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2025.03.07

合同会社の資本金いくらに設定するべき?相場・平均や資本金のルールを徹底解説

事業を始める際、資金面の不安を抱えつつも合同会社の設立を検討される方は多いと考えられます。資本をどの程度用意すれば良いのか、相場や平均が分からないと決断に迷うこともあるでしょう。本記事では、合同会社に必要な資本金を分かりやすく解説し、メリット・デメリットを踏まえた上で、費用や設定の流れを具体的にご案内します。最後まで読むことで、自身の事業規模に合った資本金の目安をつかみ、設立に向けてしっかりと対策を立てることができるようになります。

合同会社とは

まずは、合同会社の基本的な特徴を理解することが大切です。ここでは、設立の背景や株式会社との違いなど、知っておきたいポイントを取り上げます。

一般的に合同会社は、2006年から施行された新会社法によって設けられた比較的新しい形態です。責任範囲が出資額に限定され、出資者自身が経営に深く関わりやすい点が大きな強みといえます。

合同会社の設立背景

株式会社よりも簡易的な手続きで設立が可能となり、固定費を抑えながら小規模でスタートできる法人形態として注目を集めました。もともと合同会社は、米国のLLCを日本向けにアレンジしたものです。

初期費用の点でも、高額な定款認証手数料が不要というメリットがあり、低コストで事業を始めることができます。そのため、起業家やフリーランスなどからの需要が高まっています。

合同会社と株式会社の違い

資本金だけでなく、内部組織や利益の配分方法など多方面に違いがあります。具体的には、株式会社では株主総会や取締役会を設置しなければならない場合がある一方、合同会社では出資者同士の合意を重視する運営形態を採用します。

こうした仕組みにより、合意形成にかかる時間を短縮できる一方で、外部からみると取締役会などの存在がなく、ガバナンス面での不安を指摘されることもあります。用途やビジョンに応じて、双方を比較検討することが望ましいでしょう。

最低額がないことによる注目点

合同会社の資本金には、最低額が定められていません。1円でも設立できる点が魅力ですが、実際の事業運営にはある程度の資金が必要です。形だけの金額にしてしまうと、借入時の信用力が低下するリスクもあります。

資本金が少ないほど負担は軽く済みますが、対外的な信用面を考慮するときには慎重に判断することが重要です。いずれ事業拡大を目指すならば、最初から多少余裕のある金額を確保しておくのも方法の一つです。

事業規模や目的に合わせた柔軟性

小規模ビジネスであれば、すぐに大きな印象やブランド力を必要としないことが多いでしょう。逆に法人格を利用して大手クライアントとの取引を視野に入れる場合は、ある程度の資本金設定が求められるかもしれません。

あくまで事業内容や目標とする売上規模を見極めたうえで、適切な資金計画を立てることが重要です。初期設定をおろそかにすると、後から増資や融資で苦労する可能性が高まります。

資本金の相場や平均を知る

次に、合同会社において一般的にどの程度の資本金が設定されているかを確認してみましょう。実際の相場や平均を押さえることで、具体的な判断材料を得ることができます。

もちろん事業規模や業種によって異なるため、一概にはいえませんが、統計データや事例を参考にすることで概ねの目安を立てやすくなります。

日本政策金融公庫が示す開業資金

日本政策金融公庫の調査によると、新規開業時の資金は平均1,000万円以上になる場合も珍しくありません。ただし、実際には開業する事業ジャンルや運営規模によって大きな差があります。

近年は小さなスモールビジネスが増え、500万円以下での起業も多くみられます。そのため、無理に高額な資本金を用意せず、身の丈に合った金額でスタートする方針を取る人が増えているのです。

平均と実態のギャップ

平均1,027万円という数字だけが独り歩きしてしまうと、自分も同程度の資金を用意しないといけないと感じるかもしれません。しかし、実際には自己資金や借入金などの内訳も人それぞれで、単純に平均額が必要とは限りません。

それ以上の資金が要るケースもあれば、意外と少額でやりくりできるケースもあるため、自社に合った資本プランを検討することが大切です。目安としては500万~1,000万円が最も多いボリュームゾーンといえるでしょう。

合同会社の実質的なスタート資金

登録免許税や印紙税といった法定費用は低めに設定できる一方で、ビジネスの種類によって設備投資や人件費が意外にかさむ場合もあります。特に飲食店や販売事業なら、物件の保証金などが必要になることが多くあります。

事前に必要経費をリストアップし、運転資金として確保しておくべき金額も含めた資本金を検討することが理想だといえます。数字上の最小限だけにこだわらず、経営の継続を見据えた判断を行いましょう。

余裕資金と保守的な設計

開業時にまとまった額を用意していても、売上が安定するまでには数カ月の時間を要する可能性があるため、余裕資金をもつメリットは大きいものです。経営リスクに備えるという意味でも、保守的な資本設計は評価されやすいでしょう。

また、設備投資やシステム導入には予想外の出費が生じることがあります。キャッシュフローの変動をある程度想定し、予備費を組み込む考え方が長期的にはプラスに働きます。

合同会社における資本金のメリット

ここからは、合同会社において、出資額を設定する上でのメリットを紹介します。特に、小回りの利く点や信用面での効果などを押さえることで、設立後の運営に生かせるでしょう。

限られた資本でスタートしたい方や、初期費用を抑えたい方にとっても有力な選択肢となる理由を、具体的にみていきましょう。

柔軟な金額設定ができる

合同会社は、法律上の最低資本金が1円以上であれば問題がないため、初期段階で大きな資金を用意せずとも始めやすいというメリットがあります。株式会社に比べ、設立ハードルが低いのです。

初期投資を最低限に抑えて、事業拡大に合わせて増資すれば良いという考え方も可能です。これによって、事業リスクを最小限にしながら、徐々にスケールアップしていく方法を選択できるでしょう。

各種手続き費用の削減

合同会社は、公証役場での定款認証が不要で、印紙代も電子定款を利用すれば節約できます。登録免許税は、資本金の0.7%か6万円のいずれか高い方が必要ですが、そもそもの手続き自体がスムーズなため、コストを抑えやすいです。

また、株式発行に関わる複雑なプロセスがないため、設立に必要な時間と費用の両方を軽減できるのが魅力といえます。結果的に、資金計画をより柔軟に組み立てられるのです。

意思決定が早い

株式会社の場合は、株主総会や取締役会などで決議が必要となるケースが多く存在します。それに対して合同会社では、出資者同士の合意による比率が高いため、重要事項の決定までにかかる時間を短縮できるのです。

特に、資金関連の増資や分配などについて、経営者の意向を素早く反映しやすい点は、変化の激しいビジネス環境で大きなメリットとなります。情報共有のシンプルさも利点の一つです。

利益配分の自由度

合同会社は、利益配分のルールを定款で柔軟に設定できます。必ずしも資本比率に応じた分配を行わなくてもよい場合があるため、技術提供者やメンバー貢献度に応じて配分を調整することが可能です。

こうした設計ができることで、人材のモチベーション向上が期待できます。専門性の高いメンバーをうまく巻き込みやすくなることも、合同会社における資本金設定のメリットといえるでしょう。

合同会社における資本金のデメリット

一方で、資本金をどの程度にするかによって生じるデメリットも理解しておかなければなりません。特に信頼感や融資の面など、大きな影響を及ぼす可能性があります。

ここでは資本金が少なすぎる場合や、増資のプロセスで考慮すべき点など、見落としがちなリスクを確認しましょう。

信用力が低くみられる可能性

極端に低い資本金設定は、金融機関からの評価を下げる要因となり得ます。たとえ法人であっても、設備投資や仕入れのための融資が受けづらくなるケースがあるので注意が必要です。

特に、取引先が大企業や公的機関の場合、一定以上の資本規模を求められることもあるでしょう。実質には問題がなくても、数字上の信頼度が判断材料となる場面は多々存在します。

増資手続きに手間がかかる場合

資本金を後から増やすことは可能ではあるものの、どのような割合で増資を行うか、運営メンバーとの合意が得られるかなど、事務的な手続きや協議が必要となります。必要な時期にスムーズに資金を調達できないリスクもあります。

資金繰りが逼迫してから慌てて増資を検討するより、早めに事業計画を見直す工夫が大事です。計画的に進めておくことで、予想外のタイミングで困る可能性を減らせるでしょう。

内部留保の確保が難しくなる

初期の資本金が少ない状態で事業を始めると、利益が出るまでの間に自己資金が枯渇しやすくなります。資金繰りを工夫できずに、日々の経費支出を補えない状況が続くと、すぐに運転資金のショートを経験してしまう可能性があります。

利益が出たとしても、成長投資に回す余裕が生まれにくい点もデメリットとなります。必要となるタイミングで予算を確保できず、ビジネス拡大が鈍化するパターンも少なくありません。

大きな案件の受注に不利

取引先が財務の安定性を重視する場合、資本金規模を一つの目安としてチェックされることがあります。特に、自治体の入札案件や大企業の下請けなどは、資本体力が重視される傾向にあります。

もし将来的にそういった案件を狙いたいのであれば、最初から十分な資本を用意しておく方が得策です。条件を満たしていないために、ビジネスチャンスを逃さないよう注意しましょう。

設立費用の内訳と節約ポイント

ここからは、実際に合同会社を設立する際に必要となる費用の内訳を確認していきます。各項目のコストを把握することで、より計画的に資本を準備できるようになるでしょう。

費用を安く抑えるための具体的なテクニックや、支出を最小限にするためのポイントも合わせて解説します。

主な費用項目

設立時には、以下の項目を中心に費用が発生します。

  • 登録免許税: 資本金の0.7%か6万円のいずれか高い方
  • 定款の印紙代: 紙定款の場合4万円、電子定款の場合は不要
  • 実印作成費用: 約3,000円~
  • 印鑑証明書発行費用: 個人用が300円~、法人用が390円~450円程度
  • 登記事項証明書の取得費用: 1通600円程度(オンライン申請時は480円程度)

紙の定款を使うのか、電子定款を使うのかによっても購入する印紙のコストが変わります。可能な範囲で電子定款を活用すると、印紙代を4万円節約できるのでおすすめです。

節約ポイント

まず、電子定款を積極的に利用するのは、大きな節約策になります。事前準備として、電子証明書やPDFソフトなどが必要になりますが、結果的には余計なコストを削減しやすい方法です。

また、士業への依頼範囲を見直すのも有効です。司法書士や行政書士にすべて任せると手数料が増えますが、自分で手続きできる部分を把握しておけば、最低限のサポートプランだけで済む場合もあります。

具体的な費用例を表で確認

以下は、合同会社設立時のおおまかな費用の例です。実際の金額は状況によって変動しますが、目安として把握してください。

項目 金額の目安
登録免許税 6万円~
定款の印紙代 電子定款なら不要、紙定款なら4万円
実印作成費用 約3,000円~
印鑑証明書 個人用300円~、法人用約390円~450円
登記事項証明書 1通600円程度(オンライン申請時480円程度)

電子定款の準備や必要書類の取り寄せ決済など、作業面がスムーズに進めば、実質6万4,000円程度からスタートできます。資本金に充てるべき金額とのバランスをみながら、計画を進めるのが大切です。

トータルコストを抑えるコツ

最大限にコストを抑えたいなら、ネット上にある公的機関の情報や自ら電子定款を作成する手順をしっかりと調べ、漏れなく準備を行うことが重要です。多少の手間はかかっても、数万円単位の差は大きいでしょう。

登録免許税こそ一定額かかりますが、その他の費用を最小化できれば、用意した資本を事業運営に回せる余力が増えます。そこが、合同会社設立のメリットを活かすポイントともいえます。

資本金を設定する際の流れ

では、実際に資本金をいくらにすれば良いのか決めるフローを、順番にみていきましょう。ポイントを押さえておけば、迷いを最小限にしながら最適な金額を決める手助けになります。

以下のステップを参考に、必要な情報を揃えながら一歩ずつ進めてみてください。

必要資金の洗い出し

まずは事業に必要となる資金をリストアップします。どれだけの設備投資や広告費、人件費がかかるかをなるべく具体的に数字化しましょう。月々の固定費も含めて、半年から一年程度の運転資金を想定する人が多いものです。

この段階で、余裕資金の有無を確認することが重要です。売上が想定通りに立たないリスクや、突発的な支出に対応するためにも、余力をもった設定を心掛けましょう。

資本金からみられる信用力

取引先からの信用は、事業展開において大きなウェイトを占めます。特に、融資を受ける場合や大企業と取引を行う場合、ある程度の資本がある方が信用を得やすい傾向があります。

もし近い将来に大きな投資や契約を見込んでいるなら、それに見合った資本を最初から用意しておく方が後々スムーズに進むことが多くみられます。

増資・外部調達の可能性を想定

資本金が足りない場合は、後から増資したり融資や投資を受けたりすることを検討する必要があります。合同会社においても可能な手段ですが、タイミングや手続き、メンバーとの合意形成など、考慮すべきことは少なくありません。

想定外の時期に資金が必要となったとき、スピーディに対応できるサポート体制を整えておけば、万一の際にも事業を滞らせずに済むでしょう。

専門家との相談

最終的な資本金設計は、専門家にアドバイスを受けるのも一案です。税理士や司法書士といった士業はもちろん、経営コンサルタントなどからの客観的な視点を得ると、主観だけでは見落としがちなリスクをカバーできます。

特に、初めて起業する場合、複数のシミュレーションを行い、無理のない範囲で資金を確保することが成功への第一歩となるでしょう。

事業拡大を目指すためのヒント

資本金を設定して合同会社を設立した後も、事業拡大に伴いさらなる資金ニーズが生まれることがあります。ここでは、スムーズな成長を支援するためのヒントをいくつか紹介します。

経営者として継続的に財務施策を検討できるよう、前もって視界を広げておくことが大切です。

キャッシュフロー管理の徹底

いくら十分な資本金があっても、資金繰りを誤れば事業は立ち行かなくなるおそれがあります。支出と収入のバランスを常に把握し、数カ月先までのキャッシュフロー予測を立てる習慣を身につけましょう。

特に、設備投資や人件費など固定費が増加する局面では、正確な資金計画が経営判断を左右します。定期的な収支チェックを怠らないようにすることがポイントです。

外部資金調達の選択肢

銀行融資や公的支援制度、クラウドファンディングなど、中長期的な拡大を見据えるなら、外部資金調達の可能性を探るのも有効です。特に日本政策金融公庫の低金利融資や、地方自治体の創業支援制度などは活用の幅が広がっています。

合同会社でも、各種補助金や助成金を受けられるケースがあるため、こまめに情報をチェックしておくと良いでしょう。

増資によるステップアップ

事業が軌道に乗り、さらなる飛躍を目指す段階では、増資も視野に入ります。メンバー増加や新たな出資者を募ることで、資金力を強化しながら組織体制を拡大することが可能です。

この際、出資比率や経営権の在り方を慎重に調整しなければ、トラブルに発展するリスクもあるため、事前に条件を明確にしておくと安心です。

定期的な事業計画の再評価

ビジネス環境は常に変化しています。外部環境の変動や競合の登場、新市場の開拓など、定期的に事業計画を見直すことで、資金需要のタイミングをより正確に把握できます。

この継続的な見直しが、経営リスクを回避するうえで欠かせません。必要に応じて増資や融資交渉に素早く踏み切れる体制を維持することが、事業成長のカギとなります。

まとめ

ここまで、合同会社の資本金設定に関するルールや相場、メリット・デメリットを解説してきました。また、基本的な設立費用の内訳から節約のポイント、さらに資金計画の流れまでを整理しました。

資本金は事業の土台といえる重要な要素なので、無理なく信用を得られる金額を設定し、早めに専門家の協力を仰ぐことが大切です。今までの内容を踏まえて、ぜひ最適な資本金を検討し、実際の設立へとスムーズに進めてください。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社
資格
貸金業務取扱主任者(第F231000801号)
経営革新等支援機関認定者
東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入社。
法人融資の専門家として、国内での金融業務に従事し、特にコーポレートファイナンス分野において豊富な経験を誇る。
同行に関して、表参道支店では法人融資を担当し、その後ニューヨーク支店にて非日系企業向けのコーポレートファイナンス業務に従事。
法人向け融資の分野における確かな卓越した知見を踏まえ、企業の成長戦略策定、戦略、資金調達支援において成果を上げてきました。
金融・経営戦略の専門家として、企業の持続的な成長を支える実務的なアドバイスを提供し続けています。
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