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2025.01.22

差し押さえとは?手続きと回避のポイントを紹介

差し押さえとは、債務者が任意に債務を履行しない場合に、債権者が裁判所の力を借りて債務者の財産を差し押さえ、それを売却して債権の回収を図る手段です。給与や預金、不動産など、幅広い財産が差し押さえの対象となります。

この記事では、差し押さえの概要や手続き、リスクと回避策などについて詳しく解説します。差し押さえの基本を理解し、適切な対策を講じることで、事業資金や事業用資産を守り、安定的な事業運営につなげることができるでしょう。

差し押さえとは

民事執行法に基づく手続き

差し押さえとは、債権者が債務者の財産を強制的に換価し、債権の満足を得るための民事執行法に基づく手続きのことをいいます。つまり、債務者が任意に債務を履行しない場合に、債権者が裁判所の力を借りて債務者の財産を差し押さえ、それを売却して債権の回収を図る手段です。

差し押さえの対象となる財産は、債務者の所有する動産、不動産、債権、その他の財産権が該当します。ただし、差し押さえには一定の制限があり、生活に必要不可欠な財産や法律で保護されている財産は差し押さえの対象外となります。

民事執行法は、強制執行の手続きや要件を定めた法律で、差し押さえもその一部を構成しています。

民事執行法では、差し押さえの対象となる財産の範囲、差し押さえの方法、差し押さえの効果などが詳細に規定されています。また、差し押さえを行うためには、一定の要件を満たす必要があり、その要件も民事執行法に定められています。

差し押さえの目的

差し押さえの目的は、債権者が債務者から債権を回収することにあります。債務者が任意に債務を履行しない場合、債権者は裁判所に申し立てて差し押さえを行い、債務者の財産を換価して債権の満足を得ることができます。

差し押さえは、債務者に対して心理的な圧力をかける効果もあります。差し押さえを受けた債務者は、自己の財産を失うリスクを認識し、債務の履行に応じる可能性が高まります。このように、差し押さえは債権回収の実効性を担保する重要な手段といえます。

差し押さえの前提条件

差し押さえを行うためには、一定の前提条件を満たす必要があります。最も重要な前提条件は、債務名義の存在です。債務名義とは、債務者に債務の存在と額を確定する法的文書のことをいいます。

代表的な債務名義としては、確定判決、仮執行宣言付判決、和解調書、調停調書、公正証書などがあります。債権者は、これらの債務名義を取得した上で、差し押さえの申立てを行うことができます。

また、差し押さえを行う際には、債務者の財産状況を把握しておく必要があります。債務者の財産が不明な場合、差し押さえの実効性が乏しくなるからです。そのため、事前に財産調査を行い、差し押さえの対象となる財産を特定しておくことが重要となります。

差し押さえの対象となる財産

債権者が債務者から債権を回収する際、差し押さえという法的手段を用いることができます。差し押さえの対象となる財産には、いくつかの種類があります。

ここでは、差し押さえ可能な主な財産と、その中でも特に重要な給与や預金、動産、不動産の差し押さえについて詳しく見ていきましょう。また、差し押さえが禁止される財産についても触れていきます。

差し押さえ可能な主な財産

差し押さえの対象となる主な財産は以下の通りです。

  • 給与(一定の制限あり)
  • 預金(普通預金、定期預金、当座預金など)
  • 動産(自動車、貴金属、有価証券など)
  • 不動産(土地、建物)

これらの財産は、債務者が所有する資産の中でも特に換価しやすく、債権回収に適しているといえます。ただし、それぞれの財産には差し押さえ手続きの際の制限や注意点があります。

給与の差し押さえ

給与は、債務者の生活を維持するための重要な収入源です。そのため、給与の差し押さえには一定の制限が設けられています。

給与の差し押さえ可能額は、給与から所得税や社会保険料などを控除した後の金額の1/4までに限られます。つまり、給与の3/4以上は差し押さえが禁止され、債務者の最低限の生活が保障されるようになっています。

預金の差し押さえ

預金は、債務者が金融機関に預けている金銭のことを指します。普通預金、定期預金、当座預金など、様々な種類の預金があります。

預金の差し押さえは、比較的手続きが簡単で、債権回収の効果も高いとされています。ただし、差し押さえ可能な預金の範囲や、差し押さえ後の債務者の生活への影響などについては、十分に検討する必要があります。

動産の差し押さえ

動産とは、自動車や貴金属、有価証券など、移動可能な財産のことを指します。動産の差し押さえは、執行官が現場で行う必要があります。

差し押さえた動産は、換価(売却)して得た金銭を債権者に配当します。ただし、動産の価値評価や保管、換価の手続きには一定の費用がかかるため、債権額との兼ね合いを考える必要があります。

不動産の差し押さえ

不動産は、土地や建物などの固定資産を指します。不動産の差し押さえは、裁判所に申し立てを行い、競売手続きを経て行われます。

不動産は高額な財産であるため、債権回収の効果は高いといえます。しかし、不動産調査や競売手続きには時間と費用がかかるため、債権額が高額でない場合は、他の差し押さえ方法を検討する必要があります。

差し押さえが禁止される財産

差し押さえが禁止される財産も存在します。これらは、債務者の最低限の生活を保障するために、法律で差し押さえが制限されているものです。

差し押さえが禁止される主な財産は以下の通りです。

  • 生活必需品
  • 給与の3/4以上
  • 年金受給権
  • 生活保護受給権
  • 児童手当受給権

これらの財産は、たとえ債務者が債務を負っていたとしても、差し押さえの対象とすることはできません。債権者は、これらの財産以外の差し押さえ可能な財産から、債権回収を図る必要があります。

差し押さえの手続き

差し押さえは、債権回収のための最終手段として用いられる法的強制執行手続きです。差し押さえを行うためには、まず債務名義を取得する必要があります。

差し押さえには、債権執行、動産執行、不動産執行などの種類があり、それぞれ手続きや費用が異なります。以下では、それらについて詳しく見ていきましょう。

債務名義の取得

差し押さえを行うためには、まず債務名義を取得しなければなりません。債務名義とは、債務者に対して一定の給付を命じる権利の存在を公的に証明する文書のことです。

主な債務名義には、以下のようなものがあります。

  • 確定判決
  • 仮執行宣言付判決
  • 和解調書・調停調書
  • 執行認諾文言付公正証書
  • その他法定の債務名義

これらの債務名義を取得するためには、裁判所での手続きが必要となります。債務名義の取得は、差し押さえを行う上で最も重要なステップといえるでしょう。

債権執行の手続きと費用

債権執行とは、金銭債権を差し押さえる手続きのことです。給与や預金などが主な対象となります。

債権執行の手続きは、以下のような流れで進みます。

  1. 債権者が裁判所に債権執行の申立てを行う
  2. 裁判所が第三債務者(銀行や勤務先など)に差押命令を送付
  3. 第三債務者が債務者の財産を差し押さえ
  4. 差し押さえた財産から債権者への支払いが行われる

債権執行の申立てには、申立金額に合わせて印紙代が必要になります。ただし、差し押さえ可能な金額には制限があり、例えば給与であれば差押可能額は控除後の1/4までとなっています。

動産執行の手続きと費用

動産執行とは、自動車や貴金属、有価証券などの動産を差し押さえる手続きのことです。

動産執行の手続きは、以下のような流れで進みます。

  1. 債権者が執行官に動産執行の申立てを行う
  2. 執行官が債務者の自宅などに赴き、動産の差押えを実施
  3. 差し押さえた動産を換価(売却)し、得られた金銭を債権者に配当

動産執行の費用は、印紙代4,000円に執行官手数料、保管費用、鑑定費用、競売費用などがかかります。差し押さえる動産の種類や数によって費用が変動するため、確認して手続きすることをおすすめします。

不動産執行の手続きと費用

不動産執行とは、土地や建物などの不動産を差し押さえる手続きのことです。

不動産執行の手続きは、以下のような流れで進みます。

  1. 債権者が裁判所に不動産執行の申立てを行う
  2. 裁判所が不動産の差押えを決定し、競売開始決定を行う
  3. 不動産の現況調査が行われる
  4. 入札や売却により不動産が換価される
  5. 売却代金が債権者に配当される

不動産執行の費用は、申立費用、執行官手数料、競売費用、その他費用など合わせて高額になります。

差し押さえの申立てに必要な書類

差し押さえの申立てを行う際には、必要書類を裁判所に提出しなければなりません。主な必要書類は以下の通りです。

  • 債務名義の正本(確定判決や公正証書など)
  • 差押命令申立書
  • 当事者目録(債権者と債務者の情報を記載)
  • 請求債権目録(債権の種類や金額などを記載)
  • 執行文付与申請書(債務名義に執行力を付与するための申請書)

これらの書類を過不足なく準備し、裁判所に提出することが、円滑な差し押さえ手続きを進める上で重要となります。

差し押さえ回避のためのポイント

差し押さえは、債権者が債務者の財産を強制的に処分して債権の回収を図る法的手続きです。しかし、債務者にとっては、生活基盤を脅かす深刻な事態となります。

ここでは、差し押さえを回避するための重要なポイントを紹介します。債務問題に直面している方は、早期の対応が鍵となります。

債務の早期解消

差し押さえを回避する最も効果的な方法は、債務を早期に解消することです。債務の存在を認識した時点で、速やかに行動を起こすことが重要です。

まず、債務の全体像を把握しましょう。借入先、借入額、返済期限などを正確に把握することが第一歩となります。その上で、返済計画を立てて着実に実行していきましょう。

収入と支出のバランスを見直し、無駄な出費を削減することも必要です。少しずつでも返済に充てることで、債務の解消につながります。

分割返済の交渉

一括での返済が困難な場合は、債権者と分割返済の交渉を行うことも有効です。誠実な対応により、債権者の理解を得られる可能性があります。

交渉の際は、現在の収支状況と返済の意思を明確に伝えることが重要です。具体的な返済計画案を提示し、継続的に返済していく姿勢を示しましょう。

ただし、分割返済を認めるかどうかは債権者の判断によります。交渉が不調に終わる可能性もあることを理解しておく必要があります。

債務整理の検討

自力での返済が難しい場合は、債務整理を検討することも一つの選択肢です。債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産などの方法があります。

任意整理は、弁護士などの専門家を介して債権者と交渉し、返済条件の変更を図る方法です。個人再生と自己破産は、法的手続きを通じて債務を整理する方法で、一定の条件を満たす必要があります。

債務整理は、法的知識と手続きが必要となるため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。自分に適した方法を選択することが重要です。

まとめ

本記事では、差し押さえとは何かということから手続き、リスクと回避策などについて詳しく解説してきました。差し押さえは、債務者の財産を強制的に処分して債権回収を図る法的手続きです。給与や預金、不動産など幅広い財産が差し押さえの対象となります。

差し押さえを回避するためには、債務の早期解消に向けた行動が何より重要です。分割返済の交渉や債務整理の検討も選択肢の一つです。差し押さえの危機に直面した際は、専門家に相談し、適切な解決策を模索することをおすすめします。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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