• TOP
  • 新着情報
  • 電子手形とは?利用の流れから注意点まで徹底解剖

電子手形とは?利用の流れから注意点まで徹底解剖

企業の資金繰りを円滑にする紙手形を電子化した電子手形は、コスト削減やリスク低減、管理の効率化などを実現できる決済手段として注目されています。

本記事では、電子手形の概要や紙手形との違い、具体的な利用の流れから導入時の注意点までを丁寧に解説します。

電子手形とは

電子手形とは、電子記録債権法に基づき、手形情報をオンライン上で記録・管理する仕組みを指します。従来の紙手形のように、郵送や持参による手渡しの必要がなく、決済が迅速に行われる点が特徴です。

電子手形の普及

このような電子手形の普及は、年々拡大傾向にあります。ペーパーレス化による効率向上だけでなく、各企業が取引の透明性とスピードを重視し始めたことが、普及の大きな要因として挙げられます。

紙手形との主な違い

紙手形との最大の違いは、物理的なリスクの削減です。紙手形は紛失や汚損、偽造、盗難などの被害に遭う可能性が常につきまといますが、電子手形はデジタル管理によって、このようなリスクを大幅に低減します。

また、紙手形は金額の一部だけを割り引くという柔軟な対応が難しい場合があります。しかし、電子手形なら1円単位での分割割引や譲渡も容易に行えるため、資金ニーズに合わせて柔軟に調整できるのが利点です。

加えて、受け渡し手続きが電子化されることで、郵送や対面手渡しの手間がなくなります。迅速な決済処理が可能になるため、企業同士の取引をよりスピーディーに進めることができます。

電子手形の利用の流れ

実際に電子手形を利用するには、金融機関との契約やシステム導入が必要となります。ここでは、一般的な利用手順や具体的なステップについて整理していきます。

基本的な準備

電子手形の利用を開始するには、まず、取引を行う金融機関へ申し込みを行います。必要な書類を提出し、銀行側の審査に通った後、電子記録債権の契約を結ぶのが一般的です。

その後、実際の運用を想定した動作確認やシステム設定を実施します。手続きの初期説明を十分に受けることで、操作ミスやトラブルを防ぐことが大切です。

契約完了後は、取引相手にも電子手形を利用できる環境が整っているか確認しましょう。お互いが同じサービスを導入していることで、決済がスムーズになります。

発生記録と譲渡

電子手形を発行することを「発生記録」と呼びます。支払企業が電子記録債権機関を通じて、取引内容や金額、期日などの情報を登録することで電子手形が成立します。

その後、納入企業には発生した電子手形の情報が通知され、譲渡や割引などの手続きを行うことが可能になります。

譲渡にあたっては、安全なシステム連携が求められます。金融機関や認証機関の仕組みを利用し、正当な権利者のみが電子手形を操作できるよう管理します。

決済と入金の実行

支払期日が到来すると、発生記録に基づいて決済が進められます。紙手形のように実物を持参する必要がなく、すべてオンラインで完結します。

支払企業は指定の口座から必要な資金を用意することで、期日に自動引き落としが行われます。一方、納入企業は同様に指定口座へ入金されるため、資金を迅速に受け取ることが可能です。

このように自動決済機能が備わっているため、企業の経理担当者の負担を軽減して円滑な資金繰りが期待できます。

以下は、電子手形の使い方を簡潔に整理したステップです。

  • 金融機関へ利用申請し、電子記録債権の契約を締結する
  • システム導入や操作マニュアルの確認を行う
  • 支払企業が電子記録債権機関に発生記録を登録する
  • 取引相手に譲渡・割引の可否を確認する
  • 期日に自動決済され、口座へ入金が行われる

電子手形の導入で得られるメリット

導入の際には、システムコストや操作の習熟などが必要ですが、それを上回るメリットがあるとされています。

業務効率とコスト削減

電子手形の導入により、紙のやりとりが減るだけでも大幅な時間短縮を実現できます。記入ミスや印紙の貼り忘れといったヒューマンエラーからも解放されるため、担当者の作業負担が軽減されるでしょう。

また、コスト面では印紙税や保管費が不要となる点が大きくなります。紙媒体特有のコスト負担がなくなるため、中長期的にみると導入費以上の経費削減が期待できます。そもそも紙ベースのあらゆる業務は管理や運用のコストがかさむため、電子手形の活用もその流れで経費節減に大きく寄与しているといえます。

加えて、デジタル上での記録管理は検索性に優れているため、過去の手形情報や取引履歴をすぐに確認できるのも魅力です。企業規模が拡大するほど、この利点は大きくなります。

取引リスクの低減

また、電子手形は決済リスクの軽減が期待できます。紙手形は郵送中の紛失や汚損などのリスクがつきまといますが、電子手形ならオンライン上で決済記録を進行させられるため、安心して取引を行えます。

さらに、企業間の取引を加速させる要因になります。オンライン手続きによるスピード感は、支払期日や入金を待たず、スムーズに契約を進める大きな後押しとなるでしょう。

電子手形利用の注意点

電子手形は多くのメリットがある一方で、導入コストや相手企業との連携など、押さえておきたい注意点も存在します。

導入コストと手数料

電子手形の導入には、システム使用料や金融機関への手数料が発生します。特に初期導入時は、サービス利用契約やシステム設定などに、まとまったコストがかかるかもしれません。

また、取引ごとに定額の発生手数料や割引手数料が必要となる場合があります。コスト対効果の見極めが大切で、導入前に見積もりをしっかりと確認することが求められます。

長期的には紙手形にかかるコストを上回る削減効果を期待できますが、短期での費用負担をどう吸収するかを考えることがポイントです。

取引先の利用要件

電子手形の決済を行うには、取引先企業も同一の電子記録債権システムを利用している必要があります。相手側で対応できない場合、従来の紙手形や他の決済方法を選ばざるを得ないケースも考えられます。

そのため、事前に取引先との調整やシステム導入の導線づくりを意識することが重要です。互換性の確保によってスムーズな電子手形決済が可能になります。

また、新たに取引を開始する企業が多い場合は、利用要件を満たすシステムを採用しているかどうかをあらかじめ確認しておくと良いでしょう。

セキュリティリスク

電子手形はデジタル情報として管理されるため、不正アクセスのリスクがゼロとはいえません。徹底したアクセス制限やデータ暗号化を施していても、運用担当者のパスワード管理など、ヒューマンエラーが脆弱性を生むことがあります。

高額な取引が行われる場合も多いため、運用ルールや監査体制を整え、定期的にセキュリティ診断を行うことが望まれます。サイバー攻撃への警戒が常に必要とされます。

あわせて、担当者の入れ替わりや外部委託などの場合にも、手続きの継続性やアクセス権限の整理が欠かせません。正しい運用ガイドラインが組織内に浸透するよう、教育や周知を徹底することが求められます。

まとめ

この記事では、電子手形とは何かから利用の流れ、導入時のメリットと注意点までを解説しました。本来のペーパーベースの手形と比べて、格段に効率的でリスクを抑えられる点が大きな魅力です。

今後は電子手形を有効に活用することで、迅速な資金調達やリスク管理の強化が期待できます。電子手形を導入することで、経営効率の向上を実現していきましょう。

融資のご相談とお申し込みはこちらから

監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社
資格
貸金業務取扱主任者(第F231000801号)
経営革新等支援機関認定者
東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入社。
法人融資の専門家として、国内での金融業務に従事し、特にコーポレートファイナンス分野において豊富な経験を誇る。
同行に関して、表参道支店では法人融資を担当し、その後ニューヨーク支店にて非日系企業向けのコーポレートファイナンス業務に従事。
法人向け融資の分野における確かな卓越した知見を踏まえ、企業の成長戦略策定、戦略、資金調達支援において成果を上げてきました。
金融・経営戦略の専門家として、企業の持続的な成長を支える実務的なアドバイスを提供し続けています。
前へ

初期投資を最小限に抑える方法は?適切かどうかどう判断する?

一覧へ戻る

電子記録債務とは?勘定科目からメリット・デメリットまでくまなく解説

次へ