2025.04.18
法人が融資を受けるには連帯保証人が必要?破産した場合はどうなる?
法人が金融機関から融資を受ける際、連帯保証人をどうするかは迷いどころです。特に、中小企業や創業間もない会社では、代表者自身が連帯保証人になることがほとんどですが、そのリスクを十分理解せずに、そうしている場合は要注意です。
法人格があっても、実質的には代表者個人の信用力が問われるケースが多く、万が一返済不能になった場合、連帯保証人は自己の資産で全額返済する義務を負います。これは、法人破産時に個人破産にまで発展するリスクをはらんでいます。
本記事では、法人融資における連帯保証人の役割、そのリスクと対策、保証人不要の融資制度、そして破産時のシナリオまで詳しく解説します。
法人融資における連帯保証人
連帯保証人とは、債務者が返済できなくなった場合に、債務者に代わって返済義務を負う人のことです。
一般的に法人の連帯保証人になる人
法人融資を行う場合、債務者にあたるのは法人なので、連帯保証人は法人の借金返済の肩代わりをすることになります。特に中小企業では、法人の代表者が連帯保証人になることが一般的です。
金融機関からすれば、法人という存在は倒産すれば消滅してしまいますが、連帯保証人がいれば個人の資産からも回収できるため、貸し倒れリスクを軽減できます。そのため、多くの融資では連帯保証人の設定が求められます。
代表者が連帯保証人になる理由
法人融資では、なぜ代表者が連帯保証人になるケースが多いのでしょうか。これには、主に3つの理由があります。
まず、法人と代表者は実質的に一体とみなされることが多いためです。特に中小企業では、会社の経営判断と代表者の意思決定が直結しているケースがほとんどです。
また、金融機関は法人の信用力だけでなく、代表者個人の資産状況や信用力も融資判断の材料とします。代表者が連帯保証人になることで、返済への責任感が高まると考えられています。
さらに、日本の融資慣行として定着していることが挙げられます。いわゆる「経営者保証」は、長年にわたり日本の金融システムに組み込まれてきました。近年は見直しの動きもありますが、完全になくなるには至っていません。
法人融資で連帯保証人を置くメリット
連帯保証人になることにはリスクがある一方で、資金調達の観点からいくつかのメリットも存在します。
融資審査の通過率が上がる
連帯保証人を設定することで、融資審査の通過率が向上します。特に、法人設立後間もない企業や財務基盤が弱い企業にとって、代表者の個人保証が融資実行の決め手になることは少なくありません。
金融機関は法人と個人、双方の信用力を評価することで、より総合的な審査が可能になります。代表者が自らの資産をリスクにさらしてでも事業を成功させる強い意思があると示すことは、金融機関にとって大きな安心材料となります。
特に創業融資など、実績の少ない段階での資金調達においては、代表者の連帯保証がなければ融資そのものが実行されないケースも多いでしょう。
有利な融資条件を獲得できる
連帯保証人を付けることで、より有利な融資条件を引き出せる可能性があります。例えば、金利の引き下げや融資限度額の引き上げなどが期待できます。
金融機関にとって、連帯保証人の存在は貸し倒れリスクを軽減する要素です。そのリスク低減分が、金利や融資額などの条件に反映されることもあります。
また、審査のスピードが速くなることも実務上のメリットです。連帯保証人の個人情報や資産状況が明確であれば、融資判断がスムーズに進むことがあります。
法人の連帯保証人になるリスク
連帯保証人になることには、大きなリスクが伴います。代表者自身の将来に関わる問題であるため、十分に理解しておく必要があります。
法人が返済不能になった場合の責任を負う
連帯保証人の最大のリスクは、法人が返済不能になった場合に個人の全財産で返済義務を負う点です。これは、法人格による有限責任の原則を超えて、個人が無限責任を負うことを意味します。
金融機関は法人の資産だけでなく、連帯保証人の預金、不動産、有価証券など、あらゆる個人資産から債権回収を図ることができます。場合によっては、給与や退職金も差し押さえられる可能性があります。
また、複数の金融機関から借入がある場合、それぞれに対して保証責任を負うため、総額が膨大になるケースもあります。これが、経営者の生活基盤を根こそぎ奪うことにつながりかねません。
個人破産にもなりうる
法人が経営不振に陥り破産した場合、連帯保証人である代表者も個人破産せざるを得ない状況に追い込まれることがあります。
法人が破産しても、連帯保証人としての債務は消滅しません。むしろ、法人の債務は全て連帯保証人に移転します。その金額が、個人の返済能力を大きく超える場合、個人破産という選択肢を検討せざるを得なくなります。
個人破産すると、一定の財産を除いて全ての資産が処分され、債権者に分配されます。また、ブラックリストに載る、クレジットカードが使えなくなる、一部の職業に就けなくなるなど、社会生活上の制約も生じます。
このように、連帯保証人になることは、法人の経営リスクを個人の人生リスクに直結させることを意味します。このリスクを十分理解した上で、融資契約に臨むべきでしょう。
連帯保証人を立てずに融資を受ける方法
連帯保証人のリスクを理解した上で、できれば避けたいと考えるのは当然です。ここでは、連帯保証人になることを回避する方法や、リスクを軽減する方法を紹介します。
既存融資の借り換え戦略
すでに自身が連帯保証人となっている法人融資がある場合、保証人不要の融資への借り換えを検討する価値があります。特に、事業が軌道に乗り、法人の信用力が向上した段階では、可能性が高まります。
例えば、事業実績を積み重ねた後に、プロパー融資(金融機関独自の融資商品)や、保証人不要の公的融資制度へ切り替える方法が考えられます。法人の業績が安定し、返済実績が良好であれば、金融機関との交渉の余地も生まれます。
また、複数の金融機関からの借入を一本化することで、連帯保証の範囲を限定することも選択肢となります。特にメインバンクとの関係を強化し、他の金融機関からの借入を整理することで、リスク管理がしやすくなります。
物的担保の活用
連帯保証人を立てる代わりに、物的担保を提供することで融資を受ける方法もあります。不動産、有価証券、売掛金など、さまざまな資産を担保として活用できます。
物的担保の場合、万が一返済不能になっても、責任は担保に設定した資産の範囲内に限定されるため、連帯保証人になるよりもリスクが限定的になります。
ただし、担保評価は時価の70〜80%程度になることが多く、必要な融資額を満たせない場合もあります。また、担保物件の管理や処分に関する制約も生じるため、事業運営への影響も考慮する必要があります。
信用保証協会の活用
信用保証協会の保証付き融資を利用することで、個人保証の負担を軽減できる場合があります。信用保証協会は、中小企業の資金調達を支援するために、金融機関への債務保証を行う公的機関です。
特に注目すべきは、「経営者保証免除特例制度」です。これは一定の条件を満たす企業に対して、代表者の個人保証なしで融資を受けられる制度です。法人と個人の資産が明確に分離されている、財務基盤が安定しているなどの条件を満たす必要があります。
また、信用保証協会の「責任共有制度」により、万が一の場合も保証人の負担が軽減される可能性があります。この制度では、金融機関と信用保証協会が損失を分担するため、個人の負担割合が減少することがあります。
保証人不要の法人向け融資制度
連帯保証人のリスクを避けるために、保証人が不要または緩和される融資制度を活用することも重要な選択肢です。公的機関が提供する融資制度には、連帯保証人の負担を軽減するものが複数存在します。
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
マル経融資は、商工会議所や商工会の推薦を受けた小規模事業者を対象とする日本政策金融公庫の融資制度です。この制度の最大の特徴は、無担保・無保証人で融資を受けられる点にあります。
融資限度額は2,000万円(特別枠を含めると3,000万円)で、金利も一般の融資より低く設定されています。返済期間も運転資金で7年以内、設備資金で10年以内と比較的長期に設定されています。
ただし、商工会議所や商工会の経営指導を6ヶ月以上受けていることや、税金の滞納がないことなど、いくつかの条件を満たす必要があります。小規模事業者(従業員数が製造業で20人以下、商業・サービス業で5人以下)であれば、検討する価値のある制度です。
資本性ローン(挑戦支援資本強化特別貸付)
日本政策金融公庫が提供する資本性ローンは、新事業や企業再建に取り組む中小企業向けの融資制度です。この融資の特徴は、貸借対照表上で「資本」とみなすことができる点と、無担保・無保証人で利用できる点です。
返済は最長15年の期限一括償還で、財務基盤の強化に役立ちます。また、業績に応じて金利が変動する仕組みを採用しており、経営が苦しい時期の負担を軽減する効果もあります。
ただし、新事業展開や企業再建といった明確な資金使途や事業計画が求められるため、通常の運転資金には適用されにくい点に注意が必要です。
経営者保証ガイドラインの活用
「経営者保証に関するガイドライン」は、中小企業の経営者の個人保証に関する合理的な保証契約の在り方を示したものです。このガイドラインに基づき、一定の条件を満たせば、新規融資で経営者保証を不要とする、または既存の保証契約を解除することが可能です。
経営者保証が不要となる主な条件としては、法人と個人の資産・経理の明確な分離、適時適切な情報開示、十分な収益力の確保などがあります。また、既存の保証契約でも、これらの条件を満たすように経営改善を進めることで、保証解除の交渉ができる可能性があります。
金融機関もこのガイドラインに沿った対応を進めており、特に地域金融機関では積極的に取り組んでいるケースも多くあります。自社の状況を整理し、金融機関と前向きな交渉を行うことが重要です。
連帯保証人と法人破産の関係
法人が経営困難に陥り、最終的に破産に至った場合、連帯保証人はどのような立場に置かれるのでしょうか。
法人破産時の連帯保証人の責任範囲
法人が破産した場合でも、連帯保証人の保証債務は消滅しません。むしろ、法人が返済できなくなった債務を全額負担する責任が確定します。これは、連帯保証の法的性質上、避けられないものです。
連帯保証人は、法人の破産手続きの結果にかかわらず、債権者に対して直接請求されます。例えば、法人破産手続きで債権者への配当が10%だったとしても、残りの90%を連帯保証人が支払う義務があります。
また、連帯保証人は、催告の抗弁権や検索の抗弁権が認められておらず、債権者からの請求に対して、「まず法人に請求してください」などと主張することはできません。債権者は、法人と連帯保証人のどちらに先に請求するかを自由に選択できます。
個人破産を選択する場合の流れ
連帯保証債務が返済不能なほど多額になった場合、連帯保証人が個人破産を選択することもあります。個人破産の手続きは、おおむね以下の流れで進みます。
まず、弁護士などの専門家に相談し、破産申立書類を作成します。次に、裁判所に破産申立てを行い、破産手続開始決定を受けます。この時点で、債権者からの取立てが一時停止されます。
その後、裁判所が選任した破産管財人が財産の調査・換価を行い、債権者への配当手続きが進められます。最終的に免責許可決定を受けることで、残りの債務の支払義務が免除されます。
ただし、個人破産には財産の喪失、クレジットカードの使用制限、一部職業への就業制限など、さまざまなデメリットがあります。また、税金や養育費など免責されない債務もあるため、専門家と綿密に相談する必要があります。
連帯保証人と相続の問題
連帯保証人が亡くなった場合や、法人代表者が交代した場合、連帯保証債務はどうなるのでしょうか。相続に関する問題は、事前に理解しておくべき重要事項です。
連帯保証債務は相続される
連帯保証人が死亡した場合、その保証債務は原則として相続人に引き継がれます。これは、連帯保証債務も相続財産の一部として扱われるためです。つまり、プラスの財産だけでなく、マイナスの債務も含めて相続の対象となります。
ただし、相続人は「相続放棄」という選択肢を取ることができます。相続放棄をすれば、プラスの財産を受け取る権利を放棄する代わりに、連帯保証債務も引き継がなくて済みます。相続放棄は、被相続人の死亡を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
また、「限定承認」という選択肢もあります。これは、相続によって得た財産の範囲内でのみ債務を返済する方法です。ただし、手続きが複雑なため、実務上はあまり使われていません。
代表者交代時の保証債務の扱い
法人の代表者が交代した場合、旧代表者の連帯保証債務がどうなるかは、金融機関との契約内容によります。多くの場合、金融機関は新代表者に連帯保証人になるよう求めますが、旧代表者の保証債務が自動的に消滅するわけではありません。
旧代表者の保証債務を解除するためには、金融機関との明示的な合意が必要です。これには金融機関の承諾が必要となるため、経営状況や新代表者の信用力などが考慮されます。
場合によっては、旧代表者と新代表者の両方が連帯保証人となることもあります。特に親族間での事業承継などでは、このようなケースがみられます。
代表者交代を計画している場合は、事前に顧問税理士や弁護士と相談し、金融機関との交渉戦略を練ることが重要です。スムーズな移行のためには、早い段階からの準備が欠かせません。
まとめ
法人融資において連帯保証人を置くことは、融資審査が通りやすくなり、有利な条件を引き出せる可能性があります。一方で、連帯保証人自身は、法人が返済不能になった場合には個人資産で全額返済する義務を負うという大きなリスクがあります。
このリスクを軽減するためには、保証人不要の融資制度の活用や、物的担保の提供、経営者保証ガイドラインの活用など、複数の選択肢を検討することが重要です。また、すでに連帯保証人になっている場合も、事業の安定成長に伴って保証解除の交渉を計画的に進めることができます。
融資を検討する際は、連帯保証人の必要不要も含めて、自社の状況に最適な資金調達方法を選択するようにしましょう。連帯保証人になる際は、必要に応じて専門家に相談しながら、責任を負ってもよいのか慎重に判断することが大切です。
最短即日融資!HTファイナンスのビジネスローン
法人融資で連帯保証人になることは、経営者にとって大きなリスクです。そんなときのために、HTファイナンスは連帯保証人が原則不要のビジネスローンを提供しており、経営者の個人資産への不安や精神的負担を軽減しながら、スムーズな資金調達をサポートしています。
また、HTファイナンスでは、スピードと柔軟性を重視した独自の審査体制を整え、より早く経営者の皆様へ資金をご提供できるよう努めています。必要書類もシンプルにまとめていますので、準備に時間をかけることなくお申し込みいただけます。オンラインやお電話でのやり取りを中心に契約まで進められるケースもあり、来店の手間を軽減できるのもポイントです。
事業拡大のチャンスを逃さないために、まずは一度HTファイナンスまでお問い合わせください。