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2025.01.31

エクイティとは?企業価値向上のポイントを解説

事業の成長に資金調達は必要不可欠ですが、借入金による資金調達は返済義務があり、財務状況によっては思うように資金を確保できないことがあります。そこで注目されるのが、エクイティファイナンスによる資金調達です。

この記事では、エクイティファイナンスの概要や種類、メリット・デメリットを詳しく解説します。エクイティファイナンスを活用することで、返済義務のない長期的な資金調達が可能となり、事業の成長や企業価値の向上につなげることができるでしょう。

エクイティとは

エクイティとは、株式や株主資本を表す金融用語です。会計上、エクイティは貸借対照表の純資産の部に計上されます。エクイティは、株主が企業に投資した資金であり、企業の所有者としての権利を表しています。

エクイティの特徴として、返済義務がないことが挙げられます。借入金とは異なり、エクイティによる資金調達では、元本の返済や利息の支払いが不要です。これにより、企業のキャッシュフローへの影響を軽減できます。

エクイティと企業価値の関係性

エクイティは、企業価値と密接に関連しています。株主資本は、企業の純資産を構成する重要な要素の一つであり、企業価値を反映しています。株主資本が増加すると、企業の財務体質が強化され、信用力が向上します。

また、返済不要なエクイティを活用して資金調達を行うことによって、長期的な投資が可能になります。。成長投資や事業転換、研究開発投資などに活用できるため、企業の将来的な価値創造に寄与します。

エクイティとデットファイナンスの違い

エクイティとデットファイナンスは、企業の資金調達手段の代表的な2つの方法です。デットファイナンスは、借入金や社債による資金調達を指します。デットファイナンスでは、返済義務(償還義務)と利息支払いが発生し、負債として会計処理されます。

一方、エクイティファイナンスには返済義務がなく、株主資本として計上されます。また、デットファイナンスでは、借入金の増加により財務リスクが高まる可能性がありますが、エクイティファイナンスでは、自己資本比率の向上により財務体質が強化されます。

比較項目 エクイティファイナンス デットファイナンス
返済義務 なし あり
会計処理 純資産(株主資本) 負債
財務への影響 自己資本比率の向上 借入金の増加

エクイティファイナンスの位置づけ

エクイティファイナンスは、企業の資金調達戦略において重要な位置づけにあります。株主割当増資、第三者割当増資、公募増資、転換社債型新株予約権付社債(CB)などの方法があり、それぞれの特徴を理解した上で、企業の状況に合わせて適切な方法を選択することが求められます。

エクイティファイナンスは、長期的な成長投資や事業転換などの資金需要に対応できる点で優れています。一方で、株数の増加による株式の希薄化や経営への影響、手続きの複雑さなどのデメリットも考慮する必要があります。企業価値の向上を目指し、戦略的にエクイティファイナンスを活用することが重要です。

エクイティファイナンスの種類

エクイティファイナンスには、様々な形態があり、それぞれの特徴を理解することで、自社に最適な資金調達方法を選択することができます。。

ここでは、主要な4つのエクイティファイナンスである、株主割当増資、第三者割当増資、公募増資、そして転換社債型新株予約権付社債(CB)について詳しく見ていきましょう。

株主割当増資の仕組みと活用方法

株主割当増資は、既存株主に対して新株を発行する方法です。保有比率に応じて割当が行われるため、株主構成比率を維持したまま資金調達が可能となります。

この方法は、株主との関係性を重視する企業にとって有効な選択肢といえます。既存株主の理解と協力を得やすく、経営への影響も比較的小さいでしょう。

ただし、大規模な資金調達には向かない面もあります。資金力に限界と差異のある既存株主の出資能力に依存するため、調達規模に限界があるからです。

第三者割当増資の特徴と戦略的活用

第三者割当増資は、特定の投資家に対して新株を発行する方法です。戦略的提携を目的とした資金調達に適しています。

事業シナジーが期待できる企業や、経営ノウハウを提供できる投資家を選定することで、単なる資金調達以上の効果を得られる可能性があります。また、迅速な実行が可能なのも魅力です。

一方で、株主構成が変化するため、経営への影響を慎重に見極める必要があるでしょう。投資家との関係構築や、既存株主への説明も重要なポイントとなります。

公募増資の仕組みと市場評価の反映

公募増資は、不特定多数の投資家に対して株式を募集する方法です。大規模な資金調達を実現できるのが最大の特徴でしょう。

また、市場の評価を直接的に反映できるのも利点の一つです。投資家からの支持を得られれば、企業価値の向上につながります。

ただし、手続きが複雑で時間を要するのがデメリットです。株式の希薄化も避けられないため、既存株主への影響を十分に考慮する必要があります。

転換社債型新株予約権付社債(CB)の仕組みと選択権

CBは、株式への転換権が付与された社債です。柔軟性の高い資金調達手段として注目されています。

投資家にとっては、株式への転換を選択できるオプション性が魅力です。株価上昇時には転換により高いリターンを得られる一方、株価下落時には社債としての利息収入を確保できます。

発行企業側も、当初は負債として資金調達でき、株価上昇局面で自己資本に転換できるメリットがあります。ただし、転換価格の設定など、発行条件の検討が重要となるでしょう。

エクイティファイナンスのメリット

エクイティファイナンスを適切に活用することにより、効率的に資金調達を行うことができます。ここでは、エクイティファイナンスにはどのようなメリットがあるのかについて見ていきます。

返済義務のない資金調達

エクイティファイナンスの大きなメリットの一つが、返済義務のない資金調達が可能な点です。借入金のように元本を返済する必要がなく、利息の支払い義務もありません。

これにより返済不要のキャッシュフローが拡大し、調達した資金を自由に事業に活用・投資することができます。返済プレッシャーから解放され、長期的な視点で経営判断を下せるのがエクイティファイナンスの大きな利点といえます。

自己資本比率の向上と信用力強化

エクイティファイナンスを活用することで、自己資本比率の向上につながります。自己資本比率は、企業の財務健全性を示す重要な指標の一つです。

自己資本比率が高まることで、金融機関や取引先からの信用力が強化され、より有利な条件で追加の借入や取引が可能になります。財務体質の改善は、企業の成長や安定性に大きく寄与するでしょう。

長期的な成長投資の実現

エクイティファイナンスで調達した資金は、長期的な成長投資に活用できます。事業拡大や新規事業への進出など、将来の企業価値向上につながる投資を行うことが可能になります。

借入金と異なり返済期限がないため、腰を据えて長期的な視点で投資判断ができます。持続的な成長を目指す企業にとって、エクイティファイナンスは欠かせない資金調達手段の一つといえるでしょう。

事業転換や研究開発投資への活用

昨今の経営環境の変化に対応するためには、事業転換や新規事業の立ち上げが求められます。エクイティファイナンスはそのための資金調達手段として有効活用できます。

また、新製品開発や技術革新のための研究開発投資にも活用可能です。長期的な視点に立った先行投資を行うことで、競争優位性の確立や新たな収益源の獲得につなげることができるでしょう。

エクイティファイナンスの注意点

エクイティファイナンスは企業にとって有用な資金調達手段ですが、一方でデメリットや注意点も存在します。ここでは、エクイティファイナンスの主要なデメリットと実施する際の注意点について解説します。

株式希薄化による既存株主への影響

エクイティファイナンスを実施すると、新たな株式が発行されることで、既存株主の持分比率が低下する株式の希薄化が起こります。この結果、1株当たりの価値が低下し、既存株主の利益に影響を与える可能性があります。

また、株式の希薄化は市場での評価にも影響を及ぼす可能性があります。投資家は、株式の希薄化により将来の利益成長率や1株当たりの利益が低下することを懸念し、株価が下落するリスクがあるのです。

経営の自由度低下と株主対応の必要性

エクイティファイナンスにより新たな株主が加わることで、経営の自由度が低下する可能性があります。新株主の意向を考慮した経営判断が求められ、意思決定プロセスが複雑化するケースもあるでしょう。

加えて、株主との関係管理にも注力する必要が出てきます。株主総会での説明責任や、個別の株主からの要望への対応など、株主対応の負担が増加することが予想されます。

実施手続きの複雑さとコスト増加

エクイティファイナンスを実施する際には、複雑な法的手続きが必要となります。取締役会での決議や株主総会での承認、各種登記手続きなど、専門的な知識と時間を要する手続きが求められます。

また、コスト面でもデメリットが存在します。配当負担の増加や、管理コストの増加、情報開示に関連するコストなど、エクイティファイナンス実施に伴う様々なコストが発生します。

情報開示義務の拡大

エクイティファイナンスを実施することで、投資家(株主)に対する情報開示義務が拡大します。投資家保護の観点から、企業の財務状況や経営戦略、リスク要因などについて、より詳細な情報開示が求められるようになります。

情報開示の拡大は、社内体制の整備やコンプライアンス対応の強化につながるメリットもありますが、一方で情報管理の負担増加や、機密情報の流出リスクにも留意が必要です。

エクイティファイナンスの実施プロセス

ここでは、エクイティファイナンスを実施するにあたって、どのような手続きが必要なのかを順番に解説します。

必要資金額の算定と調達方法の選択

エクイティファイナンスを実施するにあたり、まずは必要な資金額を算定し、適切な調達方法を選択する必要があります。

必要資金額の算定では、事業計画や投資計画に基づいて、事業拡大や新規事業展開に必要な資金を具体的に見積もります。短期的な運転資金だけでなく、中長期的な成長投資の資金需要も考慮することが重要です。

調達方法の選択では、自社の事業ステージや財務状況、株主構成などを総合的に勘案し、最適な手法を検討します。株主割当増資、第三者割当増資、公募増資、転換社債型新株予約権付社債(CB)など、多様な選択肢の中から、自社の状況に合致した方法を選ぶことが肝要です。

株主総会での承認と各種手続き

エクイティファイナンスの実施には、株主総会での承認と各種法的手続きが必要となります。

株主総会では、エクイティファイナンスの実施に関する議案を上程し、株主の承認を得る必要があります。既存株主への十分な説明と合意形成が重要であり、株主価値への影響や資金使途の妥当性について丁寧に説明することが求められます。

株主総会での承認後は、各種法的手続きを進めます。取締役会決議、株式公開企業においては有価証券届出書の提出、募集株式の発行登記など、一連の手続きを適切に行う必要があります。専門家の助言を得ながら、手続きの漏れや遅延がないよう注意深く対応することが肝要です。

投資家募集と払込手続き

株主総会での承認と各種手続きが完了したら、いよいよ投資家の募集と払込手続きを行います。

投資家募集では、ターゲットとする投資家層に応じて、適切な募集方法を選択します。機関投資家向けのロードショーや個人投資家向けの説明会など、効果的な IR 活動を展開することが重要です。

払込手続きでは、投資家から払込金を受け取り、増資の対価となる株式を発行します。払込期日の管理、払込金の適切な受領、株券の発行など、実務的な対応を確実に行うことが求められます。また、資金使途についても適切に管理し、有効活用を図ることが重要です。

登記申請と情報開示

エクイティファイナンスの実施後は、登記申請と情報開示を適切に行う必要があります。

登記申請では、増資の内容を反映した登記事項の変更手続きを行います。商業登記の変更手続きを適切に行い、資本金額や発行済株式数の変更を公示することが重要です。

情報開示では、エクイティファイナンスの実施結果や資金使途について、適時適切に開示を行います。特に株式公開企業においては、有価証券報告書や適時開示資料などを通じて、投資家や市場に対して透明性の高い情報提供を行うことが求められます。情報開示を通じて、投資家との信頼関係を構築し、企業価値の向上につなげることが重要です。

エクイティファイナンス成功のポイント

エクイティファイナンスは、企業の成長や拡大を支えるための効果的な資金調達手段ですが、その成功にはいくつかの重要なポイントがあります。ここでは、成功のために押さえるべきポイントを様々な観点から整理します。

明確な資金使途の提示

エクイティファイナンスを成功させるためには、投資家に対して明確な資金使途を提示することが重要です。

企業は、調達した資金をどのように活用し、どのような成果を目指すのかを具体的に示す必要があります。

例えば、新規事業への投資や設備投資、研究開発費用などの具体的な使途を明示することで、投資家の理解と共感を得やすくなります。

また、資金使途が明確であれば、投資家は企業の成長戦略を評価しやすく、投資判断がしやすくなるでしょう。

投資家とのコミュニケーション戦略

エクイティファイナンスでは、投資家との良好なコミュニケーションが欠かせません。

企業は、投資家に対して積極的に情報開示を行い、対話の機会を設けることが重要です。

具体的には、決算説明会やIR活動を通じて、企業の現状や将来の展望について丁寧に説明することが求められます。

また、投資家からの質問や要望に真摯に耳を傾け、適切なフィードバックを行うことで信頼関係を構築できます。

適切な調達手法の選択と準備期間の確保

エクイティファイナンスには様々な手法がありますが、企業の状況に適した調達手法を選択することが重要です。

例えば、大規模な資金調達が必要な場合は公募増資が適していますが、戦略的提携を目的とする場合は第三者割当増資が有効でしょう。

また、エクイティファイナンスには一定の準備期間が必要です。

手続きの複雑さやコスト面を考慮し、十分な準備期間を確保することが肝心です。拙速な実施は、投資家の信頼を損ねる恐れがあります。

専門家の活用と実務対応

エクイティファイナンスには専門的な知識と経験が求められるため、専門家の活用が有効です。

弁護士や会計士、証券会社などの専門家から適切なアドバイスを得ることで、円滑に手続きを進められます。

また、実務面での対応も重要です。投資家募集や払込手続き、各種登記申請など、漏れのない実務対応が求められます。

社内体制を整備し、担当者を明確にすることで、スムーズな実施につなげることができるでしょう。

まとめ

本記事では、エクイティファイナンスの概要や種類、メリット・デメリットについて詳しく解説してきました。エクイティファイナンスは、返済義務のない資金調達が可能であり、自己資本比率の向上や長期的な成長投資の実現など、企業価値向上に寄与する重要な手段といえます。

事業の成長や経営環境の変化に対応するために、エクイティファイナンスは有効な選択肢の一つです。自社の状況を見極め、専門家のアドバイスを参考にしながら、戦略的にエクイティファイナンスを活用することをおすすめします。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 
同年 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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