2025.03.13
手形とは?種類と使い方、メリット・デメリットを解説
手形は、取引金額を支払う約束が明確に示される有価証券として、企業間や個人事業主の決済手段に広く活用されています。現金支払いと異なり、期日を先に設定することで資金繰りを調整しやすい点が特徴です。 ここでは、手形の種類や仕組み、メリットとデメリットなどを詳しく解説し、資金計画に役立つ情報を提供します。契約書などとは異なる法的要件もあるため、基礎的なポイントをしっかり理解しておきましょう。
手形の基本
手形は、日本の商法や手形法により定められた決済手段です。現金の代わりとなり得るため、長年にわたって商取引で活用されてきました。 ここでは、そもそも手形とは何か、その基本的な役割について確認します。
手形とは
手形は特定の金額を支払う旨を約束、または第三者に委託する形で作成される有価証券です。振出人、受取人、引受人といった当事者の役割が明確に定義され、手形法や商法にもとづいて効力が生じます。 この仕組みにより、期日になれば所定の金額が支払われる可能性が高くなる一方、裏書を正確に行うなどの手続きが必須になります。
手形を発行することで、実際の支払いを先延ばしにできるものの、支払い責任は免除されません。不渡りというリスクも潜在しているため、注意深い取り扱いと管理が求められます。
手形が果たす役割
現金での即時決済が難しい場面において、手形は取引を円滑に進めるための手段となってきました。受取人は、手形を金融機関で割り引くことで早期に資金化できる場合もあり、結果的に事業運営の資金繰りに有利です。 一方で、不渡りの発生が、企業の信用力を大きく損ねるリスクがある点が重要になります。支払い期日管理や口座残高の確認など、経理部門の慎重なオペレーションが必要です。
このように、手形は企業や個人事業主にとって、資金繰りを調整するための主要な手段の一つとして活用されてきました。ただし、発行から支払期日までの管理には労力もかかるため、導入時にはメリットとデメリットの両面を十分に考慮することが推奨されます。
手形の種類
手形には、大きく分けて約束手形と為替手形があります。どちらも支払いを確約する性質をもつ一方で、当事者の数や支払い責任の所在などが大きく異なります。 ここでは、手形の種類ごとの特徴をみていきましょう。
約束手形
約束手形は、振出人と受取人の2者が登場するもっとも一般的な手形です。振出人が「支払い期日に自分が支払う」と約束する点が特徴で、企業間取引の売掛金決済によく利用されます。 この形式では、振出人の責任が直接問われるため、受取人からみれば振出人の信用力が重要な判断材料となります。
支払い期日までの期間を利用して、振出人は売上代金などを確保することができ、受取人は手形を裏書して別の取引先へ回すことも可能です。適切な手形管理を行うことで、資金繰りの調整弁として活用されます。
為替手形
為替手形は、振出人、引受人(支払う人)、受取人の3者が登場する手形です。振出人が第三者である引受人に対し、受取人へ支払うよう委託する点が最大の特徴といえます。 このとき、引受人の支払い能力が実質的に重要になり、振出人からは支払いを委託される立場にあるため、海外取引や複数企業間の複雑な商流での決済によく用いられます。
国内取引でも為替手形は利用されますが、約束手形に比べるとやや手続きが複雑です。貿易など国際間の商取引では、輸出者側が確実に代金を回収するために為替手形を使うケースが多く、その際に信用状(L/C)などと組み合わせることもあります。
約束手形のメリット
ここでは、2者間で成立する約束手形におけるメリットを紹介します。多くの国内取引で用いられる形式であるため、その利点を理解しておくことは重要です。
信用度の裏付け
約束手形を振り出す側にとっては、支払いを先延ばししながらも正式な証券を提供しているという形になり、受取人にとっても一定の信用力が担保されます。特に、金融機関の手形割引を利用すれば、受取人は早期に資金を入手できます。
この信用度が高いと話がスムーズに進み、相手を安心させられる点はメリットといえます。ただし、信用度が低いと相手側が手形での支払いを敬遠する可能性もあるため、常日頃の資金状況や企業イメージが大切です。
資金繰りの柔軟性
振出人は支払い日までに必要資金を準備すればよく、受取人も手形の割引や裏書譲渡を利用して現金化を実行できます。こうしたフレキシブルな対応が可能になることで、双方にメリットがあります。 特に、売掛金が大きい取引では、一括払いの負担を軽減できるため、経営の安定化に寄与します。
また、受取人が手形割引を利用する場合は、金融機関から資金を前倒しで得られるため、キャッシュフロー上の不安を解消できる点も利点でしょう。ただし、割引率や手数料は金融機関との交渉次第になります。
為替手形のメリット
次に、3者間で成り立つ為替手形に関するメリットを紹介します。国際取引だけでなく、複数企業が絡む取引などでも利用されており、効率的な資金決済が可能です。
多様な商流への対応
為替手形は振出人、引受人、受取人という3者が関連するため、より複雑な商流や支払いルートを一本化しやすいという利点があります。特に、取引の効率化を図りながら決済を完了できる点は魅力です。
企業Aが企業Bに支払い、企業Bが企業Cに支払うといった流れを、為替手形により一本化するケースも少なくありません。手間はかかるものの、従来の取立作業より合理化できる場面もあります。
海外取引での活用
為替手形は、国際貿易でも頻繁に活用されています。輸出者が、輸入者や銀行に対して資金の回収を確実に実施するための仕組みとして、信用状と組み合わせることが多く、トラブルを回避するうえでも活用価値があります。 こうした場面では、為替予約を活用することや、インコタームズなどと併用することも検討されます。
国際取引の場合、為替アレンジや通貨リスクの管理にも注意が必要です。支払期日までに為替が変動し、結果として取引条件が想定外の負担になる可能性を避けるため、現地情報や為替相場の分析が欠かせません。
約束手形のデメリット
約束手形は国内取引で一般的ですが、その反面デメリットも存在します。特に、資金管理や不渡りリスクの観点で注意が必要です。
不渡りリスクと信用失墜
約束手形は、振出人に支払い責任があります。万が一、期日に決済できない場合は不渡りとなり、振出人にとって大きな信用ダウンにつながります。銀行取引停止となれば、その後の資金調達や取引先との信用関係に深刻な影響を及ぼします。
また、取引先が不渡りを起こすと、受取人も被害を受けることになります。連鎖的に信用力が低下し、資金繰りが逼迫する可能性があるため、日頃から取引先の支払い能力を把握しておくことが望まれます。
管理コストの増加
手形は、支払期日の管理や裏書の確認など手間がかかり、現代のオンライン決済や銀行振込と比べて事務処理が増えがちです。裏書が正しく行われずに譲渡された場合など、手続き上のミスが発生すると権利主張が難しくなります。 こうした手続きは、経理担当者への負担を増やす要因となり得ます。
さらに、手形の受け渡しに郵送など物理的な作業が生じることも多く、場所や時間の制約を受けやすい点もデメリットです。電子決済が進む中で、相対的に非効率に感じられる場面が増えているのは否めません。
為替手形のデメリット
3者間での決済を実行する為替手形にも、デメリットがあります。商流が複雑になることで生じるリスクや手続きコストなどに注意が必要です。
手続きの複雑化
為替手形では振出人、引受人、受取人が登場するため、当事者の役割や責任の範囲を明確にしないとトラブルになりやすいものです。特に、引受拒否という事態が起きると、振出人が支払いを保証しなければならず、取引関係が混乱します。
国内取引でも為替手形を利用するケースはありますが、必要書類の作成や承認などが増え、実務担当者には相応の知識とスキルが問われます。貿易取引となれば、国ごとの法律や金融慣習に従う必要があるため、さらに注意が必要です。
為替変動リスクや手数料
海外との取引では、為替レートの変動によって、実際に受け取る金額が想定と異なる可能性があります。場合によっては手数料や送金コスト、書類作成コストなどもかさみ、取引全体の採算に影響を及ぼすでしょう。 こうした状況下では、リスクヘッジ策として、為替予約やオプション取引を併用することが多くあります。
また、国際郵便や国際銀行システムを介する都合上、書類のやりとりや送金に時間がかかるケースがあります。必要な書類不足などのミスが生じると、さらに日数が延びるため、細かい進行管理が欠かせません。
手形を利用する上での重要ポイント
実際に手形を使うとなると、手形法や商法に定められた法的要件を守るだけでなく、キャッシュフローや信用管理など経営面での注意点も数多く存在します。 ここでは、実務で押さえておくべきポイントを取り上げます。
支払期日とキャッシュフロー
手形取引では、実際の現金収入よりも決済が先になるケースが多いため、キャッシュフローが一時的に圧迫される可能性があります。そうした状況を回避するため、期日管理の徹底が欠かせません。
支払期日までに所定の資金を準備できなければ、不渡りにより信用失墜につながります。金融機関からの借り入れや手形割引を計画的に利用し、期日を迎えるまでの資金ショートを防ぐ方法を検討しましょう。
裏書と権利移転
手形は第三者へ譲渡することが可能で、その際に裏書という手続きを行います。裏書が行われると、手形の権利は新たに譲渡された側に移転し、その名義で支払いを受けることができます。 ただし、正しい裏書がなされていないと法的保護を受けられず、受取側が権利を主張できないリスクもあります。
企業間で何度も裏書が重なる場合、手形の所持人が誰なのか、適切に確認することも大切です。特に、複数回の裏書が行われた手形を取引する際は、記載事項に不備がないかをしっかり点検しましょう。
不渡りが及ぼす影響
手形が不渡りになると、振出人は銀行取引停止処分を受ける可能性が高くなります。これは、実質的に銀行口座の凍結と同様で、経営にとって致命的なダメージとなる場合が多いでしょう。 取引先としても、不渡り発生企業との取引継続に慎重になることが多く、連鎖倒産リスクも無視できません。経営者は不渡りを起こさないよう、資金管理を徹底する必要があります。
また、不渡りが連続すると会社としての信用力が大きく低下してしまい、新たな融資などが受けにくくなります。結果的に資金調達の選択肢も狭まり、事業拡大や新規投資が困難になる恐れがあります。
現代における手形の動向
時代とともにビジネス環境は変化しており、手形をめぐる状況も少しずつ姿を変えています。最近はペーパーレス化やオンライン決済が普及する中で、手形を積極的に使わない選択をする企業も増えてきました。 ここでは、そうした手形取引の現代的な動向についてみてみましょう。
手形レス化と電子化
近年、日本国内でも銀行振込やオンライン決済を活用する取引が増加し、紙の手形を発行しない手形レス化の動きが加速しています。電子記録債権などは、物理的な手形と同様の機能をもちながら、管理負担の軽減を期待できる仕組みです。
電子化により、紛失や盗難のリスクも下がる一方、データ管理やセキュリティ対策が新たな課題となります。ただし、今後のDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展とともに、手形を紙で扱う機会はさらに減る可能性があるでしょう。
国際取引と為替手形の現状
世界経済のグローバル化が進む中、為替手形は国際取引には依然として有力な決済手段です。特に、信用状(L/C)を発行することで、輸出者と輸入者双方のリスクを軽減する仕組みが確立されています。 ただし、商習慣の違いや為替相場の変動、輸入関税の有無といった要素が複雑に絡むため、最新の情報を収集しながら取引を進めることが重要です。
オンライン決済やブロックチェーン技術の発展により、将来的には従来の手形スクラップを抑える動きがさらに拡大するかもしれません。現状では、地域や業種によって依存度が異なるため、自社の取引先状況をみながら適切な決済手段を選ぶことが得策です。
取引先の信用リスク対策
手形取引の根底にあるのは、相手方の信用をどこまで信頼できるかという問題です。そのため、信用調査会社による財務分析データを活用するなど、事前の信用リスクチェックは欠かせません。 特に、長期取引の安定を望む場合には、相手先の資金繰りや銀行との取引状況を定期的に確認しておくことが望まれます。
健全な取引関係を維持するためにも、不渡りや支払い遅延の兆候があれば早めに対策を講じることが重要です。リスク管理の一環として、複数の支払い手段を組み合わせることも検討しましょう。
資金繰りを円滑にするための手形活用策
経営者や個人事業主にとっては、手形をうまく活用してキャッシュフローを整えるスキルが欠かせません。とはいえ、リスクを伴う手形だからこそ、実務面でどのように使うのかを工夫する必要があります。 以下のポイントを押さえれば、より効果的に手形を活用できるでしょう。
手形割引と担保
受取人は、銀行やノンバンクに手形を持ち込むことで、割引という形で早期資金化を図れます。割引率や手数料が差し引かれますが、必要なタイミングで現金を得られるため、資金ショートの回避に役立ちます。
また、手形を担保として提出し、別の融資を受ける方法も選択肢の一つです。いずれも金融機関との交渉が必要ですが、キャッシュフローが不安定な時期に重宝する手段といえます。
期日管理とリスク分散
手形が複数にわたる場合、それぞれの支払期日が異なるため、管理が煩雑になりやすいものです。期日別に管理表を作成したり、会計ソフトの機能を活用したりして、リスク分散の仕組みを整えることが大切です。
受け取る側だけでなく、振り出す側も手形の期日が集中し過ぎないよう注意が必要です。期日を意図的に分散させれば、大きな資金負担が一度に発生するリスクを軽減できます。
他の決済手段との比較
昨今は、銀行振込やオンライン決済、電子記録債権など多様な決済手段が存在します。それらと手形のメリット・デメリットを比較しながら、自社の状況に合った方法を選ぶことが求められます。 例えば、取引先との交渉力がある場合には、手形を回避して早期現金化を進める選択肢もあります。
一方、まだ手形を主流とする取引先が多い業界や企業もあるため、完全に手形を排除できない現実があるのも確かです。適切なバランスを取りながら、キャッシュフローを円滑に回す手段として考慮しましょう。
まとめ
ここまで、手形の種類や使用方法、それに伴うメリットとデメリット、さらに実務で押さえておきたいポイントを幅広く解説しました。手形は古くから商取引で用いられてきた一方、現代の技術革新により変容も進んでいます。 最終的には、自社や取引先の信用度、資金状況、業界慣習などを踏まえ、最適な決済手段を選ぶことが求められます。手形の活用を検討する際には、リスク管理とスケジュール管理を徹底しながら、キャッシュフローの安定化に役立てましょう。
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