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リスクヘッジとは?企業経営の資金繰りにおける注意点を紹介

資金繰りや銀行依存の危険など、経営者や個人事業主にとって不確かな状況は常につきまといます。銀行からの融資が途絶えたり、取引先の入金遅れが発生したりすると、たちまちキャッシュフローが逼迫してしまうでしょう。

この記事では、そのような経営における不測の事態に備えるための対策であるリスクヘッジについて、資金繰りの安定につながる考え方や具体的な取り組み方も含めて解説します。

リスクヘッジとは

リスクヘッジとは、将来的に起こりうる損害や不測のトラブルに対して、あらかじめ備えを整えることを指す言葉です。

経営においては、資金繰りの滞りによる自社倒産のリスクや、取引先が急に倒れてしまうリスク、金融機関との取引が不利になって事業拡大がままならなくなるリスクなどが考えられます。そうした予測不能な出来事に対し、事前に対策を講じて損失を最小限に抑えることが経営におけるリスクヘッジといえます。

リスクマネジメントとの違い

経営上のリスク対策といえば、リスクマネジメントという言葉もよく耳にします。リスクヘッジとリスクマネジメントは互いに関わりが深く、どちらも事故や損害を未然に防ぐための方法論です。

リスクマネジメントとは、企業がいろいろなリスクを事前に把握し、計画や分析、実行、そして検証を通して対策を進める全体的な流れのことです。その中に、もしものときに被害を減らすための具体的な手立ても取り入れられており、これがリスクヘッジを指します。つまり、リスクマネジメントが全体の戦略やプロセスを示しているなら、その一部として、リスクヘッジは実際の予防策や軽減策として形になっていくものだといえます。

経営者としては、リスクマネジメントの視点で経営戦略を立て、自社の数値や事業特性を分析しながら、実行段階でリスクヘッジを講じる流れを意識すると良いといえます。

資金繰りにおけるリスクヘッジの必要性

企業運営には多岐にわたる要素がありますが、その中でも資金繰りに関するリスクは特に深刻になりやすいものです。売上が一時的に減少したり、出費が立て込んだりすると、それだけで経営を続けるかどうかの瀬戸際に立たされる可能性もあります。

たとえ帳簿上は利益が出ていても、手元の現金が不足している状態では黒字倒産という最悪の展開を引き起こしかねません。そうした事態を防ぐためにも、資金が途切れないようにする仕組みづくりが大切になります。

リスクヘッジのメリット

リスクヘッジを抑えて、資金計画を十分に用意し、不測の事態に対応できる経営者は、従業員も含めた社内外からの信用を集めやすいといえます。

キャッシュフローの安定

第一に挙げられるのは、キャッシュフローが安定するという点です。資金が枯渇する心配が少なくなると、日常業務や設備投資、従業員への給与支払いなどが安定して行えます。経営上の判断も落ち着いて行えるため、戦略的な場面での対応がスムーズです。

キャッシュフローが豊かになると、たとえば、設備をリース契約に切り替えて固定費を抑えたり、原材料の仕入れをより有利な条件で行ったりと、日常的な経費を再検討しやすくなります。これらの取り組みを実行すれば、さらなる利益改善にもつながるでしょう。

また、十分な現金があれば、緊急時でも組織を守るための支払いに迅速に対応できます。結果として顧客や従業員、取引先への信頼度が高まり、長期的な事業の成長にプラスになります。

意思決定の自由度向上

資金力に余裕があるほど、意思決定の幅を大きく確保できます。借り入れに追われて身動きがとれない状況より、多少のリスクを伴っても成長機会を捉えられるほうが、長い目で見れば事業拡大につながるものです。

リスクヘッジによって、常に資金の流れを点検し、複数の銀行と取引しておく姿勢を保っていれば、急に有利なチャンスが訪れても柔軟に対応できます。資金繰りが切迫してしまうと、優位な話がきても断らざるを得ないこともありますが、備えがあればそうしたもったいない状況を避けられます。

経営者にとって、選択肢が多いことは競合との差別化にも役立ちます。取引条件の交渉でも有利になりやすく、企業価値を高める手段を模索しやすくなるでしょう。

対外信用力の向上

しっかりとリスクヘッジを行い、資金状況をきちんと把握している企業は、取引先や金融機関に与える印象が良いのも特筆すべき点です。定期的に資金繰り表を作成し、今後の見通しを説明できる経営者は、自社の管理を徹底しているので信頼できると判断されます。

その結果、融資を受ける際の信用が高まり、取引条件の面でも好意的な扱いを受けやすくなるなどします。資金が不足しそうな局面でも、交渉で多少の猶予が与えられる可能性が高まりやすいでしょう。

また従業員や株主など、社内外の関係者からの評価向上にもつながります。経営の健全性が認められことで、人材採用でもプラスに働き、長期的な企業成長を促す好循環に結びつくこととなります。

リスクヘッジを心がける際の注意点

リスクヘッジには多くの良さがある一方、過度に意識しすぎると企業経営に悪影響が生じることもあります。ここでは注意点を同時に考え、バランスある視点をもつことが大切です。

コストの増加

リスクを回避する取り組みには、さまざまなコストがかかります。追加の資金調達分の金利や、複数の金融機関を利用するために管理を分散する手間なども意外と負担になるのです。

また、保険料や外部専門家への相談料が発生することもあります。こうした諸費用を、いかに抑えつつ実行していくかがカギとなります。そのため、リスクを最小限に抑えたい一心で過度な支出を重ねてしまうのは避けたいところです。

機会損失しやすくなる

リスクを恐れるあまり、積極的な投資や新規事業への参入機会を逃してしまうことが考えられます。慎重な姿勢自体は評価すべきですが、ビジネスには挑戦すべきタイミングがあり、そのチャンスを見送ることによる弊害は無視できません。

とりわけ上下動が激しい業界では、特定の時期に一気に成長を図れず、結果的に他社に抜かれる事態もあり得るでしょう。リスクヘッジと成長戦略を両立させる工夫が、経営者には求められるポイントです。

キャッシュフロー悪化への対応不足

経営における最も大きな問題の一つは、キャッシュフローの悪化リスクです。どれだけ販売数が好調でも、実際の入金が間に合わなければ支払うべき経費が賄えず、倒産状態に陥る危険があります。

帳簿上は利益が出ていて安心していても、現金不足に起因する黒字倒産は少なくありません。見込みと実際のタイムラグを正しく把握しないと、突然の資金不足になってしまう可能性は常につきまといます。

取引銀行の破綻への備え不足

取引銀行の破綻という事態に直面した場合、預金保護制度により1,000万円までの元本とその利息は保護されますが、それを超える金額は保証されない可能性があります。もし一つの銀行だけに多額の資金を預けていた場合、破綻時のダメージは極めて大きくなります。

また、銀行が業務上の問題を抱えるなどの要因で、経済環境の変動に耐えられなくなるリスクはゼロではありません。そのため、単一の金融機関に重度に依存しないよう、銀行分散を行うことが重要です。

一方で、金融機関を複数利用すると管理の手間が増え、口座維持手数料がかかる場合もあります。したがって、企業規模や取引金額を踏まえ、預金額のバランスを取りながら複数行を活用する姿勢が大切です。確実な安心を得るには、分散比率や資金の引き出しやすさも考えておくべきといえます。

資金繰りを安定させるための方法

ここからは、実際にどのような取り組みを行うことでリスクを低減していけるのか、資金繰りを中心とした具体的な方法を解説します。

資金繰り表の作成

まず、基本となるのが資金繰り表の作成です。一定期間内にいくらの収入が見込めるか、何にどのくらい支出するかを一覧で把握し、キャッシュフローの推移を予測します。ここで重要なのは、よりリアルな数字を入れて作成することです。

売上や入金予定はできるだけ慎重な見積もりを心がけ、遅れが生じる可能性も加味して考えます。支出については漏れがないよう経費を洗い出し、税金や借入金の返済時期も明記しましょう。

こうした資金繰り表を定期的に更新し、経営会議などの場で活用する習慣をもつと、事前に資金ショートを防ぎやすくなります。万一の赤字月が予想される場合、あらかじめ仕入れのスケジュールを調整するなどの対策が取りやすくなります。

経費の見直しと固定費の最適化

キャッシュフローが悪化しそうなときに特に効果を発揮するのが、経費の見直しや固定費の最適化です。両者は似たアクションに思えますが、視点が異なります。経費は日々の出費全般を見渡し、ムダや重複をカットする取り組みです。一方、固定費は家賃やリース料、人件費など定期的に発生する支出です。

経費の中には、長年仕組みが変わらず、習慣的に支払っているものもあります。それが本当に必要なのかを検討することで、改善余地がみつかる意外な場面も少なくありません。

固定費についても、いまの事業規模に見合った水準かどうかを再評価することが重要です。特に大きなウエイトを占めるのが人件費や設備関連費であり、それらを軽減できればキャッシュフローは大きく改善されるでしょう。

複数の金融機関との付き合い

取引銀行を一社に絞っていると、そこの経営環境が悪化した際や関係が変わったときに、自社経営も一気にダメージを受ける可能性があります。資金調達や預金保護の観点からも、複数の金融機関と取引するのは有益です。

複数行を活用することで、金利や借入条件の比較検討もできますし、銀行破綻リスクも分散可能です。それぞれの銀行に預ける金額を1,000万円以内に抑えると、預金保護制度を最大限に活用できるため、突発的な破綻時にも大きな損害を受けにくくなります。

金融機関の信用状況を定期的に確認

リスクヘッジの観点からは、銀行側の信用状況をチェックすることも欠かせません。大手だからといって絶対的に安全とは限らず、経済環境の大幅な変動時には不測の事態が生じる可能性もあります。

自社のメインバンクがどのような資本構成なのか、財務諸表ではどう評価されているのかといった情報を時折確認し、大きな問題が起こりそうならば配置資金を見直す、あるいは融資枠の再交渉を検討するなどして早めの対策を講じましょう。

経営全体の戦略とリンクさせる

資金繰り対策は単なる短期的なキャッシュ管理にとどまらず、企業全体の戦略と結びつけて考えることが望ましくあります。たとえば、数年後に新商品を立ち上げようとしているならば、その期間中に資金が途切れないよう投資計画と整合性をもたせる必要があります。

また、人材強化や設備導入なども、納期や支払い時期を逆算してキャッシュアウトのタイミングを管理すると、資金面の混乱を減らすことができます。大きな投資を行う前にはシミュレーションを重ね、最悪のシナリオを考慮したうえで決定する習慣を身につけましょう。

まとめ

本記事では、資金繰りにおけるリスクヘッジの基本からメリット・デメリット、そして具体的策までを一通り解説してきました。資金と経営は密接につながっており、確かな備えがあれば事業の成長余地は大きく広がります。

キャッシュフロー管理や複数金融機関との取引を見直し、安定した経営を目指しましょう。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社
資格
貸金業務取扱主任者(第F231000801号)
経営革新等支援機関認定者
東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入社。
法人融資の専門家として、国内での金融業務に従事し、特にコーポレートファイナンス分野において豊富な経験を誇る。
同行に関して、表参道支店では法人融資を担当し、その後ニューヨーク支店にて非日系企業向けのコーポレートファイナンス業務に従事。
法人向け融資の分野における確かな卓越した知見を踏まえ、企業の成長戦略策定、戦略、資金調達支援において成果を上げてきました。
金融・経営戦略の専門家として、企業の持続的な成長を支える実務的なアドバイスを提供し続けています。
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