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2025.02.03

リース資産の基本とは?計上と管理方法を解説

リース資産の管理において、リース期間と資産の耐用年数の関係を適切に理解し、管理することは非常に重要です。リース資産の減価償却方法や、リース満了時の処理は、この関係性に大きく影響を受けるためです。この記事では、リース資産の基本的な概念から、適切な管理方法、最新の会計基準の動向まで、包括的に解説します。

リース資産とは

リース資産とは、リース取引によって得られた使用権のある資産のことを指します。つまり、リース会社が資産を取得し、借手である企業に使用権を付与するという形式をとります。

借手は、定期的なリース料の支払いと引き換えに、その資産を使用することができるのです。このようにして得られた使用権のある資産が、リース資産と呼ばれています。

リース資産の種類

リース資産は、大きく分けて2つの種類に分類されます。1つ目は、ファイナンス・リース取引によって得られるリース資産です。ファイナンス・リースには、所有権移転型と所有権移転外型の2種類があります。

2つ目は、オペレーティング・リース取引によって得られるリース資産です。オペレーティング・リースは、ファイナンス・リース以外のリース取引のことを指します。

これらのリース資産は、それぞれ会計処理の方法が異なるため、適切に分類し管理することが求められます。

リース資産の会計処理と法律

リース資産に関する会計処理は、法律上の基準に基づいて行われています。2008年4月1日以降に開始するリース取引については、新しいリース会計基準が適用されています。

ただし、中小企業については、「中小企業の会計に関する指針」に基づく処理を選択することも可能です。このように、企業の規模や状況に応じて、適切な会計基準を適用する必要があります。

リース取引の分類

リース取引にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。ここでは、主要なリース取引の分類と特徴について解説していきましょう。

ファイナンス・リース取引

ファイナンス・リース取引とは、実質的に資産の購入と同等の経済効果を持つリース取引のことをいいます。この取引では、リース料の支払いを通じて、リース資産の取得価額の大部分が回収されます。

ファイナンス・リース取引の特徴は以下のとおりです。

  • リース期間が資産の経済的耐用年数の大部分を占める
  • リース契約の解除ができない、または解除するとリース会社に損害が発生する
  • リース資産の価値の変動による利益や損失がリース会社ではなく借手に帰属する

オペレーティング・リース取引

オペレーティング・リース取引は、ファイナンス・リース取引以外のリース取引を指します。この取引では、リース期間が資産の経済的耐用年数よりも短く、リース料の支払いを通じてリース資産の取得価額の一部しか回収されません。

オペレーティング・リース取引の特徴は次のようなものがあります。

  • リース期間が資産の経済的耐用年数よりも短い
  • リース契約の解除が可能である
  • リース資産の価値の変動による利益や損失がリース会社に帰属する

所有権移転型リース取引

所有権移転型リース取引は、ファイナンス・リース取引の一種であり、リース期間の終了後にリース資産の所有権が借手に移転する取引のことをいいます。この取引では、リース資産は借手の資産として計上され、借手が減価償却を行います。

所有権移転型リース取引の特徴としては、以下のような点が挙げられます。

  • リース期間終了後に所有権が借手に移転する
  • 借手が資産を計上し、減価償却を行う
  • 減価償却方法は、資産の耐用年数に基づいて定額法または定率法を選択できる

所有権移転外型リース取引

所有権移転外型リース取引も、ファイナンス・リース取引の一種ですが、リース期間の終了後にリース資産の所有権が借手に移転しない取引のことをいいます。この取引では、リース資産は借手の資産として計上されますが、減価償却方法はリース期間に基づく定額法のみが認められています。

所有権移転外型リース取引の特徴は次のとおりです。

  • リース期間終了後も所有権は借手に移転しない
  • 借手が資産を計上し、減価償却を行う
  • 減価償却方法は、リース期間に基づく定額法のみ

リース資産の会計処理

リース資産の会計処理は、リース取引の種類によって異なります。ここでは、リース資産の計上方法や減価償却の方法、残価保証がある場合の処理、そしてリース資産の表示方法について説明します。

リース資産の計上方法

リース取引は、大きく分けてファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の2つに分類されます。ファイナンス・リース取引は、さらに所有権移転型と所有権移転外型に分けられます。

所有権移転型のリース取引では、リース期間終了後に所有権が借手に移転するため、リース資産を借手の貸借対照表に計上し、耐用年数に基づいて減価償却を行う必要があります。一方、所有権移転外型のリース取引では、リース期間終了後も所有権は移転しないため、リース期間に基づく定額法で償却を行います。

オペレーティング・リース取引は、ファイナンス・リース以外の取引であり、単純な賃貸借として処理されます。この場合、リース資産は借手の貸借対照表に計上されず、減価償却も不要です。

減価償却の方法と計算例

リース資産の減価償却方法は、所有権移転型と所有権移転外型で異なります。所有権移転型の場合、以下のように定額法または定率法を用いて計算します。

  • 定額法:減価償却費=取得価額×耐用年数に応じた定額法の減価償却率
  • 定率法:減価償却費=未償却残高×耐用年数に応じた定率法の減価償却率

所有権移転外型の場合は、リース期間に基づく定額法で償却します。計算式は以下の通りです。

  • 減価償却費=取得価額÷リース期間の月数×当期月数

残価保証がある場合の処理

リース契約に残価保証がある場合、減価償却費の計算方法が異なります。残価保証とは、リース期間終了時に借手が保証する資産の価値のことを指します。

残価保証がある場合の減価償却費の計算式は以下の通りです。

  • 減価償却費=(取得価額-残価保証額)÷リース期間月数×当期月数

リース資産の表示方法

リース資産は、借手の貸借対照表において、「有形固定資産」または「無形固定資産」の区分に表示されます。所有権移転型のリース取引で取得したリース資産は、通常の有形固定資産または無形固定資産と同様に表示します。

所有権移転外型のリース取引で取得したリース資産は、「リース資産」という科目で別掲する方法と、各資産科目に含めて表示する方法のいずれかを選択できます。重要性が乏しい場合は、各資産科目に含めて表示することが一般的です。

リース資産管理のポイント

リース取引を行う際、適切な管理を行うことで、効率的な資産運用とコスト削減につなげることができます。ここでは、リース資産管理のポイントを見ていきましょう。

リース期間と耐用年数の関係

リース資産の管理において、リース期間と耐用年数の関係は重要な要素です。所有権移転型のリース取引では、リース期間が法定耐用年数の一定割合を下回る場合、特別な処理が必要となります。

具体的には、法定耐用年数が10年未満の資産の場合、リース期間が法定耐用年数の70%未満であれば所有権移転型として処理します。一方、法定耐用年数が10年以上の資産の場合、リース期間が法定耐用年数の60%未満であれば所有権移転型となります。この場合、耐用年数に基づく減価償却が必要です。

リース料とコストの管理

リース資産を効果的に活用するためには、リース料とコストの適切な管理が不可欠です。リース料は、リース期間中に支払う定期的な金額で、事業のキャッシュフローに直接影響します。

リース料の設定には、残価保証の有無も考慮する必要があります。残価保証がある場合、減価償却費は「(取得価額-残価保証額)÷リース期間月数×当期月数」で計算します。これにより、リース終了時の資産価値を保証しつつ、月々のコストを抑えることができます。

リース満了時の処理と留意点

リース契約が満了する際には、適切な処理と判断が求められます。所有権移転型のリース取引では、リース期間終了後に所有権が借手に移転するため、資産の継続使用や売却などの選択肢があります。

一方、所有権移転外型の場合、リース期間終了後も所有権は貸手に残ります。この場合、契約更新、新たな資産へのリース切り替え、または資産の返却などの判断が必要です。事業の状況や資産の必要性を踏まえ、最適な選択を行うことが重要です。

リース資産台帳の作成と更新

効果的なリース資産管理のために、リース資産台帳の作成と定期的な更新が欠かせません。リース資産台帳には、個々のリース資産の詳細情報を記録します。

具体的には、以下のような情報を含めることが望ましいでしょう。

  • 資産名称と種類
  • リース開始日とリース期間
  • リース料と支払いスケジュール
  • 減価償却方法と償却額
  • 残価保証の有無と金額

リース資産台帳を定期的に見直し、更新することで、リース資産の状況を正確に把握し、適切な管理につなげることができます。また、会計処理や税務申告の際にも、正確な情報を提供できるでしょう。

リース会計基準の動向

リース会計基準は、企業会計における重要な基準の一つです。近年、国際的な会計基準との調和を図るべく、日本でもリース会計基準の見直しが進められています。

ここでは、現行のリース会計基準の概要と、新たに公表された基準の主要な変更点、およびその影響と対応策について解説します。また、中小企業に対する特例措置にも触れていきましょう。

現行のリース会計基準

現行のリース会計基準は、2008年4月1日以降開始する事業年度から適用されています。この基準では、リース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類しています。

ファイナンス・リース取引は、さらに所有権移転型と所有権移転外型に分けられます。所有権移転型は、リース期間終了後に所有権が借手に移転するものであり、耐用年数に基づく減価償却が必要です。一方、所有権移転外型は、リース期間終了後も所有権は移転せず、リース期間に基づく定額法での償却が行われます。

オペレーティング・リース取引は、ファイナンス・リース以外の取引を指し、単純な賃貸借として処理されます。この場合、減価償却は不要です。

新リース会計基準の主な変更点

2023年5月に発表された新リース会計基準では、大きな変更点が盛り込まれています。最も重要な点は、すべてのリース取引についてオンバランス処理が必要になるということです。

これにより、従来のファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分が廃止され、すべてのリース取引が借手の貸借対照表に計上されることになります。また、減価償却の処理方法も統一され、リース期間にわたって定額法で償却することが求められます。

新基準適用による影響

新リース会計基準の適用により、企業の財務諸表に大きな影響が生じることが予想されます。特に、従来オフバランス処理されていたオペレーティング・リースがオンバランス化されることで、資産と負債が増加し、財務指標が変動する可能性があります。

企業は、新基準への対応として、リース契約の見直しや、財務影響の事前シミュレーションなどを行う必要があります。また、関連する会計システムの改修や、経理部門の人材教育なども重要な課題となるでしょう。

中小企業に対する特例措置

新リース会計基準は、すべての企業に適用されますが、中小企業に対しては一定の特例措置が設けられています。具体的には、以下の条件を満たすリース取引については、従来のオペレーティング・リース取引と同様の簡便な処理が認められます。

  • リース契約1件あたりのリース料総額が300万円以下であること
  • リース期間が1年以内であること

この特例措置により、中小企業の事務負担の軽減が図られています。ただし、特例の適用は任意であり、中小企業も新基準に則った処理を行うことは可能です。

リース活用のメリットと注意点

リースを活用することで、設備投資に必要な多額の資金を準備することなく、最新の設備を利用できるメリットがあります。一方で、リースにはデメリットや留意点もあるため、活用にあたっては十分な検討が必要です。

リースのメリット

リースの最大のメリットは、設備導入に必要な多額の初期投資を回避できる点です。リース会社が設備を購入し、使用者はリース料を支払うことで、設備を利用できます。

また、リースでは常に最新の設備を使用できるというメリットもあります。技術革新の速い分野では、purchased設備が陳腐化するリスクがありますが、リースであれば一定期間ごとに新しい設備に交換できます。

さらに、リース料は経費として処理できるため、節税効果も期待できます。設備を購入した場合は減価償却で費用化しますが、リースでは支払ったリース料がそのまま経費になります。

リースのデメリット

リースのデメリットとして、設備の所有権がリース会社にある点が挙げられます。つまり、リース期間終了後も設備を利用し続けたい場合、再リースや買取りの交渉が必要になります。

また、リース契約は長期の支払い義務を伴うため、事業環境の変化に柔軟に対応しづらいというデメリットもあります。リース期間中は契約を解除できないため、不要になった設備でもリース料の支払いが発生し続けます。

リース会計基準への対応も重要な留意点です。ファイナンス・リース取引の場合、一定の要件を満たせばオンバランス処理が求められ、自社の財務諸表に影響を与えます。会計処理の詳細を理解し、適切に対応する必要があります。

リース活用の判断基準

リース活用の是非は、設備の特性や資金繰り、会計処理への影響などを総合的に勘案して判断しましょう。

短期間で陳腐化するIT機器などは、リースに適しているといえます。一方、長期的に使用する汎用性の高い設備は、購入した方が経済的なケースもあります。

リースは資金繰りの改善に有効ですが、長期の支払い義務を負うことになります。キャッシュフローへの影響を見越して、慎重に判断することが肝要です。

自社の財務状況や会計方針とも照らし合わせる必要があります。リース取引のオンバランス処理が求められるケースでは、財務諸表への影響を考慮しなければなりません。

リース会社選定のポイント

リース会社選定では、信頼性、手数料の水準、サポート体制などを比較検討しましょう。

リース会社の信頼性は、実績や財務状況から判断します。手数料は、リース料率だけでなく、契約手数料や中途解約時の違約金なども含めて総合的に評価します。

万一のトラブルに備え、アフターサービスの充実度もチェックしておくべきでしょう。設備の保守やメンテナンス、操作指導などのサポート体制を確認しておきます。

リースに関する知識や情報を豊富に持ったスタッフが在籍しているかどうかも大切です。リース会計基準への対応など、専門的なアドバイスが受けられる会社を選びましょう。

まとめ

本記事では、リース資産の基本的な概念から、適切な管理方法、最新の会計基準の動向まで網羅的に解説しました。

リース活用には、設備投資コストの削減や最新設備の利用といったメリットがある一方で、所有権の制限や長期の支払い義務といったデメリットもあります。自社の事業特性や財務状況を踏まえ、適切にリースを活用していくことが重要です。リース会社選定では、信頼性や手数料、サポート体制など、総合的な評価が求められます。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 
同年 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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