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2025.01.31

法人事業概況説明書の作成方法と活用ポイント解説

事業運営に必要な資金を確保したいが、どのような書類を作成すればよいのかお悩みではありませんか?決算書類の中でも、事業の概況を税務署に的確に伝える重要な書類が「法人事業概況説明書」です。

この記事では、法人事業概況説明書の作成方法や記載項目、活用メリットについて詳しく解説します。この書類を適切に作成・提出することで、税務調査のリスク軽減や金融機関からの信用力アップ、自社の経営状況の把握と改善に役立てることができるでしょう。

法人事業概況説明書とは

法人事業概況説明書は、単なる税務申告書類ではありません。事業の健全性をアピールし、円滑な資金調達や事業運営の効率化を図るための強力なツールとして活用できます。ここでは、法人事業概況説明書の基本的な特徴について解説します。

法律上の規定

法人事業概況説明書は、法人税法施行規則第35条の5号に定められた「事業等の概況に関する書類」のことをいいます。確定申告書に添付して提出する重要な書類の一つとなっています。

法的には、法人税の申告に際して、事業の概況を説明するための書類として位置付けられています。2006年の法改正により、確定申告時の提出が義務化されました。

提出義務と提出方法

法人事業概況説明書の提出は、全ての法人に義務付けられています。提出期限は、決算日から2ヶ月以内となっています。

提出方法は、以下の3つの方法があります。

  • e-Taxを利用したオンライン提出
  • 郵送による提出
  • 税務署窓口への直接持参

ただし、法定提出書類ではあるものの、提出がない場合のペナルティは特に設けられていません。とはいえ、適切な申告のためにも、提出は欠かせないでしょう。

記載情報

法人事業概況説明書には、事業の概況を示すさまざまな情報の記載が求められます。主要な記載項目は、大きく表面と裏面に分かれています。

表面には、以下のような基本的な事項や運営に関する情報を記載します。

基本事項 運営関連
  • 事業内容
  • 支店・子会社の状況
  • 海外取引状況
  • 従業員状況
  • PC利用状況
  • 販売形態
  • 株主異動情報
  • 経理状況
  • 役員報酬情報

一方、裏面には、より詳細な事業形態や設備状況、決済情報などを記載します。また、月次の売上高データや営業成績の概要なども求められています。

金額単位は千円単位が基本ですが、源泉徴収税額のみ円単位で記載します。記載内容は全て決算期末時点の情報に基づくことが原則です。

出資関係図の要件

法人事業概況説明書の作成にあたっては、出資関係図の添付が必要となる場合があります。それは、完全支配関係のある法人が存在する場合です。

出資関係図では、決算期末時点のグループ内の出資関係を系統的に表示します。また、グループ内の各法人の基本情報も記載しなければなりません。

出資関係が複雑な企業グループの場合、出資関係図の作成には十分な注意が必要でしょう。正確な情報開示が求められます。

法人事業概況説明書の主な記載項目

法人事業概況説明書は、法人税法施行規則第35条の5号に定められた「事業等の概況に関する書類」です。事業運営の概況や財務情報等を税務当局に報告する重要な書類となっています。

ここでは、法人事業概況説明書の主要な記載項目について解説していきます。表面と裏面に分かれており、それぞれ事業の基本情報から詳細な財務データまで幅広い項目の記入が求められています。

表面の記載項目

法人事業概況説明書の表面には、事業の基本情報を記載する項目が並んでいます。具体的には以下のような内容になります。

  • 事業内容:会社の主要な事業活動の概要を記載します。
  • 支店・子会社の状況:国内外の支店や子会社の有無、所在地などを記します。
  • 海外取引状況:輸出入取引の有無や主要な取引先国を明記します。
  • 従業員状況:正社員、パートタイマー等の内訳と代表者の家族の従業員情報を記載します。
  • PC利用状況:業務におけるPC利用台数や主要用途を記します。
  • 販売形態:店舗販売、通信販売等の販売方法の割合を記載します。
  • 株主異動情報:株主の異動状況や持株比率の推移を記録します。
  • 経理状況:経理担当者の情報と代表者との関係性を明記します。
  • 役員報酬情報:役員への報酬金額と社外役員の有無を記載します。

これらの項目を漏れなく正確に記入することで、会社の事業概要を税務署に的確に伝えることができるでしょう。

裏面の記載項目

法人事業概況説明書の裏面には、より詳細な事業運営や財務に関する情報の記載欄があります。主な項目は次の通りです。

  • 事業形態詳細:事業区分ごとの売上高構成比や外注比率等を記載します。
  • 設備状況:事業用設備の内容と帳簿価額、リース利用状況等を記録します。
  • 決済情報:主な取引金融機関名と売掛金・買掛金の回収・支払サイトを明記します。
  • 帳簿類の状況:会計帳簿の種類と記録方法、保存状況を記載します。
  • 税理士関与状況:顧問税理士の有無と関与内容を記録します。
  • 月別売上高データ:当期の月次売上高を記入し、前期比増減を計算します。
  • 営業成績概要:売上総利益率や営業利益率等の主要指標を記載します。

裏面の項目は会社の財務内容や税務面での管理状況を示すものが多いため、正確性が特に重要となります。記載内容に不備があると、税務調査等のリスクが高まる可能性もあるでしょう。

金額単位と源泉徴収税額の扱い

法人事業概況説明書への金額記載は、基本的に千円単位で行います。ただし、源泉徴収税額だけは例外的に円単位で記載しなければなりません。

金額単位を間違えると修正が必要になり、書類の再提出を求められるケースもあります。源泉徴収税額の扱いにも注意しつつ、適切な金額単位で記入を行うことが肝心といえるでしょう。

決算期末時点の情報の重要性

法人事業概況説明書の記載内容は、決算期末時点のデータに基づくものでなければなりません。期中の情報を使用すると、実態と乖離した報告となってしまう恐れがあります。

例えば、完全支配下にある子会社がある場合は、出資関係図の提出が必要です。その際、決算期末時点のグループ会社の状況を正確に反映させる必要があります。

法人事業概況説明書の作成プロセス

法人事業概況説明書は、法人の事業内容や経営状況を税務署へ報告するための重要な書類です。この書類を作成するには、いくつかのプロセスを踏む必要があります。

ここでは、法人事業概況説明書を作成する際の主要なプロセスについて解説していきます。適切な情報収集と記入方法を理解することで、正確かつスムーズに書類を完成させることができるでしょう。

必要情報の収集

法人事業概況説明書の作成にあたり、まず必要な情報を収集することが重要です。事業内容や支店・子会社の状況、海外取引状況、従業員状況など、基本的な事項を把握しておく必要があります。

また、PCの利用状況、販売形態、株主異動情報、経理状況、役員報酬情報など、運営に関連する情報も欠かせません。これらの情報は、決算期末時点の状況を反映したものでなければなりません。

表面と裏面の記入

情報収集と出資関係図の作成が完了したら、いよいよ法人事業概況説明書の表面と裏面の記入作業に入ります。表面には、事業内容や支店・子会社の状況、海外取引状況、従業員状況など、基本的な事項を記入します。

裏面には、事業形態の詳細、設備状況、決済情報、帳簿類の状況、税理士関与状況、月別売上高データ、営業成績概要など、より詳細な情報を記入します。特に、売上・仕入データは月次ベースで記録し、従業員情報では代表者家族を明記するなど、注意すべき点があります。

提出前の最終確認

法人事業概況説明書の記入が完了したら、提出前に最終確認を行います。記載内容に誤りがないか、決算期末時点の情報が正しく反映されているかを入念にチェックします。

また、金額単位や源泉徴収税額の記載が適切かどうかも確認が必要です。法人事業概況説明書は法定提出書類ですが、提出義務違反に対するペナルティはありません。ただし、正確な情報を提供することは法人の責務といえます。

最終確認が完了したら、法人事業概況説明書をe-Tax、郵送、または税務署へ持参して提出します。決算日から2ヶ月以内の提出を心がけましょう。

法人事業概況説明書の記載における注意点

法人事業概況説明書の作成にあたっては、いくつかの重要なポイントに注意を払う必要があります。ここでは、特に重視すべき記載上の注意点について見ていきましょう。

売上・仕入データの月次記録

法人事業概況説明書には、売上と仕入のデータを月次ベースで記録する必要があります。年間の合計金額だけでなく、月ごとの金額を明記しておくことで、事業の季節変動や繁忙期などを把握しやすくなります。

また、月次データを記録することで、決算書との整合性も確認しやすくなるでしょう。売上と仕入の動向を正確に把握し、適切な事業運営に役立てることができます。

従業員情報と代表者家族の明記

従業員に関する情報の記載も重要なポイントです。特に、代表者の家族が従業員として在籍している場合は、その旨を明記しておく必要があります。家族の雇用状況を正確に開示することで、事業の透明性を高めることができるでしょう。

また、パート・アルバイトを含む全従業員数や、平均勤続年数なども記載が求められます。従業員の雇用状況を適切に把握・管理していることを示すことが肝心です。

経理状況と管理者・代表者の関係

法人事業概況説明書では、経理状況についても詳細な記載が求められます。特に、経理管理者と代表者の関係性を明記しておくことが重要です。両者が親族関係にあるのか、あるいは別の関係性なのかを正確に記すようにしましょう。

加えて、経理処理の実施状況や、税理士の関与状況なども開示が必要です。適切な経理管理体制が整えられていることを示すことで、事業の信頼性を高めることにつながります。

消費税の経理方式の明記

消費税の経理処理方式も、法人事業概況説明書に明記すべき重要な情報です。自社が採用している経理方式が「税抜経理方式」なのか「税込経理方式」なのかを正確に記載しましょう。消費税の会計処理を適切に行っていることを示すことが求められます。

また、課税事業者であるのか免税事業者であるのかも明記が必要です。消費税の取り扱いに関する情報を漏れなく開示し、適正な税務処理を行っていることを示すことが大切です。

法人事業概況説明書を活用するメリット

法人事業概況説明書は、単なる税務申告書類の一つではありません。この書類を上手に活用することで、事業者は様々なメリットを享受できるのです。

ここでは、法人事業概況説明書の主要な活用メリットを3つの観点から解説していきます。税務調査対策、金融機関への信用力アピール、そして経営状況の把握と改善への活用という点に注目してみましょう。

税務調査対策としての有効性

法人事業概況説明書は、税務署に対して事業の全体像を正確に伝える重要な書類です。この書類を適切に作成し提出することで、税務調査のリスクを大幅に軽減できます。

税務署は事業概況説明書の内容を精査し、事業の実態と申告内容に齟齬がないかをチェックします。事業内容や取引関係、経理状況などを詳細に記載することで、申告内容の正当性を裏付けることができるのです。

また、事前に事業概況を明示しておくことで、税務調査の際に指摘を受ける可能性のある項目を事前に洗い出し、適切な対策を講じておくこともできます。これにより、円滑な税務調査の実施と追徴課税のリスク回避につながります。

金融機関への信用力アピール

事業資金の調達や融資の際、金融機関が重視するのが事業の透明性と信頼性です。法人事業概況説明書は、金融機関にとって事業の実態を把握するための有力な情報源となります。

事業概況説明書に事業内容や財務状況、取引関係などを明瞭に記載することで、事業の健全性と将来性をアピールできます。金融機関は、この情報を元に融資の可否や条件を判断するため、説得力のある事業概況説明書を作成することが肝要です。

加えて、タイムリーかつ正確な情報開示は、金融機関との信頼関係構築にも役立ちます。継続的な情報提供により、金融機関との良好なパートナーシップを維持し、将来の資金調達をスムーズに進められるでしょう。

経営状況の把握と改善につながる

法人事業概況説明書の作成プロセスは、自社の経営状況を詳細に見直す絶好の機会ともいえます。売上や費用の推移、取引先との関係性、業務プロセスの効率性など、事業の様々な側面を俯瞰的に分析できます。

この分析を通じて、経営上の課題や改善点を明確化することができます。例えば、売上の季節変動が大きい場合、その要因を探り、対策を講じることが可能です。また、経費削減の余地がある業務領域を特定し、コストの最適化に取り組むこともできるでしょう。

事業概況説明書で得られた経営情報を経営改善に活かすことで、事業の生産性向上と収益力強化を図ることができます。

法人事業概況説明書の提出における注意点

法人事業概況説明書は、法人税の申告において非常に重要な書類です。提出に際しては、いくつかの注意点があります。

ここでは、提出期限と遅延リスク、記載情報の正確性の重要性、提出方法の選択肢と手続きについて解説していきます。

提出期限と遅延リスク

法人事業概況説明書の提出期限は、決算日から2ヶ月以内と定められています。この期限を過ぎると、税務署から督促状が送られてくる可能性があります。

提出が遅れると、税務調査のリスクが高まるでしょう。また、期限内に提出しないと、法人税の申告自体が受理されない場合もあります。期限を厳守しましょう。

記載情報の正確性

法人事業概況説明書には、事業内容や財務状況など、会社の概況を詳細に記載する必要があります。この情報は、税務署が会社の実態を把握するために使用されます。

したがって、記載内容は正確で最新のものでなければなりません。虚偽の情報や古い情報を記載すると、税務調査のリスクが高まります。情報の正確性を確保するために、提出前に十分な確認が必要でしょう。

提出方法の選択

法人事業概況説明書の提出方法には、以下の3つの選択肢があります。

  • e-Taxを利用したオンライン提出
  • 郵送による提出
  • 税務署への直接持参

オンライン提出が最も便利ですが、事前の利用者登録と電子証明書の取得が必要です。郵送の場合は、必ず書留や簡易書留を利用しましょう。紛失のリスクを避けるためです。

直接持参する場合は、税務署の受付時間に注意が必要です。また、提出時に受付印を必ずもらうようにしてください。提出したことの証明になります。

まとめ

本記事では、法人事業概況説明書の作成方法と活用ポイントについて詳しく解説してきました。法人事業概況説明書は、事業の概況を税務署に正確に伝える重要な書類です。

また、法人事業概況説明書の作成プロセスは、自社の経営状況を見直し、課題を洗い出すための良い機会にもなります。得られた情報を活用し、事業の効率化と収益力強化を図っていきましょう。提出期限は決算日から2ヶ月以内であり、遅延は避けるべきです。正確な記載と期限内の提出を心がけましょう。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 
同年 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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