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運転資金の借入目安とは?計算方法を紹介

運転資金の借入額はどのように決めればよいのでしょうか?事業を継続していく上で、運転資金の確保は非常に重要ですが、借り過ぎは返済負担を増すだけでなく、金融機関の信用低下にもつながりかねません。

本記事では、運転資金の借入額の適切な決め方について解説します。運転資金の考え方や計算方法、業種別の目安などを理解することで、自社に最適な借入額を見積もることができるようになるでしょう。

運転資金とは

運転資金とは、事業を継続的に運営するために必要な資金のことです。具体的には、商品の仕入れ、従業員の給与、家賃、光熱費など、日々の事業活動に必要な費用を指します。

運転資金は、事業の規模や業種によって必要な金額が異なります。例えば、製造業では原材料の仕入れや製造に必要な人件費が主な運転資金となりますが、小売業では商品の仕入れや販売スタッフの人件費が中心となります。

運転資金の重要性

運転資金は、事業を円滑に運営するために欠かせない資金です。運転資金が不足すると、商品の仕入れができなくなったり、従業員の給与が払えなくなったりと、事業継続が困難になります。

特に、売上と支出のタイミングがずれる場合や、売上が季節変動する事業では、運転資金の管理が重要です。適切な運転資金の確保と管理は、事業の安定的な継続に不可欠といえます。

運転資金不足によるリスク

運転資金が不足すると、事業運営に大きな支障をきたします。具体的には、以下のようなリスクがあります。

  • 商品の仕入れができなくなり、売上機会を逃してしまう。
  • 従業員の給与が払えなくなり、人材流出や士気低下を招く。
  • 家賃や光熱費の支払いが滞り、事業継続が困難になる。
  • 資金繰りの悪化から、取引先への支払いが遅れ、信用力が低下する。

運転資金不足は、事業の存続に関わる重大な問題です。日々の資金繰り管理を徹底し、必要に応じて運転資金の借入れや調達を検討しましょう。

運転資金の必要額の計算方法

運転資金の必要額を把握することは、事業継続のために欠かせません。ここでは、具体的な運転資金の計算方法について解説していきます。

在高方式による計算

在高方式は、売掛金と棚卸資産から買掛金を差し引いて計算する方法です。この方式では、以下の式を用います。

運転資金必要額 = 売掛金 + 棚卸資産 – 買掛金

例えば、売掛金が1,000万円、棚卸資産が500万円、買掛金が300万円の場合、運転資金の必要額は1,200万円となります。

回転期間方式による計算

回転期間方式は、1日当たりの売上高に、売上債権回転期間と棚卸資産回転期間から買入債務回転期間を差し引いた日数を乗じて計算する方法です。以下の式を用います。

運転資金必要額 = 1日当たり売上高 ×(売上債権回転期間 + 棚卸資産回転期間 – 買入債務回転期間)

例えば、1日当たり売上高が20万円、売上債権回転期間が30日、棚卸資産回転期間が15日、買入債務回転期間が20日の場合、運転資金の必要額は500万円となります。

業種別の必要運転資金の目安

運転資金の必要額は業種によって異なります。一般的な目安は以下の通りです。

  • 小売業:月商の1~2ヵ月分
  • 飲食業:月商の1~3ヵ月分
  • 製造業:月商の2~4ヵ月分
  • 建設業:月商の3~6ヵ月分

ただし、これはあくまでも目安であり、個別の事業の状況に応じて調整しましょう。

必要額の調整

運転資金の必要額は、以下のような要因によって変動することを踏まえて、適宜調整が必要となります。

  1. 売上の季節変動:繁忙期と閑散期で必要な運転資金が異なる
  2. 売掛金の回収期間:回収期間が長いほど、必要な運転資金は増加する
  3. 仕入れ条件:支払いサイトが短いほど、必要な運転資金は増加する
  4. 在庫管理:在庫回転率が低い(滞留在庫が多い)ほど、必要な運転資金は増加する

これらに注意しながら、自社の状況に合わせて運転資金の必要額を調整することが大切です。

運転資金の借入が必要になるケースと借入の際の留意点

事業を継続していく上で、運転資金の確保は非常に重要です。

資金繰りが悪化する主な原因は以下の通りです。

  • 売上の減少や取引先からの入金遅延により、収入が減少した場合
  • 仕入れ費用や人件費などの支出が増加した場合
  • 設備投資や事業拡大に伴う資金需要が発生した場合
  • 想定外の支出が発生した場合

これらの要因により、手元資金が不足し、運転資金の借入が必要になることがあります。

運転資金を借り入れる際は、以下の点に留意が必要です。

  • 借入金額は必要最小限にとどめ、過剰な借入は避ける
  • 返済計画は無理のない設定とし、利息負担を最小限に抑える
  • 借入先の選定は慎重に行い、金利や条件を十分に比較検討する
  • 借入審査に必要な書類は事前に準備し、面談対策も万全に行う

これらの点に注意しながら、適切な借入を行いましょう。

運転資金の主な借入先

運転資金の主な借入先には、日本政策金融公庫や民間銀行、信用金庫、ノンバンクなどがあります。それぞれの特徴や利点を理解しておき、自社の状況に合った最適な借入先を選択しましょう。

日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫は、中小企業や創業間もない事業者向けに低金利で融資を行っています。事業計画の策定支援や経営相談も可能なため、単なる資金調達だけでなく、経営面でのサポートも受けられるのが大きなメリットといえます。

例えば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」では、事業開始後5年以内の事業者に対して、設備資金と運転資金を合わせて3,000万円まで融資を行っています。金利も比較的低く抑えられているため、創業初期段階の事業者にとって心強い存在となっています。

民間銀行によるプロパー融資と信用保証協会付き融資

民間銀行には、都市銀行、地方銀行、第二地方銀行などがあります。融資方法としては、プロパー融資と信用保証協会付き融資の2種類があります。

プロパー融資は、銀行独自の審査基準で行われる融資で、金利は比較的低くなる可能性があります。一方、信用保証協会付き融資は、信用保証協会の保証を得ることで審査に通りやすくなりますが、保証料が必要となります。事業の信用力や担保の有無によって、適した融資方法を選択する必要があるでしょう。

信用金庫の中小企業支援

信用金庫は、地域密着型の金融機関として、中小企業に対してきめ細やかなサービスを提供しています。融資だけでなく、経営相談や事業承継支援なども行っているため、地元の中小企業にとって頼りになる存在といえます。

信用金庫は、地域経済の発展に貢献することを使命としているため、地元企業の成長を支援する様々な融資制度を用意しています。また、担当者との距離が近いため、事業内容や経営者の人柄を理解した上で融資の判断を行ってくれる点も魅力です。

ノンバンクの審査スピードとリスク

ノンバンクは、銀行と比べて審査スピードが速いのが特徴です。また、担保や保証人を必要としない場合が多いため、銀行融資が受けられない事業者でも利用しやすいといえます。

ただし、ノンバンクは一般的に金利が高めに設定されています。また、審査基準が甘い分、貸倒れリスクが高くなる傾向にあります。借入後の返済負担を十分に考慮した上で、慎重に利用を検討する必要があります。

運転資金借入にあたっての審査対策と返済計画

運転資金の借入を検討する際には、審査に通るための対策と返済計画を立てることが重要です。ここでは、借入審査の準備と返済計画の立て方について解説します。

借入目的の明確化

運転資金の借入を申請する際、まず借入目的や資金の使い道を明確にする必要があります。借入金をどのように活用し、事業にどのようなメリットをもたらすのかを具体的に説明できるようにしましょう。

例えば、「原材料の仕入れ資金として500万円を借り入れ、生産量を20%増加させることで売上の拡大を図る」といった具合に、数値を交えて分かりやすく目的と使途を示すことが効果的です。また、資金を適切に管理し、目的通りに使用する方法についても説明できるようにしておくとよいでしょう。

適切な借入額の設定

運転資金の借入額は、事業の規模や資金繰り状況に応じて適切に設定する必要があります。一般的には、月商の3ヵ月分程度が目安とされていますが、業種や季節変動などによって調整が必要な場合もあります。

借入額の算出には、在高方式や回転期間方式などの計算方法があります。例えば、在高方式では売掛金と棚卸資産の合計から買掛金を差し引いた金額が必要運転資金となります。必要以上の借入は返済負担を増すだけでなく、金融機関からの信用にも影響するため、ちょうどよい金額に抑えることが重要です。

無理のない返済期間の設定

運転資金の返済期間は、事業の収支見通しを踏まえて無理のない設定にすることが大切です。返済期間が長いほど月々の返済額は少なくなりますが、利息の総額は増加してしまいます。

返済シミュレーションを行い、月々の返済額が事業の収支に与える影響を確認しましょう。返済期間は可能な限り短めに設定し、利息負担を抑えるようにしましょう。ただし、無理のない返済計画を立てることが何より重要ですので、バランスを考えて決定しましょう。

審査に必要な書類の準備と面談対策

運転資金の借入審査には、決算書や事業計画書、資金繰り表などの提出が求められます。これらの書類は正確に作成し、内容に齟齬がないようにしなければなりません。また、金融機関との面談では、事業の将来性や資金の使い方について明確に説明できるよう準備しておく必要があります。

審査書類は早めに準備し、第三者にチェックしてもらうことをおすすめします。面談では、社長様自身が自社の強みや事業の将来性をアピールし、運転資金の必要性について理解を得られるよう努めましょう。信頼関係を築くことが、借入審査の合格につながります。

適切な運転資金管理のポイント

運転資金は企業の日々の活動に欠かせません。売上から支払いまでのタイムラグを埋め、事業を円滑に回すための資金です。適切な運転資金管理は、企業の存続と成長に直結する重要な経営課題といえます。

ここでは、運転資金を適切に管理するための重要なポイントを4つ紹介します。資金繰り表の作成と見直し、売掛金と買掛金の管理、コスト削減、資金の効率的活用について順に解説していきましょう。

資金繰り表の作成と定期的な見直し

まず取り組むべきは、資金繰り表の作成です。資金繰り表とは、一定期間の資金の流れを予測し、資金不足のタイミングを事前に把握するためのツールです。

具体的には、以下の項目を月次または週次で記載していきます。

  • 売上金額と入金予定時期
  • 仕入れや経費の支払金額と時期
  • 借入金の返済額と時期
  • 税金の支払額と時期

これにより、いつ頃資金が不足しそうか、また余剰資金が発生しそうかが予測できます。資金繰り表は定期的に見直し、実績と乖離がある場合は修正していくことが大切です。

売掛金の早期回収と買掛金の支払サイト延長

運転資金を確保する上で重要なのが、売掛金と買掛金のバランス管理です。売掛金の回収サイトを短縮し、買掛金の支払サイトを延長することで、手元資金を増やすことができます。

売掛金の早期回収のためには、請求書の早期発行や取引先との交渉が有効でしょう。一方、買掛金の支払いについては、取引先との関係性を考慮しつつ、可能な範囲で支払サイトの延長をお願いするのも一案です。ただし、支払遅れは信用の失墜につながるため、約束は必ず守る必要があります。

コスト削減による捻出

運転資金を生み出すもう一つの方法が、コストの削減です。経費の見直しを行い、不要なコストを削減することで、捻出した資金を運転資金に回すことができます。

削減対象としては、光熱費、通信費、消耗品費など、固定費に分類されるコストが中心となります。無駄な残業の削減や、安価な代替商品への切り替えなども効果的でしょう。少額でも積み重なれば大きな効果につながります。

運転資金の効率的な活用方法

確保した運転資金を有効に活用することも重要なポイントです。資金を遊ばせるのではなく、事業拡大や生産性向上につながる投資に回すことが望ましいといえます。

例えば、新商品の開発や販路開拓、設備の更新や従業員教育などが挙げられます。投資対効果を事前に検討した上で、中長期的な視点から優先順位をつけて実行しましょう。

まとめ

本記事では、運転資金の借入目安について解説してきました。運転資金は事業継続に不可欠な資金であり、適切な借入額の設定が重要です。

運転資金の借入先には、日本政策金融公庫や民間銀行、信用金庫、ノンバンクなどがあります。それぞれの特徴を理解した上で、自社に合った借入先を選ぶことが大切です。借入審査に向けては、必要書類の準備と面談対策を万全に行いましょう。

本記事を参考にして、適切な運転資金管理を目指してください。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 
同年 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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