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2025.03.07

中小企業の税制優遇にはなにがある?わかりやすく解説

企業にとって、事業を継続し成長させるうえで税負担をどのように減らすかは、常に課題となるでしょう。実際は、特に中小企業においてさまざまな場面で税制面での優遇措置が用意されています。

そこには、所得に関わる法人税から設備投資の負担軽減まで、幅広いメリットが存在します。ここでは、代表的な内容のポイントを整理し、わかりやすく解説します。

中小企業と税制優遇

中小企業が受けられる税制上のメリットを知るには、まず条件や仕組みを正確につかむ必要があります。

中小企業とは

法人税法上でいう中小企業は、資本金や出資金が1億円以下であることが基本となります。ここが大きなボーダーラインとなり、1億円以下であれば多くの優遇を受けられる可能性が高まります。

ただし子会社など、特定の企業形態はこの範囲から外されるケースがあります。

なぜ税制面で優遇されるのか

中小の事業者は経営基盤が脆弱になりやすいため、税制による負担を軽減し、事業継続を支援する狙いがあります。これにより、大企業との競争力を高める効果も期待されます。

一方で、誤った運用をすると、かえって税務リスクを高める可能性もあるので注意が必要です。

中小企業の法人税軽減

中小企業の税制優遇の代表例としてよく挙げられるのが、法人税率の軽減です。資本金1億円以下の企業では、所得に応じて低めの税率が適用される仕組みになっています。

所得800万円以下の税率が15%

中小企業の法人税率は、所得が800万円以下であれば15%という軽減税率が適用されます。通常の23.2%よりも大幅に低い数字となるため、利益が少ない企業ほど大きな恩恵を受けやすいでしょう。

適用を受けるには青色申告を行っているなど、いくつかの要件を満たす必要があります。該当要件の不備があると通常税率に戻るリスクもありますので、必ず申告漏れや手続きをチェックしましょう。

800万円超の追加課税

利益が800万円を超える部分については、23.2%という通常の税率が課されます。中小企業であっても、この水準を大幅に超える所得がある場合、軽減税率の効果が限定的になる点には注意が必要です。

とはいえ、800万円以下の部分はしっかり軽減されるので、1千万、2千万という所得でも全額が高い税率になるわけではありません。

適用の注意点

資本金1億円以下の法人なら無条件で軽減を受けられるわけではなく、一部には制限があります。たとえば、同一の大企業グループに属している場合などは、適用外となることがあります。

優遇制度の可否は毎年改正されることも多いため、最新の税制情報を取り入れる姿勢が重要です。法人税率は経営に直接影響を及ぼすため、都度見直す習慣をつけましょう。

繰越欠損金と繰戻還付

事業を続けていると、ある期は大きな赤字を出し、別の期には黒字を計上することがあります。その際に活用しやすいのが、繰越欠損金や繰戻還付といった優遇措置です。

青色申告が前提

まず前提として、欠損金の繰越や繰戻の特典を受けるには、青色申告が必須となります。手間はかかるものの、適切に帳簿を付けて申告することで、将来的な税負担を大きく軽減できるのが大きなメリットです。

また、青色申告を行うことは金融機関への信頼性アップにもつながり、融資の可能性向上など多方面でプラスに働く点も無視できません。

繰越の仕組み

中小企業の場合、欠損金を最大で10年間にわたって繰越できる制度があります。たとえば、設立初期や予想外の不況時に大きな赤字を計上した場合でも、後年度に利益が出たときに繰越された欠損金によって納税額を抑えられるわけです。

繰越できる期間は法改正により変更されることがあるため、その時点で適用されるルールを必ず確認しましょう。改正のタイミングを見誤ると、本来なら受けられるはずの繰越メリットを逃してしまう可能性があります。

還付を受けるための手続

欠損金の繰戻還付を利用すると、前年に支払った法人税の一部が還付される場合があります。ただし、そのためには適切な書式で手続きを行うことが必要です。

申告書の期限や必要書類を誤ると、還付が認められません。税務署への早めの確認と、税理士など専門家のサポートを適切に活用する必要も出てくるでしょう。

中小企業の交際費特例

企業活動を行ううえで、取引先や関係者とのコミュニケーション費用は無視できません。中小企業の税制優遇として、交際費を一定額まで損金算入できる特例が存在します。

損金算入の範囲

中小法人の場合、交際費として支出した金額のうち、一定の限度額または一定割合が損金扱いになります。これにより、実質的に法人税などの納税額を軽減できるしくみになっています。

飲食費だけでなく、取引先への贈答品費用なども含められるケースがあります。ただし、内容や金額によって扱いが異なるため、費目ごとの管理が重要になります。

年間限度額

交際費特例では、年間で800万円までの交際費を全額損金算入できるなど、細かな上限設定があります。これを超過した分は、損金として扱えない場合があるため注意しなければなりません。

制度を使う際には、交際費の実績を月ごとにチェックし、年間で大きく外れないように費用をコントロールすることが大切です。限度額を活用することで、節税効果を実感しやすくなるでしょう。

中小企業の設備投資の税制優遇

事業を拡大したり、効率化を図るために機械装置やソフトウェアを導入したりする際には、多くの中小企業を対象に税制優遇が用意されています。これらを活用することで、投資コストを抑えながら生産性を高めることが可能です。

投資促進税制と経営強化税制

一定の要件を満たす設備投資を行った中小企業は、即時償却または税額控除を選択できる制度を利用できます。税額控除であれば、取得価額の7%または10%が控除対象になります。

一方、即時償却を選べば導入年度に資産価額をすべて経費化できるため、キャッシュフローを一気に改善しやすいのがメリットです。ただし、翌期以降の減価償却費がなくなる点は、計画的に考慮する必要があります。

少額減価償却特例

取得価額が30万円未満の資産について、年間300万円を上限として、全額を一度に経費計上できる制度があります。これは、コピー機やパソコンなどの備品の導入にも活用しやすいでしょう。

業務に必要な資産をまとめて導入する場合、上限の300万円を超えない範囲で計画すると効率的です。投資のタイミング調整を行うと、節税額を最大化できます。

固定資産税の特例

先端設備等として認定された資産については、一定期間固定資産税が半額になる特例措置があります。具体的には、3年間の半額措置が中心で、自治体によって上乗せの支援があることもあります。

固定資産税の支払いは、年に1回まとめて来るため、企業のキャッシュフローに影響しやすい部分です。認定手続を忘れないように、導入前の計画段階から該当役所に確認しておくと良いでしょう。

研究開発と消費税に関する優遇

技術や商品開発を進める企業にとって、研究開発税制は見逃せない優遇策です。また、消費税にも免税点制度や簡易課税制度があり、上手に使えばコスト構造を大きく変える可能性があります。

研究開発税制

研究開発税制では、試験研究費の12~17%を法人税額から控除できる仕組みが用意されています。イノベーションに積極的な企業ほど恩恵が大きくなるため、自社の開発費用を常に明確化しておきたいところです。

横断的な技術協力や、産学連携のプロジェクトでも適用可能なケースがあります。対象範囲をよく精査することで、最大限に税額を軽減できるチャンスが広がります。

免税点制度

消費税には、前年度の課税売上高が1,000万円以下であれば、納税義務が生じない免税点制度があります。設立間もない企業など、売上規模が小さい段階では、この制度だけでも大きな効果を得られるでしょう。

ただし、免税になる代わりに仕入税額控除ができず、かえって不利になるケースもあります。トータルの税負担を試算し、どちらが得か判断する姿勢が不可欠です。

簡易課税制度

課税売上高が5,000万円以下の事業者は、簡易課税制度を選択可能です。仕入税額控除を実際より簡易的に計算できるため、事務作業の負担軽減にもつながります。

ただし、業種ごとにみなし仕入率が異なり、選択した方が不利になる場合もあります。切り替え時期を見極めることが、賢く節税を進めるカギになります。

まとめ

ここまで、中小企業が活用できる具体的な税制優遇や、具体的な制度活用のポイントまでを整理しました。法人税の軽減や欠損金の繰越、交際費特例など、経営に直結する多様な仕組みがあります。

いずれも適用要件や手続きは細かいため、制度を把握したうえで、自社の状況に合った選択を行うことが重要です。必要に応じて専門家へ相談しつつ、現行制度を正しく理解しながら、有益な優遇を積極的に取り入れてみましょう。

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監修者 三坂大作
監修者 三坂大作

略歴
1961年 横浜市生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1985年 三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行
1985年 同行 表参道支店:法人融資担当
1989年 同行 ニューヨーク支店:コーポレートファインス非日系 取引担当
1992年 三菱銀行退社
資格
貸金業務取扱主任者(第F231000801号)
経営革新等支援機関認定者
東京大学法学部を卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入社。
法人融資の専門家として、国内での金融業務に従事し、特にコーポレートファイナンス分野において豊富な経験を誇る。
同行に関して、表参道支店では法人融資を担当し、その後ニューヨーク支店にて非日系企業向けのコーポレートファイナンス業務に従事。
法人向け融資の分野における確かな卓越した知見を踏まえ、企業の成長戦略策定、戦略、資金調達支援において成果を上げてきました。
金融・経営戦略の専門家として、企業の持続的な成長を支える実務的なアドバイスを提供し続けています。
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