2025.02.27
予定納税はどう計算する?注意点とポイントを徹底解説!
資金繰りについて頭を悩ませている経営者や個人事業主にとって、大きな負担となりがちなのが税金の納付です。納付するタイミングが集中すると、一度に大きな出費が発生するため、一時的な資金不足を引き起こすリスクもあります。
この記事では、所得税をはじめとした予定納税の仕組みや計算方法、必要な対応について解説します。
予定納税の基本
事前に所得税額の一部を納める予定納税は、所得が一定以上ある人や事業者にとって欠かせない制度です。
予定納税とは
予定納税は、前年の所得税の納税額を基に、翌年分の税金をあらかじめ分割で納付する仕組みを指します。翌年の確定申告後に納付するのが基本ですが、前年と同程度の所得が見込まれる場合には、一定の算定方法によって割り出した額を、年2回に分けて先払いしなければなりません。
例えば、前年に大きく所得が増えて所得税が高額になった場合、翌年も同じ水準の税金がかかるとみなします。すると、所得税がまとまった金額になりやすく、国としても分割納付を通して滞納や大幅な遅延を防ぎたいという狙いがあります。一方、納税者の側も一度に大金を支払うリスクを減らすことができるため、互いにメリットのある制度といえます。
予定納税と資金繰りの安定化
納税時期が集中すると、多額の支出が一気に発生してしまいます。特に個人事業主や企業の場合、月々の資金の入出金が不規則になりやすく、資金不足を招くケースも少なくありません。そこで予定納税を活用することで、あらかじめ複数回に分割して納税するため、資金繰りを安定させることが期待できます。
ただし、分割で納付するからといって気を抜いていると、結局は合計額を納めなければならない点は変わりません。確定申告時に追加納税が必要になる場合もあるため、こまめに現状を把握した上で、余裕をもった納税計画を立てることが重要です。
消費税や法人税の中間申告との違い
予定納税とよく似た制度として、中間申告という仕組みがあります。消費税や法人税の納税額が一定以上になる場合に、定められたスケジュールに従って複数回の分割納付を行う制度です。例えば、消費税の場合は前年度に納めた税額が一定額以上の事業者、法人税の場合は前年度法人税額が20万円を超える法人が該当し、年に1回もしくは複数回の分割で納付する流れとなります。
事業規模や法人形態などによっても制度の詳細が異なるため、消費税や法人税の中間申告が必要な場合は、所得税の予定納税だけでなく、それらについても細心の注意を払う必要があります。いずれの制度も一度に大きな税金を支払わずに済むことを目的としていますが、納め忘れや計算方法の誤りがあると延滞税の対象となる点に気をつけましょう。
予定納税の対象となる条件
予定納税は、誰でも行うというわけではありません。一定の所得状況や納税実績がある方だけが対象となります。ここでは、自分が対象になるのかどうかを見極める基準を詳しく確認しましょう。
予定納税が必要となる基準
予定納税には、基準となる所得税額や収入の種類があります。基本的には前年分の所得税額をベースに決定され、予定納税基準額が15万円以上である場合や、給与所得が2,000万円を超えるなど、年末調整や源泉徴収だけでは対応しきれないケースに該当するときに適用されることが一般的です。
予定納税基準額というのは、簡単にいえば前年分の申告納税額から各種控除を考慮して算出される金額を指します。前年に事業所得が大幅に増え、所得税負担が膨らんだ人であれば、翌年もほぼ同程度の所得税を見込む計算となり、予定納税を行う必要があるわけです。
事業所得のある個人事業主・フリーランス
個人事業主やフリーランスは、給与所得者のように会社が自動的に税金を源泉徴収してくれるわけではありません。そのため、収益が多額になった際には、高い確率で予定納税対象となります。年収が波打つ場合は特に注意が必要です。前年に一時的に利益が大きくなった年があると、翌年に多額の納税が必要になる可能性があります。
事業そのものが拡大しているときは当然のことながら、単発の大きな案件を受けた年や、臨時で収入が増えた年がある場合も要注意です。
給与所得が2,000万円を超える人
給与所得が高額で、年収2,000万円を超える人も予定納税の対象となりがちです。給与が毎月源泉徴収されているケースでも、一定額を超えると年末調整で対応できず、別途確定申告を行う必要があるため、結果的に予定納税をする流れとなることがあります。
予定納税額の計算方法
それでは実際に、どのようにして予定納税額を割り出し、いつまでに納付すればよいのかを確認してみましょう。この手順を理解しておくことで、納付漏れや金額不足を防ぎやすくなります。
計算の基本と予定納税基準額
予定納税額は、原則として前年度に納めた所得税の総額がベースになります。具体的には以下のような流れで把握します。
①前年分の確定申告書を確認し、所得税の納税額を把握する。
②特例的な控除や災害減免などがなければ、そのままの納税額が予定納税基準額となる。
③予定納税基準額が15万円以上であれば、年に2回に分けて基準額の3分の1ずつを納める。(残った1円未満は四捨五入)
例えば、前年の所得税額が45万円だった場合、予定納税基準額は45万円となり、それを3等分した15万円を2回支払うことになります。もし途中で減額の必要があるときは、後述する手続きを行いましょう。
納付のタイミングと納付漏れのリスク
予定納税は年に2回あり、第1期分は7月1日から7月31日までに、第2期分は11月1日から11月30日までに納付しなければなりません。
これらの日程をうっかり忘れてしまうと、延滞税が発生するおそれがあるため注意が必要です。特に事業主は、売上入金のタイミングや仕入れ・人件費の支出などが重なる時期に資金が不足しやすいため、余裕をもった資金計画を立てましょう。
納付時期のズレや資金不足で払い忘れてしまうと、単純な延滞税だけでなく、信用不安を生みだす要因にもつながります。事業の信用度を維持し、円滑に銀行借入などを行いたい場合にも、納付の遅れはできるだけ避けたいところです。
実際の納付方法と手数料
支払いは複数の選択肢があり、以下のような方法が一般的です。
- 金融機関や税務署への現金納付
- インターネットバンキングやATMを活用した電子納税
- クレジットカードでのオンライン納付(手数料がかかる場合あり)
- 口座振替による自動引き落とし
- コンビニ納付(30万円以下などの制限あり)
近年は電子納税の制度が整ってきたことで、自宅やオフィスからネットバンキングを利用して納めやすくなりました。しかし、クレジットカード納付は利便性が高い反面、所定の手数料がかかる点には注意しましょう。また、口座振替を利用することで納付忘れを防ぎやすくなりますが、引き落とし日には口座に十分な残高を用意しておく必要があります。
予定納税にまつわる注意点
予定納税は資金繰りの安定化に役立つものの、仕組みを誤って理解していると予想外のペナルティやトラブルが生じることがあります。
延滞税
最も気をつけたいのは延滞税です。予定納税の第1期分と第2期分のいずれかでも期限までに納められなかった場合、遅延した日数に応じて一定の利率が課されることになります。具体的には以下のように設定されているケースがあります。
・納付期限から2カ月以内は年率2.4%
・納付期限から2カ月を超えると年率8.7%
この利率は経済状況などによっても変わる可能性があるため、最新の情報を確認する必要があります。いずれにせよ、遅れるほどに追加負担が増えるという点をしっかり認識し、期限厳守を心がけてください。
減額申請の活用
事業の廃業や予想外の不振、災害などで今期の所得が前年に比べて大幅に減った場合は、予定納税額の減額申請が可能です。申請が認められることで、予定納税を減額することができます。この制度を知らずに、前年と同じ納税額を支払ってしまうと、後で過払いの状態になるか、資金繰りを圧迫してしまう恐れがあります。
減額申請を行うには、管轄の税務署に定められた書類を期限内に提出する必要があります。申請に際しては、所得の減少を裏づける書類(売上高や経費の推移などの資料)を用意することが多くあります。実際に事業が大幅に縮小している場合や収入源が失われている場合など、理由が明確であれば可能な限り早めに相談しましょう。
定額減税との関連
過去に実施されていた定額減税制度など特例措置がある場合、確定申告の中でそれを適用した結果、予定納税基準額との兼ね合いが変わる可能性があります。一人あたり一定額が減税される仕組みを適用する場合、その分だけ年間の所得税が抑えられます。結果、対象となるかならないかで予定納税の負担額が変動することがあるため、実際の納税手続きの際は気をつけましょう。
特例措置は必ずしも常時行われているわけではなく、国の財政や政策によって変更・廃止・新設されることがあります。最新情報を確認するとともに、予定納税に影響があるかどうかをしっかり見極めることが大切です。特定の期間でしか使えない制度もあるので、タイミング面でも注意を怠らないようにしましょう。
過不足が生じたときの対応と通知書の扱い
確定申告をすると、実際の税額と予定納税ですでに納付した金額に差が生じる場合があります。ここでは、過不足が生じた際の対応や、事前に届く通知書の読み方について解説します。
過払いの場合の還付申告
もし予定納税で納めた額が実際の所得税額よりも多かった場合、確定申告を経て還付申告することで、差額の返金を受けることができます。例えば、前年の納税額が45万円で基準が15万円ずつ2回分と想定していたところ、実際の業績は落ち込み、所得税額が30万円程度に減少することがあるかもしれません。その場合、すでに30万円を先に納付しているので、確定申告時には納税した金額のうちの差額が戻ってくることになります。
ただし、必要な手続きや書類に不備があると還付までに時間がかかったり、追加で説明を求められたりすることがあります。スムーズに処理を進めるためには、確定申告時に支払った納税額や源泉徴収票、帳簿などを整理して提出するよう心がけましょう。還付金は事業の資金繰りにもプラスになるため、受け取り時期も念頭に置いて計画を立てると便利です。
不足の場合の追加納税
逆に、実際の税額が予定納税よりも高くなった場合には、確定申告後に追加で納税をする必要があります。予想外に利益が伸びたときや、期中に増収につながる契約がまとまったときなどは、予定納税額を上回る税金が発生しやすくなります。
この追加納税に関しては、確定申告で正しい所得算出をした上で税額を計算し、指定された期日までに支払わなければなりません。資金がショートしないように、好調時ほど税金や保険料などの公的支出に目配りを忘れず行うことが大切です。
通知書の重要性
予定納税の対象となった場合、毎年6月頃に税務署から予定納税額の通知書が送られてきます。ここには、具体的な納付額、納付期限、手続きに関する説明など重要な情報が記載されています。届く時期が事業の忙しい時期と重なることもありますが、見落とさないように注意してください。
通知書を紛失すると、いざ支払おうと思ったときに納付書が見つからないなどの混乱が生じることがあります。再発行に手間がかかる場合や、納付期限に間に合わなくなるリスクにもつながるため、届いたらすぐに中身を確認し、大切に保管することをおすすめします。
正確な申告と柔軟な納税計画のポイント
予定納税制度を利用していると、年末や年度末の確定申告時に、実際の納税額とのズレが生じやすくなります。ここでは、より正確な申告を行い、柔軟に納税計画を立てるためのポイントを押さえましょう。
中間管理の徹底で申告を正確に
事業主やフリーランスにとっては、定期的に売上や経費を整理し、決算書や記帳を正確に行うことが非常に大切です。この作業を怠ると、最終的に今年はいくらの利益が出たのか、どのくらいの税金がかかるのかという判断が難しくなり、結果として予定納税を過多にしたり、逆に足りなかったりする事態へ発展しかねません。
わかりやすい手段として、月ごとや四半期ごとに利益や出費を振り返り、翌月や翌期の利益予測を立てることが挙げられます。早い段階で今年はおそらくこれくらいの所得税がかかりそうだという見込みが立てば、予定納税の減額申請や追加資金確保を検討できるため、リスクが軽減します。
複数の税制や保険料の負担状況
所得税だけではなく、住民税や消費税、法人税、社会保険料など、さまざまな公的負担が事業や個人の資金繰りに影響を及ぼします。例えば、翌期に予定されている車両購入や設備投資、あるいは住宅ローンの支払いなどとも絡んでくるため、税金だけに注目していると見落としが発生しかねません。
より全体的な支出状況をチェックしながら、予定納税に必要な資金を確保する習慣をつけると、安定したキャッシュフローを維持しやすくなります。複数の納税・支払いが重なった場合でも、あらかじめ見通しを立てることでリスクを下げられるでしょう。
まとめ
本記事では、所得税の予定納税の仕組みや計算方法、注意点などについて解説してきました。事前に税金を分割して納めることで、一度に大きな支出を避けられるメリットがあります。
確実かつタイムリーに納付を行い、もし所得が減ったときには減額申請を検討することが有効です。納税のタイミングをしっかり把握して、事業や生活に負担をかけないように計画を立てましょう。