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2025.02.03

直接法と間接法とは?キャッシュフロー計算書の2つの方法を解説

キャッシュフロー計算書は、企業の財務状況を正確に把握する上で欠かせない存在ですが、作成方法には直接法と間接法の2つがあり、どちらを選択するかで悩む方も少なくありません。この記事では、直接法と間接法の特徴や作成手順、メリット・デメリットを比較しながら、キャッシュフロー計算書の基本から実務上の活用方法まで幅広く解説します。

キャッシュフロー計算書とは

キャッシュフロー計算書は、財務諸表の一つで、一定期間内における現金および現金同等物の流れを明らかにするものです。つまり、キャッシュフロー計算書は、企業の現金収支の動向を把握するための重要な情報源といえます。

キャッシュフロー計算書では、現金の流入(収入)と流出(支出)を詳細に記録し、その差額(純キャッシュフロー)を算出します。これにより、企業の実際の資金繰りの状況を明確に把握することができるのです。

キャッシュフロー計算書の重要性

キャッシュフロー計算書は、企業の財務状況を正確に理解するために欠かせない存在です。損益計算書では利益が出ていても、実際の現金収支がマイナスである可能性があります。このような状況を「黒字倒産」と呼びます。

キャッシュフロー計算書を活用することで、黒字倒産のリスクを早期に発見し、対策を講じることができます。また、資金繰りの実態を正確に把握することで、適切な経営判断を下すことが可能になります。

キャッシュフロー計算書と損益計算書

キャッシュフロー計算書と損益計算書は、ともに企業の財務状況を表す重要な書類ですが、その目的と内容には大きな違いがあります。

  • 損益計算書:一定期間の収益と費用を対比し、利益を算出する
  • キャッシュフロー計算書:現金の収支を記録し、資金の流れを把握する

損益計算書では、発生主義に基づいて取引を記録するため、実際の現金の動きとは異なる場合があります。一方、キャッシュフロー計算書では、現金主義に基づいて取引を記録するため、より実態に即した情報を得ることができます。

キャッシュフロー計算書の限界

キャッシュフロー計算書は、企業の資金繰りの実態を把握するための強力なツールですが、限界もあります。キャッシュフロー計算書だけでは、企業の全体的な財務状況を完全に理解することはできません。

キャッシュフロー計算書は、損益計算書や貸借対照表と併せて分析することで、より総合的な財務状況の把握が可能になります。また、キャッシュフロー計算書は過去の一定期間の現金の流れを表すものであり、将来の資金繰りを予測するためには、他の情報も考慮する必要があります。

キャッシュフロー計算書の構成

キャッシュフロー計算書は、営業活動、投資活動、財務活動の3つから構成されています。

営業活動によるキャッシュフロー

営業活動によるキャッシュフローは、企業の本業に関連する現金の流入と流出を表しています。これには、商品やサービスの販売による収入、仕入れや人件費などの支出が含まれます。

営業活動によるキャッシュフローは、企業の日常的な収支状況を把握するために重要です。この部分がプラスであれば、企業は本業で資金を生み出していることを示しています。

投資活動によるキャッシュフロー

投資活動によるキャッシュフローは、固定資産の取得や売却、有価証券の購入や売却などに関連する現金の動きを表します。これは、企業の長期的な成長のための投資を反映しています。

投資活動によるキャッシュフローがマイナスの場合、企業が将来の成長に向けて投資を行っていることを示唆しています。ただし、過度な投資は資金繰りを圧迫する可能性もあるため、バランスが重要です。

財務活動によるキャッシュフロー

財務活動によるキャッシュフローは、企業が資金調達や返済に関連する現金の動きを表します。これには、借入金の調達や返済、社債の発行や償還、株式の発行や自己株式の取得などが含まれます。

財務活動によるキャッシュフローは、企業の資金調達方針や資本構成の変化を反映しています。この部分がプラスの場合、企業が外部から資金を調達していることを示しています。

現金及び現金同等物の範囲

キャッシュフロー計算書では、現金及び現金同等物の範囲を明確に定義する必要があります。現金同等物とは、容易に換金可能であり、価値の変動リスクが低い短期的な投資を指します。

現金及び現金同等物の範囲を適切に設定することで、企業の流動性の高い資産の状況を正確に把握することができます。これは、短期的な支払能力を評価する上で重要な情報となります。

直接法によるキャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書の作成方法には、直接法と間接法という2つの方法があります。

直接法の特徴

直接法は、主要な取引ごとにキャッシュフローを総額で表示する方法です。営業収入、仕入、人件費、営業費などを詳細に集計し、それぞれの項目の実際の現金の流れを明示します。

直接法は、国際会計基準(IFRS)で推奨されている方法でもあります。グローバルな比較可能性を高めるためにも、直接法の採用を検討する企業が増えています。

直接法の作成手順

直接法によるキャッシュフロー計算書の作成手順は、以下のとおりです:

  1. 営業収入の集計:販売による現金収入、受取手形の増減などを集計します。
  2. 仕入による支出の集計:現金仕入、支払手形の増減などを集計します。
  3. 人件費支出の集計:給与支払額、賞与支払額などを集計します。
  4. 営業費支出の集計:現金支払いの販売費および一般管理費を集計します。

これらの項目を集計し、営業活動によるキャッシュフローを算出します。投資活動と財務活動についても同様に、関連する取引を洗い出して集計していきます。

直接法のメリット

直接法の最大のメリットは、詳細な収支の把握が可能な点です。営業収入や支出の内訳が明確になるため、どの分野でキャッシュが増減しているのかを具体的に理解できます。

また、直接法で作成されたキャッシュフロー計算書は、企業の経営実態をより明確に示すことができます。資金繰りの改善点や問題点が浮き彫りになりやすく、経営判断に役立てることができるでしょう。

直接法のデメリット

一方で、直接法にはいくつかのデメリットもあります。まず、作成に多大な労力が必要な点が挙げられます。主要な取引のデータを一つひとつ集計しなければならないため、手間がかかります。

また、直接法の採用には、取引データの収集体制の整備が不可欠です。現金主義会計を採用していない企業では、必要なデータの収集が困難な場合もあるでしょう。

間接法によるキャッシュフロー計算書

間接法は、日本国内の企業で最も一般的に用いられているキャッシュフロー計算書の作成方法です。損益計算書の税引前当期純利益から非資金損益項目を調整して作成します。

間接法の特徴

間接法は、損益計算書の税引前当期純利益を出発点とし、非資金損益項目の調整を行うことで、営業活動によるキャッシュフローを算出します。この方法では、収入や支出の詳細を直接的に示すのではなく、損益計算書の数値を調整して間接的にキャッシュフローを求めます。また、日本国内企業でもっとも一般的な方法になります。

間接法の作成手順

間接法によるキャッシュフロー計算書の作成手順は、以下のとおりです:

  1. 損益計算書から税引前当期純利益を参照
  2. 非資金損益項目の調整(減価償却費、引当金の増減など)
  3. 営業外損益・特別損益の調整(有価証券売却損益、固定資産売却損益など)
  4. 営業活動関連項目の調整(売上債権の増減、仕入債務の増減など)

これらの手順を踏むことで、営業活動によるキャッシュフローを算出することができます。

間接法のメリット

間接法の主なメリットは、以下の2点です:

  • 作成が比較的容易:損益計算書の数値を基に調整するため、直接法と比べて作成が容易です。
  • アウトソーシングがしやすい:作成手順が明確で、会計の知識があれば外部に委託しやすいといえます。

特に中小企業にとっては、限られた人的資源でキャッシュフロー計算書を作成できる点が大きなメリットでしょう。

間接法のデメリット

一方で、間接法にはいくつかのデメリットもあります:

  • 詳細な収支把握が難しい:直接法と異なり、収入や支出の詳細が不明確になりがちです。
  • 収入や支出の詳細が不明確:事業の実態を詳細に把握するには、追加の情報が必要になることがあります。

間接法は作成が容易である一方、キャッシュフローの詳細な内訳を把握しにくいという欠点があります。企業の状況に応じて、直接法との使い分けを検討する必要があります。

直接法と間接法の比較

キャッシュフロー計算書の作成方法は、直接法と間接法の2つに分けられ、それぞれの方法には特徴があります。

作成の容易さ

作成の容易さという点では、間接法が有利といえます。間接法は、損益計算書の税引前当期純利益を起点として、非資金損益項目の調整を行うことで計算します。

一方、直接法は、主要な取引ごとにキャッシュフローを総額で表示するため、データ収集に多大な労力が必要となります。特に、営業収入、仕入、人件費、営業費の詳細な集計が求められます。

情報の詳細度

情報の詳細度は、直接法が優れています。直接法では、主要な取引ごとにキャッシュフローを総額で表示するため、詳細な収支の把握が可能となります。これにより、経営実態をより明確に示すことができます。

間接法では、非資金損益項目の調整を行うため、詳細な収支把握が難しく、収入や支出の詳細が不明確になる傾向があります。

国際的な適用状況

国際的な適用状況を見ると、直接法が優勢です。国際会計基準(IFRS)では、直接法の使用を推奨しています。

これは、直接法が企業の実際のキャッシュフローをより明確に示すためです。グローバルな比較可能性を高める観点から、直接法が望ましいとされています。

日本企業の採用状況

日本企業の採用状況は、間接法が主流です。日本国内企業の多くは、間接法を採用しています。

これは、間接法が作成しやすく、アウトソーシングもしやすいためです。ただし、近年では直接法への移行を検討する企業も増えつつあります。特に上場企業では、国際的な比較可能性を高めるために、直接法の採用が進んでいます。

キャッシュフロー計算書の活用

キャッシュフロー計算書によって、企業の現金の流れを詳細に把握し、企業の財務分析に大きく役立てることができます。

フリーキャッシュフローの計算

フリーキャッシュフローとは、企業が自由に使用できる現金のことを指します。このフリーキャッシュフローを計算することで、企業の将来の成長性や収益性を評価することができます。

フリーキャッシュフローは、以下の式で計算されます:

フリーキャッシュフロー = 営業活動によるキャッシュフロー + 投資活動によるキャッシュフロー

この式から分かるように、フリーキャッシュフローは企業の本業から生み出される現金と、設備投資などに使われる現金の合計を表しているのです。

キャッシュ・コンバージョン・サイクルの分析

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)とは、企業が原材料を仕入れてから、製品を販売して現金を回収するまでの日数を表す指標です。CCCを分析することで、企業の運転資金管理の効率性を評価することができます。

CCCは以下の式で計算されます:

CCC = 在庫日数 + 売上債権回収日数 – 買入債務支払日数

この式から分かるように、在庫の保有期間が短く、売掛金の回収が早く、買掛金の支払いサイクルが長いほど、CCCは短くなり、運転資金管理の効率性が高いといえるでしょう。

キャッシュフロー計算書を用いた財務分析の事例

ここでは、キャッシュフロー計算書を用いた財務分析の事例を見ていきましょう。この事例では、A社のキャッシュフロー計算書を分析し、同社の財務状況を評価します。

A社のキャッシュフロー計算書を見ると、以下のような特徴があることが分かります:

  • 営業活動によるキャッシュフローがプラスで推移している
  • 投資活動によるキャッシュフローがマイナスで、設備投資を積極的に行っている
  • 財務活動によるキャッシュフローがプラスで、借入金の調達を行っている

これらの特徴から、A社は安定的に現金を獲得しつつ、将来の成長に向けた投資を行っていると評価できます。ただし、借入金への依存度が高いことには注意が必要でしょう。

まとめ

キャッシュフロー計算書は、企業の実際の現金の流れを把握するための重要な財務諸表です。本記事では、キャッシュフロー計算書とは何か説明し、直接法と間接法という2つの作成方法の特徴、そして実務上の活用方法まで幅広く解説してきました。

自社の財務状況をより深く理解するために、ぜひキャッシュフロー計算書の活用を検討してみてください。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 
同年 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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