ローン据置期間とは?賢い資金運用方法を解説
事業運営や成長に必要な資金調達において、返済負担を軽減する有効な方法として、元金返済開始までの据置期間があります。この記事では、据置期間とは何か、そして据置期間具体的なメリット・デメリット、賢い活用方法などについて詳しく解説します。
据置期間を設ける理由
据置期間とは
据置期間とは、融資を受けた後、一定期間元金の返済を行わず、利息のみを支払う猶予期間のことをいいます。例えば住宅ローンでは、住宅完成から入居後しばらくの期間を据置期間として設定でき、この間は利息支払いのみで済むため、当初の返済負担を軽減することができます。
据置期間設定の主な目的
据置期間を設定する主な目的は、事業運営や成長に集中できる環境を整えることです。特に、事業立ち上げ時は資金繰りが安定しないことが多いため、据置期間を設けることで元金返済を猶予し資金面の不安を軽減し、事業に専念できるようになります。
据置期間設定の際は、利息負担の増加や返済後の負担増加といった注意点も考慮し、慎重な計画が必要です。融資申込時に半年~1年間の据置期間を希望し、事業計画書でその必要性を明確に説明することをおすすめします。また、専門家への相談を検討し、万全の準備を行うことが肝要です。
据置期間を設ける際のメリット
融資を受ける際に据置期間を設けることには、いくつかのメリットがあります。
現金残高に余裕ができ資金繰りの改善につながる
据置期間中は元金返済を行わないため、現金の減少を抑えることができます。これにより、手元資金に余裕を持たせることが可能になるのです。
例えば、1,000万円の融資を受けた場合、据置期間がない場合は毎月約16万円の返済が必要になります。一方、据置期間を設けた場合は、毎月約2万円の利息のみの支払いとなります。この差額である月14万円、年間168万円を現金で保持できるのです。
返済を気にせず事業に専念できる
据置期間を設けることで返済負担を軽減し、事業運営や成長に集中できる環境を整えることができます。特に開業当初は事業の立ち上げに注力する必要があるため、この効果は非常に重要です。
返済の心配なく事業に取り組むことで、顧客獲得や売上向上といった成果につなげやすくなるでしょう。事業の基盤を固めるための貴重な期間を有効に活用できるのです。
事業の成長が後押しされる
据置期間によって生み出された資金的な余裕は、事業の成長を後押しする効果があります。例えば、設備投資や人材採用、広告宣伝などに充てることで、事業の規模拡大や売上向上を図ることができるでしょう。
据置期間は単なる返済猶予ではなく、事業の成長を加速させるための戦略的な資金運用の手段ともいえます。適切に活用することで、事業の発展に大きく寄与する可能性があるのです。
据置期間を設ける際の注意点
ローンの据置期間には、いくつかのデメリットや注意点があります。ここでは、据置期間を設定する際に気をつけるべきポイントを詳しく解説していきましょう。
利息負担が増加する
据置期間中は元金の返済を行わず、利息のみを支払うことになります。このため、据置期間が長くなればなるほど、支払う利息の総額は増加していきます。
例えば、1,000万円を金利1.5%で借り入れ、据置期間なしで10年間で返済する場合、支払う利息の総額は約702,000円です。一方、1年間の据置期間を設けた場合、利息の総額は約818,000円と、12万円ほど増加してしまいます。
据置期間を設ける場合は、この利息負担の増加を考慮に入れ、返済計画を立てる必要があるでしょう。
据置期間後の返済金額が大きくなる
据置期間を設けると、その分だけ返済期間が短くなります。つまり、据置期間後の月々の返済金額は、据置期間なしの場合と比べて大きくなってしまうのです。
先ほどの例で言えば、据置期間なしの場合の月々の返済額は約87,000円ですが、1年間の据置期間を設けた場合は約97,000円と、1万円ほど増加します。事業が軌道に乗るまでの間は、この返済額の増加が大きな負担になる可能性もあります。
希望通りの据置期間が設定されない可能性
据置期間を設定できるかどうかは、金融機関の審査によって決まります。事業の見通しや借入人の信用力などを総合的に判断し、据置期間の可否や長さが決定されるのです。
希望通りの据置期間を設定してもらえるとは限りません。創業間もない企業の場合、据置期間を設けてもらえないこともあるでしょう。金融機関との交渉の際は、この点にも注意が必要です。
適切な据置期間の設定方法
据置期間を適切に設定するためには、まずは資金繰りを正確に把握することが重要です。創業計画書を作成し、必要な資金額や、事業が軌道に乗るまでの期間を明確にしておきましょう。
また、金融機関との交渉の際は、据置期間の必要性を論理的に説明することが求められます。単に「資金繰りが苦しいから」というだけでは説得力に欠けてしまいます。事業の将来性や、据置期間を設けることで得られるメリットを具体的に伝えるようにしましょう。
金融の専門家に相談することも有効です。借入条件の交渉をサポートしてくれる専門家もいますので、うまく活用していきたいものですね。
据置期間の設定時の動き
ここでは、据置期間を設定するにあたって必要になる動きについて解説します
事業計画書での据置期間の必要性の明確化
融資申込時に据置期間を希望する場合、事業計画書において、その必要性を明確に説明することが重要です。事業計画書の中で、据置期間を設けることで得られるメリットや、それが事業の安定化にどのように貢献するのかを具体的に示しましょう。
例えば、「開業後3カ月間は売上が見込めないため、その間の資金繰りを確保するために6カ月間の据置期間が必要」といった説明を加えることで、融資担当者に据置期間の必要性を理解してもらいやすくなります。
据置期間中の資金の効果的な運用
据置期間中は、元金返済の負担がないため、その分の資金を事業の成長に投資することができます。例えば、設備投資や広告宣伝費、人材採用などに充てることで、事業の基盤を強化し、収益性を高めていくことが可能です。
ただし、据置期間中も利息は発生するため、資金の使途については慎重に検討する必要があります。事業計画に沿って、優先順位の高い投資から順に実行していくようにしましょう。
据置期間後の返済計画の立案
据置期間が終了すると、元金の返済が開始されます。据置期間中は返済負担が少ないため、事業の状況によっては返済計画の見直しが必要になる場合があります。
据置期間後の返済計画を立てる際は、売上予測や経費の見直しを行い、無理のない返済スケジュールを組むことが重要です。返済負担が事業の運営に影響を与えないよう、キャッシュフローを適切に管理していきましょう。
専門家への相談の重要性
据置期間の設定や活用方法については、経営の専門家や融資担当者に相談することをおすすめします。専門家の助言を得ることで、自社の事業特性に合った最適な据置期間の設定や、資金運用方法を見出すことができます。
また、事業計画書の作成についても、専門家のサポートを受けることで、説得力のある内容に仕上げることが可能です。融資審査の通過率を高めるためにも、専門家との連携を検討してみてはいかがでしょうか。
据置期間に関する融資制度
事業の立ち上げや運営において、資金調達は欠かせません。その際に、据置期間を設けられる融資制度を活用することで、事業の安定化や成長に大きく寄与することができるでしょう。
日本政策金融公庫の据置期間付き融資
日本政策金融公庫は、中小企業や個人事業主向けの融資制度を提供しており、据置期間を設定可能な商品も多く用意されています。例えば、「新創業融資制度」では、最長2年間の元金返済据置期間を設けることができます。この期間中は利息のみを支払い、元金返済を猶予されるため、事業立ち上げ時の資金繰りを大きく改善することが可能です。
また、「女性、若者/シニア起業家資金」や「社会的課題解決融資」といった特別な融資制度においても、据置期間の設定が可能となっています。事業の特性や社会的意義に応じて、適切な融資制度を選択することが重要といえます。
民間金融機関の据置期間設定の特徴
民間の金融機関においても、事業者向けの融資商品に据置期間を設定しているケースがあります。ただし、据置期間の長さや適用条件は金融機関ごとに異なるため、事前の確認が必要です。一般的に、信用力の高い事業者や将来性の高い事業計画を有する場合に、据置期間の設定が認められる傾向にあります。
民間金融機関の強みとして、事業者のニーズに合わせたオーダーメイドの融資商品を提供できる点が挙げられます。個別の事情を踏まえた柔軟な対応が期待できるため、据置期間の設定についても相談に乗ってもらえる可能性が高いでしょう。
まとめ
本記事では、事業資金の調達において据置期間を設定することのメリットやデメリット、賢い活用方法などについて解説してきました。据置期間を設けることで、現金残高に余裕ができたり、資金繰りが改善されたりと、事業の安定化に役立ちます。
事業の成長を加速させるための戦略的な資金運用の一環として、据置期間の活用を検討してみてはいかがでしょうか。資金面の不安を軽減し、事業の発展につなげていただければ幸いです。