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手形決済のリスクとは?回避するためのポイントを解説

企業間取引では、売掛金と並んで手形を利用する機会が依然として存在します。特に、資金繰りを調整したい企業にとって、将来の支払期日を設定できる手形は便利な決済手段といえます。

しかし、手形を使った決済には、支払期日に資金不足になった場合の不渡や信用力の低下など、リスクが多面的に潜んでいます。この記事では、手形や決済に関するリスクを正しく理解し、適切に回避するための具体的な対策を解説します。

手形決済のリスクを理解するための基本

ここではリスクを把握するために、まず手形の特徴を理解し、基本的な仕組みやメリット・デメリットに触れていきます。これにより、企業がどのような形で資金を管理すべきかの指針がつかみやすくなります。

手形の役割

手形は、将来の特定期日に特定の金額を支払うことを約束した有価証券で、約束手形と為替手形があります。約束手形は、振出人が受取人へ直接支払いを約束する形式です。一方で為替手形は、第三者を介して指示を行う形式です。

手形は、当座預金口座の開設や銀行の審査が必要となるため、手形を振り出せる企業はある程度の信用力を備えていると判断されます。この点は、企業間取引における信用力の証明として活用される側面もあります。

とはいえ、不渡りによる大きな信用リスクもあるため、利用には慎重な対策と管理が不可欠です。

手形決済が活用される背景

一覧払が原則の小切手と比較すると、手形は支払期日が先に設定されており、期日までに資金を用意すればよい点で資金繰りに余裕をもたらします。特に、事業を始めて間もない頃や、新製品の開発コストがかかる場面などでは重宝する決済手段です。

また銀行からの融資を受ける場合に比べ、手形には利息が発生しないため、手形を使うことで全体のコスト削減にもつながります。こうしたメリットは、企業の運転資金の視点からみると大きな魅力といえます。

しかし、現在のビジネス環境では電子決済などが普及し、約束手形の廃止検討も進む状況です。

手形決済のメリットに潜むリスク

手形を利用する大きな理由は、資金繰りの調整や利息負担の軽減といったメリットにあるといえます。一方でこのメリットとは裏腹に、支払期日管理や不渡りなどのリスクが潜んでいます。ここでは、メリットとリスクの関係を深堀りします。

受取人にとっては現金化が遅れる

手形の発行において、支払人は期日を先送りできるため、手元のキャッシュを潤沢に保ちやすくなります。突発的な出費や投資が必要になった際にも、銀行融資に比べて素早く対応しやすい利点があるでしょう。

しかし、期日が延びる分、受取人にとっては現金化のタイミングも遅れることになります。資金調達を急いでいる場合は手形割引などの追加費用がかかり、受取金額の目減りが起こりやすい点に注意が必要です。

キャッシュフロー管理と印紙税

手形発行を安易に利用すると、支払期日に資金繰りが追いつかなくなる可能性があります。キャッシュフローが乱れた際には、不渡りへと直結しやすい点を理解しておくことが大事です。

また、印紙税の負担も高額手形では決して小さくはありません。利息はかからなくても、金額に応じて課税されるため注意を要します。

確実な資金繰りが求められる

手形を発行する際には、銀行の当座預金口座を開設する必要があり、相応の与信状況をクリアしていなければなりません。これは、企業にとって対外的な信用力の証明となり、新たな取引先を得る手段として機能します。

その反面、手形を振り出しているという事実は、企業の資金繰りに関するプレッシャーが常に付きまとうことを意味します。取引先から見れば、支払期日の管理能力がどの程度あるかがシビアに見られるのです。

もし支払期日に間に合わなければ不渡りを引き起こす可能性があるため、日々の資金状況のチェックが欠かせません。

代表的なリスクとその回避策

手形決済に伴うリスクには、資金不足による不渡りや、手形の裏書にかかわるトラブルなどが挙げられます。ここからは具体的なリスクの内容と、どう回避すればよいかを詳しく見ていきましょう。

不渡手形の連鎖的リスク

手形の支払期日に当座預金の残高が不足していると、不渡り手形が発生します。これは企業の信用力を一気に損なうだけでなく、銀行取引において、取引停止処分や融資の停止にもつながりかねません。

万が一、6ヶ月以内に2回の不渡りを発生させてしまうと、事実上の倒産扱いを受けることになります。信用の低下は一度起こると回復に大きな時間と労力が必要になるため、早めの回避策が不可欠です。

受取側のリスクと現金化の障害

受取人が手形を早めに現金化したい場合にも、手形割引や融資の手数料・利子が発生する可能性があります。これにより、結果的に受け取る金額が目減りし、資金繰り計画が崩れる危険性があります。

また、支払人の経営状態が悪化している場合は、手形の受け取りが現金化できず、不渡りとなる懸念が高まります。ここでは信用調査を徹底することが、リスク管理において重要です。

融通手形の注意点

融通手形とは、実際の商取引を伴わずに金銭を融通する目的で振り出される手形です。資金調達のための手形のやりとりが多く含まれるため、受取人側としてはその正当性と信頼度をしっかりと確認する必要があります。

業種や取引内容からみて不自然な組み合わせの振出人・受取人の場合、融通手形の可能性が高いといえるでしょう。潜在的な回収リスクが非常に高いため、事情を知らないまま大量の融通手形を抱えることのないように気をつけることが大切です。

裏書きリスクと管理不備

手形は、裏書きによってさらに譲渡が可能です。裏書の正しい手順を踏んでいないと、無効や偽造を疑われ、受け取りを拒否される事態に発展するかもしれません。

譲渡年月日や裏書人名などの記載を見落としていると、最終的に当事者間で責任の所在が不明瞭になります。記載内容のチェックを怠らないことが、余計なトラブル回避に役立ちます。

リスク低減に向けた対策

実際の業務において、リスクを避けながら手形決済を行うためには、複数の対策を組み合わせる必要があります。以下では、すぐに取り入れやすい管理方法や外部サービスの利用などを紹介します。

信用調査を積極的に活用

手形を受け取る前に、振出人や裏書人の信用力を確認することは、リスク低減の基本です。帝国データバンクのような信用調査機関や、銀行の格付け情報をうまく活用して相手先の支払い能力を把握します。

外部環境や業界動向も併せてチェックしておけば、不渡手形が懸念される取引を未然に回避できるでしょう。手間はかかりますが、トラブルを防ぐ有効な方法です。

売掛保証サービスや保険の検討

手形よりも直接、売掛金を発生させる取引では、売掛金の保証サービスを利用することで倒産リスクに備えることができます。保証会社が債権を代わりに支払うため、取引相手が倒産しても一定の金額を回収できる仕組みです。

また保険商品を使い、債権保全を図る方法もあります。未回収リスク対策として、複数のスキームを組み合わせることが望ましいでしょう。

正確な記載と手形管理システムの導入

手形には必要事項を正しく記載し、裏書や譲渡のタイミングには慎重に手続きを行うことが重要です。管轄する部署や担当者がしっかりと決まっていないと、記入ミスや記載モレが起きやすくなります。

電子的な管理システムやスケジュール管理ツールを導入することで、期日の見落としを減らし、効率的に手形を管理できます。導入コストはかかりますが、中長期的には大きなメリットを生むでしょう。

新たな決済手段の取り入れ

現在では電子決済など多様な決済方法が出てきており、手形を発行する必要がないケースも増えています。事前に資金を確認しながらオンライン上でやり取りできるため、不渡りのようなリスクは大幅に低減されます。

約束手形を含む紙の決済手段は将来的に廃止が検討されている状況からも、電子化への移行は早めに着手するとよいでしょう。取引先との情報共有もスムーズになり、業務効率が向上します。

管理体制を強化するためのポイント

手形決済を扱う企業は、リスク回避に向けた整備を、一時の施策ではなく長期的に管理していく必要があります。

定期的な資金繰りシミュレーション

手形の支払期日や売掛金の回収期日、固定費や投資予算などを含めたキャッシュフローの計画を作成しましょう。毎月や四半期ごとに見直すことで、不測の事態に備えることができます。

これにより、常に手元資金の状況を把握し、不渡りのリスクを抑えられます。計画値と実績値を比較しながら、資金調達や支出のタイミングを調整していくことが大切です。

担当者教育とマニュアル作成

手形の振り出しや受け取りに関わる担当者が、基本的な手続きやリスクを十分に理解していないと、致命的なミスにつながりかねません。定期的に研修を実施し、記載項目や裏書の手順などを全員が共有することが重要です。

また、マニュアル化された手順書を整備しておけば、新任担当者への引き継ぎや、万が一の欠員時でも業務をスムーズに継続できます。

監査体制の確立と外部専門家の活用

内部監査の体制を整え、お金の流れや手形の発行・保管状況を定期的にチェックする仕組みをつくりましょう。とくに、重要な取引や大口の手形については、社内だけの判断では不十分なこともあります。

提出書類や記載不備のチェックにおいて、法務や会計の専門家の意見を取り入れることで、不正やミスの早期発見につながります。外部の視点を活用することも、重要なポイントです。

トラブル想定と危機管理マニュアル

不渡りや取引停止処分が実際に起こった場合に備えた危機管理マニュアルを用意し、速やかに現状把握と対策ができる状態にしておきましょう。社内連絡ルートや銀行への通知手順など、具体的に決めておくと効果的です。

特に不渡り発生時の対応に遅れが生じると、取引先の信頼を回復するのがさらに難しくなります。万が一に備える姿勢は、企業の安定経営に欠かせない要素です。

まとめ

手形や決済にまつわるリスクと対策を、一通り見直してきました。支払期日の管理や、信用調査といった基本的なポイントをしっかりと押さえることで、企業の資金繰りを安定させる助けになります。

最終的には、リスクを的確に管理しながら運転資金を回すことが肝心です。早期の対策や管理体制の整備を進めておきましょう。必要に応じて専門家や外部サービスを活用し、より安全な取引基盤を築いてください。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社
資格
貸金業務取扱主任者(第F231000801号)
経営革新等支援機関認定者
東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入社。
法人融資の専門家として、国内での金融業務に従事し、特にコーポレートファイナンス分野において豊富な経験を誇る。
同行に関して、表参道支店では法人融資を担当し、その後ニューヨーク支店にて非日系企業向けのコーポレートファイナンス業務に従事。
法人向け融資の分野における確かな卓越した知見を踏まえ、企業の成長戦略策定、戦略、資金調達支援において成果を上げてきました。
金融・経営戦略の専門家として、企業の持続的な成長を支える実務的なアドバイスを提供し続けています。
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