2025.06.13
融資で担保にできるものの種類とは?担保を置くメリット・デメリットも解説
事業資金の融資を申し込む際に、金融機関から担保の提供を求められることがあります。こうした時、担保を提供するにあたって、どのような資産が担保として認められるのかを十分に把握している必要があります。また、担保を提供するメリットやデメリットについても、あらかじめ理解しておかなければなりません。
本記事では、融資における担保の種類や特徴、担保付き融資と無担保融資の違いについて詳しく解説します。また、どのような資産が担保として評価されやすいのか、担保を提供するメリット・デメリットについても具体的に説明します。
融資における担保とは
融資における担保とは、借り手が返済不能となった場合に備えて、債権の保全を目的として金融機関に提供する資産や保証のことです。
金融機関は融資を行う際、借り手が確実に返済できるかどうかを審査します。しかし、経営環境の変化や予期せぬ事態により返済が困難になるリスクも考慮し、そのリスクを軽減するための手段として担保を求めるのです。
担保があることで金融機関は安心して融資を実行でき、企業側も融資を受けやすくなるという側面があります。担保には、大きく分けて人的担保と物的担保の2種類があり、それぞれ特徴が異なります。
担保の基本的な役割
担保の最も基本的な役割は、融資におけるリスク軽減です。借り手が返済できなくなった場合、金融機関は担保を処分して債権を回収することができます。
また、担保には融資の円滑化という役割もあります。金融機関は、担保があることで貸し倒れリスクを低減できるため、融資判断がしやすくなります。特に、創業間もない企業や財務状況が不安定な企業にとって、担保の提供が融資承認の決め手になることも少なくありません。
さらに、担保は融資条件にも影響します。十分な価値のある担保があれば、金利の引き下げや融資額の増額、返済期間の延長など、有利な条件での融資を受けられる可能性が高まります。
銀行が担保を求める理由
銀行が担保を求める最大の理由は、融資の安全性を確保するためです。銀行は預金者からお金を預かり、それを原資として融資を行っています。そのため、融資金の回収可能性を高めることは銀行の重要な責務です。
特に事業融資の場合、個人向け融資と比べて融資額が大きく、返済期間も長期になりがちです。そのため、事業の失敗や経営状況の悪化などによる返済不能リスクを担保によって軽減したいという意図があります。
また、金融機関は、自己資本比率などの財務指標を維持する必要があり、担保によってリスク資産を減らすという側面もあります。担保付き融資は、無担保融資と比較してリスクウェイトが低く設定されるため、銀行の財務健全性維持にも寄与するのです。
融資担保の主な種類
融資における担保は、大きく分けて人的担保と物的担保に分類されます。
人的担保
人的担保とは、第三者が債務者の返済義務を保証する形態の担保です。主に、以下の種類があります。
連帯保証は、債務者が返済できない場合に、保証人が債務者と同等の責任を負って返済する仕組みです。金融機関は、債務者に請求する前に直接保証人に請求することができます。一般的に、中小企業の融資では、代表者や役員が連帯保証人になることが多くあります。
根保証は、一定の範囲内で継続的に発生する債務を保証するものです。例えば、当座貸越や手形割引など、反復継続的に利用する融資に対して設定されます。根保証によって複数の融資を一括して保証できるため、その都度保証契約を結ぶ必要がありません。
また、信用保証協会による保証も人的担保の一種です。信用保証協会は、中小企業の融資を促進するために設立された公的機関で、金融機関に代わって保証を行います。信用保証協会の保証を利用することで、十分な担保や保証人がなくても融資を受けやすくなります。
物的担保
物的担保とは、特定の資産や財産を担保として提供するものです。具体的には、以下のようなものがあります。
最も一般的な物的担保は、不動産担保です。土地や建物は資産価値が高く、価値の変動も比較的小さいため、銀行が最も重視する担保です。不動産担保を提供することで、大口の融資や長期の返済期間を設定することが可能になります。
動産担保には、機械設備や車両、在庫などが含まれます。これらは、不動産に比べると評価額が低くなりがちですが、企業が保有する重要な資産として担保価値が認められます。特に高額な機械設備などは、担保として有効活用できる可能性があります。
債権担保としては、売掛金や受取手形などがあります。これらは、将来的に現金化される予定の債権であり、特に売掛金が安定している企業にとっては有効な担保となります。近年では、ABL(Asset Based Lending)と呼ばれる在庫や売掛金を担保とした融資も増えています。
融資における担保の評価方法
融資における担保は、その価値によって融資可能額や条件が大きく変わってきます。銀行や金融機関が、どのように担保を評価しているか知っておくことが大切です。
担保価値の考え方
担保評価の基本的な考え方は、担保物件を処分した場合に、いくらで換金できるかという処分価値を基準にします。つまり、市場価格をベースに、処分する際の手間やコスト、時間経過による価値低下なども考慮した価格で評価されます。
不動産担保の場合、公示価格や路線価、実勢取引価格などを参考にしつつ、物件の状態や立地条件、将来的な価値変動リスクなども加味して評価されます。市場価格の7割から8割程度が担保評価額になることが一般的です。
動産担保の場合は、購入時の価格から減価償却を考慮した価格をベースに、市場性や処分の容易さなどを考慮して評価されます。在庫品などは、劣化や陳腐化リスクも考慮されるため、評価率は不動産より低くなる傾向があります。
担保掛目とは
担保掛目とは、担保物件の評価額に対する融資可能額の割合を示すものです。例えば、1億円の評価額の不動産に対して掛目が70%であれば、7,000万円までの融資が可能となります。
担保掛目は、担保の種類によって大きく異なります。一般的に、預金担保では90%以上、不動産担保で70~80%、有価証券で50~70%、動産や在庫で30~50%程度が目安となります。
掛目に影響する要因としては、担保の市場性や処分のしやすさ、価値の安定性、法的な権利関係の明確さなどがあります。担保の流動性が高いほど掛目も高くなる傾向があります。
また、金融機関によって担保評価の基準や掛目は異なるため、複数の金融機関に相談することで、より有利な条件を引き出せる可能性があります。
担保別の評価ポイント
不動産担保は、立地条件、建物の築年数、用途地域、アクセス、周辺環境などが重要な評価ポイントとなります。特に、流動性の高い住宅用不動産や商業地は、高く評価される傾向にあります。一方、工場や特殊用途の建物は汎用性が低いため、評価が低くなることがあります。
動産担保では、汎用性の高さ、耐久性、維持管理状態、中古市場の有無などが評価ポイントになります。汎用性が高く中古市場が整備されている機械設備は、比較的高い評価を受けることができます。
売掛債権担保の場合は、取引先の信用力や取引の継続性、債権の回収可能性などが重視されます。大企業や公共機関向けの売掛金は、回収リスクが低いため高く評価されます。
金融商品担保は、市場価格の変動性や流動性に応じて評価されます。国債や大手企業の債券は、安定性が高く高評価を得やすい一方、新興企業の株式やデリバティブは、価格変動リスクが大きいため評価が低くなります。
担保を置くメリット
担保を提供して融資を受けることには、いくつかの大きなメリットがあります。資金調達を検討する際には、これらのメリットを理解しておくことが重要です。
融資条件が有利になる可能性がある
担保付き融資の最大のメリットは、融資条件が有利になる可能性が高いことです。担保があることで金融機関のリスクが軽減されるため、金利の引き下げが期待できます。一般的に、無担保融資と比較して金利が1%から3%程度低く抑えられることが多いでしょう。
また、融資可能額も担保の評価額に応じて大きくなります。事業拡大や設備投資など、まとまった資金が必要な場合に特に有効です。無担保融資では、数千万円程度が上限になることが多いですが、担保があれば数億円規模の融資も可能になります。
さらに、返済期間の長期化も担保付き融資のメリットです。不動産担保の場合、10年以上の長期返済計画を組むことができるため、月々の返済負担を軽減できます。これにより、資金繰りに余裕をもたせた経営が可能になります。
審査通過の可能性が高まる
担保を提供することで、審査通過の可能性が高まるのも重要なメリットです。創業間もない企業や業績が不安定な企業でも、十分な担保があれば融資を受けられる可能性が広がります。
特に、財務内容や事業計画だけでは審査が厳しいケースでも、担保の存在が融資決定の決め手になることがあります。担保があれば、金融機関は、最悪の場合でも担保処分によって貸付金を回収できるため、比較的柔軟な審査が期待できます。
また、担保付き融資は、資金使途の自由度が高いことも特徴です。無担保融資の場合、使途が限定されることがありますが、担保付き融資では、比較的自由に資金を使うことができます。これにより、事業戦略に合わせた柔軟な資金活用が可能になります。
資金調達の選択肢が広がる
担保を活用することで、資金調達の選択肢が広がることもメリットです。例えば、不動産担保を提供することで、不動産担保ローンや事業者向け不動産担保ローンなど、さまざまな融資商品を利用できるようになります。
また、信用保証協会の保証付き融資と組み合わせることで、より大きな融資枠を確保することも可能です。担保と保証を組み合わせることで、金融機関のリスクがさらに軽減され、融資条件の改善につながります。
さらに、複数の金融機関から融資を受ける際にも、担保があることで交渉力が増します。特に、メインバンク以外の金融機関から新規に融資を受ける場合、担保提供が取引開始のきっかけになることもあります。
担保を置くデメリット
担保付き融資にはメリットがある一方で、いくつかの注意すべきデメリットも存在します。融資を検討する際には、これらのデメリットもしっかり理解しておくことが重要です。
担保資産を失うリスクがある
担保付き融資の最大のデメリットは、返済不能に陥った場合に担保資産を失う可能性があることです。特に、事業用不動産を担保にしている場合、返済ができなくなると事業継続そのものが困難になる恐れがあります。
担保権が実行されると、金融機関は担保物件を競売にかけて債権を回収します。競売では、市場価格より低い価格で売却されることが多く、債務が完全に返済できないケースもあります。その場合、残債務は依然として返済義務が残ります。
また、不動産担保の場合、抵当権が設定されると登記簿に記録されるため、第三者にも担保提供の事実が公開されます。これにより、企業の信用状況が外部に知られる可能性があることも留意すべき点です。
手続きの複雑さと時間がかかる
担保付き融資は、無担保融資に比べて手続きが複雑で時間がかかります。特に不動産担保の場合、物件調査や評価、抵当権設定登記などの手続きが必要となり、融資実行までに1か月以上かかることも珍しくありません。
急な資金需要に対応することが難しいため、資金計画を早めに立てておく必要があります。資金繰りに余裕をもって融資を申し込むことが重要です。
また、担保評価のための不動産鑑定や登記手続きなどに関連して、各種費用が発生します。不動産担保の場合、登録免許税や司法書士報酬などの諸費用が必要となり、これらは借り手負担となるのが一般的です。
担保評価額が融資希望額に満たない場合がある
担保の評価額が希望する融資額に満たない場合があるのも、担保付き融資のデメリットです。担保物件の市場価値がいくら高くても、金融機関の評価額は、それよりも低くなるのが一般的です。
前述のように、不動産担保の場合でも市場価格の7〜8割程度の評価となり、さらに掛目が適用されるため、実際の融資可能額は市場価格の5〜6割程度になることもあります。高額な資金調達を計画している場合、担保だけでは不足することがあります。
また、担保価値は、時間の経過とともに変動します。特に不動産は、築年数の経過とともに価値が下がり、機械設備などはさらに減価が早いものです。そのため、返済期間中に担保評価が下がると、追加担保を求められる可能性もあります。
融資で担保を選択する際のポイント
融資を受ける際には、どのような担保を提供するか、あるいは無担保で借りるかを慎重に検討する必要があります。ここでは、担保選択の際に考慮すべきポイントや注意点について解説します。
自社に最適な担保の選択
担保を選ぶ際には、まず自社が保有する資産を洗い出し、それぞれの資産価値を把握することが重要です。不動産、機械設備、在庫、売掛金、預金、有価証券など、さまざまな資産が担保になりえます。
次に、融資の目的や金額、返済計画に合わせて最適な担保を選びます。長期の設備投資資金には不動産担保、短期の運転資金には売掛金や在庫担保といったように、資金の性質に合わせた担保選択が効果的です。
また、担保提供による事業への影響も考慮すべきです。例えば、主力工場を担保に出す場合、返済不能時には事業継続が困難になるリスクがあります。一方、投資用不動産や余剰預金などは、万一の場合でも事業への影響が比較的小さい担保といえます。
担保提供前の事前評価をする
担保を提供する前に、その資産の市場価値や担保としての評価額を事前に把握しておくことが重要です。不動産であれば、不動産鑑定士による鑑定評価、機械設備であれば専門業者による査定などを活用できます。
また、金融機関によって担保評価の基準が異なるため、複数の金融機関に相談して比較検討することも有効です。場合によっては、同じ担保でも金融機関によって評価額や掛目が大きく異なることがあります。
さらに、担保提供に伴う諸費用(登記費用、鑑定費用、保険料など)も事前に確認しておくべきです。これらの費用は、融資額から差し引かれることもあるため、実質的な調達資金額を計算する際に考慮する必要があります。
リスク分散を考える
担保提供におけるリスク管理として、全ての資産を一度に担保に出すのではなく、リスク分散を考えた担保設計が重要です。例えば、複数の不動産を所有している場合、一部のみを担保提供し、残りは非担保資産として残しておくことで、万一の場合のリスクを軽減できます。
また、融資の目的や金額に応じて、担保付き融資と無担保融資を組み合わせるハイブリッド型の資金調達も検討価値があります。重要な設備投資には、担保付き融資で低金利・長期返済を実現し、運転資金には、無担保融資で機動的に対応するなどの工夫ができます。
さらに、経営状況や資金繰りの変化に応じて、担保の入れ替えや解除の可能性についても金融機関と事前に協議しておくことが望ましいものです。事業拡大や財務改善により信用力が向上した場合、担保の一部解除や担保から無担保への切り替えが可能になることもあります。
まとめ
融資における担保は、借り手と貸し手双方にとって重要な役割を果たしています。本記事では、担保の種類、担保を置くメリット・デメリットについて詳しく解説しました。
担保を提供することで融資条件が有利になり、審査通過の可能性が高まるというメリットがある一方、担保資産を失うリスクや手続きの複雑さというデメリットも存在します。自社の状況や資金調達の目的に合わせて、最適な融資方法を選択することが重要です。まずは複数の金融機関に相談し、自社に合った資金調達方法を検討してみてください。
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