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経営デザインシートの活用術|企業成長を加速する戦略的ツールとは?

経営デザインシートとは?経営戦略の可視化ツール

経営デザインシートの目的と重要性

コンサルタントとしてクライアントの経営課題をサポートする際、単に言葉で説明するだけでは要点が十分に伝わらず、社長や経営陣の理解が進まないことが少なくありません。そこで、数値をグラフ化したり、戦略をチャートや図表として可視化したりすることが、コンサルティング業務では必須となります。

グラフ化はExcelの機能を活用すれば比較的簡単に作成できますが、図表の作成にはPowerPointなどのプレゼンテーションツールを用いることが一般的です。しかし、図表の分かりやすさは、コンサルタントのセンスと技量に大きく左右されるため、単なるデザインではなく、経営戦略を的確に表現するスキルが求められます。

企業ごとにビジネス環境は異なるため、戦略の図表化も基本的にはオリジナルの作成が必要です。デザイン的に洗練された図表は好まれますが、あくまで経営戦略の骨格を明確に伝えることが最優先事項となります。デザイナーに依頼するケースもありますが、基本的なフレームワークはコンサルタントが構築しなければなりません。

こうした経営戦略の可視化をサポートするツールとして、政府が推奨する「経営デザインシート」が注目されています。これは、企業経営をデザインするという視点から、知的財産の価値評価を含めた経営戦略を整理し、持続的な企業成長を支援するためのフレームワークです。

企業価値創造の新たなアプローチ

政府レベル、特に首相官邸においても「経営をデザインする(知財のビジネス価値評価)」という議論が行われています。これは、企業経営が時代とともに変化し、かつての「モノの供給が市場を牽引する20世紀型経営」から、「体験や共感を求める消費者ニーズを重視する21世紀型経営」へと移行していることを踏まえたものです。

この変化の中で、企業経営の中心にあるのは「人」です。従来の経営資源であるヒト・モノ・カネに加えて、ESG経営の観点から人的資本や知的資本といった「非財務資本」の重要性が高まっています。企業が消費者やユーザーの多様な価値観に対応し、市場での競争優位性を確立するためには、価値創造のメカニズムを機動的かつ継続的にデザインし、イノベーションを促進することが求められます。

この視点を具体的に落とし込むためのツールとして、政府は「経営デザインシート」を提唱しています。これは、企業の価値創造プロセスを的確に評価し、戦略を策定するためのフレームワークとして機能します。経営デザインシートを活用することで、企業は自社の持つ知的財産や人的資本をどのように活用し、持続可能な成長を実現するかを明確にすることができます。

このように、経営デザインシートは単なる戦略ツールではなく、企業が新たな価値創造を生み出し、市場の変化に適応するための重要な指針となるのです。

経営デザインシートの活用方法

企業のバリューチェーン再構築

20世紀の企業経営においては、「良いものを作れば売れる」という市場環境が支配的でした。供給が需要を上回ることがほとんどなく、大規模な製造設備などの有形資産が企業価値の源泉とされていました。しかし、21世紀に入ると状況は一変しました。技術革新やグローバル化が進み、新技術や新製品であっても消費者やユーザーに選ばれなければ売れない時代となったのです。

この変化に対応するためには、企業の価値創造の仕組み、すなわちバリューチェーンの再構築が不可欠です。従来の製造・販売プロセスに加え、消費者のニーズに寄り添い、データ活用や無形資産を取り入れた新たな価値創造メカニズムを確立することが求められます。

この考え方を具体的に形にするために、内閣府の知的財産戦略推進事務局が「経営デザインシート」を発表しました。これは、企業が環境変化に対応し、持続的な成長を実現するためのツールです。企業はこのシートを活用し、自社の価値創造プロセスを可視化しながら、長期的な視点で成長戦略を策定することができます。

経営デザインシートの具体的な構成

経営デザインシートは、企業が「これまでの価値創造の仕組み」を把握し、「これからの価値創造の仕組み」を設計するためのフレームワークです。内閣府が提供するシートには、以下のような種類があります。

  • 全社シート(複数事業会社等向け)
    企業全体の将来構想を策定するためのシートで、各事業間のシナジーを含めて分析します。
  • 事業シート(複数事業会社等向け)
    企業内の特定事業ごとの将来構想を策定するためのシート。
  • 単一事業用シート(単一事業会社等向け)
    事業が一つの企業向けの将来構想策定シート。
  • 作成補助シート1~4
    • 作成補助シート1:企業全体の戦略構築
    • 作成補助シート2:企業全体の資源整理
    • 作成補助シート3:SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威の分析)
    • 作成補助シート4:知財の活用計画
  • 経営デザインシート(簡易版)
    よりシンプルな形で企業の戦略を可視化できるシート。
  • 経営デザインシート(新デザイン版)
    最新の知見を取り入れた新しいフォーマットのシート。

これらのツールを活用することで、企業は自社のバリューチェーンを再評価し、持続的な成長を促進する戦略を策定できます。

実際に、多くの企業が経営デザインシートを活用し、自社の成長戦略を可視化しています。私たちコンサルタントも、このシートを用いてクライアント企業とともにブレインストーミングを行い、より効果的な経営計画を策定するための議論を進めています。

シンプルに表現すると、経営デザインシートの活用は以下の流れとなります。

  1. 従来の価値創造の仕組み(既存バリューチェーン)を把握する
  2. 未来の価値創造の仕組み(新バリューチェーン)を構想する
  3. 新たなビジネスモデルを設計し、戦略を具体化する

このプロセスを通じて、企業は持続可能な経営戦略を策定し、変化する市場環境の中で競争力を高めることができるのです。

経営戦略における実践的なメリット

企業変革を促すツールとしての活用

「価値を生み出すしくみ(価値創造メカニズム)」とは、バリューチェーンのことを指します。これは、必要な経営資源を調達し、それらを組み合わせ、消費者やユーザーが求める価値へと変換して提供する仕組みです。企業が長期的な成長を遂げるためには、このバリューチェーンの見直しと最適化が欠かせません。

経営デザインシートは、企業の価値創造のプロセスを体系的に整理し、可視化するためのツールです。その目的は、以下の4つに集約されます。

  1. 企業の理念や事業コンセプトを明確にする
  2. これまでの価値創造の仕組み(既存バリューチェーン)を把握する
  3. 今後の価値創造の仕組み(新バリューチェーン)を構想する
  4. そのために何をすべきか具体的なアクションプランを策定する

このツールを活用することで、企業は自社の現状を整理し、将来の成長戦略を明確にすることが可能になります。特に、新規事業の立ち上げや事業継承の場面においては、経営デザインシートが戦略策定の鍵となります。

また、バリューチェーンを可視化することで、次のようなメリットが得られます。

  • 経営課題の整理が進み、将来の経営計画を立てるきっかけとなる
  • 各事業のビジネスモデルを見直し、競争力の強化につながる
  • 新規事業の構想を明確にし、関係者との認識を共有できる
  • 経営の方向性を社内外に伝えやすくなり、社内の意識改革を促進する
  • 事業継承の際に、過去と未来のビジョンを一貫性を持って伝えることができる

このように、経営デザインシートは、企業が持続可能な成長を実現するために不可欠なツールとなるのです。

DX・ESG経営との親和性

近年、企業の経営環境は急激に変化しており、デジタル技術の活用(DX)や環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視した経営が求められています。経営デザインシートは、こうした新しい経営アプローチとの親和性が非常に高いツールと言えます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)との連携
経営デザインシートを活用することで、企業は自社のバリューチェーンを再評価し、DXをどのように組み込むべきかを明確にできます。例えば、従来の業務プロセスを見直し、デジタル技術を活用することで、効率化を図ることが可能です。また、クラウドサービスやAIを活用することで、経営デザインシートの内容をリアルタイムで更新し、データドリブンな経営判断を行うことができます。

ESG経営との関係性
ESG経営においては、企業の「人的資本」や「知的資本」といった非財務資本の重要性が増しています。経営デザインシートは、こうした無形資産を活かし、価値創造の仕組みを設計するのに最適なツールです。例えば、サステナビリティを考慮したビジネスモデルの構築や、社会課題の解決に貢献する事業戦略を策定する際にも活用できます。

さらに、経営デザインシートを活用することで、以下のような視点で企業経営を見直すことが可能になります。

  • 将来の社会変化を予測し、それに適応するための戦略を構想する
  • デジタル技術を活用し、新たな市場価値を創出する
  • サステナビリティの観点から、自社の経営資源を最適化する
  • 従来の企業文化や業務プロセスを見直し、柔軟な組織体制を構築する

特に、DXやESG経営に取り組む企業にとっては、経営デザインシートを活用することで、より実践的な戦略立案が可能になります。今後の市場環境の変化に対応しながら、持続可能な成長を目指すためにも、このツールの活用を検討すべきでしょう。

まとめ

本記事では、経営デザインシートの活用方法や、その実践的なメリットについて解説しました。経営デザインシートは、企業のバリューチェーンを再構築し、DXやESG経営と組み合わせることで、持続可能な成長を実現するための強力なツールです。

このツールを活用することで、経営課題の整理、新規事業の構想、事業継承の計画など、幅広い経営戦略に対応できます。しかし、実際の運用においては、自社の現状を的確に把握し、最適な戦略を策定することが求められます。

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筆者 三坂大作
筆者 三坂大作
略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社
資格
貸金業務取扱主任者(第F231000801号)
経営革新等支援機関認定者
東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入社。
法人融資の専門家として、国内での金融業務に従事し、特にコーポレートファイナンス分野において豊富な経験を誇る。
同行に関して、表参道支店では法人融資を担当し、その後ニューヨーク支店にて非日系企業向けのコーポレートファイナンス業務に従事。
法人向け融資の分野における確かな卓越した知見を踏まえ、企業の成長戦略策定、戦略、資金調達支援において成果を上げてきました。
金融・経営戦略の専門家として、企業の持続的な成長を支える実務的なアドバイスを提供し続けています。
 
 
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