2025.06.26
起業時の資金調達で創業計画書が重視される理由とは
起業時の資金調達において、金融機関や公的機関からの融資を受けるために欠かせないのが創業計画書です。説得力のある計画を提示することで、融資側にとってのリスクを最小限に抑え、事業の可能性を示す重要な資料となります。さらに、計画書を用意することで、起業家自身もビジネスモデルの整理や見通しを客観的に評価できるのが特徴です。
本記事では、創業時の資金調達における創業計画書の役割や、融資を検討する金融機関が重視する視点、さらに計画書が補助金にも活用できる理由などを解説します。計画書をどこまで丁寧に作り込むかが資金調達の成否を大きく左右するといっても過言ではありません。将来的な資金繰りや投資家との交渉にも役立つ重要書類です。
創業融資のリスク
一般的に、金融機関は創業融資に消極的です。なぜならば、創業融資が金融機関にとってハイリスクな融資案件だからです。
このことは、一般の融資と創業融資の審査を比較すると良く分かります。
一般の融資では、すでに経営実績があり、一定以上の期間にわたって業績や財務を確認でき、すでに融資取引もある会社に対して融資を検討します。
これまでの実績や取引から審査し、貸し倒れリスクを測定したうえで問題ないと判断すれば融資を実行します。十分な裏付けを元に審査できるため、金融機関は安心感を以て融資できるのが普通です。
一方創業融資は、まだ経営実績がなく、業績や財務も確認できず、初対面の会社に対して融資を検討します。これまでの実績や取引を裏付けとして審査できず、貸し倒れリスクの測定が非常に困難です。
創業融資で審査の材料となるのは、申請書類と面談だけです。過去の実績ではなく、未来の予測を頼りに融資するのですから、保守的な組織である金融機関が消極的になるのも当然といえます。
創業融資は、金融機関にとって非常にリスクの高い融資案件です。しかし、リスクに見合う金利を設定できるわけではありません。それでも金融機関が「貸しても良い」と思うには、それなりの理由が必要です。
最低限必要となるのは、「これから起業する段階(あるいは起業したばかり)であるけれども、貸したお金はきちんと返ってくるだろう」という安心感です。逆に言えば、これから起業する会社・起業後間もないであっても、この安心感さえ与えることができれば創業融資を引き出すことは可能です。
創業融資の借入先は、一般の銀行ではなく日本政策金融公庫や制度融資になるケースがほとんどですが、借入先がどこであろうと、安心感が融資を引き出すカギとなります。
債務者区分から考える
起業時の資金調達において、金融機関や公的機関からの融資を受けるために欠かせないのが創業計画書です。説得力のある計画を提示することで、融資側にとってのリスクを最小限に抑え、事業の可能性を示す重要な資料となります。さらに、計画書を用意することで、起業家自身もビジネスモデルの整理や見通しを客観的に評価できるのが特徴です。
本記事では、創業時の資金調達における創業計画書の役割や、融資を検討する金融機関が重視する視点、さらに計画書が補助金にも活用できる理由などを解説します。計画書をどこまで丁寧に作り込むかが資金調達の成否を大きく左右するといっても過言ではありません。将来的な資金繰りや投資家との交渉にも役立つ重要書類です。
創業融資のリスク
金融機関からの創業融資には、まだ事業実績のない段階での審査が伴い、リスクの度合いが高くなる点が特徴です。
創業時は事業の不確定要素が多く、売上や利益の見通しが立ちづらいことから、金融機関にとっても融資の回収リスクが高まります。特に、担保に設定できる資産が少ない場合は、返済不安の度合いが大きくなるため、いかに事業の可能性を示すかが問われます。こうしたリスクを低減するための具体的な資料として、創業計画書が重要視されるのです。
創業計画書を通じて、事業の全体像を論理的に示すことで、金融機関側の不安を払拭しやすくなります。例えば、事業のコンセプトやターゲット市場の規模、収益構造などを明確にすることが求められます。準備不足が目立つ計画書では、金融機関もリスク評価が難しくなるため、入念な下調べと数値の整合性が欠かせません。
債務者区分は全6種
金融機関では、正常先から危険先までの区分を設け、それぞれに対して融資リスクの度合いを設定しています。一般的に、正常先や要注意先などで評価が高いほど融資条件が良くなり、逆に経営状況に不透明さがあるほど引き当てコストがかさんで審査が通りづらくなります。創業計画書を通じて、アイデアと収益の成長見込みを示すことで、リスク評価を改善できるケースが少なくありません。
金融検査マニュアルでは、債務者区分を6つに格付けしています。区分ごとの内容は以下の通りです。
債務者区分 | 内容 | 引当率 |
正常先 | 業績・財務ともに安定しており、特に問題がない融資先。 | 0.2~0.3% |
要注意先 | 業績が落ち込んでいるなど、注意を要する融資先。 | 1~15% |
要管理先 | 要注意先のうち ・元本または利息を3ヶ月以上延滞している融資先 ・リスケジュールが決定した融資先 |
|
破綻懸念先 | 赤字決算であるなど今後破綻が懸念される融資先。 | 50~70% |
実質破綻先 | 法的には経営破綻していないものの、実質的に経営が破綻している融資先。 | 100% |
破綻先 | 法的に経営破綻している融資先 | 100% |
表の「引当率」に注目してください。引当率とは、貸し倒れに備えて金融機関が準備しておくべき貸倒引当金のパーセンテージです。債務者区分に応じて経営の健全性と貸し倒れリスクが異なるため、引当率も大きく変動します。
例えば、正常先の会社は経営状態が良好ですから、貸し倒れリスクも低いため貸倒引当金もごくわずかです。しかし、要注意先以下になると貸し倒れリスクが高まり、引当率も大幅に上昇していきます。
貸倒引当金が収益を圧迫する
貸し倒れリスクが高い会社は引当率が高く、多額の貸倒引当金を積み立てる必要があります。1億円融資する場合、正常先・引当率0.2%の会社ならば貸倒引当金はわずか20万円で済みますが、要管理先・引当率15%ならば1,500万円もの貸倒引当金を積み立てなければなりません。
金利2%で1億円を融資するとき、1年間で得られる金利収入は単純計算で200万円です。貸倒引当金は積み立てておく資金であり、拘束されるため貸出金に回すことができません。
要管理先・引当率15%の会社に1億円融資する場合、200万円の金利収入を得るために1,500万円の資金が拘束され、かなり収益性の悪い取引になってしまいます。
金融機関の収益の柱は金利収入です。金利収入の源泉は貸出金であり、金融機関にとって貸出金は商品のようなものです。
貸倒引当金を積み立てておくことは、一定の在庫を販売に回さずに在庫として保管しておくことと同じといえます。
本来、売上をもたらす商品をあえて滞留させておくのですから、いかに非効率であるかがわかるでしょう。
これも、創業融資が難しい理由のひとつです。これから起業する会社は、事業が上手くいくかどうか分かりません。
創業融資の時点では目立ったリスクがなくとも、起業の多くは失敗します。失敗するということは、起業後に業績や財務が悪化していくわけですから、債務者区分もどんどん下がっていきます。
最初は低かった引当率が徐々に上昇していき、貸倒引当金を積み増す必要が生じ、金融機関の業績悪化につながるのです。
なお、債務者区分は民間金融機関だけではなく、日本政策金融公庫などの公的金融機関でも実施しています。公
的融資ですから、収益性をそれほど重視するものではありませんが、貸倒引当金による貸出金の回転率悪化は避けたいと考えています。
創業計画書だけが頼り
以上のように、創業資金は貸し倒れリスクが高く、債務者区分による収益性・効率性の圧迫も大きいため、金融機関が積極的に融資できないのも無理はありません。
そんな中でも融資を引き出すにはどうすればよいのでしょうか。ここで重要となるのが創業計画書です。
これから起業する会社、起業したばかりの会社には決算書がなく、経営を評価する材料が乏しいです。創業計画書の分析が、融資の可否を判断する大きな手掛かりとなります。
創業計画書には、事業の計画・見通しが記載されています。計画が妥当であり、売上と利益が得られること、そこから返済原資が確保できることが分かれば、金融機関は「返済には問題なさそうだ」と判断できます。
もちろん、創業計画書に記載するのはあくまでも計画であり予測に過ぎません。しかし、これまで多くの創業融資に携わってきた人、例えば日本政策金融公庫の融資担当者などが見れば、創業計画書に実現性があるかどうかをある程度見抜けるものです。
創業計画書には、起業する人の熱意が表れます。熱意の伝わらない創業計画書では、融資を受けることは困難でしょう。しかし、熱量と売上が比例するわけではなく、熱意だけで融資を受けられるものでもありません。
熱意をもって、実現性のある冷静な計画を立てなければならないのです。これが創業計画書の難しさです。
しかし、そのような創業計画書を作成できれば、創業融資を受けられる可能性が飛躍的に高まります。創業資金の調達に当たっては、資金調達専門のコンサルタントなどに相談し、創業計画書の作成を含めたトータルサポートを受けることが欠かせません。
補助金でも役立つ創業計画書
創業計画書が役立つのは、創業融資だけではありません。補助金や助成金の申請においても、事業内容や収支計画を証明する資料が求められます。創業計画書はこうした公的支援制度の審査でも活用でき、事業の将来性と具体的な成果目標を示すための材料となります。資金調達を複数の手段で考える場合には、創業計画書は多方面で連携を図るための基盤といえます。
まとめ
創業計画書の完成度は、金融機関の審査や補助金の採択に大きく影響する要素となります。
準備が整った創業計画書は、内外の関係者に対して起業家の本気度と事業の実現可能性を示す大きな武器となります。自社の強みを明確にし、数値計画の根拠をしっかり示すことで、融資や投資を獲得する確率が高まります。さらに、計画書を更新しながら運用することで、経営者自身が事業の進捗や収益性を客観的に把握できるメリットも期待できます。
リスク評価が厳しい創業期において、計画書一つで状況が大きく変わる可能性があります。もし作成に不安がある場合は、専門家や支援機関の力を借りてクオリティの高い資料を作り上げましょう。優れた計画書は事業の未来を開く第一歩になり、資金調達のチャンスを広げてくれます。
支援実績12,000社以上!ヒューマントラストの資金調達トータルサポート
創業計画書をはじめとする事業計画書の作成や、補助金申請に関する全面的なサポートを提供するのがヒューマントラストです。これまでに12,000社以上の支援実績を持ち、金融機関との融資交渉や専門家ネットワークを活用した助成金・補助金申請支援も行っています。多角的なサポートを受けることで、起業家は事業構想と資金面の両方を強固にし、スムーズなスタートダッシュを実現できます。