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CAC(顧客獲得コスト)最適化のポイント|LTVと事業成長を両立させる方法

CAC(顧客獲得コスト)とは? 

CACの基本概念とその重要性 

私のコンサルティングのクライアントの中には、「新規顧客の獲得にはコストがかかりすぎる」と悩む社長が多くいます。結果として、コストのかからない既存顧客へのサービス向上や要望対応に重点を置く傾向が強まり、新規顧客獲得の優先度が下がってしまうことがよくあります。

しかし、既存顧客に依存したビジネスモデルでは、顧客の需要変化や市場環境の変動に柔軟に対応することが難しくなります。企業の持続的な成長や事業拡大を目指すには、新規顧客の獲得は不可欠です。そこで重要になるのが、CAC(Customer Acquisition Cost=顧客獲得コスト)という指標です。

CACとは、新規顧客を獲得するためにかかるコストを指します。企業の事業内容によって定義は異なりますが、一般的には以下のような費用が含まれます。

  • 広告費(Google広告、SNS広告など)
  • 営業人件費
  • 代理店への手数料
  • 外注費(マーケティング施策の実施費用など)
  • 製品やサービスの開発費・カスタマイズ費

企業が利益を最大化するためには、顧客獲得コストを最小限に抑えながら、効果的に新規顧客を増やすことが求められます。特に、CACの最適化は、経営計画の策定や投資判断、金融機関向けの事業性評価などにおいても重要な指標となります。

CACの算出方法とLTVとの関係 

CACは、一定期間内に新規顧客を獲得するためにかかった総コストを、獲得した顧客数で割ることで算出されます。具体的な計算式は以下の通りです。

CAC = マーケティング費用 + 営業費用 + 広告費用 + その他の顧客獲得にかかる費用 ÷ 獲得した新規顧客数

例えば、1か月間の広告費や営業費を含む総コストが100万円であり、その期間中に50人の新規顧客を獲得した場合、CACは2万円となります。

100万円÷50人=2万円100万円 ÷ 50人 = 2万円100万円÷50人=2万円

CACは、LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)と密接に関係しています。LTVとは、1人の顧客が企業に対して生涯を通じてもたらす価値を表す指標で、次の計算式で求められます。

LTV=平均購入単価×平均購入頻度×顧客の継続期間

このLTVとCACの比率が、ビジネスの収益性を判断する重要な基準となります。「LTV ÷ CAC」をユニットエコノミクスと呼び、以下の基準で事業の健全性を評価できます。

  • LTV ÷ CAC > 1 :黒字(利益が出ている)
  • LTV ÷ CAC = 1 :収支トントン
  • LTV ÷ CAC < 1 :赤字(改善が必要)

特に、LTV ÷ CAC が3以上であれば、理想的なビジネスモデルとされており、投資対効果が高い状態と判断されます。

企業が長期的に安定した成長を遂げるためには、CACを適切に管理しながら、LTVを最大化する戦略が不可欠です。そのため、価格設定やマーケティング施策、顧客維持戦略などを総合的に見直し、収益性を高めることが求められます。

CACの種類と特徴 

オーガニックCAC(自然流入)とそのメリット

CAC(顧客獲得コスト)を企業全体で正確に把握するためには、その性質に応じた区分を設け、それぞれを個別に計算する必要があります。特に、オーガニックCAC(Organic CAC)は、企業が日常的な事業活動の中で、自然に獲得した新規顧客にかかるコストを指します。

オーガニックCACの代表的な経路として、以下のようなものがあります。

  • 口コミ(既存顧客からの紹介)
  • 検索流入(SEO対策による自然検索からの訪問)
  • SNS拡散(広告費をかけずに投稿やシェアから広がるケース)

オーガニックCACの計算式は、
「オーガニックCAC = 自然流入で獲得した顧客に費やしたコスト ÷ 自然流入チャネルからの新規顧客獲得数」
となります。

ただし、オーガニックCACの正確な把握は難しい場合があります。たとえば、SEO対策のために使用したツールやスタッフの人件費をどの程度、新規顧客獲得コストに含めるかは企業ごとに異なります。また、日常業務の一環として行われるPR活動やコンテンツマーケティングも、新規顧客獲得に寄与しているものの、明確に数値化することが難しいこともあります。

しかし、オーガニックCACはコストを抑えながら持続的に新規顧客を獲得できるため、長期的な経営戦略として重要な要素になります。特に、SEO対策やSNSマーケティングの活用は、低コストで高い成果を生み出す可能性があるため、企業は積極的に活用すべきです。

ペイドCAC(有料チャネル活用)とその戦略 

一方で、意図的に設計した有料チャネルを活用して新規顧客を獲得するためのコストをペイドCAC(Paid CAC)といいます。具体的には、以下のような施策が含まれます。

  • オンライン広告(Google Ads、Facebook広告、YouTube広告など)
  • マスメディア広告(テレビCM、ラジオ広告、新聞広告)
  • オフラインイベント(展示会やセミナー、商談会)
  • インフルエンサーマーケティング(特定の影響力のある人物に依頼してプロモーションを行う)

ペイドCACの計算式は、
「Paid CAC = 有料の新規顧客獲得に費やしたコスト ÷ 有料チャネルからの新規顧客獲得数」
となります。

ペイドCACは、短期間で多くの新規顧客を獲得できるというメリットがありますが、コストがかかるため、費用対効果(ROI)を考慮しながら戦略的に活用することが重要です。特に、広告のターゲティング精度を高めたり、ランディングページを最適化したりすることで、広告費を最小限に抑えながら成果を最大化することが求められます。

また、ペイドCACの数値を見ながら、どのチャネルが最も効果的であるかを分析し、コストパフォーマンスの良い施策に資源を集中させることが重要です。例えば、Google AdsよりもFacebook広告の方が新規顧客獲得単価が低い場合、予算をFacebook広告にシフトするといった判断が必要になります。

中小企業の場合、オーガニックCACとペイドCACを組み合わせることが成功の鍵になります。初期の新規顧客獲得にはペイドCACを活用しながら、徐々にオーガニックCACの比率を高めていくことで、安定した経営基盤を築くことができます。

このように、オーガニックCACとペイドCACを適切に活用し、それぞれの特性を理解しながら最適なマーケティング戦略を組み立てることが、企業の持続的な成長につながるのです。

CACの活用と事業戦略 

CACを活かした経営計画の策定 <h3>

企業が新規顧客獲得のコストを最適化し、事業の成長を継続させるためには、CAC(顧客獲得コスト)を適切に活用した経営計画の策定が不可欠です。CACを正確に算出し、活用するためには、以下の3つのポイントを押さえる必要があります。

1. 計測期間・関連コスト・新規顧客の定義

CACの算出には、明確な計測期間、関連コスト、新規顧客の定義が重要です。例えば、計測期間は1ヶ月、1四半期、1年など事業モデルに合わせて設定する必要があります。さらに、計測対象となるコスト(広告費、人件費、外注費など)を明確にし、どこまでを新規顧客獲得コストとして計上するかのルールを決めることが大切です。

2. 目標値の設定

事業戦略としてCACを活用する際、単に定期的に計測するだけではなく、明確なターゲット値を設定することが重要です。
ターゲット値は、新規顧客獲得に費やしたコストが回収可能かどうかを判断するための基準となります。特に、LTV(顧客生涯価値)との相関を考慮しながら、黒字を維持する水準で設定することが求められます。

3. 定期的な数値分析と改善施策の検討

CACのターゲット値を設定した後は、実測値との比較を定期的に行い、改善策を検討する必要があります。
例えば、実測値が目標を上回っている場合は、以下のような施策を検討することが求められます。

  • 効果が低いチャネルの見直しや削減
  • 広告のターゲティング精度向上
  • セールスプロセスの最適化
  • 販売戦略の見直し

CACの数値検証を月次の経営会議などでルーチン化することで、事業の健全性を維持しながら、新規顧客獲得の効率を高めることが可能となります。

新規顧客獲得の効率化とコスト最適化のポイント 

新規顧客獲得のためのコスト最適化を図る際には、単に広告費を削減するのではなく、コストパフォーマンスを最大化できる戦略を構築することが重要です。そのために、以下の点を意識した施策を導入する必要があります。

1. 新規顧客ターゲットの明確化

「どのような新規顧客を増やしたいのか?」を具体的に設定することで、無駄なコストを削減できます。
ターゲット層を決める際には、以下のような属性分析を行うと効果的です。

  • 一般消費者向け(BtoC):年齢、性別、職業、住所、世帯人数
  • 企業向け(BtoB):業種、事業規模、エリア、既存取引先との関係

こうしたターゲット分析をもとに、顧客のニーズに合致したマーケティング施策を設計することで、新規顧客獲得のコストを抑えることが可能になります。

2. 効果的なメディア・チャネルの選定

新規顧客獲得のために、ターゲットに最適なチャネルを選定することが重要です。
メディアやチャネルごとにCACを確認し、以下のように費用対効果が低いものは見直す必要があります。

  • コストの割にターゲット顧客を獲得できていない広告
  • 費用対効果が低いイベントやキャンペーン
  • 競争が激しく、ROIが低下しているマーケット

逆に、LTVが高くなる可能性がある顧客を効率よく獲得できるメディアやチャネルに絞って投資を行うことで、コストを最適化できます。

3. 長期的な視点でのCAC削減とLTV最大化

CACの削減だけを目的とするのではなく、LTV(顧客生涯価値)を最大化する戦略と組み合わせることが重要です。
例えば、長期間にわたって顧客であり続ける可能性の高い層をターゲットにすることで、結果的にCACのコスト効率を向上させることができます。

また、オーガニックCAC(自然流入)を増やすことで、新規顧客獲得コストを低減できる可能性があります。例えば、以下のような施策が効果的です。

  • SEO対策の強化(中長期的な検索流入の増加)
  • 口コミ・紹介制度の活用(既存顧客の紹介による新規顧客獲得)
  • SNSマーケティングの活用(ターゲット層にリーチしやすい無料チャネルの活用)

また、LTVを最大化するためには、顧客の継続率を向上させる施策も重要です。例えば、以下のような施策が考えられます。

  • アップセル施策(上位プランや関連商品の提案)
  • クロスセル施策(関連サービスの紹介)
  • ロイヤリティプログラムの導入(長期顧客への特典提供)

このように、CACの削減とLTVの向上を両立させることで、新規顧客獲得の効率を高めながら、事業の持続的な成長を実現することが可能となります。

まとめ 

本記事では、CAC(顧客獲得コスト)の基本概念、算出方法、LTVとの関係性、そして事業戦略における活用方法について解説しました。
CACは単なる指標ではなく、新規顧客獲得の効率化や収益性向上に直結する重要な要素です。LTV(顧客生涯価値)とのバランスを意識しながら、適切なCAC管理を行うことが、持続的な事業成長のカギとなります。

しかし、実際にCACを最適化しながら、経営計画を策定し、事業戦略を立てるのは容易ではありません。
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筆者 三坂大作
筆者 三坂大作
略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社
資格
貸金業務取扱主任者(第F231000801号)
経営革新等支援機関認定者
東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入社。
法人融資の専門家として、国内での金融業務に従事し、特にコーポレートファイナンス分野において豊富な経験を誇る。
同行に関して、表参道支店では法人融資を担当し、その後ニューヨーク支店にて非日系企業向けのコーポレートファイナンス業務に従事。
法人向け融資の分野における確かな卓越した知見を踏まえ、企業の成長戦略策定、戦略、資金調達支援において成果を上げてきました。
金融・経営戦略の専門家として、企業の持続的な成長を支える実務的なアドバイスを提供し続けています。
 
 
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