金融機関の種類とそれぞれの特性を解説します
前回のコラムで、「金融機関からの借入」について
債務超過と資本金に関連した話をしました。
今回は、実務面から、まずは「金融機関の種類とそれぞれの特性」をテーマにしたいと思います。
まずは、自社の財務状況などを会計士や税理士と相談しながら、金融機関からの借入が可能だと判断したという前提とします。
その上で、どの金融機関を使うかを検討します。
検討に際しては、借入金、借入時期、借入期間、資金使途、担保条件などの細かな内容を精査します。
その上で、取引関係のある金融機関を優先しつつ、その他の金融機関の性質に合わせて申し込む金融機関を選定するのが良いでしょう。
ここでは、主な金融機関を4つ紹介します。
主な金融機関の種類と特徴
都市銀行:大企業向けの多岐にわたるサービス
都市銀行は、大都市を中心に全国的に店舗網を展開し、広範囲にわたる業務を行う金融機関です。
預金や貸付といった基本的な銀行業務に加え、国債やNISAなどの証券関連業務も取り扱っています。
また、事業提携やM&Aに関する情報提供など、企業向けの情報サービスを多岐にわたって提供します。
さらに、海外拠点も充実しており、顧客企業の海外展開支援も行っています。代表的な都市銀行として、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、そしてりそな銀行があります。これらの銀行は「メガバンク」と呼ばれることもあり、TVコマーシャルでも馴染みがあります。
一方で、中小企業向けの融資には適しておらず、特にバブル崩壊以降は審査基準が厳格化されています。担保力や財務状況が厳しく査定されるため、主に大企業向けのサービスが中心となります。
地方銀行:地域密着型の中小企業支援
地方銀行は、各県の県庁所在地を中心に、本店を構えた地域密着型の金融機関です。その地域の企業や住民に対する金融サービスを主に提供しますが、近年では県域を越えた業務展開を行うケースも見られます。
地方銀行の特徴として、中小企業への融資が地元関連の事業に限定される傾向があります。例えば、東京に本社を置く中小企業が福岡銀行に融資を申し込む場合、「資金使途が福岡での事業展開に限定される」や「福岡に支店登記をしている」といった条件が付くことがあります。
また、地方銀行の東京支店では、地元企業の東京進出を支援する役割を果たす場合も多いです。こうした地域密着型の特徴を理解しながら、融資を検討する必要があります。
信用金庫・信用組合:非営利法人としての特性
信用金庫と信用組合は、それぞれ信用金庫法および中小企業等協同組合法に基づいて設立された金融機関です。都市銀行や地方銀行とは異なり、非営利法人として地域密着型の金融サービスを提供しています。
これらの金融機関は、法律上、業務商圏が限定されており、その範囲を超えた金融業務は行えません。また、地域の企業や住民からの出資を基盤として運営されるため、地域社会に密着した金融活動が可能です。
中小企業にとって、信用金庫や信用組合は融資を相談しやすい存在です。特に、狭い商圏に密着していることから、地域密着型の支援を受けることができます。
政府系金融機関:日本政策金融公庫を中心に
政府系金融機関には、日本政策金融公庫や商工中金があります。中でも、日本政策金融公庫は中小企業向けの金融支援で重要な役割を果たしています。日本政策金融公庫には「国民生活事業」と「中小企業事業」の2種類があり、それぞれ異なる対応を行っています。
国民生活事業では、多彩な融資メニューを通じて、中小企業や個人事業主を支援します。特に、緊急時の経済対策や社会情勢に合わせた融資メニューが充実しており、自社の状況に合った融資を見つけやすいのが特徴です。
申込時には、日本政策金融公庫の担当者から直接説明を受けることで、適切な融資メニューを選べます。また、普段取引のある銀行や信用組合からの紹介を受けることも可能です。特に、審査が比較的早く結果が出るため、検討しやすい金融機関です。
以上のように、各金融機関の特性を理解し、自社の状況に適した選択をすることが重要です。
金利水準と金融機関の違い
以上のような金融機関の種類はあるのですが、それぞれ借入申込に対する対応が変わります。
金利水準と金融機関の違いについて説明していきます。
金利水準の基本的な理解
多くの経営者が注目する金利水準について、一般的には都市銀行が最も低く
次いで日本政策金融公庫、信用金庫や信用組合の順に高くなる傾向があります。
この差は年利ベースで約1%程度となり、企業の財務状況や借入条件に応じて変動します。
なお、最新の金利動向を把握するためには、日本銀行が毎月公表している「貸出約定平均金利」が参考になります。
信用金庫・信用組合の金利が高い理由
信用金庫や信用組合の金利が高い理由は、主に融資原資の調達方法に起因します。
大規模な金融機関は預金を中心とした低コストの原資を活用できる一方で
信用金庫や信用組合は地域内で集めた預金や出資金に依存します。
その結果、融資原資が限定されるため、リスクの高い中小零細企業への融資を行う場合には高めの金利を設定せざるを得ません。
さらに、大企業向けに安定した融資を提供する都市銀行とは異なり
信用金庫や信用組合は小口融資が中心であるため、貸付金の焦げ付きリスクも高くなりがちです。
このような理由から、信用金庫や信用組合の金利が高めに設定されています。
ノンバンクの金利特性
ノンバンクは、預金などの資金調達手段を持たず、自己資金や社債を原資としています。
さらに、リスクの高い顧客を相手にすることが多いため、年利が10%を超える場合も珍しくありません。
そのため、ノンバンクからの借入を検討する際には、返済負担が大きくなる点を十分考慮する必要があります。
審査基準と金融機関の特徴
都市銀行と地方銀行の厳しい審査基準
都市銀行や地方銀行の審査基準は非常に厳格で、特に中小企業にとっては難易度が高いと言えます。
これらの金融機関では、決算書の数字が優良であることを求められ
少しでも問題があると融資を拒否されることが多いです。
また、事業計画や収益性、経営安全性なども重視されるため、事前の準備が不可欠です。
信用金庫・信用組合の柔軟な審査基準
一方で、信用金庫や信用組合は地域密着型の金融機関であり、中小企業の経営者や事業内容に対して柔軟な審査を行います。
具体的には、決算書の数字だけでなく、経営者の資質や保証人の個人資産、さらには事業の将来性も評価の対象となります。
このため、都市銀行や地方銀行で融資を受けられない中小企業にとっては、有力な選択肢となることが多いです。
日本政策金融公庫の役割と審査基準
日本政策金融公庫は「民間金融機関の補完」という役割を果たすため、審査基準は比較的緩やかです。
特に創業間もない企業や赤字を抱える企業に対しても、多様な融資メニューを提供しています。
ただし、公庫内の「中小企業事業」や商工中金に関しては、審査基準が銀行並みに厳しく、担保基準や粉飾決算に対して厳格なチェックが行われます。
これらの融資実績を持つ企業は、都市銀行や地方銀行との取引を進める際にも有利な条件を得やすくなるでしょう。
金融機関特性を理解した借入戦略
中小企業の「金融支援獲得」の第一歩各
金融機関の特性や金利水準、審査基準を理解することは、中小企業が適切な融資を獲得するための重要なステップです。
特に、自社の財務状況や事業計画に合致した金融機関を選ぶことで
効率的かつ効果的な資金調達が可能になります。
これを実現するためには、金融機関との十分なコミュニケーションを行い、信頼関係を構築することが大切です。
まとめ
本記事では、都市銀行、地方銀行、信用金庫・信用組合、政府系金融機関の
それぞれの特性や金利水準、審査基準について詳しく解説しました。
それぞれの金融機関には独自の特徴があり、企業の規模や事業内容、目的に応じた選択が重要となります。
しかし、金融機関の種類や条件が多岐にわたる中で、自社に最適な融資先や条件を見つけるのは簡単ではありません。特に、初めて融資を検討する中小企業にとっては、情報収集や判断に迷うことも多いでしょう。
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