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2025.04.25

株主割当増資とは?目的・メリット・デメリット、流れをわかりやすく解説!

会社の資金調達方法として検討されることの多い株主割当増資は、既存株主の権利を優先する方法として知られています。

経営権の維持を図りながら資金調達を行いたい経営者にとって、株主割当増資は有効な選択肢の一つです。本記事では、株主割当増資の基本から実施手順、他の増資方法との違いまで、経営者の方が押さえておきたいポイントについて解説します。

資金調達を検討している経営者の方は、ぜひ最後までお読みいただき、自社に最適な資金調達方法を見極める参考にしてください。

株主割当増資の基本

資金調達方法にはさまざまな種類がありますが、株主割当増資は既存の株主を重視した方法です。

株主割当増資とは

株主割当増資とは、会社が新たに発行する株式を、既存の株主が保有している株式数に応じて引き受ける権利を与える資金調達方法です。既存株主は、持株比率に応じて新株を引き受けることができます。

例えば、100株所有している株主には、10株の新株引受権を付与するといった形で実施されます。この方法では、既存株主の持株比率を維持したまま資金調達できる点が大きな特徴です。

株主割当増資は、会社法上の「株主割当て」に基づく手続きであり、既存株主の持株比率を尊重することで、経営権の分散を防ぐことができます。

株主割当増資の目的

株主割当増資が実施される主な目的は、以下のとおりです。

第一に、会社の事業拡大や新規事業投資のための資金調達です。新たな事業展開や設備投資には、多額の資金が必要となることがあり、その資金を自己資本で調達する手段として活用されます。

次に、財務体質の強化が挙げられます。借入金などの負債に頼らず、株主資本を増強することで自己資本比率を高め、財務状況を改善する効果があります。

また、経営権の維持を図りながら資金調達することも重要な目的です。特に、創業者や主要株主が経営権を保持したまま資金を調達したい場合に適した方法といえます。

さらに、小規模な企業や未上場企業にとっては、金融機関からの借入が難しい場合の代替手段としても有効です。

株主割当増資のメリット

株主割当増資には、他の資金調達方法と比較して、いくつかのメリットがあります。

既存株主の経営権を維持できる

株主割当増資の最大のメリットは、既存株主の持株比率を原則として変えずに資金調達できる点です。全ての株主が権利を行使した場合、増資前後で持株比率に変化はありません。

これにより、創業者や主要株主の議決権の比率が希薄化する(ダイリューション)ことを避けられます。特に同族経営の会社や、特定の株主グループが経営をコントロールしている会社にとっては、経営の安定性を保ちながら資金調達できる点が大きな魅力です。

第三者割当増資などでは、新たな株主が加わることで経営権に影響が出る可能性がありますが、株主割当増資ではそのリスクを最小限に抑えられます。

迅速な資金調達が可能

株主割当増資は、公募増資などと比べて、比較的短期間で実施できるというメリットがあります。特に、未上場企業や株主数が少ない企業では、株主との合意形成が容易なため、手続きをスピーディーに進めることが可能です。

上場企業が実施する公募増資では、証券会社との引受交渉や市場の状況を考慮する必要がありますが、株主割当増資では既存株主のみを対象とするため、手続きを簡単に済ませることができます

資金需要が急を要する場合や、市場環境が不安定な時期でも実施しやすいという特徴があります。また、株主との直接的なコミュニケーションで進めるため、増資の目的や資金の使途について理解を得やすい点も魅力です。

返済義務のない資金調達である

株主割当増資で調達した資金は、借入金とは異なり返済義務がありません。これにより、キャッシュフローへの負担が少なく、長期的な事業計画を立てやすくなります。

金融機関からの借入では、定期的な返済義務に加え、財務制限条項が設けられることもありますが、株主割当増資ではそうした制約がありません。自己資本の増強につながるため、財務体質の強化にも寄与します。

特に成長途上の企業や、収益が安定していない段階の企業にとって、返済の負担がない資金調達方法は経営の自由度を高める効果があります。また、自己資本比率の向上により、将来的な借入れの際の交渉力強化にもつながります。

株主割当増資のデメリット

株主割当増資には多くのメリットがある一方で、いくつかの制約やリスクも存在します。実施を検討する際には、これらのデメリットも十分に理解する必要があります。

大規模な調達に不向きな場合がある

株主割当増資の最大のデメリットは、調達できる資金の規模が既存株主の資金力に依存する点です。特に、小規模な会社や個人株主が多い会社では、株主の出資余力に限りがあるため、大規模な資金調達には不向きといえます。

既存株主が新株を引き受けるための資金を用意できない場合、増資計画が頓挫してしまうリスクがあります。安定した資金調達を実現するには、事前に株主の資金状況を把握し、現実的な目で増資規模を設定することが重要です。

また、株主の資金力によって調達額が左右されるため、事業計画において必要な資金を十分に確保できない可能性もあります。その場合、株主割当増資と他の資金調達方法を組み合わせるなどの対策が必要となります。

株主の協力が必要

株主割当増資の成功は、既存株主の理解と協力に大きく左右されます。増資の目的や事業計画について株主を納得させる必要があり、丁寧な説明や情報開示が求められます。

株主が会社の将来性や資金使途に疑問をもった場合、権利行使されない可能性があります。株主との良好な関係構築が不可欠であり、日頃からの適切なIR活動や株主コミュニケーションが重要となります。

特に複数の大株主が存在する場合は、事前に各株主の意向を確認し、増資計画に反映させることで、スムーズな実施につなげることができます。株主の反対が多い場合は、増資条件の見直しや実施時期の再検討が必要になることもあります。

持株比率が変わる可能性がある

理論上は、全ての株主が持株比率に応じて新株を引き受ければ、持株比率に変化は生じません。しかし実際には、一部の株主が権利を行使しないケースが少なくありません。

権利を行使しない株主の持株比率は相対的に低下し、権利を行使した株主の比率は上昇します。これにより、予期せぬ株主構成の変化が生じる可能性があります。

この変動は、特に同族経営の会社や、特定株主による安定的な経営を重視する会社にとって、重大な懸念事項になります。対策としては、主要株主との事前協議や、未行使分の取り扱いについて、あらかじめルールを定めておくことが挙げられます。

また、株主間で資金力の差がある場合、増資後に経済的な影響力のバランスが変わる可能性もあることを認識しておく必要があります。

株主割当増資の実施手順

株主割当増資を成功させるためには、適切な手順で進めることが重要です。

募集事項の決定

株主割当増資の第一段階は、具体的な募集事項の決定です。発行する新株の数量、発行価格、払込期日などの基本的な条件を設定します。

発行価格の設定は特に重要で、既存株主にとって魅力的な水準にする必要があります。通常は、時価よりも若干割り引いた価格に設定されることが多いものです。株主にとって魅力的な条件設定が、権利行使率を高めるためには必要です。

これらの募集事項は、取締役会または株主総会での決議によって正式に決定されます。会社の規模や定款の規定によって必要な手続きは異なりますので、自社の状況に合わせた対応をしなければなりません。

また、割当比率(既存株式に対して何株の新株を割り当てるか)も重要です。例えば、「所有株式1株につき0.2株の新株を割り当てる」などの形で設定します。

株主への通知から申込手続き

募集事項が決定したら、次は株主に対して通知を行います。この通知には、増資の概要や申込方法、払込方法などの重要情報を記載します。

株主への通知は通常、書面で行われます。上場企業の場合は、証券取引所への適時開示も必要です。明確でわかりやすい通知を作成することで、株主の理解を促し、スムーズな申込につなげることができます。

株主は通知を受け取ったあと、指定された期間内に申込手続きを行います。申込期間は通常2週間程度設定されますが、会社の状況によって異なります。

申込手続きでは、引受けを希望する株式数と共に、必要書類を提出します。手続きを簡素化し、より多くの株主が権利行使しやすいような状況をつくることが重要です。

払込から登記手続き

申込期間終了後、株主は指定された払込期日までに、引受株式の払込金額を会社指定の銀行口座などに振り込みます。払込みが完了したことを確認した後、会社は株主に対して株式を発行します。

払込完了後、会社は資本金の増加に関する登記申請を行います。期限内に適切な登記手続きを完了させることが法的に求められています。一般的に、払込期日から2週間以内に登記を行う必要があります。

登記申請には、増資決議議事録、払込証明書、定款の写しなどの書類が必要です。これらを準備して法務局に提出し、登記が完了すれば株主割当増資の全工程が終了します。

登記後は株主名簿の更新を行い、新たな持株状況を反映させます。また、株券を発行している会社では、新株の株券を発行・交付する手続きも必要です。

株主割当増資と他の資金調達方法の比較

資金調達方法には、さまざまな選択肢があります。株主割当増資の特徴をより明確に理解するために、他の主要な資金調達方法と比較してみましょう。

第三者割当増資との違い

第三者割当増資は、特定の第三者に対して新株を割り当てる方法です。株主割当増資と最も大きく異なる点は、既存株主以外の新たな投資家を対象とすることです。

第三者割当増資では、戦略的なパートナーシップの構築や、特定の投資家から大規模な資金調達が可能です。一方で、既存株主の持株比率が希薄化するというデメリットがあります。

株主割当増資は、既存株主の権利を守りながら資金調達できますが、第三者割当増資は新たな株主を迎え入れることで、会社に不都合な変化をもたらしてしまう可能性があります。経営権の維持を重視するか、より大きな資金調達を求めるかといった点を踏まえて選択するべきでしょう。

また、第三者割当増資は特定の相手との交渉が必要で、条件次第では実施までに時間がかかることがあります。対して株主割当増資は、既存株主との関係が構築されているため、比較的スムーズに進めやすい特徴があります。

公募増資との違い

公募増資は、不特定多数の投資家に対して新株を募集する方法です。上場企業で主に活用される資金調達方法ですが、株主割当増資とは性質が大きく異なります。

公募増資の最大の特徴は、大規模な資金調達が可能な点です。市場から広く資金を集めるため、株主割当増資よりも調達規模を大きくすることができます。しかし、既存株主の持株比率は希薄化され、市場環境に左右されるリスクもあります。

また、公募増資は証券会社を引受幹事として選定するため、引受手数料などのコストがかかります。手続きも複雑で、準備期間が長くなる傾向があります。株主割当増資はこれに比べてコストが低く、手続きもシンプルです。

さらに、公募増資は市場の評価に直接さらされるため、タイミングや価格設定が重要になります。株主割当増資は市場の影響を受けにくく、より柔軟に実施できるという利点があります。

借入や社債との比較

銀行借入や社債発行は、株式発行とは異なり負債(デットファイナンス)による資金調達方法です。これらと株主割当増資を比較すると、それぞれに明確な特徴の違いがあります。

借入や社債の最大の特徴は、返済義務があることです。定期的な返済や利息の支払いが必要となり、キャッシュフローに継続的な負担がかかります。一方、株主割当増資には返済義務がなく、長期的な資金として活用できるメリットがあります。

ただし、借入や社債は、既存株主の議決権に影響を与えないという利点があります。さらに、借入は審査があり、社債発行には一定の信用力が求められますが、株主割当増資は株主の協力が得られれば比較的容易に実施することができます。

株主割当増資の法律上の要件

株主割当増資を実施するうえで、関連する法的要件を理解し、それを守ることが非常に大切です。

会社法上の規定

株主割当増資は、会社法に基づいて実施される手続きです。会社法第202条では、「株主に株式の割当てを受ける権利を与えることができる」と規定されており、これが株主割当増資の法的根拠となっています。

増資を実施するための決議要件は、会社の種類や定款の規定によって異なります。一般的には、取締役会設置会社であれば取締役会の決議で実施できますが、定款で株主総会の決議事項としている場合もあります。自社の定款を確認することが重要です。

また、株主への通知方法や内容についても、会社法で定められています。株主割当増資を行う場合、株主に対して割当てに関する事項を通知する必要があります。この通知には、割り当てる株式の数、払込金額、払込期日などの重要事項を含める必要があります。

さらに、増資後には資本金の増加に関する登記を行う必要があります。会社法第915条に基づき、払込期日から2週間以内に変更登記申請を行わなければなりません。

上場企業の場合の追加要件

上場企業が株主割当増資を実施する場合、会社法の規定に加えて、証券取引所の規則や金融商品取引法上の要件にも従う必要があります。

まず、株主割当増資の実施を決定した場合、証券取引所の適時開示規則に基づき、直ちに開示する義務があります。事細かな情報開示が求められるため、増資の目的、調達資金の使途、発行条件などを詳細に開示する必要があります。

また、金融商品取引法に基づき、有価証券届出書や目論見書の作成や提出が必要になる場合があります。これらの書類には、会社の概要、財務状況、増資の詳細条件、リスク情報などを記載する必要があります。

さらに、上場企業の場合は株主数が多いため、通知方法や申込手続きのシステムを効率的にすることが重要になります。証券保管振替機構(ほふり)を通じた手続きや、証券会社を通じた権利行使の方法などを整備するとよいでしょう。

まとめ

株主割当増資は、既存株主の持株比率を維持しながら資金調達できる方法として、特に経営権の安定を重視する企業にとって有用となる選択肢です。経営権の維持、迅速な実施、返済義務のない資金調達というメリットがある一方で、調達規模の限界や株主の協力が必要といった制約もあります。

株主割当増資は、適切な募集事項の設定、効果的な株主コミュニケーション、スケジュール管理などを重視して実施することが大切です。また、法的要件を満たすよう注意することも必要です。株主割当増資を検討されている経営者の方は、自社の状況や目的に照らし合わせ、専門家のアドバイスも参考にしながら判断することをおすすめします。

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株主割当増資は、経営権を維持しながら資金調達が可能な手段ですが、手続きに一定の時間がかかります。資金繰りに急を要する場合や、増資と並行して短期的な資金ニーズがある場合は、迅速な資金調達方法も検討しておくとよいでしょう。

HTファイナンスは、東大法学部出身で三菱銀行での実務経験を持つ三坂大作が統括責任者として、企業の資金調達と経営戦略の支援に取り組んでいます。

銀行実務とコンサルティングで培った経験を活かし、融資やファクタリング、財務改善など、お客様の経営課題に合わせた最適な解決策をご提案しています。また、スピーディーで柔軟な審査体制により、成長に必要な資金を迅速にお届けできます。

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