手形割引の手数料相場と流れを解説!他の資金調達方法との違いも徹底解説!
「資金調達の方法に手形割引があるって聞いたけど、どういうサービスなんだろう」
「他の資金調達方法との違いってなんだろう」
「そもそも手形と手形割引ってなにが違うの?」
”手形”という言葉は、比較的耳にしたことがあるワードなのではないでしょうか。
しかし、その内容を詳しく知っている人は意外に少なくありません。
この記事では、
- 手形割引の基礎知識
- 手形割引のメリットとデメリット
- 手形割引を利用する際の流れ
- 他の資金調達方法との違い
を解説していきます。ぜひ最後までお読みください。
手形割引とは
手形割引とは「手形に記載された支払期日よりも前に、手形を現金化できる」仕組みです。
本来、手形は記載された期日になるまで支払いを受けることはできません。
しかし、銀行または手形割引業者に手形を買い取ってもらうことで、期日前の現金化が可能となっています。
手形割引は「支払期日前に金額を支払う≒お金を貸している」というイメージなので、手形を割り引いてくれる「割引人(銀行や手形割引業者)」に手数料を支払わなければなりません。
この手数料を「手形割引料」といいます。
手形割引料に取立手数料など他の手数料を加えたものが「手形割引手数料」と呼ばれ、利用する銀行や手形割引業者により料金設定が異なってきます。
手形を買い取ってもらい、手元に残る金額は「手形に記載されている金額-手形割引手数料」ということになります。
手形割引の手数料計算の方法
手形割引をした場合、利用者は手形割引手数料を差し引かれた金額を受け取れます。
手形割引手数料は、利用する銀行や手形割引業者により異なり、それにより手形割引で受け取れる金額も異なります。
手形割引で受け取れる金額は「手形額面金額-手形割引手数料(※1)」
※1)手形割引手数料=手形割引料(※2)+取立手数料+その他手数料で求められます。
※2)手形割引料=手形額面金額✕手形割引率(手形割引利率)✕支払期日までの日数/365日で求めます。
※手形額面金額:手形に記載されている期日に支払われる金額
※手形割引率(手形割引利率):手形依頼人が手形割引人に支払わなければならない利息
※取立手数料:手形交換の際の手数料(事務手続きにかかる全般の手数料)
※その他手数料:調査料(信用調査や審査にかかる費用)や配達料(金額を手渡しする際の交通費)
計算式だけでは分かりづらいと思うので、以下に例を示します。
手形額面金額:100万円
手形割引率:年利5.0%
支払期日までの日数:60日
取立手数料:700円
◎手形割引料=手形額面金額(100万円)✕手形割引率(5.0%)✕60日/365日=8,000円
◎手形割引手数料=手形割引料(8,000円)+取立手数料(700円)=8,700円
◎手形割引で受け取れる金額=手形額面金額(100万円)-手形割引手数料(8,700円)=991,300円
となります。
手形割引率の相場
手形割引手数料の計算式から分かるように、より多くの金額を手元に残すためには「手形割引率の低い」割引人を利用するのがいいでしょう。
手形割引率の相場は以下の通りです。
割引人 | 手形割引率(年率) |
都市銀行 | 1.5%~3.0% |
普通銀行 | 2.0%~3.5% |
信用金庫 | 2.5%~4.5% |
信用組合 | 3.5%~5.5% |
手形割引専門業者 | 3.0%~20.0% |
手形割引のメリット
手形割引のメリットは以下の2点です。
- 早期に現金を調達できる
- 審査に通りやすい
1,早期に現金を調達できる
手形割引の最大のメリットは「早期に現金を調達できる」ことでしょう。
手形は基本的に満期日になる前の現金化はできませんが、手形割引を用いることによって満期日以前に現金化できます。
手形の満期日は数ヶ月先になることも珍しくなく、その間手形分の現金は手元に入りません。売掛金はあって黒字経営のはずなのに、自由に使える現金が少ないというのは、事業上デメリットといえるでしょう。
手形割引を利用すれば、そのような心配はなくなるのです。
早期に現金を調達できるという点で、手形割引は重宝なサービスといえます。
2,審査に通りやすい
手形割引は審査に通りやすいという特徴もあります。
銀行融資やビジネスローンの場合、「利用者に返済能力があるのかどうか」が審査で最重要視され、審査にも時間がかかる上に審査基準も厳しくなっています。
手形割引の場合は、そもそも手形を発行する企業が大企業であることも多く、信用力が高くなっています。
また、手形は「満期日になれば入金されることが約束されているもの」であるため、割引人からしても未回収リスクが低いといえるでしょう。
そのため、融資よりも審査に通りやすいというメリットがあります。
手形割引のデメリット
手形割引のデメリットは以下の2点です。
- 割引手数料がかかる
- 買い戻し義務が発生する場合がある
1,割引手数料がかかる
手形割引は、満期前の手形を買い取ってもらう代わりに、割引手数料が発生します。
手形の満期日まで待てば全額を受け取れますが、手形割引を利用した場合は手数料分損をする形になります。
手数料を取られるデメリットと、早期に現金化できるメリットのバランスを考えて利用するようにしましょう。
2,買い戻し義務が発生する場合がある
手形割引の最大のデメリットは「買い戻し義務が発生する」ことでしょう。
手形割引は、手形を担保として資金調達を受けるため、手形が不渡りになった場合は買い戻さなければなりません。
わざわざ手数料を支払い現金化できても、手形の満期日前になんらかの理由で取引先が手形の支払いができなくなってしまった場合には、返済買い戻しのリスクがあるため注意が必要です。
手形割引を利用する流れ
実際に手形割引を利用する際の流れは以下の通りです。
- 商品の売り先から手形を振り出される
- 取り立て銀行や手形割引業者に手形割引を依頼し、審査してもらう
- 手形割引手数料を差し引かれた現金が入金される
- 取立銀行や手形割引業者は、手形期日に手形支払い銀行で手形を決算して現金を手にする
手形割引で買い取ってもらった手形が、万が一不渡りになってしまった場合は、買い戻す義務が発生するため注意が必要です。
手形割引とその他の資金調達方法を比較
いろいろな資金調達方法がありますが、主な資金調達方法は以下の4つです。
- 手形割引
- 融資
- ファクタリング
- 日本政策金融公庫
以下にそれぞれの特徴とメリット・デメリットを解説します。
1,手形割引
手形は基本的に満期日になる前の現金化はできませんが、手形割引を用いることによって満期日以前に現金化することができます。
手形を所有していないと利用はできませんが、即日融資に対応している金融機関もあるため、早期調達を希望している方にはおすすめといえるでしょう。
しかし、手形が不渡りになってしまった場合、買い戻す義務が発生するため注意が必要です。
◎手形割引のメリット
- 入金スピードが速い
- 手形自体の信用力が高い場合が多く、審査に通りやすい
◎手形割引のデメリット
- 手形割引手数料が発生する
- 不渡りになってしまった場合、買い戻しの義務がある
2,融資
銀行やノンバンクのビジネスローンでも資金調達は可能です。
ビジネスローンは基本的に担保・保証人が不要であり、特にノンバンク系のビジネスローンであれば、査定も通りやすいのが特徴です。
しかし、融資は審査が厳しく、必ずしも審査に通るというわけではありません。
◎ビジネスローンのメリット
- 担保・保証人が不要
- 審査にあまり時間がかからない場合が多い
◎ビジネスローンのデメリット
- 審査に必ず通るというわけではない
- 高額の借入は難しい
3,ファクタリング
ファクタリングは、所有している売掛債権(未入金の請求書)を買い取ってもらうことで資金を得る方法です。ファクタリングは担保や保証人が不要で、売掛金未回収時の買い戻し義務もありません。
また、融資等の貸付と異なり「買い取り」であるため、審査も通りやすく、最短即日での資金調達が可能という特徴があります。
しかし、売掛債権額以上の資金調達は不可なので注意が必要です。
◎ファクタリングのメリット
- 担保・保証人が不要で審査に通りやすい
- 最短即日で資金調達が可能
- 売掛金が未回収になっても、買い戻しの必要がない(償還請求権なし)
◎ファクタリングのデメリット
- 手数料が他の手段と比べると高め(約1.0%~30.0%)
- 売掛債権額以上の資金調達は不可
手形割引とファクタリングの違いについてはこちらの記事を参照してください
4,日本政策金融機構
日本政策金融公庫は国が100%出資している金融機関です。
低金利かつ高額な融資が受けられるという点が特徴といえます。
しかし、日本政策金融公庫の融資を受けるためには、非常に厳しい審査を通らなければなりません。
審査に時間を要するため、入金までのスピードは他の手段よりも遅くなってしまいます。
◎日本政策金融公庫のメリット
- 低金利(約0.5%~2.5%)
- 高額な融資が可能
◎日本政策金融公庫のデメリット
- 審査が非常に厳しく審査通過率が低い
- 融資までのスピードがかなり遅い
まとめ
この記事では、資金調達方法の1つである「手形割引」について解説しました。
手形の支払期日前に現金化が可能な手形割引です。
手数料はかかりますが、銀行融資等よりも審査に通りやすく手早く現金化できるのがメリットといえるでしょう。
しかし、不渡りになった際には買い戻しの義務が発生するというデメリットもあります。
他の資金調達方法のメリット、デメリットと照らし合わせ、自社の資金調達に最適な方法を選べる一助になっていたら幸いです。