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不良債権処理とは?企業が取るべき対応策を解説

企業経営において、資金回収の遅延や滞りは大きな問題となります。特に、回収が困難になった債権、いわゆる「不良債権」は、キャッシュフローの悪化や収益減少のリスクを招くため、適切な対応が求められます。この記事では、不良債権とは何か、その種類や具体例、企業が取るべき対応策について詳しく解説します。

不良債権とは

不良債権とは、債務者の経営状況の悪化などにより、債権の回収が困難になった、あるいは回収可能性が低い債権のことを指します。金融機関だけでなく、一般企業においても発生する問題です。

不良債権は、企業のキャッシュフローを悪化させ、収益減少のリスクを高めるため、早期の対応が求められます。不良債権を適切に管理し、処理することは、企業の財務健全性を維持する上で非常に重要なのです。

不良債権の対象範囲

不良債権の対象となるのは、以下のような債権です。

  • 受取手形・売掛金:信用取引により発生した未回収の債権
  • 貸付金:取引先や関連会社に対する貸付金のうち、未回収となっている部分
  • 立替金:取引先のために立て替えた支払いのうち、未回収の部分
  • 未収入金:請負金、加工料、地代家賃などの未回収分
  • その他:損害賠償金、リース債権、工事未収金など

これらの債権が長期間回収されない状況が続くと、不良債権として扱われることになります。

不良債権の具体例

不良債権は、その発生原因や状況によって、いくつかに分類することができます。以下は、代表的な不良債権の種類と具体例です。

  1. 回収不能時の債権
    • 会社更生法、民事再生法、特別清算による債権カット
    • 債務者の経営破綻、死亡、行方不明
    • 天災や事故による支払不能
  2. 取引停止後の未払い
    • 法人税基本通達9-6-3に基づき、1年以上支払いがない場合

不良債権が企業に与える影響

不良債権は、企業の財務状況に深刻な影響を与えます。主な影響としては、以下のようなものがあげられます。

  • キャッシュフローの悪化:不良債権の増加により、企業の資金回収が滞り、キャッシュフローが悪化します。
  • 収益の減少:不良債権に対する貸倒損失の計上により、企業の収益が減少します。
  • 財務健全性の低下:不良債権の増加は、企業の財務健全性を低下させ、資金調達力や信用力に影響を与えます。

不良債権の評価と会計処理

不良債権比率の計算方法

不良債権比率は、企業の信用リスクを評価する指標の一つです。この比率を計算することで、自社の財務状況を正確に判断することができます。

不良債権比率は、不良債権合計額を債権合計額で割り、100を掛けて算出します。この計算式により、企業の債権全体に占める不良債権の割合が明らかになります。

例えば、ある企業の不良債権合計額が1,000万円で、債権合計額が1億円だとします。この場合、不良債権比率は以下のように計算されます。

1,000万円 ÷ 1億円 × 100 = 10%

つまり、この企業の不良債権比率は10%ということになります。比率が高いほど、企業の信用リスクが高いと判断されます。

業種別の不良債権比率の基準

不良債権比率の評価には、業種ごとの基準を参考にすることが大切です。国税庁が定める貸倒引当金の業種別法定繰入率は、不良債権の発生リスクを考慮した目安となります。

主な業種の法定繰入率は以下の通りです。

  • 割賦販売小売業等:1.3%
  • 卸売り・小売業・飲食店業:1.0%
  • 製造業・電気業等:0.8%
  • 金融・保険業:0.3%
  • その他事業:0.6%

自社の不良債権比率が業種の基準を上回る場合、信用リスク管理の強化や回収体制の見直しが必要といえます。一方、基準を下回る場合は、比較的健全な状態にあると判断できるでしょう。

回収不能債権の会計処理

不良債権のうち、回収が不可能と判断された債権については、適切な会計処理を行う必要があります。この処理により、財務諸表の正確性を維持し、企業の実態を正しく表示することができるようになります。

回収不能債権が発生した場合、以下のような仕訳を行います。

貸方 借方
売掛金 貸倒損失

この仕訳により、回収不能となった売掛金を貸倒損失として処理し、資産から除外します。同時に、損益計算書上で貸倒損失を計上することで、当期の収益性を正確に反映させることができるのです。

貸倒引当金の設定と会計処理

不良債権の発生に備え、予め貸倒引当金を設定しておくことも重要です。貸倒引当金は、将来発生する可能性のある貸倒損失に対する備えとして機能します。

貸倒引当金を設定する際は、以下のような仕訳を行います。

貸方 借方
貸倒引当金 貸倒引当金繰入

この仕訳により、貸借対照表上で貸倒引当金を計上し、将来のリスクに備えます。同時に、損益計算書上で貸倒引当金繰入を計上することで、当期の収益性を保守的に見積もることができます。

貸倒引当金の設定額は、過去の貸倒実績や債権の回収可能性を考慮して決定します。

不良債権の回収プロセス

不良債権を抱えた企業にとって、その回収は急を要する問題と言えます。ここでは、不良債権の回収プロセスについて、段階的なアプローチを解説します。

不良債権回収の初期対応

不良債権回収の第一歩は、債務者との直接的なコミュニケーションです。電話や訪問により、支払いの督促や状況の確認を行います。

この段階では、債務者の事情を把握し、返済計画の立案を促すことが重要です。債務者との信頼関係を構築しつつ、円滑な回収を目指します。

督促状の送付と内容証明郵便による催告

初期対応で回収の目途が立たない場合、次のステップとして督促状の送付を検討します。督促状では、支払期日や金額、遅延損害金などを明記し、法的措置の可能性を示唆します。

さらに、内容証明郵便による催告を行うことで、法的な効力を持たせることができます。これにより、債務者に支払いの重要性を認識してもらうことを狙います。

法的手続きによる回収

督促や催告によっても回収が進まない場合、法的手続きを検討せざるを得ません。代表的な手続きとしては、以下が挙げられます。

  • 民事調停:裁判所の主導で、当事者間の話し合いによる解決を図る
  • 支払督促:裁判所から債務者に支払いを命じる簡易な手続き
  • 裁判:正式な訴訟手続きにより、債権の正当性を主張する
  • 強制執行:裁判所の決定に基づき、債務者の財産を差し押さえる

法的手続きは時間と費用を要しますが、回収の実効性を高める有力な手段といえます。

回収不能ケースの対応

不良債権の中には、最終的に回収不能となるケースも存在します。回収不能の主なパターンを以下に分類します。

分類
法律上の回収不能 会社更生法・民事再生法・特別清算による債権カット
事実上の回収不能 経営破綻、債務者の死亡・行方不明、天災・事故による支払不能
取引停止後の未払い 1年以上支払いがない場合(法人税基本通達9-6-3)

回収不能債権については、適切な会計処理を行う必要があります。貸倒損失の計上や、貸倒引当金の設定などが求められます。税務上の取り扱いにも注意が必要でしょう。

不良債権の回収は企業の財務健全化に直結する重要な課題です。初期対応から法的手続き、回収不能時の処理まで、体系的な理解と対応が求められます。状況に応じた適切な行動により、キャッシュフローの維持改善と収益力の向上を目指していきましょう。

不良債権処理における対応

不良債権は、企業の経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。効果的な不良債権処理を行うために、以下の対応を心がけましょう。

早期の問題検知

不良債権問題に早期に気づき、迅速に対応することが大切です。債権の状況を定期的にモニタリングし、延滞や未回収の兆候を見逃さないようにしましょう。

問題を発見したら、速やかに債務者との連絡を取り、状況を把握します。債務者の経営状況や資金繰りを確認し、返済計画の見直しや支援策の検討を行います。早期の対応が、不良債権の拡大を防ぐ鍵となります。

債権管理体制の強化

不良債権を防ぐには、社内の債権管理体制を強化することが重要です。債権管理の専門部署を設置し、明確な回収プロセスを確立しましょう。

また、債権管理システムの導入により、債権の状況を一元的に管理することができます。これにより、問題の早期発見と対応が可能となります。定期的な債権の棚卸しや、回収状況の分析も欠かせません。

取引先の信用調査と与信管理

不良債権を未然に防ぐためには、取引先の信用調査と与信管理が重要な役割を果たします。新規取引先との取引開始前に、必ず信用調査を実施しましょう。

信用調査では、取引先の財務状況や経営状況、業界動向などを詳細に分析します。そして、与信限度額を設定し、取引条件を適切に管理しなければなりません。定期的な与信限度額の見直しも忘れずに行いましょう。

債権回収の外部専門家の活用

自社での債権回収が難しい場合は、外部の専門家の力を借りるのも一つの選択肢です。弁護士や債権回収会社など、債権回収のプロフェッショナルに相談することをおすすめします。

法的手続きが必要な場合は、弁護士に依頼することで、適切な対応が可能となります。また、債権回収会社は、豊富な経験と交渉ノウハウを持っており、効率的な回収が期待できます。自社の状況に合わせて、外部専門家を活用しましょう。

まとめ

本記事では、企業が直面する不良債権問題について、その定義や種類、回収プロセス、会計処理などを詳しく解説しました。不良債権は、キャッシュフローの悪化や収益減少のリスクを招く重大な問題です。

不良債権問題に直面している企業は、本記事で解説したような適切な対応策を講じることをおすすめします。不良債権処理を効果的に行うことで、健全な財務状況を維持し、企業経営を安定的に行うことができるでしょう。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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