2025.04.17
開業資金はいくら必要?借入手段はなにがある?融資審査のポイントも解説
新しく事業を始める際に最も重要な問題の一つが、「どのように資金調達するか」です。開業時には様々な費用が必要となりますが、一体いくらぐらいの資金を準備すればよいのか、また、自己資金だけでは足りない場合に、どのような借入方法があるのか気になる方は少なくないでしょう。
本記事では、開業に必要な資金の相場から、資金調達の方法、融資を受けるためのポイントまで、これから起業を考えている方に役立つ情報を詳しく解説します。
開業資金の相場
起業を考える際、まず気になるのは、いくらお金が必要なのかという点です。業種や規模によって大きく異なりますが、一般的な相場は把握しておくべきです。
業種別の開業資金の平均額
日本政策金融公庫の2023年度の調査によると、開業資金の平均額は約1,027万円とされています。ただし、この金額には大規模な投資が必要な業種も含まれているため、実際には、中央値である550万円程度が一般的な目安と考えられます。
業種別にみると、飲食業は内装工事や厨房設備などの初期投資が大きく、平均して1,000万円前後が必要です。一方、ITサービスやコンサルティングなどの知識集約型ビジネスでは、最低限のパソコンと作業スペースさえあれば始められるため、100万円程度から開業可能なケースもあります。
製造業や小売業の場合は、設備や在庫の初期投資が必要となるため、500万円〜2,000万円程度の開業資金を見込んでおく必要があるでしょう。
開業資金の内訳
開業資金は、大きく分けて「設備資金」と「運転資金」の2種類に分類されます。それぞれの内訳を理解することで、より現実的な資金計画を立てることができます。
以下が、主な費用項目です。
- 設備資金
- 物件取得費用または敷金・礼金
- 内装工事費
- 機械・設備購入費
- 備品・什器購入費
- 車両購入費
- 運転資金
- 家賃(数ヶ月分)
- 人件費(数ヶ月分)
- 仕入れ代金
- 広告宣伝費
- 水道光熱費
- 通信費
- 予備費(想定外の支出に備えて)
特に運転資金については、売上が安定するまでの期間(最低でも半年間)分を確保しておくことが重要です。初期段階では収益が見込めないことも多いため、その間の生活費も含めて計画することをおすすめします。
開業資金の調達方法
開業に必要な資金を把握したら、次は資金調達方法を検討しましょう。自己資金だけでは足りない場合、様々な外部からの調達手段があります。
自己資金の用意
起業する際は、まず自己資金をどれだけ用意できるかが重要です。自己資金が多いほど、融資の審査においても有利になります。一般的には、必要な開業資金の3分の1程度は自己資金で賄うことが望ましいとされています。
自己資金には、預貯金だけでなく、退職金や保険の解約返戻金、不動産の売却益なども含まれます。また、使わなくなった資産を売却して資金化することも検討してみましょう。
資金を貯める段階では、現在の仕事を続けながら副業で収入を増やしたり、不要な支出を削減したりするなど、計画的な貯蓄を心がけることが大切です。
日本政策金融公庫からの融資
自己資金だけでは足りない場合、多くの起業家が利用するのが日本政策金融公庫(日本公庫)の融資制度です。特に「新規開業資金」は、これから事業を始める方や事業開始後間もない方を対象とした融資制度で、比較的審査のハードルが低いことで知られています。
新規開業資金の概要は、以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金は4,800万円まで) |
返済期間 | 設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内) |
金利 | 基準金利(特定の条件を満たす場合は特別利率の適用あり) |
担保・保証人 | 原則不要(融資額によっては必要な場合あり) |
また、女性、若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)の起業家を対象とした「新創業融資制度」もあり、より有利な条件で融資を受けられる可能性があります。
地方自治体の制度融資
各都道府県や市区町村では、地域の中小企業や創業者を支援するための「制度融資」を設けています。これらは、地域の金融機関と連携して提供される低利の融資制度で、保証料の補助や金利の優遇があるケースが多くあります。
各地域によって条件や内容が異なるため、事業を展開する予定の自治体のホームページや産業振興課などで、最新の制度内容を確認することをおすすめします。
民間金融機関からの借入
銀行や信用金庫などの民間金融機関からの融資も、選択肢の一つです。ただし、創業間もない事業者への融資には慎重な姿勢を取る金融機関が多く、審査のハードルは日本公庫よりも高い傾向にあります。
民間金融機関から融資を受けるメリットは、融資限度額が大きい場合があることや、取引実績を積むことで、将来的な融資が受けやすくなることです。特に地域密着型の信用金庫や信用組合は、地元企業への融資に積極的なケースが多いものです。
審査を通りやすくするためには、綿密な事業計画書の作成や、創業前の十分な業界経験、担保や保証人の確保などが重要なポイントとなります。
補助金・助成金の活用
融資とは異なり、返済不要な資金として、補助金や助成金の活用も検討すべきです。国や地方自治体、各種団体が様々な補助金制度を設けています。
代表的な補助金・助成金制度には、以下のようなものがあります:
- 小規模事業者持続化補助金(上限50〜200万円、創業間もない小規模事業者向け)
- 創業助成金(都道府県や市区町村が独自に設けている制度)
- 地域創造的起業補助金(最大200万円、地域の需要や雇用を創出する事業向け)
- IT導入補助金(ITツール導入費用の一部を補助)
補助金は公募期間が限られており、申請には詳細な事業計画書の提出が必要です。また、多くの場合は「後払い」となるため、一時的に全額を立て替える必要がある点に注意が必要です。
それぞれの補助金制度について、申請要件や申請期間を事前に調査しておくことで、開業資金の一部として計画に組み込むことができます。
クラウドファンディングや投資家からの資金調達
近年注目されている資金調達方法として、クラウドファンディングや投資家からの出資があります。特に、革新的なビジネスモデルや製品・サービスをもつ起業家にとって有効な手段です。
クラウドファンディングには、主に以下の3つのタイプがあります。
- 購入型:商品やサービスを先行販売する形式
- 寄付型:支援者へのリターンがないか、金銭以外のリターンがある形式
- 投資型:事業の収益や株式の一部を支援者に還元する形式
また、エンジェル投資家や、ベンチャーキャピタルからの出資を受ける方法もあります。これらは、主に高い成長性が見込まれるスタートアップ企業向けであり、資金提供の見返りとして株式の一部を取得することが一般的です。
これらの方法は、単なる資金調達だけでなく、事業のプロモーションや市場ニーズの検証にもつながるというメリットがあります。ただし、期待通りの資金が集まらないリスクや、投資家への説明責任が生じることも考慮する必要があります。
融資審査で重視されるポイント
開業資金の融資を受けるためには、審査に通過する必要があります。審査を通過するには、金融機関が審査で重視するポイントと、必要書類を押さえておくべきでしょう。
創業者の経験や能力が問われる
融資審査において最も重視されるのは、創業者自身の経験や能力です。特に、これから始める事業に関連する業界での実務経験があるかどうかは、審査の大きなポイントとなります。
例えば、飲食店を開業する場合、飲食業での勤務経験やマネジメント経験があれば、事業の成功確率が高いと判断される傾向にあります。業界での経験が浅い場合は、関連する資格や研修の受講歴なども評価の対象となります。
自身の経験をアピールするためには、職務経歴書に詳細な業務内容や実績を記載し、事業との関連性を明確に示すことが重要です。また、これまでに培ったネットワークや専門知識を、どのように新事業に活かすかを説明できるようにしておきましょう。
事業計画書を入念に作成する
融資審査において、事業計画書は最も重要な書類の一つです。事業の内容、市場分析、競合状況、販売戦略、収支計画などを、具体的かつ現実的に記載することが求められます。
事業計画書を作成する際のポイントは、以下の通りです。
- 事業の概要と特徴を簡潔に説明する
- ターゲット顧客と市場ニーズを具体的に示す
- 競合との差別化ポイントを明確にする
- マーケティング戦略を具体的に記載する
- 収支計画は根拠のある数字で作成する(過度に楽観的な予測は避ける)
- 事業リスクとその対策についても言及する
特に収支計画については、月次の売上予測、経費の内訳、損益分岐点などを詳細に記載し、融資の返済計画と合っているのかを示すことが重要です。また、事業が軌道に乗るまでの資金繰り計画も含めることで、返済能力をアピールできます。
自己資金比率と担保・保証人の有無
融資審査において、自己資金の比率も重要な判断材料となります。一般的に、必要資金の3分の1程度は、自己資金で賄うことが望ましいとされています。自己資金比率が高いほど、創業者の事業への本気度や責任感の表れとして評価されます。
また、担保や保証人の有無も審査に影響します。特に民間金融機関では、担保や保証人を求められることが多いでしょう。日本政策金融公庫の新創業融資制度では、一定の条件を満たせば無担保・無保証人での融資も可能ですが、融資額によっては必要となる場合もあります。
自己資金が少ない場合は、事業計画の精度を高めることや、段階的な事業展開によって初期投資を抑える工夫をするなど、別の面でリスクを軽減する姿勢を示すことが重要です。
自己資金が十分でなくても開業資金を調達する方法
自己資金が十分でなくても、工夫次第で開業資金を調達する方法はいくつかあります。
自己資金ゼロでも融資を受けられるのか
自己資金がない、あるいは非常に少ない場合でも、融資を受けられる可能性はあります。特に、日本政策金融公庫の新創業融資制度では、条件次第で自己資金なしでの融資も検討してもらえます。
ただし、自己資金がない場合は、以下の点でハードルが高くなることを理解しておく必要があります。
- 融資額が制限される(自己資金がある場合より少額になる傾向)
- より綿密な事業計画と返済計画が求められる
- 業界経験や専門的なスキルの証明がより重要視される
- 保証人を立てるよう求められる可能性が高まる
自己資金がなくても融資を受けるためには、事業の実現する可能性と収益性を強く示すことが重要です。例えば、すでに事前予約や契約が取れている証明、低コストでスタートできるビジネスモデルの提案、既存の取引先からの推薦状などが役立ちます。
最小限の資金で始められるビジネスモデルの検討
資金調達が難しい場合は、最小限の資金で始められるスモールビジネスのように、ビジネスモデルを検討することも一つの戦略です。以下のようなアプローチが考えられます。
- オンラインビジネスの展開(実店舗をもたない)
- 在宅やシェアオフィスの活用(固定費の削減)
- レンタル設備の利用(初期投資を抑える)
- 受注生産方式の採用(在庫リスクの回避)
- サブスクリプションモデルの導入(安定的な収入源の確保)
例えば、飲食業であれば店舗をもたずケータリングサービス(ゴーストレストラン)から始める、小売業であればオンラインショップから始めて実績を作った後に実店舗を検討する、といった段階的なアプローチも有効です。
また、初期段階では、本業を続けながら副業として事業を始め、収益が安定してから本格的に独立するという方法も、リスクを抑えた戦略として検討できます。
公的支援制度や無利子・低利子の融資制度
自己資金が少ない場合、公的な支援制度や特別融資制度の活用も選択肢となります。特に、創業支援に力を入れている地方自治体では、独自の支援制度を設けていることが多くあります。
以下のような制度を検討してみましょう。
- 創業支援資金融資(自治体による保証料補助や金利優遇制度)
- 特定創業支援事業(創業塾などの受講者向けの特典)
- チャレンジショップ制度(低家賃で店舗を貸し出す制度)
- インキュベーション施設(創業者向けの低コストオフィス)
これらの制度は、地域や時期によって内容が変わることがあるため、最新情報を自治体や商工会議所で確認することをおすすめします。
開業資金の融資を受ける際の注意点
融資を受ける際には、いくつかの重要な注意点があります。将来のトラブルを避けるためにも、以下のポイントをしっかり理解しておきましょう。
返済計画は余裕をもって設定する
融資を受ける際に最も重要なのは、無理のない返済計画を立てることです。事業が計画通りに進まないケースも想定し、余裕のある返済スケジュールを組むことが大切です。
具体的な返済計画を立てる際のポイントは、以下の通りです。
- 最初の6ヶ月〜1年は売上が安定しないことを前提とする
- 季節変動がある業種は、閑散期の返済負担を軽減する
- 返済額は月商の15〜20%以内に抑えるのが理想的
- 据置期間(返済が猶予される期間)を最大限活用する
また、複数の融資を受ける場合は、返済日を分散させるなど、資金繰りに配慮した計画を立てることも重要です。実際の営業開始後も、定期的に返済計画を見直し、必要に応じて金融機関に相談することで、返済トラブルを防ぐことができます。
事業の先行きが不透明な場合は、必要最小限の融資額にとどめる判断も重要です。
融資額は必要最小限にする
融資は事業拡大のチャンスをもたらしますが、同時に返済義務という負担も伴います。そのため、融資額は必要最小限に抑えることが望ましいでしょう。
以下のような視点で、融資額を検討することをおすすめします。
- 初期投資は段階的に行い、最初は必須の設備のみに絞る
- 中古設備や賃貸物件の活用で初期コストを抑える
- 運転資金は最低6ヶ月分を確保するが、過剰な借入は避ける
- 融資以外の方法(リース、分割払い等)も検討する
融資額を抑えることで、月々の返済負担を軽減でき、事業が軌道に乗るまでの資金繰りに余裕をもたせることができます。また、補助金や助成金など、返済不要な資金と組み合わせることで、融資への依存度を下げる工夫も重要です。
税金や社会保険料などの固定費も計算に入れる
融資の返済計画を立てる際、事業運営に関わる税金や社会保険料などの固定費も忘れずに計算に入れることが重要です。創業時にはこれらの費用を見落としがちですが、実際には大きな負担となります。
計算に入れるべき主な固定費には、以下のようなものがあります。
- 法人税、所得税(個人事業主の場合)
- 消費税(課税事業者の場合)
- 固定資産税(不動産や一定額以上の償却資産がある場合)
- 社会保険料(従業員を雇用する場合)
- 国民健康保険・国民年金保険料(個人事業主の場合)
- 事業所税(一定規模以上の事業所がある場合)
特に創業2年目以降は、初年度の実績に基づいて税金や保険料が算定されるため、収益が出始めた場合には相応の負担が発生します。これらを事前に計算し、返済計画に組み込んでおくことで、資金ショートを防ぐことができます。
まとめ
この記事では、開業資金の相場から調達方法、融資審査のポイント、注意点まで幅広く解説してきました。
開業資金の調達には、自己資金の活用、日本政策金融公庫や地方自治体の融資制度、民間金融機関からの借入、補助金・助成金の活用、クラウドファンディングなど、様々な選択肢があります。
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