2025.04.18
個人事業主は廃業届を出さないといけない?取得方法、書き方、手続きを解説
個人事業主として事業を行ってきたけれど、そろそろ廃業をと考えている方は少なくありません。経営不振や転職、法人化など理由はさまざまですが、廃業を決めたらどのような手続きが必要になるのでしょうか。特に「廃業届」については、提出が必要かどうか、どこに提出するのか、期限はいつまでなのかなど、知らない方も多いはずです。
この記事では、個人事業主が廃業する際に必要な「廃業届」について詳しく解説します。廃業届の基本的な内容から提出方法、書き方のポイント、提出しないことによるリスクまで、廃業手続きに必要な情報をまとめました。廃業を予定している方はもちろん、将来的な選択肢として考えている方も、正しい知識を身につけて、スムーズな廃業手続きを行いましょう。
廃業届とは
個人事業主が事業を終了する際には、税務署に「廃業届」を提出する必要があります。この廃業届は、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」という名称で、開業時に使用したものと同じ書類を使用します。
個人事業主が廃業する場合、税務署にその事実を伝えないと、事業を継続していると判断されてしまいます。そのため、廃業の意思を正式に伝えるための手続きが必要になるのです。
廃業届を提出することで、事業所得に関する確定申告や、各種税金の納付義務が終了することを税務署に通知することができます。これにより、不要な税務手続きや誤った課税を防ぐことができます。
廃業届の法律上の規定
廃業届は、所得税法第229条に基づく届出書です。正確には「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、開業時と廃業時に同じ様式を使用します。
この届出書は、事業の開始や廃止の事実を税務署に知らせるための書類で、提出は法律で義務付けられています。ただし、提出しなかったとしても直接的な罰則はありませんが、後述するようにさまざまなリスクが発生します。
廃業届は税務上の手続きであり、開業届と同様に提出することで税務署があなたの事業の状況を正確に把握できるようになります。これにより、税務調査を不要に実施してしまうことや、誤った課税をしてしまうことを防ぐことができるのです。
廃業届が必要なケース
個人事業主が以下のような状況になった場合、廃業届の提出が必要です。
- 事業を完全に終了する場合
- 法人成りして個人事業を終了する場合
- 事業の種類を完全に変更する場合
- 屋号や事業内容を大幅に変更する場合
- 事業所の所在地を変更する場合(移転届との併用)
- 個人事業主が死亡した場合(相続人が手続き)
特に注意が必要なのは、法人成りのケースです。個人事業から法人へ移行する場合、個人事業としては廃業することになりますので、廃業届の提出が必要になります。また、事業内容を大幅に変更する場合も、既存の事業を廃業し、新たな事業を開業するという手続きが必要です。
個人事業主の廃業届の提出方法
廃業届は正しい提出先に、期限内に提出することが重要です。提出先や期限を誤ると、後々トラブルの原因になることがあります。
税務署への提出
廃業届は、主に税務署に提出します。提出方法には、以下の3つがあります。
まず一つ目は、管轄の税務署に直接持参する方法です。窓口で職員に直接手渡すことができるため、不備があった場合にその場で指摘してもらえるメリットがあります。また、受付印を押してもらうことで提出証明も得られます。
二つ目は、郵送による提出です。忙しい方や、税務署が遠い場合に便利な方法です。ただし、不備があった場合に後日連絡が来るため、手続きに時間がかかる可能性があります。郵送の場合は、控えが必要であれば返信用封筒を同封しておくとよいでしょう。
三つ目は、e-Tax(電子申告)による提出です。インターネットを通じて、24時間いつでも提出できる便利な方法です。マイナンバーカードとICカードリーダーなど、必要な準備はありますが、一度環境を整えれば最も手軽に提出できます。
廃業届の提出期限
廃業届の提出期限は、廃業日から1か月以内と定められています。この期限を過ぎてしまうと、税務署からの督促が始まったり、場合によっては無申告として扱われるリスクがあります。
廃業日とは、実際に事業活動を停止した日を指します。たとえば店舗を閉めた日や、最後の仕事を終えた日などが該当します。ただし、廃業日は自己申告制となっています。
なお、提出期限を過ぎてしまった場合でも、できるだけ早く提出することが重要です。期限を大幅に過ぎてしまうと、税務署があなたの事業が継続していることを前提とした課税を行う可能性があります。
廃業届のe-Taxによる提出方法
インターネットを使って廃業届を提出できるe-Tax(電子申告)は、税務署に行く手間が省け、24時間いつでも提出できる便利なシステムです。ここでは、e-Taxで廃業届を提出する方法を詳しく解説します。
e-Tax利用に必要な準備
e-Taxで廃業届を提出するには、いくつかの準備が必要です。
まず必要なのは、マイナンバーカード(または住民基本台帳カード)と電子証明書です。これがないと、e-Taxでの本人確認ができません。特に、マイナンバーカードの電子証明書は有効期限が発行から5年間なので、期限切れでないか確認しておきましょう。
次に、ICカードリーダーまたはマイナンバーカード対応のスマートフォンが必要です。ICカードリーダーは、パソコンに接続して使用します。最近では、一部のスマートフォンでマイナンバーカードを読み取る機能もあります。
さらに、e-Taxソフト(ダウンロード版)またはe-Taxソフト(WEB版)を使用するためのインターネット環境も必要です。ダウンロード版はパソコンにインストールして使用し、WEB版はブラウザ上で操作します。
また、e-Taxを初めて利用する場合は、事前に利用者識別番号を取得する必要があります。これは、e-Taxのウェブサイトから手続きできます。
e-Taxでの提出手順
準備が整ったら、以下の手順でe-Taxを使って廃業届を提出します。
まず、e-Taxソフトを起動し、メニューから「申告・申請・納税」を選択します。続いて、「申告・申請手続」を選び、手続き一覧から「個人事業の開業・廃業等届出書」を探して選択します。
入力画面が表示されたら、必要事項を記入していきます。入力項目は、紙の届出書と同じです。「廃業」の項目にチェックを入れ、廃業日や廃業理由などを正確に入力します。入力完了後は内容を十分確認してから次に進みましょう。
入力内容に問題がなければ、電子署名を行います。マイナンバーカードをICカードリーダーにセットし、暗証番号を入力して電子署名を完了させます。
最後に送信ボタンをクリックすれば、提出完了です。送信後は受信通知が表示されるので、これを保存しておきましょう。この受信通知が、提出の証明になります。
e-Taxでの提出は24時間365日可能ですが、メンテナンス時間中は利用できないことがあります。また、提出期限日は混雑することがあるため、余裕をもって手続きを行うようにしましょう。
個人事業主が廃業届を提出しないリスク
廃業届の提出は法的義務ですが、実際に提出しない個人事業主も少なくありません。しかし、廃業届を提出せずに放置すると、さまざまなリスクが発生します。
税務上のリスク
廃業届を提出しないと、税務署はあなたが引き続き事業を継続していると判断します。その結果、確定申告義務が継続することになります。つまり、実際には事業を行っていなくても、毎年確定申告を行う必要があるのです。
確定申告を行わない場合、無申告として扱われ、後日税務調査が入る可能性があります。また、所得がなくても申告自体は必要なため、申告を怠ると無申告加算税や延滞税が課される恐れもあります。
さらに、青色申告をしている場合は、その特典も自動的に取り消されるわけではありません。そのため、翌年以降も青色申告の手続きを取り消さない限り、複式簿記による記帳などの義務が継続することになります。
行政手続き上のリスク
税務署以外にも、廃業届を提出しないことで生じるリスクがあります。特に、地方自治体への手続きが漏れると、不要な税金や保険料の請求が続く可能性があります。
例えば、個人事業税を納めている場合、都道府県税事務所に廃業の届出をしないと、翌年以降も課税される可能性があります。また、従業員を雇用していた場合は、社会保険や雇用保険の資格喪失手続きも必要です。
さらに、許認可が必要な事業を行っていた場合は、各管轄官庁に廃業の届出をしないと、更新手数料や関連する費用の請求が継続することがあります。このような事態を避けるためにも、廃業時には適切な手続きを行うことが重要です。
個人事業主の廃業届の書き方
廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の書き方を詳しく解説します。記入ミスがあると再提出が必要になることもあるため、正確に記入することが重要です。
廃業届の主な項目
廃業届の主な記入項目は、以下の通りです。
まず、届出書の上部にある「廃業」の欄にチェックを入れます。これは最も重要な部分で、ここにチェックがないと廃業届として扱われません。同じ様式が開業届としても使用されるため、混同しないように注意しましょう。
次に、提出日や納税地(住所)、氏名、生年月日、個人番号(マイナンバー)などの基本情報を記入します。これらは、開業時と同じ情報を記入してください。特に納税地は税務署の管轄を決める重要な情報なので、正確に記入する必要があります。
続いて、廃業日を記入します。これは実際に事業活動を停止した日付を記入します。例えば、店舗を閉めた日や最後の仕事を終えた日などが該当します。廃業日は自己申告制ですが、あまりに事実と異なる日付を記入すると、問題が生じる可能性があります。
そして、事業所の所在地や屋号、事業の概要なども記入します。これらは、開業時に届け出た内容と一致させることが重要です。
廃業理由の項目
廃業届には、廃業理由を記入する欄があります。適切な理由を簡潔かつ正確に記入することが重要です。一般的な廃業理由としては、以下のようなものがあります。
- 経営不振
- 法人成り(法人設立)
- 事業内容の変更
- 健康上の理由
- 転職・就職
- 定年・引退
- 事業承継(譲渡)
廃業理由は正直に記入することが基本ですが、「経営不振」と記入することに抵抗がある場合は、「事業転換のため」などと記入することも可能です。ただし、法人成りの場合は「法人設立のため」と明記するのが適切です。
廃業理由は税務調査などの参考情報となることがありますが、理由自体で不利益を被ることはあまりありません。そのため、虚偽の内容を記入するのは避けましょう。
個人事業主が廃業するのに適したタイミング
廃業を決めたら、いつ廃業するのが最良かを考える必要があります。廃業時期によって税金や手続きの負担が大きく変わることもあるため、それらを加味して選ぶことが重要です。
税金を踏まえた最適な廃業時期
税金面から考えると、多くの個人事業主にとって、年末(12月31日)近くの廃業が有利である場合が多いものです。これには、次のような理由があります。
個人事業主の課税年度は、1月1日から12月31日までです。例えば、10月に廃業する場合、1月から10月までの所得に対して税金がかかります。一方、12月31日に廃業すれば、1年分の経費を全て計上できるため、税務上有利になることが多いのです。
特に、事業用の資産(パソコンやオフィス家具など)を所有している場合、これらを廃業前に処分すれば、売却損は経費として計上できます。また、廃業に伴う片付け費用なども経費になります。
さらに、消費税の課税事業者である場合、課税期間の途中で廃業すると、その期間に応じた消費税の納付が必要になります。年末に廃業すれば、1年分の仕入税額控除を最大限活用できる可能性があります。
事業状況を踏まえた最適な廃業時期
廃業時期を選択する際は、税金だけでなく、事業の状況も踏まえることが大切です。
まず、取引先との関係を考慮する必要があります。長期契約や定期的な取引がある場合は、契約の更新タイミングに合わせた廃業を検討すると、スムーズに事業を終了できます。
また、季節性のある事業の場合は、繁忙期を避けて廃業するのがよいでしょう。例えば、確定申告の時期に税理士事務所を廃業することは、クライアントに大きな迷惑をかけることになります。
さらに、在庫管理についても考えておきましょう。できるだけ在庫を減らしてから廃業するほうが、後片付けや処分の手間が少なくなります。計画的に在庫を減らしていく期間も考慮して廃業時期を決めましょう。
法人成りを予定している場合は、法人設立の準備状況に合わせて廃業時期を調整することが重要です。個人事業の廃業と法人の設立の間に空白期間があると、事業の継続性に影響が出る可能性があります。
個人事業主の廃業に関する質問
廃業手続きに関して、多くの個人事業主が同じような疑問をもっています。ここでは、よくある質問とその回答をまとめました。
廃業届の提出忘れ
「廃業届を提出し忘れていたことに気づきました。今からでも提出できますか?」という質問は非常に多いものです。
結論からいえば、期限を過ぎていても提出は可能です。廃業届には提出期限(廃業日から1か月以内)がありますが、これを過ぎても受け付けてもらえます。ただし、提出が遅れた理由を聞かれる場合がありますので、その際は正直に説明しましょう。
また、廃業届の提出が遅れた場合、その間の確定申告義務は残ります。例えば、2年前に実質的に廃業していたのに届出を出していなかった場合、その2年分の確定申告も必要になります。所得がなければ、「所得なし」の申告をすることになります。
さらに、青色申告をしていた場合や、消費税の課税事業者だった場合は、追加の手続きや申告が必要になることもあります。不安な場合は、税務署に相談するか、税理士に相談することをおすすめします。
廃業後の再開業
「廃業後に同じ事業を再開する場合、どうすればよいですか?」という質問も多く寄せられます。
廃業後に再び開業する場合は、新たに開業届を提出する必要があります。この際、以前と同じ事業内容や屋号でも、新規の開業として手続きします。
開業届は事業開始から1か月以内に提出する必要があります。また、青色申告をする場合は、別途「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。これは開業から2か月以内、または事業年度の3月15日までのいずれか早い日が期限です。
再開業時には、前回の廃業時の状況によって対応が変わることもあります。例えば、消費税の課税事業者だった場合や、特定の許認可が必要な事業だった場合は、それぞれ適切な手続きが必要です。
なお、短期間で廃業と開業を繰り返すと、税務署から事業の実態について質問されることもあります。廃業と開業の理由が明確であれば問題ありませんが、不正に税金優遇措置を受けるためだと疑われないよう注意が必要です。
まとめ
個人事業主が廃業する際には、廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を税務署に提出することが法律で定められています。廃業届の提出期限は廃業日から1か月以内であり、直接持参、郵送、e-Taxのいずれかの方法で提出できます。
廃業届を提出しないと、税務署は事業継続と判断し、確定申告義務が継続するほか、無申告として加算税や延滞税が発生します。また、廃業時には税務署への届出だけでなく、都道府県税事務所や年金事務所、許認可機関など、複数の行政機関への手続きが必要になることも覚えておきましょう。
廃業を検討されている方は、まずは必要な手続きと書類を確認し、計画的に進めることをおすすめします。不明点がある場合は、早めに税理士や管轄の税務署、専門家に相談すると安心です。
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