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2025.01.29

中古車の減価償却とは?計算方法と注意点を解説

中古車は、税務上の優遇措置により経費計上できるメリットがありますが、適切な減価償却の計算と会計処理が欠かせません。また、中古車をビジネスで活用する際に、償却可能限度額の制限や資産計上時期の選択など注意すべきポイントがいくつかあります。

この記事では、中古車の減価償却とはどのようなものか、具体的な計算方法と会計処理の方法、実務上の注意点などを解説します。

中古車の減価償却

中古車の減価償却を理解するにあたってまず減価償却とは何か知る必要があります。

減価償却とは

減価償却とは、固定資産の取得価額を、その資産の耐用年数にわたって費用配分する会計上の処理をいいます。つまり、資産の価値が時間の経過とともに減少していくことを認識し、その減少分を費用として計上するのです。

この処理によって、資産の取得価額を一度に費用計上するのではなく、使用期間に応じて徐々に費用化していくことができます。これにより、各事業年度の収益と費用の対応関係を適切に保つことが可能となるのです。

中古車に減価償却が適用される理由

では、なぜ中古車に減価償却が適用されるのでしょうか。それは、中古車も事業用資産として扱われるためです。

事業において使用される車両は、その用途や取得価額に関わらず、原則として減価償却の対象となります。新車であれ中古車であれ、事業の用に供される以上、一定期間にわたって価値が減少していくと考えられるからです。

減価償却を適用するメリット

中古車に減価償却を適用する意義は、適正な期間損益計算にあります。減価償却を行わずに中古車の取得価額を一括で費用計上してしまうと、取得した年度の利益が大きく減少してしまいます。

一方、減価償却を適用することで、中古車の取得価額を耐用年数にわたって分散させて費用計上できるため、各年度の利益をより適切に算出することができるのです。これは、税務上のメリットにもつながります。

中古車の減価償却の計算方法

中古車を事業用資産として取得した場合、適切な減価償却の計算が必要になります。

中古車の減価償却計算では、まず法定耐用年数を求める必要があります。その上で、定額法または定率法による計算を行います。

中古車の法定耐用年数

中古車の法定耐用年数は、新車の法定耐用年数と経過年数から算出します。国税庁の基準によると、普通自動車の新車の法定耐用年数は6年、軽自動車は4年とされています。

中古車の場合、法定耐用年数内であれば「(法定耐用年数 – 経過年数) + (経過年数 × 0.2)」の計算式を用います。法定耐用年数を超過している場合は、「法定耐用年数 × 0.2」で計算します。ただし、計算結果が2年未満の場合は2年とします。

定額法

定額法は、毎期均等に費用計上する方法です。計算式は以下の通りです。

取得価額 × 定額法償却率 × 使用月数/12

定額法償却率は、法定耐用年数から決まる一定の値を用います。この方法は、資産の使用状況に関わらず、毎期一定額の減価償却費を計上できるというメリットがあります。

定率法

定率法は、早期の年度ほど高額な減価償却費を計上できる方法です。初年度の計算式は以下の通りです。

取得価額 × 定率法償却率 × 使用月数/12

2年目以降は、(取得価額 – 減価償却累計額) × 定率法償却率 × 使用月数/12で計算します。定率法償却率は、法定耐用年数から決まる値を用います。この方法は、早期に多くの費用を計上したい場合に適しています。

定額法と定率法の選択基準

中古車の減価償却計算では、定額法と定率法のどちらを選択するかが重要なポイントになります。一般的には、以下のような選択基準が挙げられます。

  • 毎期均等に費用を配分したい場合は定額法
  • 早期により多くの費用を計上したい場合は定率法
  • 事業の収益が安定している場合は定額法
  • 事業の収益が不安定な場合は定率法

中古車の減価償却の会計処理

中古車を事業用として購入した場合、減価償却の会計処理が必要になります。

適切な会計処理を行うことで、税務上のメリットを得ることができるでしょう。ここでは、中古車の減価償却の会計処理について詳しく解説します。

直接法と間接法

減価償却の会計処理には、直接法と間接法の2つの方法があります。

直接法は、減価償却費を固定資産から直接控除する方法です。一方、間接法は、減価償却累計額を別勘定で計上する方法となります。

直接法の仕訳例は以下の通りです。

借方 貸方
減価償却費 XXX 車両運搬具 XXX

間接法の仕訳例は以下の通りです。

借方 貸方
減価償却費 XXX 減価償却累計額 XXX

直接法と間接法のどちらを選択するかは、企業の会計方針によって異なります。ただし、一度選択した方法は継続して適用した方がよいでしょう。

減価償却の仕訳例

中古車の減価償却の具体的な仕訳例を見てみましょう。

例えば、中古の普通自動車を200万円で購入し、定額法で減価償却を行う場合、以下のような仕訳になります。

借方 貸方
車両運搬具 2,000,000 現金 2,000,000
借方 貸方
減価償却費 333,333 減価償却累計額 333,333
※年間の減価償却費を計上

この例では、中古車の耐用年数を6年と想定し、定額法で減価償却を行っています。年間の減価償却費は、取得価額を耐用年数で割った金額(2,000,000円÷6年=333,333円)となります。

減価償却費の損金算入

減価償却費は、税務上の損金として認められます。

つまり、減価償却費を計上することで、課税所得を減らし、税負担を軽減することができるのです。ただし、損金算入のタイミングには注意が必要です。

原則として、減価償却費は、事業年度終了時に損金算入されます。しかし、中古車を事業年度の途中で購入した場合、月割計算で減価償却費を算出し、損金算入します。そのため、節税効果を最大化するには、事業年度開始月での購入が有利といえるでしょう。

中古車の減価償却に関する注意点

中古車を事業用資産として計上する際には、いくつかの注意点があります。

資産計上時期の選択

中古車を事業用資産として計上する際、資産計上の時期を適切に選ぶことが重要です

減価償却費は月割計算で行われるため、事業年度開始月に中古車を購入すると、その年度の償却額を最大化できます。一方、事業年度末月に購入すると、初年度の償却額は少なくなってしまいます。

事業年度開始月に中古車を購入することで、初年度から効果的に経費計上を行えるでしょう。ただし、事業の資金繰りとの兼ね合いも考慮する必要があります。

償却可能限度額の制限

中古車の減価償却を行う際、償却可能限度額に注意が必要です。取得価額の95%が償却可能限度額とされており、残りの5%は償却できません

この償却不可能な5%部分は、事業用資産の売却・廃棄時に損金算入(特別損失)されることになります。

償却可能限度額の制限を理解した上で、中古車の取得価額や償却期間を検討しましょう。限度額を超えた償却は、税務上認められません。

中古車の売却・廃棄時の処理

減価償却中の中古車を売却や廃棄する場合、適切な会計処理が求められます。売却時には売却益や売却損が発生しますし、廃棄時には残存簿価を一括して損金算入します。

これらの処理を適切に行わないと、税務上のトラブルに発展するおそれがあります。特に、償却可能限度額の5%部分の扱いには注意が必要です。

中古車の売却・廃棄を検討する際は、税理士など専門家に相談し、適切な処理方法を確認するとよいでしょう。

特殊なケースへの対応

中古車の減価償却では、いくつかの特殊なケースへの対応が必要となる場合があります。

例えば、リース契約で利用する中古車の場合、リース期間が1年以内またはリース料総額が300万円以下であれば、通常の減価償却ではなく一括経費計上が認められます

また、運送事業者が利用する中古車については、通常の中古車とは異なる耐用年数体系が適用される場合があります。業種別の特例にも注意が必要です。

このように、中古車の減価償却では様々な特殊ケースが存在します。自社のケースに合わせて、適切な処理方法を選択しましょう。

中古車の減価償却の税務上の取り扱い

中古車の減価償却については、税務上の取り扱いを正しく理解する必要があります。新車とは異なる点が多くありますので、適切な処理を行わないと、税務調査で指摘を受けるリスクがあります。

税務上の耐用年数と会計上の耐用年数

中古車の減価償却を行う際、税務上の耐用年数と会計上の耐用年数が異なる点に注意が必要です。税務上の耐用年数は、国税庁が定める「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に基づいて計算されます。

一方、会計上の耐用年数は、企業が独自に設定することができます。ただし、税務上の耐用年数と大きく乖離している場合、税務調査で指摘を受ける可能性があります。税務と会計の耐用年数は、できるだけ一致させるのが望ましいといえます。

少額資産の一括償却

中古車の取得価額が一定金額以下の場合、少額資産として一括償却することができます。2021年度税制改正により、一括償却の対象となる資産の上限額が引き上げられました。

改正後は、取得価額が30万円未満の中古車について、取得時に全額を費用として計上できます。ただし、この特例の適用を受けるためには、「3年間継続して事業の用に供する」などの要件を満たす必要があります。

私的利用の有無

税務調査では、中古車の減価償却について「個人的な使用実態がないか」という点が重要な確認項目の一つです。事業用として計上されている車両であっても、実際には私的利用が含まれている場合、減価償却費の一部が否認される可能性があります。

そのため、車両の使用目的や運行記録を明確にし、私的利用と事業利用を明確に区分することが求められます。

まとめ

本記事では、中古車の減価償却について詳しく解説してきました。減価償却とは資産の価値減少を費用として計上する会計処理で、中古車も事業用資産である以上、適切な減価償却計算と処理が求められます。

適切な減価償却処理を行うことで、中古車を活用した節税対策を効果的に行えるでしょう。事業資金の効率的な運用のためにも、減価償却制度をしっかりと理解し、活用していくことをおすすめします。専門的な部分は税理士など専門家に相談し、適切にサポートを受けながら進めていきましょう。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社 
同年 株式会社プラネス設立代表取締役就任
2021年 ヒューマントラスト株式会社 取締役就任

貸金業務取扱主任者を保有。
大手金融機関の法人担当を国内外で担当した後、お客様企業の経営戦略を中心としたコンサルティング事業を推進。
2021年にヒューマントラスト株式会社の統括責任者 取締役に就任。
上場企業・中小企業含めて300社以上、30年以上の支援実績がある法人企業向け融資のプロフェッショナル。
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