• TOP
  • 新着情報
  • 金融機関の審査担当者が見る決算書の『資産の部』とは? 減額修正を回避するための実践ガイド

金融機関の審査担当者が見る決算書の『資産の部』とは? 減額修正を回避するための実践ガイド

決算書は、企業の財務状況を示す重要な書類です。

しかし、金融機関の審査担当者はその内容を必ずしも鵜呑みにせず、特に「資産の部」に対して厳しい目を向けます。

記載金額が適正でないと判断される場合、減額修正の対象となり、融資判断に影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、現金勘定や売掛金、棚卸資産など主要な項目における審査のポイントと、減額修正を回避するための対応策を詳しく解説します。

決算書と資産の減額修正

金融機関の審査担当者と決算書の特性

金融機関の審査担当者は、「中小企業の決算書は信じない」という姿勢を取ることがあります。これは、決算書が厳密な監査を受けていないことや、その目的が適正な税務申告に偏っていることによります。

 

中小企業の決算書は、財務分析に適していない場合も多いため、担当者はそれを受け取り次第、修正を加えます。

その主な焦点は「資産価値が適正に表示されているか」という点にあります。

担当者の視点を理解し、論理的な説明を用意することが必要です。

 

資産減額修正の基本姿勢と意図

審査担当者は、決算書に記載された資産が実際より高く評価されている可能性を常に考慮します。

具体的には、記載金額よりも実質的に低い価値の資産を見つけ出し、減額修正を行います。

 

これは決算書を不信視する意地悪な行動ではなく、資産価値を過大評価した結果、融資リスクが高まることを防ぐための合理的な措置です。

このプロセスに備えるため、企業側は審査基準を理解し、適切な裏付け資料を準備しておく必要があります。

 

主要な資産項目のチェックポイント

現金勘定:現金在り高の信憑性と説明責任

現金勘定は、決算書の中で最も疑われやすい項目です。

特に、記載されている現金が銀行預金を大きく上回る場合、担当者はその信憑性に疑問を持ちます。

中小企業が多額の現金を事務所内に保管していることは稀だからです。

 

現金出納簿を提出し、具体的な売上回収や支出内容について説明することで、減額修正を回避できる場合があります。

担当者が現金勘定を評価する際には、現金出納簿の精密さが鍵となります。

 

売掛金:適正性・確実性と回収可能性の重要性

売掛金は企業の収益と直結するため、その評価は極めて重要です。

架空売上や不良債権の混入、回収遅延などが疑われる場合、審査担当者は詳細な明細を確認します。

 

売掛金の正当性を示すためには、売上債権回転期間や入金サイトの情報を用いて透明性を確保することが必要です。

また、同業他社のデータと比較して異常がないか確認することも有効です。

 

棚卸資産:不良在庫・架空在庫のリスクと対応策

棚卸資産の評価では、不良在庫や架空在庫が疑われます。

不良在庫は特売や値引きの対象になることが多く、場合によっては完全に処分する必要があります。

 

決算書の適正性を認めてもらうためには、実棚確認や在庫の滞留管理が不可欠です。

具体的な例として、架空在庫を隠すために空の段ボール箱を積み上げた企業の例もあり、担当者はこれを非常に厳しくチェックします。

 

貸付金:リスクの高い資産勘定と管理の必要性

貸付金は、審査担当者が最も嫌う勘定科目です。

特に、社長や親族への貸付金が記載されている場合、その資金が実際に戻ってくるか疑われます。

 

このリスクを回避するには、金銭消費貸借契約書を作成し、定期的な返済記録を保持することが重要です。

貸付金勘定は、説明の準備が不十分だと融資の可能性が大きく下がる要因となります。

 

その他の資産勘定の注意点

雑勘定:粉飾決算の温床となるリスク

仮払金や未収入金などの雑勘定は、粉飾決算の手段として利用されることがあります。

そのため、審査担当者はこれらを厳しくチェックします。

 

特に仮払金については、使用目的や支払先が不明瞭であれば問題視されます。

こうした項目は、可能な限り決算書に記載しないことが望ましいです。

 

投資有価証券:投機目的と本業目的の区別

中小企業の投資有価証券は、投機目的と見なされることが多いため、評価が難しい資産項目です。

これを本業目的として正当化するためには、固定資産として計上し、事業への貢献を明示することが重要です。

 

固定資産:減価償却と過剰資産の管理

固定資産の評価では、減価償却が適切に行われているかが重要なポイントです。

また、遊休資産や過剰設備は減額修正の対象となります。

 

無形固定資産については、評価が難しい場合が多いため、事業に必須であることを示す裏付けが必要です。

 

資産評価と審査への備え

資産と負債の評価の違い

資産は評価の余地が多く、担当者によってその価値が大きく変動することがあります。

一方、負債は契約書や請求書で金額が確定されるため、評価の余地が少ないです。

 

この違いを理解し、資産評価のための準備を進めることが大切です。

 

審査に向けた裏付け資料の準備

審査担当者の減額修正を回避するには、資産に関する明確な裏付け資料を用意し、詳細な説明を行うことが必要です。

特に、現金出納簿や売掛金明細、棚卸資産の実棚確認記録などが効果的です。

 

まとめ

本記事では、金融機関の審査担当者が決算書の「資産の部」をどのように評価し、減額修正を行うのか、その具体的なポイントと対応策を解説しました。

現金勘定や売掛金、棚卸資産、貸付金など、それぞれの項目における注意点や適切な準備の必要性を理解いただけたかと思います。

 

ただし、こうした対応策を実践しながら、自社の財務内容を最適化するのは容易なことではありません。

専門知識や経験が求められるため、判断に迷う場面も多いのではないでしょうか。

 

そんな時は、HTファイナンスにご相談ください。HTファイナンスは、30年以上の実績と専門的な知見を活かし、企業ごとに最適な資金調達や財務改善のサポートを行っています。

顧客に寄り添い、事業基盤の強化と安定した経営の実現をサポートするパートナーです。

 

資金調達や財務改善に関するお悩みがあれば、ぜひお気軽にHTファイナンスまでお問い合わせくださいませ。

          融資のご相談とお申し込みはこちらから

 
監修者 三坂大作
筆者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
前へ

おすすめの開業資金調達方法!第一候補は「日本政策金融公庫」

一覧へ戻る