2025.03.07
会社設立時に使える融資は?資金調達方法とそのメリットを解説
会社を新たに設立する際には、多くの企業が資金繰りをどう確保するかで悩みがちです。開業資金や運転資金の手当ては、人材確保や設備投資などの重要な局面で影響を及ぼすため、十分な計画と準備が求められます。これから事業を始める方や、より良い条件で資金を確保したい方にとって、公的機関や民間金融機関など、多彩な融資方法を理解することは大きな助けになるはずです。
本記事では、会社を設立する段階で利用できる代表的な融資制度や、申込み時の具体的な注意点を紹介します。資金調達を円滑に進めるポイントや、審査を通過しやすくするためのコツも解説し、読者が目的に合った融資制度を選ぶヒントを提供します。
会社設立で押さえておきたい融資の基本
会社を設立する際には、どのような融資制度があるのかを全体像として把握することが重要です。公的機関の低金利融資や民間の金融機関による融資、地方自治体の制度融資など、それぞれメリット・デメリットがあります。
公的融資は低金利が魅力
一般的に、会社の設立段階では実績が乏しいため、民間の金融機関では融資が難しい場合があります。そのため、日本政策金融公庫や自治体が用意する公的融資や融資あっせんは、創業支援を目的とした制度が充実しており、低金利を中心に無担保・無保証でも借りやすい場合があります。
こうした公的融資を利用する場合は、明確で具体的な事業計画を用意することが審査で重視されます。飲食店や小売業など、生活衛生関連業種を対象にした特別融資制度もあるため、自身の業種に該当する特例がないかを調べてみるとよいでしょう。
民間金融機関の特徴
銀行や信用金庫など、民間の金融機関では融資限度額が大きいところや審査の柔軟性で特色があります。地方銀行は比較的大口融資に対応しており、長期返済が見込める場合に利用しやすい一方、信用金庫は小規模事業者に対して比較的親身な審査を行う傾向にあります。
民間金融機関における融資では、自己資金を一定割合用意することが推奨される場合が多くあります。特に、会社を設立して間もない時期は、自己資金が融資判断の大きなポイントとなるため、可能な範囲で手元資金の確保を意識しましょう。
地方自治体の制度融資の存在
都道府県や市区町村が主体となり、金融機関や信用保証協会と連携して、創業者を支援する制度融資を行っている自治体が増えています。例えば、東京都の中小企業制度融資では、創業向けに特別枠を設け、一定の条件を満たす事業者に対し信用保証料の一部補助なども行っています。
地域に根ざした事業を行う場合、自治体のサポートを活用することで、金利負担を軽減できる場合があります。公的支援策は年度ごとに見直しが行われることもあるため、最新の情報を自治体のサイトなどでチェックするとよいでしょう。
公的融資の活用ポイント
会社を設立するうえで公的機関が行う融資は、創業者の強い味方といえます。特に日本政策金融公庫などは、創業期に特化した低金利の制度を用意しており、多くの事業者が利用しています。
日本政策金融公庫の概要
日本政策金融公庫(以下、公庫)は、政府系金融機関として新規開業資金など多様な融資制度を提供しています。低金利かつ無担保・無保証人での借り入れがしやすい点が特徴で、返済期間も長めに設定できるため、事業計画を立てやすいメリットがあります。
公庫では審査の際に、自己資金が2割以上あるかが一つの目安とされることが多くあります。事業計画書の内容や実現性はもちろん、自己資金によって開業に対する本気度を示す形となり、融資の可否に影響しやすい点が特徴です。
創業融資を受けるメリット
公庫の創業融資では、通常の銀行融資よりも低金利が適用される場合が多く、会社を設立したばかりで実績が少ない経営者にとって大きな助けとなります。さらに、期間が長期にわたるため、安定して資金を返済できるように事業の拡大計画を組み立てやすい点も利点です。
また、無担保や無保証人で借りられるケースが多いことも特徴です。これにより、自宅や資産を担保に入れる必要がないため、創業間もない事業者でも安心してチャレンジできます。ただし制度や条件は随時更新される場合があるため、最新情報を公庫に直接確認しましょう。
具体的な公庫の融資制度
会社を設立する際には、どの制度を利用できるかによって融資金額や金利条件が変わります。日本政策金融公庫では、以下のような制度を用意しています。
下記の表は、代表的な創業融資制度と特徴をまとめたものです。
制度名 | 主な条件 | 利率 |
---|---|---|
新規開業資金 | 融資限度額7,200万円/設備資金最長20年/運転資金最長7年 | 1.10〜2.90% |
女性・若者/シニア支援資金 | 女性・若者・シニア層を対象に特別利率 | 特別利率を適用 |
再挑戦支援資金 | 廃業歴がある方向け/運転資金最大15年以内 | 制度独自の利率 |
中小企業経営力強化資金 | 中小企業会計を適用/特別利率を適用 | 優遇金利あり |
挑戦支援資本強化特別貸付 | 無担保・無保証/返済期間5年1カ月〜20年 | 公庫所定の利率 |
生活衛生新企業育成資金 | 生活衛生関連業種を対象/設備投資向け/限度額最大4億8,000万円 | 公庫所定の利率 |
ソーシャルビジネス支援資金 | NPO法人など社会的事業向け | 公庫所定の利率 |
上記のように、用途や対象が細分化されているため、自身の事業が該当しそうな制度を調べて選択することが大切です。
各自治体が提供する融資制度
会社を設立する方々にとって、地方自治体の制度融資も魅力的な選択肢になります。自治体によって融資条件や保証料の補助などが異なるため、自分の事業所がある地域の情報を一度確認するとよいでしょう。
地方自治体の制度融資とは
地方自治体が主催する融資制度は、一般に金融機関と信用保証協会を連携させた仕組みになっています。多くの場合、地域の金融機関と保証協会の連携によって、創業期向けに保証料を低減したり、女性や若年層、高齢者など特定の層を対象とした優遇措置を取り入れたりする制度設計になっています。
こうした制度を活用する際には、金融機関と自治体の両方の条件を確認することが必要です。保証協会が関わる場合は、信用保証協会の審査も加わるため、作成する事業計画書の内容をより丁寧に整えることが審査のポイントになります。
具体的な例
例えば東京都では、中小企業制度融資という枠組みのなかに「創業」を目的とした制度があり、融資条件のハードルを下げる特例が設けられています。また「女性・若者・シニア創業サポート」のように、属性別の優遇策を提供するケースもあります。
自治体によっては、保証料補助を受けられるところもあり、融資を受ける際の負担が軽減されるのが魅力です。事業を展開したい地域との結びつきが強いだけに、地域特性に合った細かいサポートを得られる可能性があります。
自治体融資の申込み手順
自治体の制度融資を利用する場合、まずは対象となる地域の商工担当部署や商工会議所などに相談するところから始めます。創業計画の聞き取りを行った上で、融資制度や保証制度の詳しい説明を受けることが一般的です。
その後、必要書類を準備して金融機関へ申し込む流れになります。自治体や金融機関、保証協会の審査を通過した時点で融資実行となるため、時間に余裕をもって申請できるようにスケジュールを組んでください。
融資を受ける前に行う準備
会社を設立するうえで、融資申込みの前段階でどのような準備を行うかによって、審査結果が大きく変わります。資金計画や書類準備、また助成金や補助金の検討などの段階をしっかり踏むことが大切です。
資金計画の作成
開業資金や運転資金など、どのタイミングでいくら必要になるのかを明確にするために、資金計画を作っておく必要があります。事業が順調に進んでも、想定外の出費が発生することは多いため、少し余裕をもった計画を立てると安心です。
また、収支計画を具体的に示すことも重要です。開業初期に黒字を出すことが難しくても、いつ頃から収支がプラスに転じるかの見通しを立てられていれば、金融機関や支援機関の評価が高まりやすくなります。
助成金・補助金の併用
公的機関では融資だけでなく、助成金や補助金を通じて創業者を支援する施策を行っている場合があります。たとえば、雇用に関する助成金や、自治体が行う設備投資補助などが代表的です。
こうした施策は返済不要のものが多いため、融資の金額を抑制しリスクを減らすことに役立ちます。申請期間や要件が限定されることも多いので、事業計画と合わせて早めにチェックしておきましょう。
複数の融資候補を比較
公的融資だけでなく、民間金融機関や自治体融資など、複数の選択肢を洗い出して比較することが大切です。金利や返済期間、保証人の有無など、条件面の違いを整理しておくと、自社に最適な選択がみえてきます。
比較検討の際には、利用条件や手続き費用を総合的に確認することを忘れないでください。たとえ金利が低くみえても、保証料や手続きでかかるコストを含めると、予想以上の出費になる可能性があります。
融資審査の通過率を上げる方法
会社を設立したばかりの段階でも、しっかりとした事業計画と自己資金を確保すれば、融資の審査に通過しやすくなります。公的相談窓口や専門家への相談も視野に入れて、できる限り準備を整えましょう。
自己資金を充実させる
創業期の融資審査では、自己資金が一定以上あることが評価されやすいといわれています。目安として2割以上とされるケースが多く、貯蓄や自己投資によって資金を用意できるかがポイントになります。
融資担当者からは、どのようなプロセスで自己資金を貯めたか確認されることもあります。単なる借り入れではなく、継続的に積み立ててきた経緯などが示せると信用度が高まります。
事業計画書を具体化する
事業計画書は、売上や利益の予測だけでなく、サービスや商品の特徴、ターゲットや競合分析、リスクヘッジ方法などを詳しくまとめる書類です。実現可能性の高い計画が示されていれば、融資を行う側も安心感をもちやすくなります。
売上見込みを大きく書きすぎるより、実際の市場調査を反映する方が評価は高まります。特に公庫や自治体が行う審査では、現実的な数字の積み上げを求められるため、客観的なデータを用意しましょう。
専門家・公的相談窓口の活用
中小企業診断士や税理士、商工会議所などの公的相談窓口を活用すると、融資申し込みに際して、事業計画書のブラッシュアップや書類作成のアドバイスを受けられます。専門家はさまざまな融資制度に通じているため、最適な選択を一緒に検討してくれるでしょう。
相談を行う際は、自社の課題とゴールを明確に伝えることがスムーズなサポートにつながります。曖昧な計画より、具体的な数値目標や販売戦略を定めておくと議論が深まりやすくなります。
民間金融機関からの融資方法
公的融資以外にも、銀行や信用金庫など民間金融機関を通じて会社設立時の資金を確保する方法があります。審査基準や融資条件は明確なルールがない分、企業の状況や人脈によって柔軟に対応してくれるケースもあります。
地方銀行の活用
地方銀行は、その地域で事業を展開する企業のサポートを、積極的に行う傾向があります。場合によっては大口融資にも対応し、長期的な返済計画を設定できることから、設備投資など、大きな資金が必要なタイミングでは有効です。
ただし、ビジネスモデルをしっかり説明することが求められます。地方銀行は、地域経済への貢献度を重視するため、自社が地域にもたらすメリットや雇用効果などをきちんと伝えると好印象を得られるでしょう。
信用金庫の特色
信用金庫は、地域密着型の金融機関として、小規模事業者や個人事業主をターゲットにした融資を行うことが多くあります。比較的審査が柔軟であることや、地元情報に明るい担当者が多い点が魅力です。
会社を設立して間もない段階でも、直接足を運んで相談すると親身に話を聞いてもらえる可能性が高まります。小口融資であればスピード感をもって対応してくれるケースも多く、当座の資金を早めに確保したい方にとって選択肢になるでしょう。
融資交渉のポイント
民間金融機関と交渉する際は、事前に複数の銀行や信用金庫で検討を進め、条件や金利などを比較することが大切です。提示された条件で、無理なく返済できるかをシミュレーションしてみましょう。
また、経営権を渡さずに資金調達できる点は、民間の融資のメリットでもあります。設立初期は株式の希薄化をできるだけ避けたい場合が多いため、自分の経営方針に合った方法を選ぶことが重要です。
新創業融資制度の活用
公的融資や民間金融機関の融資とは別に、新創業融資制度を活用する手段も注目されています。この制度をうまく利用することで、保証人や担保の問題を解消し、融資までのスピードを高められるというメリットがあります。
新創業融資制度の特徴
新創業融資制度は、会社設立間もない事業者が比較的利用しやすいように設計されています。担保・保証人不要で審査が進むケースや、手続きが簡素化されているケースも多くみられます。
ただし、利率がやや上乗せされることや、融資限度額が低く設定されることに留意する必要があります。事業の性質や必要資金の規模によっては、ほかの制度と組み合わせるほうが効果的な場合もあります。
活用時の注意点
保証人が不要である点は魅力ですが、その分だけ金融機関側が背負うリスクが大きくなるため、利用者側がみせる計画と熱意がより重視されます。収支シミュレーションなどの資料をきちんと作成し、将来的な成長性を具体的に説明する努力が求められます。
また、融資実行後の経営状態を定期的に報告するケースもあります。自己資本比率の推移や売上の見通しなどを整えながら、機関とのコミュニケーションを継続すると信頼度が高まり、追加の融資や再度の相談がしやすくなるでしょう。
他の制度との併用方法
新創業融資制度だけを利用するのではなく、公的融資や自治体の制度融資など複数の方法を組み合わせて、総合的に資金調達を行う方も増えています。リスクを分散するうえでも、複数の貸し手と関係を築くことは有効です。
特に、担保が不要な融資を組み合わせると、個人資産を守りながら資金を調達しやすくなります。ただし、同時に借入総額が増えすぎると返済負担も大きくなるため、事業の成長速度を十分に見極める必要があります。
まとめ
会社を設立する際には多様な融資制度を比較検討し、必要に応じて公的融資、民間金融機関、地方自治体の制度融資などを組み合わせることが大切です。返済期間や金利だけでなく、担保や保証人の有無も加味して、最適な方法をみつけるようにしましょう。
より具体的な審査対策や事業計画の作成方法については、専門家や相談窓口を活用して知識を深め、実務的なアドバイスを得ることがおすすめです。しっかりと準備を行い、納得のいく形で資金調達を進めてください。