2025.01.22

受取利息の勘定科目とは?仕訳例で解説

事業資金の運用で発生する受取利息について、正しい処理を行うことは重要ですが、その勘定科目の分類や税務処理、仕訳方法などを理解するのは少し難しいですよね。この記事では、受取利息とはどのようなものか、その計算方法や勘定科目としての扱い、個人事業主と法人における税務・会計処理の違いなどを、具体例を交えながらわかりやすく解説します。

受取利息とは

受取利息は、事業を営む上で重要な収入源の一つです。ここでは、受取利息の主な種類、勘定科目としての分類について解説していきます。

受取利息の主な種類

受取利息には、主に以下のような種類があります。

  • 預金利息:金融機関に預けた預金に対して受け取る利息
  • 貸付金利息:他者に貸し付けた資金に対して受け取る利息
  • 受取割引料:手形の割引に伴って受け取る利息
  • 有価証券利息:保有する有価証券から得られる利息

これらの受取利息は、事業の運営に役立てることができます。適切な資金運用を行うことで、受取利息を増やし、事業の安定性を高めることが可能でしょう。

受取利息の勘定科目分類

受取利息は、勘定科目として営業外収益に分類されます。つまり、事業の主な活動から直接得られる収益ではなく、付随的に発生する収益として扱われるのです。

受取利息の税務処理については、個人と法人で異なります。個人の場合、源泉徴収税率は20.315%(所得税+復興特別所得税:15.315%、住民税:5%)で、源泉分離課税の対象となります。一方、法人の場合、源泉徴収税率は15.315%(所得税+復興特別所得税のみ)で、2016年1月以降、地方税利子割は廃止されました。

仕訳処理においては、総額主義が原則となります。個人事業主の場合、次のような仕訳となります。

借方 貸方
預金 XXX
事業主貸(源泉税) XXX
事業主借 XXX

法人の場合は、以下のような仕訳になります。

借方 貸方
預金 XXX
法人税等 XXX
受取利息 XXX

受取利息の処理に際しては、金融機関からの通知書で源泉徴収額を確認し、端数処理に注意を払う必要があります。また、法人の場合、源泉徴収された所得税は法人税から控除できることを覚えておきましょう。

受取利息の計算方法

受取利息の計算方法には、単利計算と複利計算の2種類があります。ここでは、それぞれの計算式と具体例を見ていきましょう。

単利計算

単利計算では、元本に対して一定の利率をかけて利息を算出します。計算式は以下の通りです。

受取利息(税引前) = 元本 × 利率

例えば、100万円を年利1.0%で運用した場合、1年後の受取利息は以下のように計算できます。

受取利息(税引前) = 1,000,000円 × 0.01 = 10,000円

複利計算

複利計算では、元本にそれまでの受取利息を加えた金額に対して利率をかけて利息を算出します。計算式は以下の通りです。

受取利息(税引前) = (元本 + それまでの受取利息)× 利率

例えば、100万円を年利1.0%で2年間運用した場合、2年後の受取利息は以下のように計算できます。

1年目の受取利息(税引前) = 1,000,000円 × 0.01 = 10,000円
2年目の受取利息(税引前) = (1,000,000円 + 10,000円) × 0.01 = 10,100円

計算方法の違い

単利計算と複利計算の主な違いは、利息の計算に過去の利息を含めるかどうかです。この違いにより、運用期間が長くなるほど複利計算の方が高い利息を得られます。

一般的に、預金や国債などの安全性の高い金融商品は単利計算が用いられることが多いでしょう。一方、投資信託や株式など、リスクを伴う金融商品では複利計算が用いられる傾向にあります。

受取利息の税務処理

受取利息の税務処理は、個人事業主と法人で異なる点があります。ここでは、それぞれのケースにおける税務処理について解説していきましょう。

個人事業主の税務処理

個人事業主が受取利息を得た場合、源泉徴収税率は20.315%となります。この内訳は、所得税と復興特別所得税が15.315%、住民税が5%です。

個人事業主の受取利息は源泉分離課税の対象となるため、確定申告の際に他の所得と分けて申告する必要があります。仕訳処理としては、総額主義を採用するのが一般的です。

具体的な仕訳例は以下の通りです。

借方 貸方
預金 XXX
事業主貸(源泉税) XXX
事業主借 XXX

法人の税務処理

法人が受取利息を得た場合、源泉徴収税率は15.315%となります。この税率は所得税と復興特別所得税のみで構成されています。

法人の場合、受取利息は営業外収益として計上します。源泉徴収された所得税は、法人税から控除することができます。仕訳処理は総額主義が原則です。

具体的な仕訳例は以下の通りです。

借方 貸方
預金 XXX
法人税等 XXX
受取利息 XXX

源泉徴収税率と課税対象

受取利息の源泉徴収税率は、個人事業主と法人で異なります。個人事業主の場合は20.315%、法人の場合は15.315%となっています。

また、個人事業主の受取利息は源泉分離課税の対象となりますが、法人の受取利息は申告所得に含まれます。いずれの場合も、金融機関からの通知書で源泉徴収額を確認することが重要です。

地方税利子割の扱い

2016年1月以降、地方税の一つである利子割は廃止されました。そのため、現在の受取利息に対する税金は、所得税、復興特別所得税、住民税(個人事業主の場合のみ)のみとなっています。

ただし、利子割廃止以前に発生した受取利息については、利子割が課税されている可能性があるため、注意が必要です。

受取利息の仕訳処理

受取利息は、預金や貸付金などから得られる利息収入のことを指します。ここでは、受取利息の仕訳処理について、個人事業主と法人の例を用いて解説していきましょう。

個人事業主の仕訳例

個人事業主が受取利息を得た場合、源泉徴収税額を考慮して仕訳を行います。源泉徴収税率は20.315%で、内訳は所得税と復興特別所得税が15.315%、住民税が5%です。

例えば、受取利息が10,000円だった場合、以下のように仕訳します。

借方 貸方
預金 7,968円
事業主貸(源泉税) 2,032円
事業主借 10,000円

この仕訳では、源泉徴収された税額を「事業主貸(源泉税)」勘定で処理し、受取利息の総額を「事業主借」勘定で処理しています。

法人の仕訳例

法人の場合、受取利息に対する源泉徴収税率は15.315%で、所得税と復興特別所得税のみが課税されます。2016年1月以降、地方税の利子割は廃止されています。

同じく受取利息が10,000円だった場合、法人の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
預金 8,468円
法人税等 1,532円
受取利息 10,000円

法人の場合、源泉徴収された所得税は「法人税等」勘定で処理し、後に法人税から控除することができます。

総額主義による仕訳の原則

受取利息の仕訳処理では、総額主義による仕訳が原則となります。総額主義とは、収益や費用の金額を総額で記録する方法のことです。

つまり、源泉徴収税額を差し引いた金額ではなく、受取利息の総額を「受取利息」勘定で処理する必要があります。この原則に従うことで、正確な収益と税金の計上が可能になるでしょう。

受取利息の仕訳処理を行う際は、金融機関からの通知書で源泉徴収額を確認し、端数処理にも注意を払いましょう。適切な仕訳処理により、事業の財務状況を正確に把握することができます。

受取利息の会計処理における注意点

受取利息の会計処理を行う際には、いくつかの注意点があります。ここでは、金融機関からの通知書の確認、端数処理への注意、源泉徴収された所得税の扱いについて解説していきます。

金融機関からの通知書の確認

受取利息の計算や源泉徴収税額の確認には、金融機関から送付される通知書が重要になります。通知書には、受取利息の金額や源泉徴収税額などの情報が記載されています。

この通知書の内容を確認し、自社の計算結果と照合することが必要です。万が一、金融機関の計算に誤りがあった場合は、速やかに連絡を取り、修正を依頼しましょう。

端数処理への注意

受取利息の計算においては、端数処理にも注意が必要です。金融機関によって端数処理の方法が異なる場合があるためです。

例えば、ある金融機関では小数点以下を切り捨てて計算しているのに対し、別の金融機関では四捨五入で計算している場合などです。自社の会計処理と金融機関の計算方法に齟齬がないか確認しておくことが重要といえます。

源泉徴収された所得税の扱い

受取利息には所得税が源泉徴収されます。この源泉徴収された所得税の扱いは、個人事業主と法人で異なります。

個人事業主の場合、源泉徴収された所得税は事業主貸として処理し、確定申告時に精算します。一方、法人の場合は、源泉徴収された所得税を法人税等として処理し、法人税の申告時に控除することができます。いずれの場合も、源泉徴収税額を正確に把握し、適切に会計処理を行うことが求められます。

まとめ

本記事では、受取利息の勘定科目分類や計算方法、税務処理、仕訳方法などについて解説してきました。受取利息は事業における重要な収益源の一つであり、適切な資金運用を行うことで、事業の安定性を高めることができるでしょう。

事業資金の運用を検討する際は、適切な計算方法を選択し、収益性を正しく把握することが重要です。受取利息の適切な処理を通して、効果的な資金運用を実現していきましょう。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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