2025.01.22
資金繰り表の作り方!基本構成と活用方法を解説
事業を円滑に進めるためには、資金繰りの管理が欠かせません。しかし、会社の実務上は、売掛金や買掛金の影響で、実際の入出金タイミングを把握することは容易ではありません。そこで重要な役割を果たすのが、資金繰り表です。
この記事では、資金繰り表の基本構成や作成手順、活用方法について詳しく解説します。資金繰り表を正しく理解し、活用することで、会社の資金状況を適切に管理し、資金ショートを未然に防ぐことができるでしょう。
資金繰り表とは
資金繰り表とは、企業の一定期間における資金の流れを可視化するための表です。会社の実際の入出金タイミングを把握し、効果的な資金管理を行うことを目的としています。
資金繰り表は、会社の資金状況を正確に把握し、適切な経営判断を下すための重要なツールといえます。資金不足や余剰資金の発生を事前に予測し、対策を講じることができます。
資金繰り表の期間設定
資金繰り表の期間は、通常、月次で設定されることが多いですが、企業の事情に応じて週次や日次での作成も可能です。短期的な資金管理を行う場合は、週次や日次の資金繰り表が有効でしょう。
ただし、期間が短くなるほど作成の手間が増えるため、企業の規模や資金管理の必要性に応じて適切な期間を設定することが大切です。
資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違い
資金繰り表とキャッシュフロー計算書は、どちらも企業のキャッシュフローを扱う点で共通していますが、いくつかの重要な違いがあります。
資金繰り表 | キャッシュフロー計算書 | |
---|---|---|
時系列 | 実績と予測の両方を含む | 過去の記録のみ |
法的位置づけ | 内部管理用文書 | 財務諸表の一つ(法定書類) |
会計原則 | 現金主義会計 | 発生主義会計 |
これらの違いを理解することで、それぞれの表の役割と活用方法が明確になります。
資金繰り表の基本構成
資金繰り表は、会社の一定期間のキャッシュフロー(実際の資金の入り払い)を可視化するための重要なツールです。ここでは、資金繰り表の基本構成について詳しく解説していきましょう。
主なセクション
資金繰り表は、主に以下の5つのセクションで構成されています。
- 前期(前月)繰越現金・当座預金
- 収入計
- 支出計
- 財務収支計
- 翌月繰越現金・当座預金
これらのセクションを使って、①+②-③+④=⑤という基本計算式に基づいて、資金の流れを把握することができます。
前期繰越現金・当座預金とは
前期繰越現金・当座預金は、前月末時点での現金および当座預金残高を指します。この金額は、当月の資金繰りの出発点となる重要な数値です。
前期繰越現金・当座預金は、前月の資金繰り表の「翌月繰越現金・当座預金」と一致するはずです。前月の資金繰り表と整合性を確認することが大切です。
収入計と支出計の内訳
収入計は、当月に予定されている売上金額や入金額の合計を示します。一方、支出計は、当月に予定されている仕入れ代金の支払いや経費の支出額の合計を示します。
収入計と支出計の内訳は、以下のような項目で構成されることが一般的です。
- 収入計
- 売上金
- 受取利息
- その他の収入
- 支出計
- 仕入代金
- 人件費
- 家賃
- 光熱費
- その他の経費
実際の入出金タイミングに基づいて記録することが重要です。売掛金や買掛金の増減を正確に反映させることで、より正確な資金繰りの把握につながります。
財務収支計の項目
財務収支計は、資金調達や資金運用に関する収支を示します。具体的には、以下のような項目が含まれます。
- 借入金の増減
- 社債の発行・償還
- 増資・減資
- 配当金の支払い
財務収支計は、事業活動によるキャッシュフローとは区別して管理することが求められます。
翌月繰越現金・当座預金の計算方法
翌月繰越現金・当座預金は、当月末時点での現金および当座預金残高の予測値を示します。この金額は、翌月の資金繰りの出発点となる重要な数値です。
翌月繰越現金・当座預金は、前期繰越現金・当座預金に収入計を加え、支出計を引いた上で、財務収支計を加減することで算出されます。つまり、①+②-③+④=⑤の計算式に基づいて計算されるのです。
資金繰り表の作成手順
ここでは、実務的な資金繰り表の作成手順を詳しく解説していきます。
必要データの収集
資金繰り表を作成するには、まず必要なデータを収集することが重要です。売上高、仕入高、経費、借入金、返済額などの情報を集めましょう。
これらのデータは、社内の経理担当者や取引先から入手することができます。正確な情報を集めることが、資金繰り表の信頼性を高めるポイントとなります。
売掛金・買掛金の増減の反映
収集したデータを基に、売掛金と買掛金の増減を資金繰り表に反映させます。売掛金の回収予定日や買掛金の支払予定日を考慮し、実際の入出金タイミングを正確に記録することが重要です。
この作業により、将来の資金収支をより正確に予測することができます。売掛金・買掛金の管理は、資金繰りの安定化に大きく寄与します。
実際の入出金タイミングに基づく記録
資金繰り表は、現金主義会計に基づいて作成されます。つまり、実際の現金の動きに基づいて記録を行うということです。
例えば、売上高は請求書発行日ではなく、入金日に記録します。同様に、経費も支払日に記録します。このように、実際の入出金タイミングに基づいて記録することで、より正確な資金繰り表を作成できます。
月次試算表との確認
資金繰り表を作成したら、月次試算表と照らし合わせて整合性を確認しましょう。試算表は発生主義会計に基づいているため、資金繰り表とは会計原則が異なります。
しかし、両者の数字に大きな乖離があると、何らかの誤りがある可能性があります。定期的に比較して確認するようにしましょう。
予算の設定と見直し
資金繰り表を作成したら、次は予算を設定します。過去の実績を基に、売上高や経費の予測値を設定しましょう。ここでは、予測が外れるリスクも考えて、保守的な予算設定がされることが多いです。
また、事業環境の変化に応じて、定期的に予算の見直しを行うことも重要です。予算と実績の乖離を分析し、必要に応じて修正を加えることで、資金繰りの安定化につなげることができます。
資金繰り表の活用方法
資金繰り表は、単なる会計書類にとどまらず、会社の資金管理と経営判断に欠かせない管理会計ツールとして、幅広い活用方法があります。
経営判断のための指標
資金繰り表は、会社の現金収支の状況を明確に示す重要な指標です。経営者は、この表を用いて、現在の資金状況や今後の資金需要を把握し、適切な経営判断を下すことができます。
例えば、資金繰り表から、売掛金の回収が遅れていることが判明した場合、経営者は早急に対策を講じる必要があります。また、将来の設備投資に必要な資金を確保するために、資金繰り表を活用して資金計画を立てることもできます。
金融機関との交渉における資料
資金繰り表は、金融機関との交渉においても重要な役割を果たします。融資を受ける際や借入金の返済条件を見直す際に、資金繰り表は会社の資金状況を示す客観的な資料として活用されます。
金融機関は、資金繰り表を見ることで、会社の収支状況や将来の資金需要を理解し、融資の可否や条件を判断します。したがって、説得力のある資金繰り表を作成することが、円滑な資金調達につながるのです。
キャッシュフロー改善のための分析
資金繰り表は、キャッシュフローの改善点を見つけるためのツールでもあります。収入と支出の内訳を詳細に分析することで、無駄な支出や改善すべき点を特定できます。
例えば、在庫管理の改善により仕入れ支出を削減したり、販売戦略の見直しにより売上高を増加させたりすることで、キャッシュフローを改善することができます。資金繰り表は、そのための分析の基礎資料となります。
事業計画策定への反映
資金繰り表は、事業計画の策定にも大きく役立ちます。過去の資金繰りの実績を基に、将来の資金需要を予測し、事業計画に反映させることができます。
例えば、新規事業の立ち上げや設備投資などを計画する際、資金繰り表を用いて必要な資金を試算し、調達方法を検討することができます。また、事業計画の進捗状況を資金面から確認し、必要に応じて計画を修正することもできます。
まとめ
本記事では、資金繰り表の基本構成や作成手順、活用方法について詳しく解説してきました。資金繰り表は、会社の資金状況を正確に把握し、適切な経営判断を下すための重要なツールといえます。
作成した資金繰り表は、経営判断や金融機関との交渉、キャッシュフロー改善、事業計画策定など、様々な場面で活用することができます。資金繰り表を効果的に活用することで、会社の安定的な成長と発展につなげましょう。
資金繰りに不安を感じている経営者の方や、事業の成長に必要な資金を確保したい方は、ぜひこの記事を参考にして、資金繰り表を経営に役立ててください。きっと、会社の資金管理の最適化につながるはずです。