2025.02.27
個人事業主向け事業計画書のテンプレート!必要な項目を紹介
資金調達を検討している、もしくは今後の事業方針をより明確にして収益向上を図りたいときに有用なのが事業計画書です。個人事業主の方の中には、初めての作成でどこから手をつければいいのか分からず困っている方も多いでしょう。
この記事では、事業計画書を書くことの意義や、個人事業主が作成するメリット、作り方の流れや盛り込む項目について解説します。
事業計画書とは
事業計画書は、個人事業主が自身のビジネスの方向性や資金繰りの見通しを明確にするための重要な資料です。作成を通じて、どのようなサービスを提供し、どの顧客をターゲットとしていくのかを整理できます。
同時に収益性と実行性のバランスを検討する機会にもなり、事業を着実に進めるうえでの指針となるでしょう。さらに、事業開始後も書面を見返しながら軌道修正していくことで、安定的な経営を続けるための道筋を描くことができます。
個人事業主にとっての重要性
個人事業主として開業を考える際、まずは自分自身のアイディアをどのように世の中に届けるのか、あるいは事業をどの程度の規模にしようと考えているのかを言語化する必要があります。事業計画書を作れば、それらを客観的かつ具体的に整理することができます。
さらに、事業自体の魅力を明確に捉えると、将来的に金融機関から融資を受けたり補助金の審査を受けたりする際にも、有利に事を運びやすくなります。そうした観点から資金調達にも結びつきやすいのが、事業計画書を作成する大きな意義だといえます。
事業計画書と資金繰りの関係
事業を軌道にのせるまでの資金繰りは、どの個人事業主にとっても重要なテーマです。実現可能な事業計画書を作成すれば、投資や融資などのお金の流れも分析しやすくなります。
たとえば、最初に発生する設備費や運転資金の見込みを明らかにしておくと、必要な資金が明確になり、いつまでにいくら用意すべきか計画しやすいでしょう。事業計画書と資金計画をあわせて考えることは、事業運営の基盤づくりとなるため、ここで手を抜かずしっかりと取り組むことが重要になります。
作成するタイミング
個人事業主としてこれから開業する方の場合は、開業前の準備と同時進行でしっかり作っておくことが理想的です。事業の概要やコンセプトを詰める段階で、一緒に数字面や運営方針も具体化しておけば、いざ始動したときに慌てずに済みます。
すでに開業している場合でも、将来的なステップアップや新たな融資申請を考えているならば、改めて事業計画書を作成するとよいでしょう。立ち止まって現状を総点検し、大幅な方針修正が必要かどうかを見極める意味でも大切な作業です。
個人事業主が作成するメリット
事業計画書は、事業の大枠を可視化して、ビジネスを効率的に進めるための道具となります。
収益構造を明確にできる
個人事業主は、利益をどのように生み出すかが常に問われます。事業計画書を作成すると、まずどのようなサービスを提供し、どのように対価を得るかを整理することが必要になります。そのプロセスで想定売上高や必要経費を把握しやすくなるので、収益構造を俯瞰的にとらえられるようになるのです。
さらにいつ、どこで売り上げが発生するかを想定しておくと、繁忙期や閑散期を予測しやすくなります。その結果、より良い経費コントロールや効果の高い集客策を考えるきっかけにもなるでしょう。
差別化を図りやすい
競合他社が少ない市場ならばともかく、多くの場合、同業種内での差別化が欠かせません。事業計画書をしっかり作ることで、市場調査やターゲット分析を行ない、自社の強みと独自性を見出す作業が進みます。
この強みをどのように打ち出すのか、価格帯や販促方法にどのような工夫を加えるのかが明確になれば、実際に事業をスタートしたときに迷いが減ります。結果として、目指すべきブランドイメージや集客の方向性を固めることができます。
融資や補助金申請での評価
個人事業主である以上、金融機関や信用金庫、あるいは国や自治体が提供する補助金を利用する機会があるかもしれません。その際に、数字に裏づけされた実行計画があると、高評価を得やすい傾向があります。
たとえば融資を検討している金融機関からは、利益計画や返済能力をしっかり示すことを求められます。事業計画書を準備しておけば、資金提供側に対してこの事業は堅実に利益を生み出せるという説得力を高めることができるでしょう。
事業計画書作成の流れ
ここからは、個人事業主の方が実際に計画書をまとめるうえでどのように進めていくとスムーズか、その手順を大まかにみていきましょう。後先を逆にしてしまうと、内容が食い違うリスクが高まるため、順序立てて進めるのがおすすめです。
事業の方向性の明確化
最初に行なうべきは、ビジネスの骨格を固めることです。具体的には、何を目的としているのか、どの市場を狙いたいのか、最終的にどのような結果を得たいのかなどをイメージします。これに加えWhy(動機)とWhat(提供内容)を明確にすれば、当初の構想がより一貫性のあるものになるでしょう。
この段階を丁寧に進めることで、本当にこの事業で利益を生み出せるのか、そのために必要な諸条件は整っているのか、といった疑問点を早い段階で洗い出すことができます。特に、看板となる商品やサービスに関しては、細部まで詰めていくと良いでしょう。
6W2Hの活用と情報の整理
事業計画書を練る際に便利なのが、6W2Hです。これはWhy(動機)、What(提供内容)、Where(市場)、Whom(ターゲット)、When(タイミング)、Who(担当者)、How(実施方法)、How much(必要資金)の頭文字を取った考え方で、事業を多角的に分析できます。
たとえばWhere(市場)とWhom(ターゲット)を意識すると、自分の提供する商品やサービスを欲するのはどんな人たちなのか、どの地域や層に向けて販売するのか、という点が明確になるでしょう。これらが定まることで、広告宣伝や販路の決定も行ないやすくなります。
実際の作成ステップ
方向性が固まったら、次はいよいよ書面の構成を整理していきます。まずは大きく分けて、事業概要、市場環境、具体的な販売戦略、資金計画・スケジュールという形で4つほどの柱を作るとスムーズです。
それぞれの項目を埋める際には、なるべく数字や根拠を示すことを意識して文章を作るのがポイントです。毎月の売り上げは○件の契約を想定し、1件あたり平均単価は○円といった形で数値を明示すると信憑性が増すでしょう。
事業計画書にまとめる項目
事業計画書は一般的に定まった書式があるわけではありませんが、重要とされる基本構成は存在します。ここでは、作成時に押さえておくべき代表的な項目を整理しましょう。
企業概要
まずは事業形態や基本情報を記載して個人事業の外枠を提示します。本名で事業をしている場合でも、屋号を付けている場合でも、どのような名称で活動しているのかをなるべく分かりやすくまとめましょう。
また、開業した日付や、その事業を始めた経緯も簡潔に触れておくと、読み手は事業の成り立ちをイメージしやすくなります。創業者の略歴に加え、どういった分野や経験値を備えているかを織り交ぜると、事業の説得力が増すでしょう。
事業コンセプト
ここでは提供内容、つまり扱う商品やサービスの詳細を示します。さらに、どんな課題を解決するのか、他社と比べてどこに独自性があるのかを明示することで、事業全体の方向づけがクリアになるはずです。
またターゲットを明確に書きましょう。年齢層や性別、地域などをシンプルに書き出しておくと、必要な販促手段や提案方法も導きやすくなります。事業コンセプトがあいまいだと、その後の市場分析や売り上げ予想もしっかり決まらないため、丁寧に仕上げましょう。
市場環境と販売戦略
対象とする市場の規模や動向、消費者ニーズ、既存の競合状況などを客観的に整理しておくと、説得力のある販売戦略が立てやすくなります。たとえば、この市場では価格よりも品質を重視する傾向が強いのか、それとも低価格戦略でも十分対抗できるのかを見極めるのです。
具体的には、どのように販促するのか、価格帯はどのくらいに設定するのか、販売チャネルをオンラインとオフラインのどちらに比重を置くのかなどをまとめます。こうした計画を書き込むことで、実際の運営で困ったときにも計画書が指針となるでしょう。
資金計画のスケジュール
事業を始めるにあたって、初期投資としてどの程度の資金が必要かを示す部分です。ここで重要なのが資金調達の方法と事業開始までのタイムラインを合わせて示すことです。自己資金でまかなう割合と銀行融資、あるいは他の出資者による資金提供などを区分けし、合計額を算出します。
また、実際に事業がスタートするまでの必要な手続きや、設備導入などを時系列で書いておくと、準備状況に抜け漏れがないかを確認しやすくなります。もし数か月後に融資の審査が必要であれば、その手続きをいつ行なうのかなども明記しておくと実務的です。
事業計画書の活用を続けるうえでのポイント
完成した事業計画書を、どのように自分自身の経営に落とし込むかが大切です。書いて終わりにしないためのポイントを押さえておくと、計画書の価値が一段と高まるでしょう。
ここでは、数字や根拠の扱い方、そして計画と実績の調整の仕方に注目してみましょう。
数字と根拠を示す
事業計画書を活用する上で、とりわけ重視されるのが売り上げや経費に関する根拠です。根拠がしっかりしていないと、計画は絵に描いた餅になりがちで、資金提案も評価されにくくなります。
たとえば、競合他社との比較を定量的に示したり、過去の類似事業のデータを引き合いに出したりするのも一つの方法です。資金調達の際に説得材料として使えるだけでなく、自分で読むときにも説得力があり、見直しの意欲が高まるはずです。
軌道修正
事業を進めていくと、計画と実際の数字がずれる場面が出てきます。ある月の売り上げが想定よりも下回ったり、不意の経費が発生したりした場合、そのままにしておくと先々の運営レールも狂ってしまいがちです。
そこで定期的な見直しを行なうことで、計画書の精度を逐次向上させ、軌道修正を図ります。売り上げが低い月が連続して続くのであれば、事業の戦略を再考するか、そもそもターゲットの見立てに誤りがなかったかを検証してみるというものです。
継続的な改善
無理のない事業運営を続け、かつ収益を安定させるには、計画と実績の両面をバランスよく追うことが非常に重要です。長期的に見れば、たとえ当初の計画より時間がかかったとしても、小まめな修正を加えることで遠回りせずに済むケースが多いものです。
経営環境が変化したり、新しい販売チャネルが見つかったりしたら、その情報を計画書に反映していく姿勢が大切です。
まとめ
本記事では、個人事業主に役立つ事業計画書の基本的な構成や作成手順、メリットとデメリットについて解説してきました。事業計画書は、目指す方向性を整理し、数字に基づいて改善を図るための基礎となります。
まずは、シンプルでもいいので事業計画書を作成し、随時見直しを重ねて精度を高めていくことがおすすめです。書き上げた計画書を十分に活用し、有益な資金調達と安定的な経営を実現してみてください。