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2025.02.03

支払いサイト設定の交渉ポイントとは?下請法の60日ルールについても解説!

支払サイトが60日というのは、買い手にとって魅力的な条件ですが、売り手の資金繰りを圧迫する可能性があります。そのため、支払サイトの設定は、取引先との交渉によって決まる重要な契約条件の一つといえるでしょう。

この記事では、支払サイトとは何か説明し、それが企業の資金運用に与える影響について解説します。

近年は、政府主導で手形取引のルール変更が進められており、2024年11月以降は交付から満期までの期間を60日以内に短縮することが求められています。また、売り手側・買い手側それぞれの立場から、支払サイトをコントロールするための交渉術や具体的な方策についても詳しく紹介します。

支払サイトとは

支払サイトとは、取引期間の締め日から支払期日までの期間のことを指します。主に掛取引や約束手形とセットで使用される後払いの期間を表しています。

支払サイトの計算方法

支払サイトの決め方は、買い手側と売り手側で異なります。買い手側にとっては、支払サイトが長いほど資金運用上有利となります。ただし、下請代金支払遅延等防止法に基づき、上限は60日が目安とされています。

一方、売り手側は支払サイトが短いほど資金回収が早まるため有利です。ただし、請求書作成の期間を考慮し、最低限15日~30日程度が現実的な目安といえます。

支払サイトと企業の資金運用

支払サイトの長短は、買い手側と売り手側の企業にとって、資金運用面で大きな意味を持ちます。買い手側は支払サイトが長いほど、手元資金の運用期間を延ばすことができます。

逆に売り手側は、支払サイトが短いほど資金回収が早まり、キャッシュフローの改善につながります。支払サイトの設定は、取引先との交渉によって決まる重要な契約条件の一つといえるでしょう。

支払サイトに関する法規制

支払サイトに関しては、法律による規制が存在します。ここでは、支払サイトに関連する主要な法律について解説していきます。

下請代金支払遅延等防止法による支払サイト規制

下請代金支払遅延等防止法(下請法)は、支払サイトに関して重要な規制を設けています。この法律は、親事業者と下請事業者の取引における支払条件を規制し、下請事業者の保護を目的としています。

具体的には、下請法では支払サイトの上限を60日と定めています。この規制により、親事業者は下請事業者に対して、物品の受領日または役務の提供を受けた日から60日以内に代金を支払わなければなりません。60日を超える支払サイトの設定は、下請法違反となる可能性があります。

法律による企業間の公平性確保

下請法による支払サイトの規制は、企業間の公平性を確保することを目的としています。親事業者と下請事業者の間には、しばしば力関係の不均衡が存在します。支払サイトの規制は、この不均衡を是正し、下請事業者の立場を保護するための重要な手段となっています。

支払サイトが長期化すると、下請事業者の資金繰りに大きな負担がかかります。下請法は、この負担を軽減し、下請事業者が安定的に事業を継続できるよう、支払条件の適正化を図っているのです。

2024年の手形取引ルール変更と背景

2024年11月以降、手形取引のルールが変更されました。この変更により、手形の交付から満期までの期間は60日以内に短縮されることになります。この変更の背景には、中小企業の資金繰り負担の軽減と、日本のビジネス環境の国際競争力強化があります。

手形取引は、支払サイトの長期化につながりやすい取引慣行の一つです。手形のルール変更は、支払サイトの短縮化を促進し、中小企業の経営環境を改善することを目的としています。また、国際的な基準に合わせることで、日本企業の競争力強化にもつながると期待されています。

サプライチェーン全体での支払条件見直しの必要性

手形取引ルールの変更は、サプライチェーン全体での支払条件の見直しを促すものです。支払サイトの短縮化は、一企業だけでは実現が難しく、取引先との協力が不可欠です。サプライチェーンに関わる全ての企業が、支払条件の見直しに取り組む必要があります。

具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

  • 取引先との交渉を通じた支払サイトの短縮化
  • 手形取引からの脱却と現金取引やファクタリングの活用
  • デジタル化の推進による請求・支払プロセスの効率化

支払条件の見直しは、一朝一夕では実現しません。しかし、サプライチェーン全体で取り組むことで、徐々に改善を図っていくことが可能です。企業間の協力と理解が、支払サイトの適正化に向けた鍵となるでしょう。

支払サイトの交渉術(売り手側)

売り手にとって、支払サイトを適切に管理し、短縮することは資金繰りの改善につながる重要な課題です。ここでは、売り手側の立場から支払サイトを短縮するための交渉術について詳しく解説します。

契約条件の見直しによる支払サイト短縮

新規契約を締結する際に、支払サイトを短くする条件を明示することで、早期の資金回収を図ることができます。また、既存の契約についても、支払期限の短縮を交渉することが有効です。

買い手側との信頼関係を築きながら、Win-Winの関係を目指すことが重要です。例えば、支払サイトを短縮する代わりに、他の顧客より優先的に対応をするなどの条件を提示することで、双方にメリットのある契約を締結できるでしょう。

早期支払いのインセンティブ提供

買い手に早期支払いのインセンティブを提供することで、支払サイトの短縮を促すことができます。具体的には、早期支払い割引や特典の提供が効果的です。

例えば、支払期限より10日以上早く支払ってもらった場合に、請求金額の1%を割り引くといった条件を設定することで、買い手側にとってもメリットがある提案となります。このような工夫により、支払サイトの短縮と良好な取引関係の構築を同時に実現できるでしょう。

定期的なリマインダー送信と自動決済システムの導入

支払期限が近づいたら、買い手にリマインダーを送信し、支払いを促すことが重要です。これにより、支払い遅延を防ぎ、キャッシュフローを改善することができます。

また、自動引き落としやクレジットカード決済などの自動決済システムを導入することで、支払いの確実性を高め、支払サイトの短縮につなげることができます。買い手側の利便性も向上するため、Win-Winの関係構築が期待できるでしょう。

クレジット管理の強化と支払い条件の明確化

売り手側は、取引先の信用調査を強化し、信用度の低い顧客には短い支払期限を設定することが重要です。これにより、資金回収のリスクを軽減し、支払サイトの短縮を図ることができます。

また、請求書や契約書に支払期限を明確に記載することで、買い手側に支払いの重要性を認識してもらうことができます。支払い条件を明確にすることで、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな取引を実現できるでしょう。

顧客とのコミュニケーションを通じた問題の早期把握

売り手側は、買い手との定期的なコミュニケーションを通じて、支払いに関する問題を早期に把握することが重要です。これにより、問題の深刻化を防ぎ、早期解決を図ることができます。

例えば、取引先との定期的な会議や連絡を通じて、支払い状況や資金繰りの課題を共有することで、互いの理解を深め、支払サイトの短縮につなげることができるでしょう。良好なコミュニケーションは、長期的な取引関係の構築にも役立ちます。

以上のように、売り手側が支払サイトの交渉術を身につけることで、資金繰りの改善とキャッシュフローの最適化を実現できます。買い手側との良好な関係を築きながら、Win-Winの取引を目指すことが、ビジネスの成功につながるでしょう。

支払サイトの交渉術(買い手側)

契約交渉と取引履歴の活用

買い手側の立場で支払サイトを長くするためには、契約交渉と取引実績の活用が重要なポイントとなります。

まず、契約締結時に支払サイトの延長を積極的に交渉することが肝心です。その際、自社の信頼できる取引履歴を示し、長期的な支払サイトを要求するのがよいでしょう。過去の取引で期日通りの支払いを継続的に行ってきた実績は、交渉を有利に進める強力な武器となります。

支払い能力の強調とバルクオーダーの活用

次に、自社の財務状況の健全性を示し、長い支払サイトでも問題なく支払いが可能であることを売り手側に証明することが大切です。

また、大量発注(バルクオーダー)を行うことで、支払サイトの延長を交渉するのも一つの手です。売り手側にとって大口の注文は魅力的ですから、支払条件の柔軟な対応を引き出しやすくなるでしょう。

市場の競争状況を利用した交渉

さらに、市場における他の売り手の条件を引き合いに出して、支払サイトの延長を交渉するのも効果的です。

競合他社が提示している支払条件を参考にし、同等以上の条件を求めることで、売り手側の譲歩を引き出せる可能性があります。ただし、あくまで建設的な交渉を心がけ、売り手との良好な関係を損なわないよう注意が必要です。

柔軟な支払い計画の提案と良好な関係の構築

加えて、分割払いなど柔軟な支払い計画を提案することで、実質的に支払サイトを延長することもできます。

売り手側の資金繰りに配慮しつつ、買い手側の支払い負担を軽減する創造的な解決策を探ることが肝要といえます。何より、日頃から売り手との信頼関係を築き、良好なコミュニケーションを維持することが、柔軟な支払条件の獲得につながるでしょう。

支払い遅延ペナルティの見直しと財務計画の強化

最後に、契約書における支払い遅延時のペナルティ条項を見直し、一定の遅延を許容する条件への変更を提案することも一案です。

ただし、支払遅延のリスクを適切にコントロールするため、自社の財務計画をしっかりと強化し、売り手側に支払サイト延長の必要性と合理性を丁寧に説明することが不可欠です。支払サイトの交渉は、買い手側の資金繰りと売り手側の信用リスクのバランスを取ることが重要なのです。

まとめ

本記事では、60日の支払サイトについて、その概念と企業の資金運用への影響を解説しました。支払サイトの設定は、買い手側と売り手側の交渉によって決まる重要な契約条件です。

売り手側は、契約条件の見直しや早期支払いのインセンティブ提供、定期的なリマインダー送信などの交渉術を活用することで、支払サイトの短縮を目指すことができます。一方、買い手側は、取引履歴の活用や支払い能力の強調、柔軟な支払い計画の提案などを通じて、支払サイトの延長を交渉できるでしょう。

支払サイトの適切な管理は、企業の財務健全性を左右する重要な課題です。2024年の手形取引ルール変更を踏まえ、デジタル化を推進し、国際競争力を高めていくことが求められています。支払サイトの管理を通じて、キャッシュフローの改善と効率的な資金運用を実現してください。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 
同年 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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