管理の一つといえます。少しでも資金の余裕があれば、新しい事業アイデアや販路拡大に挑戦する行動力を維持できます。
まとめ
起業には開業準備資金、運転資金、赤字補填資金、そして生活資金と、大きく4つの資金をあらかじめ確保する必要があります。
これらを適切に準備しておくことで、事業が軌道に乗るまでの資金不足リスクを大幅に抑えることができ、安定したスタートを切りやすくなります。資金調達には、自己資金の投下や金融機関からの融資、公的支援制度の利用などさまざまな手段があるため、必要に応じて複数の方法を組み合わせて最適なバランスを探ります。
起業家自身の強いビジョンと現実を踏まえた資金計画が合わさることで、長期的な成長につながる経営が可能になります。特に資金繰りは事業運営の根幹であるため、念入りに計画を立てて取り組むようにしましょう。
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ヒューマントラストでは、多くの起業家や中小企業の資金調達支援を手がけており、融資や事業計画策定のサポートに豊富なノウハウを有しています。専門家が個別の事情に合わせて最適な調達シナリオを提案してくれるため、早期に安定した経営基盤を築きたい方にとって心強い選択肢となるでしょう。
新しく事業を立ち上げる段階では、資金不足が致命的なリスクに直結しがちです。そこで信頼できるパートナーと連携することで、不透明な創業期を乗り切る戦略を立てやすくなります。必要に応じて専門家の力を借りることも、成功確率を高める大切な手段といえます。