2025.04.17
キャッシュフローがマイナスな時にできることは?計算方法や影響、対処法を解説
資金繰りを安定させたいと考える経営者や個人事業主にとって、キャッシュフローがマイナスになっている状況はできるだけ避けたいものです。しかし、事業を継続するうえでは、時期や投資内容によってキャッシュの流出が膨らみ、結果キャッシュフローがマイナスになってしまう可能性は少なくありません。
本記事では、キャッシュフローがマイナスになってしまう背景や原因、事業への影響を整理し、具体的な対処法と改善策を解説します。
キャッシュフローの基本
キャッシュフローは、一定期間における現金の流入と流出を指し、その数値から事業の資金状況や健全性を把握できます。たとえ売上が大きくても、支払いとのタイミングがかみ合わないと実際の現金は不足し、経営に負担をもたらすことがあります。
キャッシュフローとは
キャッシュフローとは、ある期間における事業の現金収支です。売上や借入といった、入ってくるお金に加え、仕入や給与、税金など出ていくお金を時系列でとらえます。この動向を把握すると、今後の経営方針を立てやすくなります。
現金の動きを可視化することで、将来の資金需要にも対応しやすくなります。経営状況を客観的に判断する際は、安定したキャッシュフローを維持できるかどうかが、健全な経営の指標とされることが多いものです。
また、利益計上がプラスでも、キャッシュフローが不足するケースは少なくありません。掛取引や在庫増加などで実際の現金回収が遅れると、利益の計算と実際の現金保有とは必ずしも一致しないためです。
キャッシュフローの種類
キャッシュフローは、主に営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローの3種類に分かれます。営業キャッシュフローは本業(事業そのもの)での収支、投資キャッシュフローは設備投資や資産取引などの支出超過が中心、財務キャッシュフローは借入金や返済、株式発行などで構成されます。
各キャッシュフローの動向を総合的にみることで、事業の安定性は判断されます。
たとえば、営業キャッシュフローはプラスでも、投資キャッシュフローが大きくマイナスの場合には、現金が減り続ける恐れがあります。逆に投資キャッシュフローが少なくても、本業が低調で営業キャッシュフローがマイナスになる状況は、リスクが高いといえます。
フリーキャッシュフローとは
フリーキャッシュフローとは、営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いたものを指します。これは、事業の運営に必要な支出を行ったうえで、最終的にどれだけ自由に活用できる資金が残っているかを示す重要な指標です。
具体的には、営業キャッシュフローが1,000万円、投資キャッシュフローが300万円のマイナスであれば、フリーキャッシュフローは700万円となります。手元に潤沢なフリーキャッシュフローを確保することで、新規プロジェクトへの投資や不測の事態への対策が可能になります。
一方で、フリーキャッシュフローがマイナスになるときは、事業の運営と投資両面で資金が不足していることが多くあります。その場合には、資金調達や投資計画の見直しが求められるでしょう。
キャッシュフローの計算方法
キャッシュフローを正確に計算することは、現状を把握するうえで欠かせません。営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローの3つを分けて把握したうえで、さらにフリーキャッシュフローも計算するとよいでしょう。
営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローは、本業の収支を示す指標です。一般的な計算式としては、「営業キャッシュフロー=税引前利益+減価償却費-税金」がよく利用されます。例えば税引前利益が500万円、減価償却費が100万円、税金が80万円なら、営業キャッシュフローは520万円です。
これはあくまでも基本の形であり、企業が扱う製品・商品やサービス、業種によって、細かな計算要素は異なります。自社のビジネス特性に合った計算式を見直すことが大切です。
また、減価償却費や棚卸資産の増減などの非現金支出・収入を加減することで、実際の現金の動きを正しく捉えようとするのが、営業キャッシュフロー計算です。
投資キャッシュフロー
投資キャッシュフローは、設備や資産に費やした支出が中心であり、そのため通常はマイナスを示します。工場の拡張や機器の導入などは、事業拡大のために必要ですが、タイミングや金額を誤ると資金繰り全体が厳しくなります。
営業キャッシュフローがプラスであれば、このマイナスを補うことは可能ですが、投資額が大きいと経営を圧迫しやすいものです。営業と投資両面での収支バランスを考慮することで、過度な支出を回避しやすくなります。
投資キャッシュフローが大きくマイナスでも、将来の収益増につながれば問題ありませんが、回収見込みが低いとキャッシュフロー全体を逼迫させる原因になるため、注意が必要です。
フリーキャッシュフロー
フリーキャッシュフローは、営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いた値です。プラスの場合は、事業の安定性や投資余力の大きさを示す一方、マイナスの場合は、本業と投資の両面で資金が不足している可能性が高いといえます。
例えば、営業キャッシュフローが1,000万円で、投資キャッシュフローが500万円のマイナスならば、フリーキャッシュフローは500万円です。マイナスになった場合の原因を整理することで、改善への具体策を立案できます。
フリーキャッシュフローが継続してプラスであれば、借入返済や新たな投資、配当原資などをカバーしやすくなります。逆にマイナスが続く場合には、早急に資金繰り計画の再構築が求められるでしょう。
キャッシュフローがマイナスになる原因
キャッシュフローがマイナスになるとき、ほとんどの場合複数の原因が絡んでいます。キャッシュフローの悪化は、先ほど述べた3つの分類をもとにすると、売上や資金回収の停滞、設備投資の負担増加、財務面での返済や配当などが原因になっているとわかります。
売上や資金回収の停滞
営業キャッシュフローは、本業の売上や経費など直近の経営実態を映し出します。ここがマイナスになる主な要因として、売上自体の減少や経費の増大、売掛金の回収遅延などが挙げられます。また在庫を必要以上に抱えていると、仕入れに対して現金が先行して出て行き、キャッシュフローを圧迫するリスクもあります。
事業拡大を図る場合も、販売チャネルの開拓費用や広告宣伝費が一時的に増え、本業の収支バランスが崩れやすくなります。売上と回収のタイミングを管理することが、営業キャッシュフロー維持のカギといえるでしょう。
営業キャッシュフローがマイナスに転じると、日々の支払いにも支障が出る可能性があります。銀行取引の信用力が低下する恐れもあるため、早めの対策が欠かせません。
設備投資の負担が大きい
設備投資によって事業の拡大を図るのは、長期的な成長戦略の一環ですが、大きな支出が必要になります。投資キャッシュフローは基本的にマイナスが通常ですが、その規模が営業キャッシュフローのプラス分を上回ると、全体としてキャッシュフローがマイナスになる恐れがあります。
必要な投資だからといって無計画に進めてしまうと、資金繰りのバランスが悪化します。適切な資本計画を検討することが、投資のリターンを最大化しつつ、キャッシュ不足を回避するうえで肝要です。
成長期には、投資キャッシュフローのマイナスが続いても、将来的な営業キャッシュフローの増加でカバーできれば問題ありません。しかし、無理な投資が続くと、資金繰りが深刻になるリスクを抱えることになります。
返済や配当の負担が大きい
借入金の返済が重なると、財務キャッシュフローがマイナスを増大させます。また配当を継続的に出している場合、投資家への信頼を保つ反面、手元現金を社外に払い出すため、キャッシュフローは圧迫されます。
営業キャッシュフローと投資キャッシュフローのバランスをみながら、適度に財務活動を行うことが大切です。返済スケジュールや配当方針を見直すことで、急激な資金流出を抑制できる可能性があります。
財務キャッシュフローがマイナスであっても、営業キャッシュフローが十分にプラスであれば問題ない場合があります。しかし、営業面も不安定なまま返済を続けると、やがてはキャッシュが枯渇してしまいかねません。
キャッシュフローが マイナスになることの影響
キャッシュフローがマイナスに転じると、日常的な費用の支払いから将来的な投資まで、幅広い面で悪影響が及びます。特に、経営基盤が脆弱な企業や個人事業主にとっては、資金ショートのリスクが高まるため十分に注意が必要です。
現金不足
キャッシュフローがマイナスになり、手元の現金が不足すると、税金や仕入先への支払いなど、日常業務の運営に直結する費用が滞る危険性があります。こうしたコア部分の支払いが滞れば、さらに信用力が下がり、取引条件の悪化につながる可能性が高まります。
一時的な立替えや借入で凌ぐこともありますが、恒常的にマイナスが続くと経営に大きな負担がかかります。資金繰りを予測しながら余剰を確保する意識が不可欠です。
また、現金不足の状態が長引けば、従業員への給与支払いや事業に必要な投資すらできなくなるリスクもあります。こうした連鎖を防ぐには、早めに資金繰りを安定させる対策を打ち出さなければなりません。
信用の低下
キャッシュフローがマイナスの影響が大きいのは、現金不足が続くと企業の信用が大きく損なわれる点です。主要取引先や金融機関は、資金繰りの安定性を厳しくチェックするため、キャッシュフローが安定していないと追加融資が難しくなったり、支払い条件を見直されたりする恐れがあります。
信用力が低下すると、新規の取引開拓や取引条件の交渉が不利になることもあるでしょう。資金計画を早期に見直すことが、信用低下の歯止めとして非常に重要です。
最悪の場合、倒産リスクも現実味を帯びてきます。健全な利益を生み出していても、キャッシュが回らないと事業継続は困難になるので、早い段階で対処する必要があります。
追加資金調達が必要になる
キャッシュフローがマイナスになると、追加で資金調達が必要になる場合が多いものです。運転資金の確保や既存借入金の借り換え、あるいは新たな投資を行うために、金融機関や投資家からの融資を検討せざるを得なくなります。
ただし、この段階で信用力が下がっていると、より不利な条件でしか資金調達できないケースもあります。タイミングを逸することなく交渉を進めるためにも、キャッシュフロー管理は常に意識しておきましょう。
追加の借入を重ねる状況は、返済負担を増大させるだけでなく、将来的な利益の圧迫を招きます。無理のない範囲で早期に手を打つことが、リスク回避のポイントです。
キャッシュフローがマイナスである状況の考え方
キャッシュフローがマイナスであるといっても、必ずしも悪い状況にあるわけではありません。3種のキャッシュフローの正負から、好調なパターンと悪化のパターンがあります。営業キャッシュフローを基準に、投資キャッシュフローと財務キャッシュフローの組み合わせを整理してみると、事業の現状に応じた改善策がみえてきます。
好調なパターン
キャッシュフローで好調と考えられる組み合わせ例は、以下のような例です。
- 営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナス
- 営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラス
こうしたパターンでは、本業の収益力が高く、投資に回しても十分カバーできる余力がある状態です。今後の成長施策に資金を充当しやすいといえるでしょう。
財務CFがマイナスであっても、営業キャッシュフローが潤沢なら、返済に問題がない状態といえます。投資CFがマイナスでも、成長を見越した戦略的な支出であれば大きな懸念にはなりにくいものです。
悪化のパターン
下記の通り、営業CFがマイナスになるほど厳しい事態を招きやすくなり、さらに投資CFや財務CFがそれを補えない場合、資金繰りは深刻化します。
- 営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがマイナス
- 営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがプラス
このように、本業からの現金収入が少ない一方で、資産売却などで一時的に投資CFがプラスでも、それが安定的な収益には直結しないケースが多くあります。営業活動の効率化が急務となるのが特徴です。
財務CFがプラスで補おうとしても、返済の見込みが不透明なまま借入を増やせば、長期的に負担が増大してしまいます。根本的には、営業面でのキャッシュフロー改善が最重要といえます。
営業キャッシュフローの重要性
これらのパターンから、営業キャッシュフローの安定が、資金繰りを左右する最重要の項目であるとわかります。投資キャッシュフローがマイナスでも、営業収益でカバーできるかどうかがポイントなのです。
また、財務キャッシュフローに頼る場合、返済スケジュールや金利条件、投資家の期待などを総合的に検討する必要があります。現状の分析と将来見通しの両立が、経営判断を誤らないための大きな鍵です。
キャッシュフローがマイナスである状況の改善策
キャッシュフローがマイナスとなった場合でも、適切な対策を講じることでリスクを低減したり、状況を好転させたりすることが可能です。
運転資金の確保
キャッシュフローがマイナスのときは、まず短期的に資金を確保して、目の前の支払いを滞らせないことが最優先です。金融機関からの借入、ファクタリングなどで売掛金を早期回収する方法などを検討し、手元資金を増やす取り組みが重要になります。
また、取引先との交渉で、支払いサイトを延ばしてもらう選択肢を探ることも考えられます。支出と収入のタイミングを調整することで、一時的なキャッシュ不足を緩和することが可能です。
ただし、支払いを先延ばしするだけでは根本的な解決にならないため、同時に営業面やコスト構造の改善も視野に入れましょう。
経費削減と売上拡大
次に検討したいのは、経費削減と売上拡大の両面から営業キャッシュフローをプラスに導く施策です。具体的には原価の見直し、在庫管理の効率化、固定費の削減などがあります。必要に応じてオフィスや倉庫の見直しなど、大胆なリストラクチャリングが功を奏する場合もあります。
一方で、売上拡大施策としては、新規顧客の獲得や付加価値の高い商品の投入、価格戦略の見直しが挙げられます。利益率を高める施策を積極的に打ち出すことが、キャッシュフロー改善には効果的です。
短期的には、コスト削減でキャッシュを生み出し、同時に長期的な売上増に向けた取り組みを並行して進めることで、継続的なキャッシュフロー改善が可能になります。
投資支出の管理
投資キャッシュフローの管理も重要です。成長のために必要な投資でも、在庫や設備が過剰にならないよう適切な規模とタイミングを見極める必要があります。
投資額に見合ったリターンが見込めるかを検証し、場当たり的な支出を避けましょう。投資に対する効果を評価することで、無駄な支出を抑制できます。
もし投資計画が大きく変更になる場合は、金融機関や取引先に対して早めの情報共有を行い、追加資金が必要な場合の条件調整をスムーズに進めるとよいでしょう。
まとめ
本記事では、キャッシュフローがマイナスの原因や影響、対処法を総合的にみてきました。キャッシュフローの状態が悪い場合、根本的には営業キャッシュフローの改善が重要であり、そのためには収入と支出のバランスを適切にマネジメントする工夫が欠かせません。
キャッシュフローの安定は、経営において最優先課題の一つです。この記事を参考に、自社の資金状況や将来計画を見直し、キャッシュフローが悪い状態であれば改善に動き出しましょう。
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