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企業価値向上の鍵|非財務資本の活用と資金調達のポイント

企業価値向上の重要性

企業価値の向上は、資金調達の場面で有利に働く大きな要素となります。たとえ現状の経営状態が厳しくても、明確な企業価値向上計画が経営改善計画に盛り込まれていれば、金融機関や債権者からの理解を得やすくなり、協力関係を築くことが可能になります。

資金調達における企業価値の役割

かつて、金融機関の審査担当者は「債務者区分」に基づき、企業の融資状況と財務状況を比較し、画一的な基準で審査を行っていました。貸借対照表や損益計算書などの財務諸表をもとに、リスク要因を精査し、必要な調整を加えたうえで融資の可否を決定するのが一般的でした。

このような利益至上主義的な経営評価は20世紀からの主流でしたが、企業価値を正当に評価する方法としては必ずしも適切ではないという反省もあります。その結果、21世紀に入ると、企業のステークホルダーとして、株主や債権者だけでなく、従業員、取引先、地域社会、地球環境などを含めた経営方針が重要視されるようになりました。

非財務資本が企業評価に与える影響

この変化は、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)や責任投資原則(PRI)ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の推進など、世界的な動向にも表れています。従来の企業価値評価手法としては、貸借対照表上の純資産や、将来的な損益計算書から算出するディスカウントキャッシュフロー(DCF)といった財務的指標が中心でした。しかし、現在ではこれらに加えて、非財務資本(Invisible Capital)を重視した評価方法が注目されています。

実際に、2023年3月期より、上場企業の有価証券報告書にサステナビリティ情報の記載欄が新設されました。これにより、人的資本や多様性といった非財務情報の開示が義務化され、財務情報だけでなく、企業がどのような社会的価値を生み出しているかも問われるようになっています。

今後の企業経営では、財務情報以外の「非財務情報」=「非財務資本」の重要性がさらに高まると考えられます。この新しい企業価値創造の概念に基づき、次章では「非財務資本重視経営」について詳しく説明します。

企業価値を構成する主要要素

企業価値は、これまで主に財務諸表の数値によって説明されてきました。しかし、時代の変化とともに、財務指標だけでは企業の実態や価値を十分に表すことが難しくなっています。現在では、財務情報に加えて、目に見えない「非財務資本」の重要性が増しており、それが企業価値の大きな要素となりつつあります。

財務資本と非財務資本の違い

企業価値における「財務資本」と「非財務資本」の違いを明確にする指標の一つに、PBR(株価純資産倍率)があります。これは以下の計算式で求められます。

PBR = 時価総額 ÷ 純資産

PBRが1倍であれば、企業の会計上の価値(財務資本)と市場で評価される企業価値(時価総額)が等しい状態を示します。一方で、PBRが1倍を超えている場合、その超過分は、企業が持つ非財務資本による付加価値と考えられます。

上場企業の場合、時価総額が明確に示されるため、このような評価がしやすいですが、中小企業や非上場企業においても、非財務資本の価値を高める経営施策を行うことで、企業価値の向上が認められるはずです。

企業経営における非財務資本の重要性  

非財務資本とは、企業の財務諸表には直接表れないものの、事業の成長や競争力に大きな影響を与える資本のことを指します。主に以下の5つの要素で構成されます。

【非財務資本の5つの要素】

1.自然資本:環境資源やエネルギー、気候変動対策など

2.人的資本:従業員のスキルやモチベーション、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)への取り組み

3.知的資本:特許やノウハウ、研究開発、ブランド価値

4.製造資本:生産設備や技術、サプライチェーン管理

5.社会・関係資本:取引先や顧客との信頼関係、企業の評判やブランド力

これらの非財務資本を明確にし、投資家や金融機関、従業員、取引先、地域社会と積極的に情報交換や対話を行うことが、今後の経営の基本となります。

例えば、ESG(Environment, Social, Governance=環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)への対応を経営戦略の中心に取り入れることで、長期的な企業価値の向上に貢献できます。こうした非財務資本を重視した経営は、企業の持続的成長だけでなく、資金調達の円滑化や社会的評価の向上にもつながる重要な要素となっています。

非財務資本の5つの要素

企業価値を構成する要素には、財務資本だけでなく、目に見えない非財務資本の影響が大きくなっています。非財務資本とは、企業の持続的な成長を支える無形の資本であり、以下の5つの要素に分類されます。

・人的資本:従業員のスキルや意欲、組織の文化

・知的資本:特許やノウハウ、技術開発

・社会・関係資本:取引先や顧客との信頼関係、ブランド価値

・自然資本:環境資源、持続可能なビジネスモデル

・製造資本:設備、インフラ、供給網の強化

これらの資本を適切に活用・強化することで、企業の競争力を高め、持続的な成長を実現できます。

人的資本と知的資本の活用

人的資本とは何か?

人的資本は、企業の成長を支える最大の要素の一つであり、従業員の能力や意欲、イノベーションを生み出す力を指します。

具体的には、以下のような要素が含まれます。

・スキルや専門知識の向上(リスキリング、研修、OJTなど)

・モチベーションや満足度の向上(福利厚生、フリンジベネフィットの充実)

・ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進(多様な人材の活用)

・リーダーシップとマネジメント能力の向上

近年、日本ではイノベーションの創出が求められていますが、その実現には人的資本への投資が不可欠です。しかし、日本の平均賃金はOECD加盟国の中で25位と低く、人材が「投資」ではなく「コスト」として扱われてきた現状があります。この認識を改めることが、企業価値向上の鍵となるでしょう。

さらに、上場企業では人的資本の開示が義務化されており、「人材育成方針」「社内環境整備」「男女間賃金格差」「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」などの情報開示が求められています。今後、日本でも人的資本への投資が経営戦略の重要な要素となることは間違いありません。

知的資本とは何か?

知的資本は、企業が持つ特許や技術、ノウハウ、ブランド価値などを指し、競争優位性を生み出す要素となります。特に、イノベーションを促進するためには、知的資本の効果的な管理が不可欠です。

知的資本を最大限に活用するためのフレームワークとして、「SECIモデル」(一橋大学大学院 野中郁次郎教授)があります。

SECIモデルとは?
知識を組織内で効率的に活用・発展させるプロセスモデルで、以下の4つの段階を経て知識の創造を促します。

  1. 共同化(Socialization):経験を共有し、暗黙知を獲得
  2. 表出化(Externalization):暗黙知を言語化し、形式知へ変換
  3. 連結化(Combination):形式知を集団で統合し、新たな知識を創出
  4. 内面化(Internalization):形式知を個人のスキルとして習得

このように、知的資本の価値向上が人的資本の成長にもつながるため、両者を一体的にマネジメントすることが重要です。

社会・関係資本と自然資本の影響

社会・関係資本とは何か?

社会・関係資本とは、企業とステークホルダー(顧客、取引先、地域社会、株主など)との関係性や信頼を指します。

例えば、以下のような取り組みが社会・関係資本の向上につながります。

・顧客ロイヤルティの強化(顧客満足度調査、NPS導入)

・ブランド価値や評判の向上(CSR活動、透明性のある情報開示)

・従業員エンゲージメントの向上(企業文化の醸成、人権への配慮)

特に近年では、社会的責任を果たす企業の評価が高まり、ESG(環境・社会・ガバナンス)要素を経営に組み込むことが求められています

自然資本とは何か?

自然資本は、企業が持続的に発展するための基盤となる環境資源を指します。具体的には、以下のような要素が含まれます。

・空気・水・土地・鉱物・森林などの天然資源

・生物多様性の保護、生態系の維持

・気候変動への対応(カーボンニュートラル、温室効果ガス削減)

現在、気候変動リスクは企業価値に直接影響を与える要因となっており、投資家や金融機関は企業の環境対策を重視しています。そのため、温室効果ガス排出量削減や再生可能エネルギーの導入などの取り組みが、企業の長期的な成長に不可欠です。

さらに、上場企業では「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の枠組みに基づき、気候変動リスクの管理戦略や目標の開示が求められています。企業は、単なる環境対策にとどまらず、持続可能なビジネスモデルを構築することが求められているのです。

まとめ

本記事では、企業価値向上の重要性と、その構成要素である非財務資本について解説しました。人的資本・知的資本・社会・関係資本・自然資本の活用が、財務資本と並ぶ企業の成長要因となり、持続的な発展に不可欠であることがわかります。

しかし、非財務資本の管理や活用には専門的な知識が求められ、自社にとってどの要素を強化すべきかを判断するのは容易ではありません。適切な資金調達や経営戦略を立案し、企業価値を向上させるためには、専門家のアドバイスが重要です。

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HTファイナンスは、長年の経験と専門的な知見を活かし、企業ごとの状況に応じた最適な資金調達方法をご提案します。法人向け融資や財務戦略のサポートを通じて、貴社の事業成長を支援いたします。

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監修者 三坂大作
筆者紹介
ヒューマントラスト株式会社 統括責任者・取締役
三坂 大作(ミサカ ダイサク)

経歴
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1989年 同行ニューヨーク支店勤務
1992年 三菱銀行退社、資金調達の専門家として独立
資格・認定
経営革新等支援機関:認定支援機関ID:1078130011
ヒューマントラスト株式会社:資格者 三坂大作
貸金業登録番号:東京都知事(1)第31997号
ヒューマントラスト株式会社:事業名 HTファイナンス
貸金業務取扱主任者:資格者 三坂大作
資金調達の専門家として企業の成長を支援
資金調達の専門家として長年にわたり企業の成長をサポートしてきました。東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)に入行し、国内業務を経験した後、1989年にニューヨーク支店へ赴任し、国際金融業務に従事。これまで培ってきた金融知識とグローバルな視点を活かし、経営者の力になることを使命として1992年に独立。以来、資金調達や財務戦略のプロフェッショナルとして、多くの企業の財務基盤強化を支援しています。 現在は、ヒューマントラスト株式会社の統括責任者・取締役として、企業の資金調達、ファイナンス事業、個人事業主向けファクタリング、経営コンサルティングなど、多岐にわたる事業を展開。特に、経営革新等支援機関(認定支援機関ID:1078130011)として、企業の持続的成長を実現するための財務戦略策定や資金調達のアドバイスを提供しています。また、東京都知事からの貸金業登録(登録番号:東京都知事(1)第31997号)を受け、適正な金融サービスの提供にも力を注いでいます。
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