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2025.01.23

債権の時効とは?失効を防ぐためのポイントを伝授

売掛金の回収業務を行っていると、「この債権はもう時効になってしまったのではないか」と不安になることがあるでしょう。しかし、時効を正しく理解し素早く対応すれば、債権回収の成功率は大幅に高められます。

この記事では、債権の時効に関する基本的な仕組みや対応方法について詳しく解説します。債権管理の実務に役立つ具体的なテクニックもお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。

債権の時効とは

債権の時効とは、一定期間、債権者が権利を行使しないことによって、債務者がその債務を免れることをいいます。

つまり、債権者が債務者に対して有する権利を、一定の期間行使しなかった場合、その権利が消滅してしまうというものです。

時効制度には、大きく分けて2つの目的があります。

1つ目は、社会生活の安定を図ることです。債権者が長期間権利を行使しない状態を放置すると、いつ権利が行使されるか分からず、債務者は不安定な立場に置かれ続けます。

2つ目は、紛争の防止と証拠の散逸を防ぐことです。時間の経過とともに、債権の存在を証明する書類や証拠が失われたり、当事者の記憶が曖昧になったりします。

このような状況下で権利の存否を争うことは、適切な解決を難しくし、無用な紛争を生む原因にもなりかねません。時効制度は、こうした問題の発生を未然に防ぐ役割も担っているのです。

債権の時効期間

一般債権の時効期間

債権の時効期間は、債権の種類によって異なります。一般的な債権の時効期間は、原則として10年間です。

この期間内に債権者が権利行使をしないと、時効によって債権が消滅してしまいます。ただし、債務者が時効を援用しない限り、債権は消滅しないのが原則です。

商事債権の時効期間

商事債権とは、商人間の取引によって生じた債権のことをいいます。商事債権の時効期間は、5年間と定められています。

この期間は一般債権よりも短いので、商取引を行う事業者は特に注意が必要です。時効期間内に確実に債権回収を行うことが重要といえるでしょう。

2020年民法改正による時効期間の変更

2020年4月に民法が改正され、債権の時効期間に関するルールにも変更がありました。改正民法では、債権の消滅時効期間が原則5年に統一されています。

ただし、契約書など書面による債務の承認があった場合は10年となります。また、不法行為による損害賠償請求権は「損害及び加害者を知った時」から3年、「不法行為の時」から20年とされました。

時効期間の起算点

債権の時効期間は、「債権を行使することができる時」から進行します。多くの場合、債務の履行期が到来した時点から時効がスタートすることになります。

ただし、債務者が分割払いを約束した場合など、履行期が複数ある債権については、それぞれの履行期ごとに時効が進行します。債権管理には細心の注意を払う必要がありますね。

債権の時効中断

債権の回収を行うにあたって、時効完成を防ぐためには時効中断の措置を講じる必要があります。ここでは、債権の時効中断について詳しく解説します。

時効中断の意味

時効中断とは、時効の進行を止めて、新たに時効期間が進行し始めることを意味します。つまり、時効中断の措置を講じることで、債権の消滅時効の完成を防ぐことができるのです。

時効中断の方法には、法的手続きによる方法と、債務者との合意による方法の2種類があります。以下で、それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

訴訟提起による時効中断

債権者が債務者に対して訴訟を提起することで、時効は中断します。訴訟提起は、債権者側の管轄裁判所で行うことができ、債務者の協力は不要です。

訴訟提起による時効中断の大きなメリットは、強制執行が可能になる点です。裁判所の判決により債務者の支払い義務が確定すれば、債務者の財産に対して強制執行を行うことができます。

支払督促による時効中断

支払督促は、訴訟手続きよりも簡易な法的手続きです。債務者側の管轄裁判所に申立てを行う必要がありますが、手続きが簡便である点がメリットといえます。

ただし、支払督促に対して債務者が異議を申し立てた場合には、通常の訴訟手続きに移行することになります。その際には、改めて訴訟提起の手続きが必要になるでしょう。

債務の承認による時効中断

債務者が債務の存在を認めたことを示す書面を作成することで、時効は中断します。具体的には、債務残高確認書などを債務者に作成してもらうことになります。

債務の承認による時効中断は、債務者の協力が必要不可欠です。債務者が債務の存在を認めない場合には、この方法による時効中断は困難といえるでしょう。

一部弁済による時効中断

債務者が債務の一部でも弁済することで、時効は中断します。たとえわずかな金額であっても、債務者が自発的に弁済を行えば、時効中断の効果が発生します。

ただし、一部弁済による時効中断が成立するためには、債務者に弁済の意思があることが必要です。単に債権者が一方的に債務者の財産から一部を回収したようなケースでは、時効中断の効果は認められないでしょう。

債権の時効利益の放棄

債権の時効利益は、債務者が自らの意思で放棄することが可能です。時効利益の放棄により、債務者は完成した時効の効果を受けることなく、引き続き債務を負担することになります。本稿では、時効利益の放棄について、その方法やタイミング、注意点を具体的に解説します。

時効利益の放棄とは

債権の時効とは、債権者が一定期間、債権を行使しない場合に債権が消滅することです。しかし、債務者が時効利益を放棄することで、時効が完成しても債務を負担し続けることができます。

時効利益の放棄は、債務者が自らの意思で行うものであり、債権者からの請求に応じて行われるものではありません。債務者が時効利益を放棄すると、債権は消滅せず、債務者は引き続き債務を負担することになります。

時効利益放棄の方法

時効利益の放棄は、口頭でも可能ですが、後々のトラブルを防ぐためにも、書面で行うことが望ましいでしょう。具体的には、以下のような方法が考えられます。

  • 時効利益放棄の意思表示を記載した書面を債権者に送付する
  • 公正証書により時効利益放棄の意思表示を行う
  • 時効利益放棄の意思表示を含む契約書を締結する

いずれの方法においても、時効利益放棄の意思が明確に示されていることが重要です。曖昧な表現では、後に時効利益放棄の有無をめぐって争いが生じる可能性があります。

時効利益放棄のタイミング

時効利益の放棄は、時効期間が満了する前でも、満了した後でも可能です。ただし、時効期間満了前に放棄することで、債務者は時効完成による債務消滅の利益を享受できなくなります。

一方、時効期間満了後に放棄することで、一旦消滅した債務が復活することになります。このように、時効利益放棄のタイミングによって、債務者の法的立場は大きく変わってきます。

時効利益放棄の注意点

時効利益の放棄は、債務者の意思に基づいて行われるものですが、以下のような点に注意が必要です。

  • 時効利益放棄の意思表示は、明確かつ具体的に行う必要がある
  • 時効利益放棄の意思表示は、撤回することができない
  • 時効利益を放棄しても、債務の存在自体は否定できない
  • 時効利益の放棄は、個別の債権ごとに行う必要がある

特に、時効利益放棄の意思表示が不明確な場合、債務者が時効利益を放棄したつもりでも、債権者との間で争いが生じる可能性があります。時効利益の放棄は、慎重に検討し、明確な意思表示を行うことが肝要といえます。

債権時効に関する注意点

債権回収において、時効を理解し、適切に対処することは非常に重要です。ここでは、債権時効に関する主要なポイントについて解説します。

債務者に対する適切なコミュニケーション

債権回収を円滑に進めるためには、債務者との良好なコミュニケーションが不可欠です。債務者の事情を踏まえた上で、丁寧かつ明確な説明を心がけましょう。

具体的には、以下のようなポイントに注意が必要です。

  • 債務者の立場に立って、分かりやすい説明を心がける
  • 債務の内容や支払期限を明確に伝える
  • 強圧的な態度は避け、建設的な対話を心がける
  • 必要に応じて、支払計画の提案や債務の一部免除などの柔軟な対応を検討する

弁護士等専門家との連携

債権回収が難航する場合や、法的な対応が必要な場合は、弁護士などの専門家と連携することをおすすめします。専門家の知見を活用することで、より効果的な債権回収が可能になります。実際の債権消滅時効に関しては、法的な取扱いが細かく設定されています
ので、その点でも弁護士などの専門家との連携は必須です。コンサルタントなどが行う法
律に関するアドバイスは非弁行為として、コンサルタントなどの無資格者が実施すること
に罰則がありますので留意が必要です。

弁護士との連携により、以下のようなメリットが期待できます。

  • 法的な観点からの適切なアドバイスが得られる
  • 訴訟や強制執行など、法的手続きを円滑に進められる
  • 債務者との交渉において、より強い交渉力を発揮できる
  • 時効中断措置や時効完成猶予措置など、時効対策に関する専門的な知見が得られる

債権譲渡・売却時の時効リスク評価

債権を譲渡したり売却したりする場合、時効リスクを適切に評価することが重要です。時効が完成した債権は、回収が困難になるため、譲渡・売却価格に大きな影響を与えます。

債権譲渡・売却時には、以下のような点に注意が必要です。

  • 債権の発生時期や支払期限を確認する
  • 時効中断措置の有無や時期を確認する
  • 債務者の支払能力や支払意思を評価する
  • 時効リスクを考慮した適切な譲渡・売却価格を設定する

債権の証拠書類の保管・管理

債権の時効を主張するためには、債権の存在や内容を証明する書類が必要不可欠です。請求書や領収書、契約書などの証拠書類を適切に保管・管理することが重要です。

証拠書類の保管・管理に際しては、以下のようなポイントに注意しましょう。

  • 証拠書類は、債権ごとに整理し、体系的に保管する
  • 紛失や劣化を防ぐため、適切な保管場所と方法を選ぶ
  • 必要に応じて、電子化やバックアップを行う
  • 証拠書類の保管期間は、時効期間を考慮して設定する

まとめ

本記事では、債権の時効に関する基本的な知識や、債権回収における時効管理の重要性、債権時効への対応策などについて詳しく解説してきました。

債権の時効は複雑な制度ですが、基本的な知識と適切な対応があれば、債権回収の成功率は大きく高まります。本記事で解説した内容を参考に、貴社の債権管理体制の見直しや強化を検討してみてはいかがでしょうか。専門家のアドバイスを積極的に取り入れながら、時効リスクに備えた万全の債権管理を目指しましょう。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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